令和6年度 業務改善助成金とは?支給金額や対象経費、申請期限、変更点などをご紹介
事業場内最低賃金を引き上げることで、生産性向上に資する設備投資等の費用が最大600万円支給されます!
生産性向上のために設備投資を検討している中小企業の関係者の方々、業務改善助成金を活用してはいかがでしょうか。設備投資と合わせて事業場内最低賃金の引き上げを行うことで、最大600万円の支給を受けられます。
この記事では、令和6年度 業務改善助成金の概要をわかりやすく解説します。対象となる事業所・経費から、助成金額の計算方法、申請期限まで、幅広く取り上げるので参考にしてください。
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この記事の目次
業務改善助成金とは
業務改善助成金とは、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、生産性向上のための設備投資等を行った場合、その費用の一部を助成する仕組みです。
賃上げの計画と設備投資等の計画を立案・申請し、計画通り遂行した事業の結果を報告することで、最大600万円が支給されます。
なお、事業場内最低賃金とは、雇用から3ヶ月が経過した労働者が受け取る事業場内で一番低い時間給のこと。最低賃金法に基づき厚生労働省が定める地域別最低賃金以上の範囲内で、各事業所で任意に定められる金額を指します。
対象となる事業者
業務改善助成金の対象となるのは、下記の3点を満たす事業所です。なお、申請は事業所(工場や事務所等)ごとに行います。
・事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
・解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
出典:厚生労働省「業務改善助成金について」
対象となる経費(設備投資等)
業務改善助成金では、下記のような生産性向上・労働能率の増進に資する設備投資等の経費が助成の対象となります。
経費区分 | 対象経費の例 |
---|---|
機器・設備の導入 | ・POSレジシステム導入による在庫管理の短縮 ・リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮 |
経営コンサルティング | 専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上 |
その他 | 店舗改装による配膳時間の短縮 |
出典:厚生労働省「業務改善助成金について」
例えば、ある飲食業者が店内飲食の減少を受け、コンサルティングを利用して業務改善を試みたとしましょう。その業者は、デリバリー販売を拡充することになり、受注システムや配送用のバイク、フライヤーなどを導入しました。それと同時に、事業場内最低賃金である一人の従業員の時給を100円引き上げました。
この場合、コンサルティングや各種の導入・購入費用が助成対象となります。このような業務改善助成金の活用事例は、厚生労働省が公開している「生産性向上のヒント集」でいくつか確認できます。興味のある方はぜひこちらからチェックしてみてください。
特例事業者は助成対象経費を拡大
業務改善助成金において、下記3つの要件を満たす事業者は特例事業者とみなされます。
①賃金要件 | 事業場内最低賃金が950円未満の事業者 →助成上限額の拡大(助成上限額の区分10人以上)が受けられる |
---|---|
②生産量要件(令和6年3月31日申請分まで) | 新型コロナウイルス感染症の影響により、売上高や生産量等の事業活動を示す指標の直近3か月間の月平均値が、前年、前々年又は3年前同期に比べ、15%以上減少している事業者 →助成上限額の拡大(助成上限額の区分10人以上)のほか、助成対象経費の拡大が受けられる |
③物価高騰等要件 | 原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等の外的要因により、申請前3か月間のうち任意の1か月の利益率が3%ポイント以上低下している事業者 →助成上限額の拡大(助成上限額の区分10人以上)のほか、助成対象経費の拡大が受けられる |
出典:厚生労働省「業務改善助成金について」
中でも②と③を満たす特例事業者については、助成対象経費が下記の通り拡充されます。通常は対象外となるパソコンや自動車などの費用も対象となるのでお得です。業務改善助成金を活用する際は、ぜひ自社が特例事業者にならないかご確認ください。
一般事業者 | 特例事業者 | |||
---|---|---|---|---|
①賃金要件 | ②物価高騰等要件 | |||
引上げ人数関係 | 引上げ人数10人以上の区分の利用 | × | ◯ | ◯ |
助成対象経費関係 | 生産性向上になる設備投資等 | ◯ | ◯ | ◯ |
