HRテック導入のメリットは?具体的な活用領域や選び方のポイントも解説

創業手帳

HRテック導入で業務の効率化や採用の精度向上、スピーディな意思決定の実現が期待できる


労働者人口の長期的な減少は、多くの日本企業が抱える課題です。
今、組織を強化ための人材の育成や採用に注力する組織が熱い視線を送っているのが、IT技術で効率的かつ最適な人事活動をサポートする「HRテック」です。

HRテックを導入するメリットとして、業務の効率化や採用の精度向上、スピーディな意思決定などが挙げられます。
この記事では、HRテックの基礎知識と導入するメリット、導入時のポイントなどについて解説します。

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HRテック(HR Tech)とは


HRテックを導入している企業は右肩上がりに増加しています。企業の多くが組織を成長させるために、AIや自動化を活用するようになってきました。
ここでは、HRテックの基本的事項について解説します。

HRテックとは

HRテックは、「Human Resources Technology」のことで、直訳すると「人的資源技術」となります。
HR(Human Resources)とテック(Technology)を組み合わせた言葉です。

HRテックは従来の人材管理に対する言葉です。具体的には、人事評価や採用などの仕事をAIに任せて業務効率化、問題解決を図ります。
単純に業務にAIを活用するのみならず、モバイルやソーシャルメディア、さらにアナリティクスのような先進的な技術を組み込むことで人事評価に変革をもたらすものを言います。

給与計算や人事評価の集計であれば、コンピュータなどでも十分に役割を果たせる仕事です。
それ以外の部分にAIを活用するといっても、イメージしにくいかもしれません。
しかし、求人から面接、採用といったステップから人材育成、人員配置、離職対策までもがHRテックの領域です。
人材の評価や昇給の判断をAIに任せることによって、より客観的で質が高い社内評価も可能になります。
適切な人材配置や人事評価は、従業員のモチベーションを高め、離職率を下げる効果も期待できます。

HRテックの市場規模

近年、HRテックの市場規模は、増加を続けています。
ミック経済研究所の調査では2021年度のHRTechクラウド市場は前年比32.4%増の587.7億円となりました。
2022年度は、前年比35.6%増の797.2億円となり、拡大傾向が継続しています。
この調査では、採用管理クラウドと人事・配置クラウド、労務管理クラウド、育成・定着クラウドの4市場についてHRテック市場としています。

HRテックの市場規模が増えた理由として考えられるのが、コロナ禍による社会変化です。
テレワークやニューノーマルといった就業形態の多様化が進み、人事に関わる仕事も変わってきています。
対面が一般的だった採用面接も、オンラインでの実施が普及しました。
また、テレワークで顔を合わせる機会が減り、人材の育成や定着を図るための取り組みも求められています。

今後も人材の採用から定着、業務評価といった企業の「人」に関わる仕事における可視化の重要性は高まり、HRテックの活躍の場は広がる考えられます。

HRテックの導入が進む背景


HRテックは多くの企業から導入されるようになり、さらに普及が進んでいます。どうして導入が進んでいるのかというと、その背景は人材業界の変化です。
以下で詳しく説明します。 

デバイスやIT技術の進化

HRテックが普及した理由として、デバイスやIT技術の発展が挙げられます。従来のシステムは、自社で設計から開発と運用をおこなうオンプレミス型が一般的でした。
そのため、HRテックを導入するまでのコストが大きくなってしまう点が課題でした。

しかし、IT技術が発展することで、気軽かつ安価に利用できるクラウド型のシステムが普及するようになりました。
インターネット回線が利用しやすくなり、昔であれば専用のパソコン端末やデスクでしかできなかった作業も、スマホやタブレットでどこからでも業務を進められます。
そのため、規模が大きな会社ではなくてもHRテックを導入しやすくなったのです。

人材採用競争の激化と戦略的人事の必要性

優秀な人材の確保は、これからの企業の未来を左右する重要な課題です。
少子高齢化に伴って労働人口の減少が予想されており、優秀な人材をどうやって確保するかの競争が始まっています。

