【延長】令和6年度 業務改善助成金とは?支給金額や対象経費、変更点などをご紹介
最大600万円!生産性や効率の強化に使える助成金
業務改善助成金は、生産性を上げるための設備投資と賃金の引き上げを行うことで、最大600万円の支給を受けられる制度です。
この記事では、令和6年度 業務改善助成金の概要をわかりやすく解説します。対象となる事業所・経費から、助成金額の計算方法、申請期限まで、幅広く取り上げるので参考にしてください。
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この記事の目次
業務改善助成金とは
業務改善助成金とは、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、生産性向上のための設備投資等を行った場合、その費用の一部を助成する仕組みです。
事業場内最低賃金とは、雇用から3カ月が経過した労働者が受け取る事業場内で一番低い時間給のことです。地域別最低賃金以上の範囲内で、各事業所で任意に定められる金額を指します。
過去に業務改善助成金を使った事業者も再度申請できるので、最新となる令和6年度分の情報を含めて確認しておきましょう。
対象となる事業者
業務改善助成金の対象となるのは、下記の3点を満たす事業所です。なお、申請は事業所(工場や事務所等)ごとに行います。
- 中小企業・小規模事業者であること
- 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
- 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
出典:厚生労働省「業務改善助成金」
小規模事業者には個人事業主も含まれるため、従業員を雇っていれば申請可能です。
主な要件
業務改善助成金の名の通り、業務における生産性や効率の向上を目的とした投資を行うことが主な要件です。
加えて、3カ月以上雇用している労働者の事業場内最低賃金の引き上げも行う必要があります。労働者がいない、もしくは雇用から3カ月未満であれば申請できません。
個人事業主でも使える助成金ではあるものの、1人で事業を営んでいる場合は対象外なので注意しましょう。
申請期限と事業完了期限
令和6年度における業務改善助成金の申請期限および事業完了期限は以下の通りです。
申請期限および事業完了期限が延長されています。
申請期限 | 令和6(2024)年12月27日→令和7年1月31日に延長 |
---|---|
事業完了期限 | 令和7(2025)年1月31日→令和7年2月28日に延長 |
業務改善助成金の対象となる経費
業務改善助成金では、生産性向上・労働能率の増進に資する設備投資等の経費が助成の対象となります。
POSレジの設置で在庫管理の効率を上げたり、リフト付き車両を導入して送迎時間の短縮を図ったりすることなどが対象例です。
ただし「一般事業者」と「特例事業者」で対象経費の範囲が異なるので、詳細を確認しておきましょう。
一般事業者の場合
制度の定める特定の要件に合致しない場合は「一般事業者」となります。一般事業者における助成対象の経費は以下が例です。
経費区分 | 具体例 |
---|---|
謝金 | 専門家への謝金 |
旅費 | 専門家や職員の旅費 |
借損料 | 器具機械の借料および損料など |
会議費 | 会議のための会場借料、通信運搬費など |
雑役務費 | 受講料等の費用 |
印刷製本費 | 研修資料やマニュアルの作成費用 |
原材料費 | 資材購入の費用 |
機械装置等購入費 | 機器、設備の購入・製作・改良の費用 ※パソコンやタブレット等の端末と周辺機器、一部の車両の費用を除く |
造作費 | 機械装置据置等の費用 |
人材育成・教育訓練費 | 賃上げに効果的な外部セミナー等の受講費 |
経営コンサルティング経費 | 人員削減や労働条件を伴わない内容のコンサルティング費用 |
委託費 | システム開発や調査に伴う外部への委託費用 |
出典:厚生労働省「中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)交付要領」
ある飲食業者が店内飲食の減少を受け、コンサルティングを利用して業務改善を試みたとしましょう。改善策としてデリバリー販売を拡充するため、受注システムや配送用のバイク、フライヤーなどを導入し、従業員の時給を引き上げました。
この場合、システムやバイク、フライヤーの購入や導入にかかった費用と、コンサルティング費用が助成対象となります。
このような業務改善助成金の活用事例は、厚生労働省が公開している「生産性向上のヒント集」でいくつか確認できます。興味のある方はぜひこちらからチェックしてみてください。
特例事業者の場合
業務改善助成金において、下記2つの要件を満たす事業者は「特例事業者」とみなされ、通常の助成内容に加えて各特例が受けられます。
【要件】特例事業者の条件 | 特例内容 |
---|---|
【賃金要件】
