【第2回】「FiNC入社の儀式」バリューランチに迫る 溝口社長独占取材

創業手帳
※このインタビュー内容は2015年11月に行われた取材時点のものです。

FiNC実践!入社したら必ず行う自分史・バリューランチの狙いとは?溝口社長インタビュー

(2015/10/23更新)

トレーナーや栄養士といったダイエットの専門家からモバイルアプリを通じて60日間ヘルスケアのサポートを受けることができる「FiNCダイエット家庭教師」や、プライベートジムの運営、企業の健康課題をトータルで解決する法人向けサービス「ウェルネス経営ソリューション」のほか、遺伝子や血液などの各種検査サービスをも手掛ける株式会社FiNC。

元みずほ銀行常務の乗松文夫氏と元ゴールドマンサックス幹部の小泉泰郎氏が代表取締役副社長を務め、社外取締役に元ナイキジャパン社長の秋元征紘氏、他にガリバーインターナショナルを創業から株式上場へと導いた吉田行宏氏やクックパッドのCFOを務めた成松淳氏、元ミクシィ代表取締役の朝倉祐介氏、元LINE代表取締役の森川亮氏など、スタートアップとしては異例とも言える錚々たるメンバーが経営陣に名を連ねています。

2012年、27歳で起業し、自身が得意とするフィットネス、ヘルスケアの分野で着実に力を付けてきたFiNC代表取締役の溝口勇児氏は、どのようなビジョンを持ってここまで辿り着いたのでしょうか。プロのトレーナーでもあった溝口氏に、起業した経緯や社内でのユニークな取り組みについて話を伺いました。
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溝口 勇児(みぞぐち ゆうじ)
1984年生まれ。FiNC代表取締役社長CEO。高校在学中からトレーナーとして活動。延べ数百人を超えるトップアスリート及び著名人のカラダ作りに携わる。トレーナーとしてのみならず、業界最年少コンサルタントとして、数多の新規事業の立ち上げに携わり、数々の業績不振企業の再建を担う。2012年4月にFiNCを創業。

健康寿命を少しでも長くして、かけがえのない人生をサポートする

ーFiNCの経営ビジョンについて聞かせてください。

溝口:FiNCでは「一生に一度のかけがえのない人生の成功をサポートする」というビジョンを掲げています。例えば、今の日本の高齢者の寿命と健康寿命の差は11年もあります。健康寿命というのは、自分の力だけでは生きられない、つまり人の手を借りないと生きられなくなってしまう年齢のことを言いますが、今日本ではこの不健康寿命が延び続けています。

これは延命技術が進んだということで、それ自体は非難されるものではありませんが、とは言えこの11年の期間というのは本来の自分の人生ではないと僕らは定義しているんですよ。なのでその期間を少しでも短くすることができたら、一生に一度のかけがえのない人生の成功をサポートできると考えています。

同時に、社会にはコンプレックスを抱えながら生きている方や、腰痛、肩凝り、膝痛、偏頭痛といった不定愁訴に悩んでいる方の割合もすごく多い。ここの部分を、僕らが1人1人に合った最適なサポートをするサービスを提供することで解決していきたいと思っています。それができているプレイヤーって世界的に見てもまだ存在していないんですね。

いいトレーナーや栄養士、医師、理学療法士といった素晴らしい人に出会うことができて、そしてそこに結構なお金を払える人はきちんとしたサービスを享受していましたが、ほとんどの人がそうではない。しかし、スマートフォンの普及によって価格を落として時間や場所に制限されることなく、多くの人に提供できるようになったのは我々が初めてだと思っています。

ー現在FiNCでは、遺伝子検査などの科学的根拠をもとに、栄養士やトレーナーなどのダイエットの専門家が1人1人に最適なダイエットを提案する「FiNCダイエット家庭教師」を提供しています。サービス普及のために重要だと思っていること、実践していることを教えてください。

溝口:ユーザーのフィードバックをしっかりもらう仕組みを作ること、そしてそのフィードバックをものすごいスピードでサービスに活かしていくという作業の繰り返しだと思っています。アップデートの繰り返しなので、常に現状否定して新しい価値を付加し続けていないと、サービスは良くなりませんよね。

我々のサービスの場合、お客様のことを第一に考えて、満足してもらえることを愚直にやり続ければ、他のことはすべて後から付いてくると創業時からずっと言ってきました。今はまさにそういう状態になってきたと思います。一生懸命営業しないと売れないものは、どうやってもやっぱり大きくは広がらない。

だから営業には力を入れず、とにかくお客さまが欲しいと言ってもらえるものを作るということを一番こだわってやっています。もちろんビジネスモデルやサービスの中身にもよりますが、ユーザー第一でお客さまのことを見続けていれば他は後から付いてくる。それは頭に入れておいた方がいいと思いますね。

ー溝口さんは物事を実現するために、きちんと数字を提示するそうですね。

溝口:数字、ロジック、ファクト、この3つは重要だと思っています。例えば電気代を削減しなければならない場合、単純に電気代という数字を下げたいのであれば、ロジックとしては電気のオンオフをこまめにやればいいわけですよね。

ただ実際のところ、その部屋の蛍光灯を一日付けっぱなしにしていても10円しか差がないとする。仮に電気代に月間100万円使っていたら、ここのインパクトはたいしたことがないわけですよ。

つまりファクトを満たしていないので、そのロジックは電気代を削減するということに対しては破綻しているんですよね。電気の削減意識を根付かせるという目的であればその行動は正しいですが、電気代を削減するという目的では決して論理は通っていない。

それは数字、ロジック、ファクトの3つを満たしていないからダメですねという話です。なので僕のところに上がってくる案件は、基本的に数字とロジックとファクトのすべてを満たしていないと「意思決定の情報が足りていない」と突き返します(笑)。

人間関係の問題は、事象に対しての捉え方をいかに統一できるか

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ー社内の仕組み作りに関して、何か特別なことは行なっていますか?