採用計画の策定や選考のほか、人材育成や離職防止、戦略的な人事にHRテックが役立ちます。

HRテックを活用するメリット・デメリット

 

HRテックを導入することで、企業の人事の仕事が大きく変わります。導入する前にはメリット・デメリットを把握しておきましょう。

HRテックのメリット

HRテックのメリットには以下のものがあります。

業務効率化と生産性の向上

人事の仕事は、大量の情報を扱う上に事務作業が多く発生します。採用管理のほか、人事労務の手続き、給与計算や勤怠管理も人事の仕事です。
さらに、タレントマネジメントや人材開発など多岐にわたります。

HRテックでITシステムを活用することで、定型的な仕事の自動化、効率化が可能です。H活用することで業務を効率化して、生産性の向上が期待できます。

人事の公平性の確保による従業員エンゲージメントの向上

人材の評価業務も企業にとって重要な仕事です。
しかし、人事評価はどうしても評価者の個人的な感情が入りやすく主観的になってしまう恐れがありました。
納得できない人事評価に対しては、「この会社では自分は評価されない」からと退職につながることもあります。

HRテックであれば、評価分布を可視化できるうえデータを一元化できるので、評価の公平性が向上します。
評価を受ける側にとっても公正に評価されている感覚がモチベーションアップにつながり、従業員のエンゲージメントにも貢献するでしょう。

AI採用などでミスマッチを防ぐ

AIが分析をおこなうための根拠となるのが、企業のビッグデータです。人材配置の際に必要なスキルや特性もビッグデータをもとに分析します。

採用する際にも、応募者と自社の社員のデータを比較するため、採用後とのミスマッチを低減可能です。
ビッグデータを活用したAI採用によって、双方のミスマッチを減らし早期離職や内定辞退を予防できます。

採用してからも、スキル開発やキャリアパス支援にHRテックが活躍します。

データドリブンでスピーディな意思決定

データに基づいて判断やアクションをおこなうデータドリブンは、ビッグデータやIT技術の発展に伴って多くの企業で導入されるようになりました。
データドリブンによってリアルデータを有効活用できるようになれば、適材適所の人材配置も可能です。

スピーディーな意思決定が可能になるため、タイミングを逃すことなく人材のスキルを活かすことができます。
経営データと人材データを連携して人材配置後のパフォーマンスを予測するといったことも可能です。

HRテックのデメリット

HRテックは、人間と全く同様の機能があるわけではありません。
スピーディーに客観的な判断、評価を下すことはできますが、人間の数値化できない能力までは評価できないことがあります。

成長意欲やチームワークへの貢献、メンバーへの動機付けといった部分で組織に貢献していても、機械的な評価に反映されていないかもしれません。
データだけに頼りすぎる人事評価は、社員の不満の原因になることもあります。
HRテックの判断は、AIにどういった学習をさせるのかによって変わります。
過去のデータに偏っていると、その後の判断や意思決定も画一的になってしまうかもしれません。

また、HRテックは膨大な個人情報を扱っています。導入するときには、セキュリティ対策が十分かどうかもチェックしてださい。

HRテックに使われている技術と具体的な活用領域


HRテックは多くの最新技術に支えられています。HRテックに使われている技術と活用領域についてまとめました。

HRテックにおいて活用されている技術

HRテックに活用されている技術について紹介します。

クラウドサービス(SaaS)

クラウドサービスが普及することで、多くのサービスが手軽かつ安価に活用できるようになりました。

HRテックの多くはインストールが不要で、デバイスと通信環境を用意すればどこでも使用可能です。
アカウントを取得することで、複数名がさまざまな場所からアクセスできるので共同作業もスムーズに進みます。

AI(人工知能)

AI(人工知能)は、ビッグデータをもとに学習し、解析に使われる技術です。
客観的データに基づいた判断により、特定業務の属人化を防いで最適な人材配置を目指します。

RPA(Robotic Process Automation)