事業場内最低賃金が950円未満の事業者 |
・助成上限の拡大 |
【物価高騰等要件】
申請前3カ月間のうち任意の1カ月の利益率が3%ポイント以上低下した事業者 |
・助成上限の拡大
・対象経費の拡大 |
「物価高騰等要件」を満たす特例事業者については、一般事業者で助成対象となる経費に加え、パソコンや自動車などの費用も以下のように対象となります。
- 定員7人以上または本体価格200万円以下の乗用自動車
- 貨物自動車
- パソコン、スマートフォン、タブレット等の周辺機器
物価高騰等要件を満たした場合は経費の範囲が広がり、事業計画の幅も拡大します。
特例を受ける場合でも、生産性の向上、労働能率の強化を目的とすることが前提です。
令和6年度 業務改善助成金の助成上限額・助成率
令和6年度 業務改善助成金の助成上限額および助成率は下記の通りで、最大で600万円です。上限額は、賃上げの金額(コース)と引き上げる労働者数などによって決まります。
助成上限額
※10人以上の上限額区分は、特例事業者のみ対象 |
|||
---|---|---|---|
コース区分
(引き上げ金額) |
引き上げる労働者数 | 右記以外の事業者 | 事業場規模30人未満の事業者 |
30円コース
(30円以上) |
1人 | 30万円 | 60万円 |
2〜3人 | 50万円 | 90万円 | |
4〜6人 | 70万円 | 100万円 | |
7人以上 | 100万円 | 120万円 | |
10人以上※ | 120万円 | 130万円 | |
45円コース
(45円以上) |
1人 | 45万円 | 80万円 |
2~3人 | 70万円 | 110万円 | |
4~6人 | 100万円 | 140万円 | |
7人以上 | 150万円 | 160万円 | |
10人以上※ | 180万円 | 180万円 | |
60円コース
(60円以上) |
1人 | 60万円 | 110万円 |
2~3人 | 90万円 | 160万円 | |
4~6人 | 150万円 | 190万円 | |
7人以上 | 230万円 | 230万円 | |
10人以上※ | 300万円 | 300万円 | |
90円コース
(90円以上) |
1人 | 90万円 | 170万円 |
2~3人 | 150万円 | 240万円 | |
4~6人 | 270万円 | 290万円 | |
7人以上 | 450万円 | 450万円 | |
10人以上※ | 600万円 | 600万円 |
助成率
※()内は生産性要件を満たした事業場の場合 |
|
---|---|
900円未満 | 9/10 |
900円以上950円未満 | 4/5(9/10) |
950円以上 | 3/4(4/5) |
各出典:厚生労働省「業務改善助成金」
なお、助成率は事業場内最低賃金(引き上げ前)の金額によって決まります。例えば、東京都の令和6年度地域別最低賃金は1,163円なので、必然的に全ての事業者に3/4(4/5)の助成率が適用されます。
引き上げる労働者数のカウント方法
助成額を決める「引き上げる労働者数」として数えられるのは、次の①と②のどちらも満たす労働者です(①はabのどちらか)。
①(abのどちらか) | ② |
---|---|
a:事業場内最低賃金の労働者
b:新事業場内最低賃金の適用により、賃上げ前の賃金がaに追い抜かれる労働者 |
申請コースの金額以上の賃上げをした労働者 |
新事業場内最低賃金とは、最低賃金から引き上げたあとの賃金を指します。すべての労働者に対して新事業場内最低賃金以上への引き上げを行うのが前提ですが、引き上げた人全員を数えられるわけではありません。
以下の具体例をもとに、最低賃金950円の企業が30円コースを申請する場合、労働者4名が引き上げる労働者数にカウントされるかを考えます。
出典:厚生労働省「業務改善助成金について」
この場合、引き上げる労働者数に数えられるのは、元の賃金が新事業場内最低賃金未満、かつ30円以上の賃上げを受ける労働者のAとC、計2名です。
労働者 | 算入可否 | 理由 |
---|---|---|
A | 〇 | 事業場内最低賃金の労働者であり、30円の賃上げを行なっているため |
B | ✕ | 賃上げ額が30円に満たないため |
C | 〇 | 賃上げ前の賃金がAに追い抜かれており、30円の引き上げを行なっているため |
D | ✕ | 賃上げ前に新事業場内最低賃金に達しているため |
この辺りのルールはやや複雑です。引き上げ前後の賃金と引き上げ額の条件をすべて満たしているか、しっかり確認しましょう。
助成金額の計算方法
業務改善助成金では、設備投資等にかかった費用に助成率を乗じた金額と、助成上限額のいずれか低いほうが支給されます。
事業場内最低賃金:900円(助成率4/5)
申請コース:90円
賃上げ人数:8人
設備投資等の費用:600万円
この場合の助成上限額は450万円です。
600万円に助成率4/5を乗じると480万円になります。
450万円 < 480万円なので、この事業所が受けられる助成額は450万円です。
