小僧com 平松 庚三|創業時に人材を集める3つの掟。

創業手帳
※このインタビュー内容は2014年05月に行われた取材時点のものです。

【平松庚三氏インタビュー】人材を集める3つのポイントと自分をマーケティングして高めていくための5つのステップとは?

まだ記憶に新しい「ライブドア事件」- 2006年1月23日、証券取引法違反の疑いで堀江貴文氏以下4名が逮捕された。堀江氏が逮捕された後、ライブドアの社長に就任したのが平松庚三氏だ。強制捜査が行われた後の社内は、テロで爆撃された跡のように何もなかったという。書類、サーバーなど、あらゆるデータがない。呆然とするところから、平松氏の「再建」が始まった。

平松氏はよく「再建請負人」と称される。IDGコミュニケーションズ、AOLジャパン、インテュイットなど低迷した外資系企業の日本法人を、その手腕と強いハートで救ってきた。

平松庚三氏インタビュー|プロフィール

平松庚三(ひらまつ こうぞう)
1946年生まれ。アメリカン大学(Washington,D.C.)コミュニケーション学科卒業。ソニー株式会社入社。ソニーで13年間勤務した後、アメリカンエキスプレス副社長、 IDGコミュニケーションズ社長、AOLジャパン社長などを歴任。2000年にIntuitジャパンのCEOに就任。2002年にMBOにて米国親会社から独立、社名を弥生株式会社に変更、同社の代表取締役社長に就任。2004年全株式を売却してライブドアグループ入り。 2006年1月(株)ライブドア社長就任。 2007年4月社名をライブドアホールディングスに変更、代表取締役社長就任。2008年1月に人生の後半戦を楽しむ「人生のエンターテインメントパートナー」としてアクティブなシニアを応援する小僧com株式会社代表取締役会長に就任。

社長になって、まずやること

平松:ボクは「雇われ請負人」として4つの会社の再建をしてきました。なので「社長になったら、最初にどんなことをすればいいか」というマニュアルが頭の中にだいたいできあがっています。その一つが「人材の発掘または調達」です。

人材の発掘は、創業した人にとってとても大切でしょう。ボクが自分で直属の部下を雇うときは、次の3つのクライテリア(条件)を自分に設けてきました。第一に、その分野(経理、財務、営業、マーケティングといった部門)で自分より優れているか。第二に、必要なときにボクに対して「ノー」といえるか。第三に、友人は会社に入れないことです。この条件を適応するのは社員全員でなくてもよいので、コアとなるメンバーには適用するとよいと思います。創業者なら第三は考えなくてもよいかもしれません。

特に2番目は大事でしょう。必要なときに自分に対して「ノー」といえる人の存在は大切です。社長になると、自分を止めてくれる人はあまりいませんから。ボクの場合、ライブドアの時は、松下電工から来たMという男がその一人でした。

ライブドア事件後、CFOを雇うときにその人を呼んだのですが、やはりあの事件の後のCFOなので大事なポジションなわけです。そこでボクが彼を呼んだ理由は、やはり「ノー」といえることでした。

彼は「ノーの言い方」も上手かったんですよ。「殿、またご慢心を」などといってくる。親父ギャグばかりいう人でした。酒を一滴も飲まないが、煙草はばかばか吸う。そのような点で自分とは全く合わなかったのですが、仕事は凄くできる人でした。
平松庚三氏インタビュー|社長になって、まずやること

平松庚三流「人を集める3つの掟」

  • その分野(経理、財務、営業、マーケティングといった部門)で、自分より優れているか。
  • 必要なときにボクに対して「ノー」といえるか
  • 友人は会社に入れない

 

マーケティング ユア セルフ

平松「もう一つ大事なことは、“Marketing Yourself”−−つまり自分をマーケティングすることです。これはSONYに13年いた後に言っていることなのですが「自分自身がプロダクトだ」という考え方です。ここでよく勘違いが起きるのですが、マーケティングとは「自分を売り込むこと」ではありません。「自分の価値をつくること」がマーケティングです。

方法としては、まず、自分というプロダクトがいま社会のなかのどこに位置しているのかを考えます。このとき、自分=プロダクトと考えると、現状とは別に「どういう人(市場)にどんな価値を発揮したいか」という目的が浮かびますよね。そうしたら次の5つのステップを実行します。