RPAは、ロボットによって事務作業など設定されたプロセスを順番どおりに実行する技術です。
定型業務を代替することで、人的コストの削減、ミスの減少を可能にします。

モバイル端末

スマホやタブレットといったモバイル端末の登場は、私たちの働き方に変革をもたらしました。
モバイル端末でもHRテックの情報にアクセスできるため、パソコンがない現場でも管理や育成に活用可能です。

活用領域1:労務・勤怠管理

HRテックは、従業員の出退勤管理や労務管理でもその能力を発揮します。
一般的な勤怠管理は、タイムカードやICカードを利用しますが、HRテックによってシフト管理やチェック業務といったルーチンワークのIT化が可能です。
業務の効率化により、採用や育成といったコア業務に専念できます。

活用領域2:採用

採用では多くの情報を取り扱います。応募者の情報や選考状況を一元管理することで、より多くの応募に対応できるようになるでしょう。
また、AIのサポートで面接の調整や情報のデータ化することで採用のミスマッチを防ぎます。

活用領域3:教育・人事評価

従業員のスキルや資格、経験をデータベースにして管理できるHRテックは人材育成や人事評価の領域でも力を発揮します。
タレントマネジメントシステムを使うことで客観性と公平性が保たれるため、教育や人事評価を受ける従業員のモチベーション維持にも貢献します。

HRテックの選び方とサービス導入のポイント


HRテックには多くの種類があります。以下では、その選び方とサービス導入時のポイントをまとめました。

業務の棚卸と整理をして自社の業務を見つめなおす

HRテックを選ぶ前には、まず本質的な業務改善を行ってください。
現状において抱えている課題が、本当にHRテックが無ければ解決しないのか、他の解決法がないかを検討しましょう。

無駄な業務を省いたうえで、HRテックが高度化、代替できる部分を洗い出してください。

目的達成に最適なサービス選定

HRテックはそれ自体が高機能なサービスですが、使用者と相性が悪ければその性能を発揮できません。
HRテックを選ぶときには、API連携など使い勝手がよく自社のITリテラシーに合ったものを選択するようにします。
可能であれば、本格的に導入する前に実際に使うことになる現場の社員が使ってみるようにしてください。

HRテックの導入自体を目的にしない

HRテックを導入すると、多くの部門に影響があります。準備に手一杯になってしまうと、「HRテックの導入」自体が目的化するかもしれません。

HRテックはあくまで自社の業務を効率化、高度化するための手段です。「導入すること」ではなく、「活用すること」を主眼としてください。

HRテック導入成功事例


ここからは実際にHRテックを導入した事例を紹介します。参考にしやすいよう、大企業と300人規模の企業について記載します。

株式会社日立製作所

株式会社日立製作所は世界的な電子メーカーです。
しかし、世界規模で従業員を抱える日立製作所は、企業内の価値観の偏りと成長鈍化を課題としていました。

そこでHRテックのタイプ診断を導入し、今まで社内にいなかったタイプの人材を積極的に採用しました。
その結果、企業の新陳代謝が進み新しい価値観のアイデア、斬新な製品が生まれています。
大手で規模が大きいからこそ生まれる人材や考え方の偏りを是正するにもHRテックの導入が効果的な例です。

株式会社加和太建設

株式会社加和太建設株式会社は、創業70年以上の老舗企業です。
多岐にわたる有資格者を抱え、事業部も多くなり事業成長とともに人事労務の負担も増大していました。

そこでHRテックを導入し、労務業務の効率化を図りました。
その結果、社員教育分野に集中できるようになりWeb学習と対面研修を織り交ぜた加和太建設オリジナルの教育体系がスタートし、情報伝達の場として機能しています。

まとめ

HRテックは、労務管理からタレントマネジメント、採用、育成まで多くの領域で活用が期待されています。
しかし、導入してどのようにHRテックを活用するのかイメージしていなければ、その機能を使いこなせません。

改善したい業務に応じて適切なHRテックを選択するとともに、社内で導入、運用するための土台を作るようにしてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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