合同会社の代表社員とは?権限や給与、手続きを解説します

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代表社員を決めて事業運営をスムーズに


合同会社の代表社員は代表権を持つ社員で、会社の最終意思決定権者でもあります。代表社員を決めておくことは、無用なトラブルを避けるためにも大切です。
代表社員の報酬や人数、肩書きはどうするかなど、代表社員を設置する時には決めることがたくさんあります。
合同会社の設立を検討している場合には、代表社員をどうするかについても考えておいてください。

代表社員の役割やルールについてご紹介します。

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合同会社の代表社員とは


法人はその性質に応じていくつかの形態に分けられます。営利法人であれば、株式会社と合同会社、合資会社、合名会社の4種類です。
株主と呼ばれる出資者から出資を受けてそれを元手に運営する株式会社は、法人の形態の中でもポピュラーなのでイメージしやすいかもしれません。

株式会社に次いで多い合同会社は、出資者がそのまま経営者になる形態です。合名会社と合資会社はそれほど数は多くなく、出資者が無限責任を負う特徴があります。

今回は、株式会社と同じ有限責任の会社でありながら、知られていない部分も多い合同会社について紹介します。
合同会社と株式会社では、定款や出資方法、業務の執行者や代表社員、取締役や役員など様々な違いがあるので、混同しないようにしてください。

代表社員は代表権を行使できる社員

合同会社は、出資者が社員として経営する形態の会社です。つまり、出資者=経営者となる会社を合同会社と呼びます。

合同会社の代表社員は、株式会社でいうところの代表取締役です。社員の代表であり、決定権を持つ人を代表社員といいます。

株式会社は株式を持つ人が出資者となりますが、経営者と出資者は分離しています。
一方で、合同会社は、出資者がすべて社員として、経営の決定権や業務執行権を持つ点が特徴です。
しかし、社員同士で経営判断や会社の方向性で意見が分かれることは珍しくありません。代表社員が存在することで、決定権について混乱を避けることができます。代表社員は、定款や登記簿にも記載されています。

代表社員の役割と権限

代表社員の役割は、会社の経営に関わる意思決定を行うことです。
合同会社には、出資者と経営者の区別がなく、出資者全員が経営に関わり、業務執行権と代表権を持ちます

しかし、すべての社員が意思決定や契約の締結といった法律行為ができる場合、意見が割れたり、混乱をきたしたりすることがあります。
そこで、代表社員が選出されて取引きの最終意思決定や会社の内務業務といった業務を果たすのです。
選出された代表社員は業務執行権と代表権の2つの権限を持ち、ほかの社員は業務執行権を持ちます。
代表社員が持つ実際の権限については、定款で定めることとなります。

合同会社の社員は、どの種類の社員であっても出資額の範囲内でのみ責任を負う有限責任社員です。
会社の負債がどれだけ大きくなっても、代表社員が出資額以上の責任を負うことはありません。
しかし、代表社員としての職務を怠っている場合には合同会社や第三者に対して損害賠償責任を負う場合もあります。

代表社員の義務

代表社員は、義務や守るべき責任も課せられます。
具体的には、以下の4つの責任です。それぞれを解説するのでチェックしてください。

・善管注意義務・忠実義務
代表社員は、会社の代表として意思決定を担う立場です。
そのため、「善良な管理者」として注意深く法令や規則、定款を守って職務に当たらなければいけません。
業務執行社員であっても、同様の責任が発生します。

・報告義務
代表社員と業務執行社員は、社員から要求された時には職務について状況を説明する義務があります。
また、その経過も遅延なく報告しなければいけません。

・競業の禁止
該当する会社の競業になるような行為をする場合には、ほかの社員から承認を受けなければいけません。

・利益相反取引の制限
該当する合同会社以外の第三者のために行う取引きや社員の利益に反するような取引きがある時に制限を受けます。
例えば、利益相反になるような取引きをするには、社員の過半数の賛成が必要になるといったものです。