生産性向上になる設備投資等のうち、 ・定員7人以上または車両本体価格200万以下の乗用自動車や貨物自動車 ・PC、スマホ、タブレット等の端末周辺効きの新規導入 |
× | × | ◯ |
出典:厚生労働省「令和6年度業務改善助成金の一部変更のお知らせ」
令和6年度の業務改善助成金の変更点
令和6年度の業務改善助成金から一部内容変更があります。主な変更点については以下の4つになります。
1.特例事業者要件 新型コロナウイルスの影響を受けた事業者向けの「生産量要件」が終了(賃金要件と物価高騰等要件は引き続き継続)
2.経費の特例 「生産量要件」又は「物価高騰等要件」の事業者に認められていた「関連する経費」が終了(車・PCなどの導入は引き続き実施)
3.申請回数 令和6年度中に可能な申請回数は1回まで※
4.賃金引上げ方法 事業場内最低賃金の引上げは1回のみ(複数回の引上げは助成対象外)
※令和6年3月31日までに申請し、令和6年4月1日以降に交付決定を受けた事業者は、令和5年度に申請されたものとして扱われるので、令和6年度にも申請可能。
令和6年度 業務改善助成金では、事業場内最低賃金の複数回に分けての引き上げは助成対象外となりました。事業場内最低賃金の引上げは1回のみですので、申請を検討している場合はご注意ください。
詳しい情報につきましては、厚生労働省「令和6年度業務改善助成金の一部変更のお知らせ」を参照ください。
令和6年度 業務改善助成金の助成上限額・助成率
令和6年度 業務改善助成金の助成上限額および助成率は下記の通りです。上限額は、賃上げの金額(コース)と引き上げる労働者数などによって決まります。
<助成上限額>
コース区分 | 事業場内最低賃金の引き上げ額 | 引き上げる労働者数 | 右記以外の事業者 | 事業場規模30人未満の事業者 |
---|---|---|---|---|
30円コース | 30円以上 | 1人 | 30万円 | 60万円 |
2〜3人 | 50万円 | 90万円 | ||
4〜6人 | 70万円 | 100万円 | ||
7人以上 | 100万円 | 120万円 | ||
10人以上※ | 120万円 | 130万円 | ||
45円コース | 45円以上 | 1人 | 45万円 | 80万円 |
2~3人 | 70万円 | 110万円 | ||
4~6人 | 100万円 | 140万円 | ||
7人以上 | 150万円 | 160万円 | ||
10人以上※ | 180万円 | 180万円 | ||
60円コース | 60円以上 | 1人 | 60万円 | 110万円 |
2~3人 | 90万円 | 160万円 | ||
4~6人 | 150万円 | 190万円 | ||
7人以上 | 230万円 | 230万円 | ||
10人以上※ | 300万円 | 300万円 | ||
90円コース | 90円以上 | 1人 | 90万円 | 170万円 |
2~3人 | 150万円 | 240万円 | ||
4~6人 | 270万円 | 290万円 | ||
7人以上 | 450万円 | 450万円 | ||
10人以上※ | 600万円 | 600万円 |
※10人以上の上限額区分は、特例事業者のみ対象
<助成率>
900円未満 | 9/10 |
---|---|
900円以上950円未満 | 4/5(9/10) |
950円以上 | 3/4(4/5) |
※()内は生産性要件を満たした事業場の場合
なお、助成率は事業場内最低賃金(引き上げ前)の金額によって決まりますが、これには地域別最低賃金との兼ね合いもあります。例えば、東京都の地域別最低賃金は1,113円※なので、必然的に全ての事業者に三段目の助成率が適用されます。
※令和5年10月1日改定
引き上げる労働者数のカウント方法
引き上げる労働者として数えられるのは、事業場内最低賃金の労働者と、それに賃金を追い抜かれる労働者です。ただし、申請コースの金額以上に引き上げなければ、カウントの対象にはなりません。
厚生労働省のHPで公開されている具体例を使って補足しましょう。事業場内最低賃金950円の企業が30円コースを申請する場合、労働者4名が引き上げる労働者数にカウントされるかを考えます。
出典:厚生労働省「業務改善助成金について」
この場合、引き上げる労働者数に数えられるのは、元の賃金が新事業場内最低賃金未満で、かつ30円以上の賃上げを受ける労働者です。もともと事業場内最低賃金の労働者であるAは、30円の引き上げを受けるのでカウントされます。
続いてBとCは、どちらもAに賃金を追い抜かれるため、新しい事業場内最低賃金以上まで引き上げを受ける労働者です。しかし、引き上げる労働者数の対象になるのはCだけとなります。Bは引き上げ額が20円であり、30円コースの申請要件を満たさないからです。
またDは30円の引き上げを受けますが、元から新事業場内最低賃金以上が支払われているのでカウントされません。この辺りのルールはやや複雑なので、賃上げ時ないし申請時に間違えないように注意しましょう。