溝口:会社の行動規範として掲げている「FiNC SPIRIT」の中に「Family Value -絆-」というものがありますが、FiNC SPIRITを広げていく人間、体現している人間を10人ほど社内からピックアップして、入社したらまずその人間と必ずランチに行く「バリューランチ」という取り組みを行なっています。1対1を5回、グループを3回という感じで食事をして、そこで自分たちの考えや共通言語を話していくという作業をやります。

他に面白いところだと、入社したら全員が自分の今までの経験を生まれたところからすべて包み隠さず書き綴る生い立ち紹介「自分史」という試みもやっています。自分の価値観の源泉を紐解いて事細かく書かせるんです。

FiNC SPIRITの1つに「Compassion -思遣-」というものがありますが、例えばカンボジアやベトナムで盗みを働く子どもたちは、我々の価値観や常識からというと悪い子じゃないですか。でも彼らからするとそれは生きていく術で、当たり前のことなので悪いという感情を持ってやっていない。自分史は、相手の立場にたち考えられる人間を育てるために行なっています。

みんな子どもの頃からのことを書きますから、いじめられていたとか、両親の関係が悪いとか、いろいろ出てくるんですね。そうすると、コミュニケーション能力の低い暗い人をただ単に扱いづらい人だと思うのではなく、彼の過去からするとそういう性格になるのも頷ける、だったら自分から歩み寄ってあげようという風になります。

そういうマインドを持つことが大事で、本当に仕事ができる人は、仲間の立場や上司の立場、部下の立場、マーケットの立場、顧客の立場といった相手の立場に立てて仕事ができる人、言葉を変えられる人だと思うんですよね。自分史を書かせる意図は、仲間との関係性を良くするということと、そういったことを我々は大切にしているということを発信する意味でやっています。

僕はこれまで自分より上の人たちと関わることが多くて、仕事を行なう上では、物事の原理原則や普遍性を見つけるための行動が大切だと教わってきました。そうすると応用が利くと。

人間関係の問題は、事象に対しての捉え方をいかに合わせられるか、互いに理解できるかなんですよね。そこをある程度合わせていく作業はどうすれば実現できるのかを考えた時に、バリューランチや自分史のアイディアが思い浮かびました。

ー先ほど受付で何人かの社員の方たちとすれ違いましたが、元気の良い方が多いですよね。溝口さんから見てFiNCの社風はいかがですか?

溝口:ひと言で言えば、夢じゃなくて志に生きている人間が多いと思うんですよね。夢と志を僕らの定義で言うと、夢は自分のため、志は人のため。つまり誰かのために尽くしたいという感情を持ち、自分の夢や成長したいこと、こういう人間になりたいという思いを重ねる。そういう気持ちのいい人間が多いですね。

別の言い方で言うと、ものすごく向上心が高くて素直で明るい人間が多い。メンバーには本当に恵まれていると思っていて、手前味噌ですけどいい会社だなと思うことは多いですね。

これは何が良かったのかというと運ですよね。謙遜ではなく。タバコやお酒を辞めろという人はたくさんいますが、運動するなという人はいませんし、自分の健康に気を付けるなという人はいませんよね。たまたま僕は、誰もが否定しない100%善である事業をやっていて、しかも17歳ぐらいからそれしかやっていない。

そして自分が起業したタイミングで運良くこの領域が注目されるようになってきて、グロースしていくタイミングでお金も人もプロダクトもあった。そうなればすべてが好循環になりますよね。これは謙遜ではなくて本当に運で、敢えて言うなら日頃の行いが良かったということぐらいしか心当たりがありません(笑)。

最終的なゴールは選択の質で決まる

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ー今後は国内に限らず、グローバル展開も視野に入れていますか?

溝口:海外に関しては、進出する気は多いにあります。まずは国内で基盤を作り、その基盤をもとに2016年には海外でもまずはアジアに出て行く。これから国内で伸びる産業は観光と環境と健康ですが、その中で世界で闘えるものは健康だと考えています。

世界における日本の健康や長寿のブランド力はものすごいですからね。今我々はモバイルヘルスの領域で闘っていて、現在世界で5、6000億ある市場は3年で3兆弱になると見ています。僕らは国内のモバイルヘルスにおいては確実に進んでいるので、絶対にやらなければいけないという使命がある。なので、そういう気概のある人材を集めています。

ー最後に起業家に向けてメッセージをお願いします。

溝口:成功するかしないかというのは、覚悟とビジョンだと思うんです。すべての犠牲を払ってでもやるという覚悟を持っているか、ビジョンに対してどれだけ本気か。あとはもう、ゴールに向かう正しい選択をし続けられるかどうかで、成功か否かは決まりますよね。2つの分かれ道を提示された時、10回選択すると1,026通りの未来がある。でも覚悟を持ってビジョンを掲げていれば、それほど選択って迷わないんですよね。

FiNCでは最近トップマネジメント層の採用をたくさん行なっていますが、中には私よりもスキルやキャリアを積んでいて一筋縄ではYESと言ってくれない人間もいます。個人商店でやっていくならそういう人はいない方がいいかもしれないけど、ある到達地点に行くためにその人が必要なのかを問うたら、いるという選択肢しかない。

そうすると、その人がいることによって自分が自由じゃなくなるという気持ちはどうだってよくなるんです。そんなことよりもビジョンに近づくのかと自分に問いかけます。ゴールから逆算したらそれほど迷うことではなくて、難しい決断なんてないんですよ。最終的なゴールは、選択の質で決まると思っています。
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(編集:創業手帳編集部)

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