代表社員の給与

代表社員に支払う給与は、株式会社の役員と同じように役員報酬となります。役員報酬は、事業年度の開始から3カ月以内に決定しなければいけません。
役員報酬の額は、定款で定めるか、毎年開催される定時社員総会で決めます。

役員報酬は事業年度内で毎月定額を支給する定期同額が原則です。原則として、年度内での変更は認められていません。
もしも、想定以上に利益が出て、節税目的で役員報酬を増やしたいと考えても年度内は役員報酬を増やせないこととなっています。

役員報酬は全額を損金として計上可能ですが、途中で増やした分については損金計上が認められなくなります。
また、賞与を支払うことで定期同額給与ではなくなるため、増額分を損金に計上できません。

役員報酬を事業年度内に減額する場合にも注意してください。経営状況が悪化した場合などの条件を満たした時にだけ、減額できます。
役員報酬は一度決定すると金額の変更が難しくなるため、慎重に決めるようにしてください。

代表社員と業務執行社員の違い

合同会社に出資した人は、基本的に社員となって決定権を持ちます。
しかし、出資者の中には出資はするものの経営には携わりたくないと考える人もいます。
こういった場合に、定款に定めることで業務執行の権限を持つ社員と出資だけの社員を分けられます。

業務執行の権限を持つ社員を業務執行社員と呼び、業務執行社員を定めた時にはほかの社員は業務の執行には携わりません。
業務執行社員は、代表社員と同じように人数に定めはありませんが、代表権はありません。

ひとりで会社を運営している場合には、社員であり、業務執行社員兼代表社員となります。
業務執行社員が複数いる場合には、業務執行社員の中から代表社員を選出します。

代表社員と業務執行社員は登記も行う

会社設立時の登記では、代表社員と業務執行社員も記載事項です。それぞれの氏名と住所は登記事項証明書に記載されて公示されます。

代表社員が定められていない場合は、業務執行社員が全員代表社員となるため全員が住所と氏名を登記します。業務執行社員ではない社員は登記は必要ありません。

代表社員の肩書きはどうなる?

代表社員の肩書きや呼び方については、特に会社法などで定められていません。
好きな肩書きを名乗ることができますが、一般的には社長や代表、CEO、代表執行役員が使われています

ただし、代表取締役の呼称は避けたほうが無難です。代表取締役は株式会社の代表者の肩書きなので、株式会社であると誤認されてしまうことがあります。
不要なトラブルや混乱を招いては、信頼を損ねることになるので、代表取締役以外の肩書きを名乗るようにしてください。

合同会社の代表社員を選出しよう


代表社員がいない合同会社は、社員が公平な立場で意思決定できる反面、意見の違いによってトラブルに発展することもよくあります。
会社の成長段階や規模に応じて、中心となる代表社員を選出してください。

代表社員の決め方

代表社員は、出資者である社員の中から選出します。会社法上は、代表社員の選出方法は決められていません。話し合い、多数決、くじ引きなど自由です。
ただし、代表社員は責任が重く、ほかの社員とは立場が違います。社員が納得できる形で慎重に決定してください。

合同会社の代表社員は複数でも選出可能

合同会社の代表社員は、1名でも複数名でも選出できます
代表社員は、会社名と氏名が入った印鑑を代表社印(会社実印)として登録しますが、代表社員が複数いる場合には、代表社印も複数登録できます。

代表社員が複数いることのメリット・デメリット

代表社員を複数名選出すると、代表社員同士が公平に意思決定できます。
それぞれの出資者がノウハウや経営能力が拮抗しているケースや、事業領域、業務区分ごとに代表社員を設けるといったケースもあるかもしれません。
専門分野が違う代表社員を複数設置しておくことで、権限の範囲が明確になり意思決定がスピーディーになります。

また、海外に拠点を設けるケースでは、海外と国内で代表社員を選出するやり方もあります。
契約や調印できる責任者を複数設定しておくことは、事業をスムーズにする目的があります。
複数の代表社員を設置すれば、代表社員が病気になった時やトラブルで不在の時にも事業が滞る心配がありません。

ただし、複数の代表社員を置くことで、対外的に誰が代表であるかわかりにくくなる点はデメリットです。
複数の代表社印が存在することで、お互いが知らない間に契約を締結しているようなケースも起こってしまうかもしれません。
複数の代表社員を置くことにはメリットもデメリットもあるので、両方をよく比較して検討するようにしてください。

合同会社の代表社員は法人にできる?