助成金額の計算方法
業務改善助成金では、設備投資等にかかった費用に助成率を乗じた金額と、助成上限額のいずれか低いほうが支給されます。
例えば、事業場内最低賃金900円の事業所が90円コースに申請し、8人の賃金を要件通りに引き上げたとしましょう。この場合の助成上限額は450万円です。
一方、この事業所が生産性向上のための設備投資等に支払った経費は600万円でした。600万円に助成率4/5を乗じると480万円になります。
450万円<480万円より、この事業所が受けられる助成額は450万円です。
令和6年度 業務改善助成金 申請から支給までの流れ
業務改善助成金の交付申請は、事業所のある都道府県労働局に対して行います。交付申請から支払いまでの手続きフローは下記の通りです。
1. 交付申請:都道府県労働局に交付申請書や事業実施計画書などの必要書類を提出
2. 交付決定:審査が行われ、交付決定が通知
3. 事業の実施:申請内容に基づき、賃金の引き上げや設備の導入などの事業を実施
4. 事業実績報告:労働力に事業実績報告書や助成金支給申請書などを提出
5. 交付額確定:事業実績報告書等の審査で適正と認められれば、交付額が確定
6. 助成金受領:労務局が支払いを行い、助成金が振り込まれる
□
令和6年度 業務改善助成金 申請期限および事業完了期限
令和6年度 業務改善助成金の申請期限および事業完了期限は以下の通りです。
申請期限 | 2025年(令和6年)12月27日 |
---|---|
事業完了期限 | 2025年(令和7年)1月31日 |
業務改善助成金の注意点
業務改善助成金に関する注意点は下記の3点です。
・交付決定前に導入した対象設備は助成の対象外
・予算の関係で申請期限の前に募集終了になる場合も
・過去に業務改善助成金を使った事業者も再度活用が可能
□
業務改善助成金の助成対象となるのは、交付決定の後に実施される事業に使った対象経費のみです。交付決定前だと全て対象外となるので、必ず決定の通知を待ってから事業を開始してください。
また本助成金は予算の範囲内で運用されるため、交付件数が多ければ早期に募集が打ち切られる可能性があります。活用することが決まっているなら、なるべく早く交付申請を進めるのがおすすめです。
最後に業務改善助成金は、過去に本助成金を活用したことのある事業者も対象になります。交付を受けたことのある方も、さらなる設備投資および本助成金の活用をぜひご検討ください。
まとめ
令和6年度 業務改善助成金は、収益性の向上を目指す中小企業にとってありがたい制度だといえます。助成率が高いため、低コストでツールの導入やコンサルティングの利用を実現可能です。
助成を受けるには賃上げが必要ですが、生産性が向上して利益が増えれば、人件費負担が過度になる心配は少ないでしょう。ぜひビジネスの改革に本助成金をご活用ください。
創業手帳の創業者・大久保のコメント
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(編集:創業手帳編集部)
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創業手帳の創業者・大久保です。注目すべき、業務改善助成金について解説します。
通過率が比較的高く、金額も大きいという特徴があります。
ポイントは、以前も解説しましたが、政府の方向である賃金引き上げと生産性のアップです。
賃金引き上げは元々人材不足で従業員のモチベーションアップや人材の引き止めなどで賃金の引き上げを行う傾向があり、一方で無駄な労力をいかに減らすかを両立させることがポイントになります。
まず経営者の方に考えていただきたいのは、この賃金・生産性の2大ポイントで出てくる融資や補助金助成金は「これだけではない」ということです。
今の政府の方針や補助金助成金の他の制度の動向を見ると、明らかに賃金と生産性の話が一貫して出てきます。
見送っても大丈夫という意味ではなく、他にも融資や補助金・助成金で必須要件となるケースが出てくると予想します。
そのため、これだけで判断するのではなく、他にも複数の制度で使える可能性が出てくるので、今のうちに賃金と生産性の対策を進めていきましょう。
賃金生産性アップの鍵ですが、賃金・生産性はどちらかというと内部的な細かい部分に目が行きがちですが、そちらだけでなく、付加価値の高い商品に集中し、値決めを見直すというのも重要なポイントです。
賃金上昇は実は経営の定石である競争力のある分野への集中を促している面もあります。
この助成金の趣旨は賃金と生産性アップ(特にデジタル活用)ですが、強みの見直しとそこへのシフトと、適正なプライシング(妥当な値上げ)が実現のコツになってきます。
ぜひ、この機会に今までできなかった経営上の構造改革にチャレンジしてみましょう。
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