令和6年度 業務改善助成金 申請から支給までの流れ
業務改善助成金の交付申請は、事業所のある都道府県労働局に対して行います。交付申請から支払いまでの手続きフローは下記の通りです。
- 交付申請:都道府県労働局に必要書類を提出
- 事業の実施:賃金の引き上げや設備の導入などの事業を実施
- 事業実績の報告:労働局に報告書類を提出
- 助成金受領:通知書が届き、助成金の振り込みが完了
- 状況報告:事業後の状況報告書類を提出
1. 交付申請
業務改善助成金は、必要な書類を労働局に提出することで申請します。以下の書類を準備しましょう。
名称 | 概要 |
---|---|
交付申請書 | 申請金額や申請コースなどを明記した書類 |
事業実施計画書 | 事業内容を明記した書類 |
購入設備の見積書 | 事業に使う設備の見積書 |
購入設備の相見積書 | 事業に使う設備の相見積書(見積書よりも高い金額のもの) |
賃金台帳 | 対象社員の直近3カ月分 |
その他資料 | 購入設備のパンフレットなど |
交付申請書と事業実施計画書は、業務改善助成金の公式ページからダウンロードできます(いずれも「様式第1号」)。
事業に使う設備の見積書と相見積書も必要です。相見積書は見積書よりも高い金額のものを出し、見積書の正当性を証明します。
審査に通り交付が決定すると通知書が届くので、それから事業をスタートしましょう。
2. 事業の実施
交付決定通知が届いたら、申請していた内容の事業を実施します。
業務改善助成金で取り組むべき事業は、生産性の向上と従業員の賃上げです。いずれも事業完了期限までに済ませなくてはなりません。
特に生産性の向上において設備を購入する際、完了期限までに納入と支払いが済んでいないと、助成の対象外となります。余裕を持って購入しましょう。
3. 事業実績の報告
事業計画に基づいて生産性の向上への取り組みや賃上げを実施したら、実績とともに事業報告をします。
報告には「事業実績報告書」「支給申請書」の提出が必要で、いずれもダウンロード可能です。事業完了日から数えて1カ月を経過する日か、翌年度4月10日のいずれか早い日までに提出します。
4. 助成金受領
実績が審査され、内容が適切であれば助成金の交付額を知らせる通知が届きます。審査は原則20日以内に行われるので目安にしましょう。
通知書が届いてから、決定額が指定口座に入金されます。
5. 状況報告
業務改善助成金を受け取ったあとも、状況報告をしなくてはなりません。支給後に労働者を解雇したり、賃金を引き下げたりしていないかを確認するためです。
状況報告の様式も助成金の公式ページにあるので、ダウンロードして使いましょう。
業務改善助成金の注意点
業務改善助成金に関する注意点は下記の3点です。
- 交付決定前の事業は対象外となる
- 申請期限の前に募集が終わることがある
- 令和5年分から変更になった内容がある
業務改善助成金の助成対象となるのは、交付決定の後に実施される事業のみです。交付決定前だと全て対象外となるので、設備購入や賃上げは交付の決定を待ってから実施してください。
また本助成金は予算の範囲内で運用されるため、交付件数が多ければ早期に募集が打ち切られる可能性があります。
令和5年度に引き続いて申請する場合、令和6年度分の変更点を踏まえておきましょう。主な変更点は生産量要件の関連経費が終了したこと、同一事業場内の申請が年度内1回になったことです(令和6年3月31日までに申請し、令和6年4月1日以降に交付決定を受けた事業者は、令和6年度も申請可能)。
注意点を把握した上で業務改善助成金を申請してください。
まとめ・経営改革のチャンス!業務改善助成金で生産性を上げよう
令和6年度 業務改善助成金は、収益性の向上を目指す中小企業にとってありがたい制度です。助成率が高いため、低コストでツールの導入やコンサルティングを利用できます。
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業務改善助成金は通過率が比較的高く、金額も大きいという特徴があります。
ポイントは、賃金引き上げと生産性のアップです。
経営者の方に考えていただきたいのは、賃金・生産性の2大ポイントが要件の融資や補助金・助成金は「これだけではない」ということです。
政府の方針や他の制度の動向を見ると、明らかに賃金と生産性の話が一貫して出てきます。
そのため、業務改善助成金だけで判断するのではなく、他の制度で使える可能性も含めて賃金と生産性の対策を進めていきましょう。
賃金・生産性は内部的な細かい部分に目がいきがちですが、付加価値の高い商品に集中し、値決めを見直すのも重要です。
強みの見直しとそこへのシフトと、適正なプライシング(妥当な値上げ)が実現のコツになってきます。
ぜひ、この機会に経営上の構造改革にチャレンジし、業務改善助成金を申請してみましょう。
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