合同会社の出資者、つまり社員は個人だけではありません。法人を合同会社の代表社員や業務執行社員にすることもできます
そういったケースでは、業務を執行する職務執行者の選出、登記が求められます。
これには、職務執行者を明確にして、責任の所在をはっきりさせて取引先などの第三者を保護する目的があります。

この職務執行者には特別な資格などはいりません。その法人の役員や従業員、第三者を選任することも可能で、複数任命することもできます。
また、この場合の役員報酬は代表社員である法人に支払う方法も、職務執行者に直接支払う方法もどちらも認められています。
法人に支払う場合には所得税の源泉徴収も不要です。

法人が代表社員になる場合には、以下の書類が必要です。

  • 登記事項証明書
  • 職務執行者の選任に関する書面
  • 職務執行者の就任承諾書

職務執行者の選任に関する書面は、代表社員になる法人が株式会社の場合には取締役会議事録か株主総会議事録を用意してください。
代表社員になる法人が合同会社の場合には、社員を選任したことを証明する書面を用意します。

職務執行者を変更する場合には、職務執行者が退任することで空白期間ができないようになっています。
また、新しい職務執行者の就任登記を同時にしなければ、職務執行者の退任が登記できません。

代表社員の変更の手続き

代表社員は、氏名と住所を登記しなければいけません。また、代表社員を変更する時には定められた手続きが必要です。

代表社員が変わるケースには、以下の3つがあります。
1.代表社員と業務執行社員が入れ替わるケース
2.代表社員が退任するケース
3.新しい代表社員が就任するケース

1のケースで必要な手続きは代表社員の変更だけですが、2は代表社員の退任もしくは死亡によって業務執行社員の中から代表社員を選出するケースだと、代表社員の退任と代表社員の変更の2つの手続きが必要です。
3の代表社員が退任、もしくは死亡してから業務執行社員からではなく新たに加入した業務執行社員が代表社員に就任するケースでは、代表社員の退任と代表社員の変更、社員の加入と3つの手続きが必要となります。

代表社員が変更になるプロセスに合わせて、どの手続きが必要か判断してください。
以下では、代表社員を変更する手続きについて紹介します。

STEP1.後任の代表社員を選出

代表社員を変更するには、後任の代表社員を選出することになります。全社員の話し合いと互選の方法があります。
どの方法で後任の代表社員を選出するかは、定款によって定められている方法に従いましょう。

STEP2.定款を変更

定款は会社の憲法とも呼ばれる絶対的なものです。
会社運営にルールや規則を定めたもので、合同会社に限らず法人を立ち上げる際には定款を作成します。
代表社員が変更になった場合や、代表社員の住所変更をする時には定款を変更しなければいけません。
定款を変更する時には、原則総社員で決議して総社員の合意を必要とします

STEP3.法務局で変更登記

代表社員の変更で定款を変更したら、会社の所在地を管轄する法務局で変更登記する必要があります。
原則、定款を変更してから2週間以内に手続きが必要です。

また、手続きの際には変更登記申請書、総社員の同意書または業務執行社員の互選書、定款、代表社員の印鑑証明など書類を用意して登録免許税も支払います。
手続きに不安がある場合には、司法書士のような専門家に依頼することも検討してください。

まとめ

合同会社は私たちがイメージしやすい株式会社とはまったく違う様態の法人です。特に、社員の意味や代表社員の役割は知らない人も多いかもしれません。

代表社員は会社の意思決定や契約を担う重要な役割を果たします。
代表社員に就任したり、変更があったりした場合には、手続きだけでなく取引先などにも挨拶が必要です。

信頼を失わないためにも手続きと対外的な周知を計画的に実施してください。

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(編集:創業手帳編集部)

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