「O・S・A・E・A」と呼んでいるのですが、①Objective:目標の設定、②Strategy:戦略の構築、③Action Plan:行動計画の立案、④Execution:実行、⑤Assessment:評価測定、です。仕事をするときは、自分が今これらの座標軸のどこにいて、何をやっており、何が計画通りいっていて、何が足らないのかといったことなどをチェックするようにしています。
平松庚三氏インタビュー|マーケティング ユア セルフ

平松庚三流「自分を変える5つのステップ『O・S・A・E・A』」

  1. Objective 目標の設定
  2. Strategy 戦略の構築
  3. Action Plan 行動計画の立案
  4. Execution 実行
  5. Assessment 評価測定

ボクはこれまでいくつかの転職をしてきました。しかしこのことを常に考えてきたので、常に自分の価値が高まるように辞められたと思っています。「嫌だから」という理由で辞めたことはありません。

SONYを辞めたときも、次の仕事はアメリカンエクスプレスのディレクターとして入り、副社長になりましたし、その後はIDGコミュニケーションズの社長、それからAOLジャパン、IntuitジャパンのCEOと続きました。

−自分をマーケティングするということは、5つのステップを通して「自分自身を変える」ことが必要ですよね。これは結構難しいと思うのですが、どうすればよいのでしょう?

平松:変化するのは難しくないのですが「自分に変化するのが必要だなと認識すること」が難しいのだと思います。そういう時にはやはり「外部の資源を利用する」とよいと思う。僕のところでもよく来ますが、自分のメンターのような存在の人に相談することですね。

このとき、相談するスタンスも注意が必要です。例えばあなたが「A」という選択肢と「B」という選択肢で迷っていたとしても、「AとBどちらがよいでしょう?」と聞かないことですね。「こういう理由ではAがよいけれど、こういう理由ではBがよい。」などとロジカルに説明できる状態で、相談するとよいです。

その上で、跳ね返ってくる相手のリアクションをみます。そうして判断していくと良いと思います。もちろん最後は自分で決断すること。人任せに自分の決断をするようではいけませんね。

社長なら辛くても“明るいふり”を

−数々のご経験があると思いますが、最後にその中で最も創業者に伝えたいことを教えていただけますか。

平松:そうですね。一つ言うのであれば、(ソニー創業者の)盛田昭夫さんの「ネアカ主義」かな。これだけは、ライブドア時代一番役に立ちました。創業者のみなさんならこれから感じると思いますが、会社をやっていると、常に楽しいだけじゃない。辛いこともたくさんあるわけですよ。

平松氏いわく、盛田氏はよくこういっていたという。「経営者は、ネアカでないといけない。企業のトップに立つ者は、たとえどんなに辛く苦しい局面に立たされようと、部下の前では絶対に暗く沈んだ顔をしてはいけない。明るいふりをしなさい。上に立つ者が暗い顔をしていると、社員に伝染し、会社全体が暗い雰囲気に包まれてしまう。」

平松:辛いときはネアカのふりをすること。ネアカのふりをして、周りと自分もだますと良いです。そうすると、いつのまにか自分も明るくなってきますから。

人材を発掘すること、自分自身をマーケティングして変えることももちろん大切だ。これらのことが創業時の命運を左右する。しかし「創業」というのは、どんなに戦略的に行っても辛い時期が待っている。そんなとき社長に問われるのは、「辛くても、社員の前で笑っていられるか」という、単純だが忘れがちな「繕い」なのかもしれない。平松氏の還暦を超えた笑顔から、数々の修羅場を越えてきたことがひしひしと感じられた。
平松庚三氏インタビュー|社長なら辛くても“明るいふり”を

(インタビュー・編集 田中 嘉)

ココ重要!
  • 社長になったらまず最初にやるべきなのは人材を揃えることだ。
  • 人材を揃えるときのポイント:①経理、財務、営業、マーケティングといった専門分野で自分より優れている人を選ぶ、②必要なときに社長に対して「ノー」といえる人を選ぶ、③友人は会社に入れない
  • 社長になると、自分を止めてくれる人はあまりいないので、「必要なときに社長に対して『ノー』といえる人を選ぶ」ことが特に重要。
  • 社長は、自分の価値をつくること、すなわちマーケテング ユアセルフ(Marketing Yourself)によって、継続的に自分を変えていくことが大切だ。
  • 自分が変化する必要性を自己認識することは難しいので、メンターのような存在の人に相談するのも有効だ。ただし、ロジカルに状況を説明できるように整理してから相談し、最後は自分で決断しなければならない。
  • 社長は、ネアカで周囲だけでなく自分も騙すつもりで明るい雰囲気づくりを。

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