えらいてんちょう 矢内 東紀|Chat(チャット)GPTの効果的な使い方!一体何がすごいのか

創業手帳
※このインタビュー内容は2023年06月に行われた取材時点のものです。

ChatGPTを使うということは、ライター、エンジニア、デザイナーを安価に大量に雇っているのと同じ


ChatGPTの使い方について、さまざまなメディアやSNSでいろいろな意見が出てきていますが、それでも「まだどう使えば良いのか、いまいちわからない」という方も多いのではないでしょうか。

インフルエンサー・連続起業家であり、5万部を超えるヒット作ベストセラー『しょぼい起業で生きていく』の著者でもあるえらいてんちょう氏(通称:えらてん)が、5月29日に新しい著作『ChatGPTの衝撃 AIが教えるAIの使い方』(実業之日本社)をリリースされました。実はこの著作、人力をほとんど使わず、全編ChatGPTで書いたというので、驚きです。

同氏は「ChatGPTの衝撃がすごすぎて」早速、23年5月にChatGPTに関わる事業を営むブレインウェーブコンサルティング株式会社、プロンプトテックスターズ株式会社の2社を創業したそうです。

起業の達人でもあり、ChatGPTの使い方を日夜研究しているえらいてんちょう氏に、ChatGPTの使い方や可能性、起業アイデアの生み方などについて聞きました。

矢内 東紀(やうち はるき)
1990年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。経営者、著作家、投資家。23年5月にChatGPTを活用したブレインウェーブコンサルティング株式会社、プロンプトテックスターズ株式会社の2社を創業し、代表取締役社長に就任。また、客が日替わりで店長を務めるイベントバー「エデン」の創立者であり現・会長でもある。SNSでは「えらいてんちょう」通称「えらてん」の名前で親しまれており、総フォロワー数は15万人を超える。著書に『しょぼい起業で生きていく』(イースト・プレス)、『ビジネスで勝つネットゲリラ戦術詳説』(KKベストセラーズ)など多数。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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ChatGPTでまとめライター、クイズ作問者は不要となる


大久保:『ChatGPTの衝撃』は全編ChatGPTで書かれたということですが、どのように執筆されたのでしょうか。

えらてんまず「目次を作ってください」と命令して、目次を先に作らせました。その後、それぞれの目次について「詳細を教えてください」といって、全編執筆させました。

大久保:なるほど。そのように順序立てて執筆すれば良いのですね。

えらてん:はい、20くらいの目次を作らせて、後は詳細を語らせるだけだったので、そこまで手間はかかりませんでした。

大久保:実際に、どれくらいの時間で執筆できたのでしょうか。

えらてん本の骨格部分については4時間くらいで完成できました。

大久保:それはすごいですね。

えらてん:そこからは人が見て削ったり修正したりする作業が発生しましたが、それでも大した時間はかかりませんでした。1日あれば執筆できます。

大久保:使ったモデルはGPT-4ですか。

えらてん: GPT-4ですね。

大久保:そうなってくると、『ChatGPTの衝撃』のようなビジネス書を書く際には、ライターは不要になりますね。

えらてん:はい。語られたことを文字起こしして、それをまとめるといった作業しかしないようなライターは要らなくなるんじゃないでしょうか。ビジネス書執筆は、ChatGPTで十分だと思います。

大久保:えらてんさんはChatGPT関連の事業を手がける会社を2社創業されたということですが、その具体的なきっかけは何だったのでしょうか。

えらてん私はクイズバーを経営しているのですが、クイズの作問がChatGPTを用いてとても簡単にできてしまうことがわかり、衝撃を受けました。ChatGPTを使えば、実用に耐えられるクイズがかなり安く作問できることがわかったのです。

その衝撃から、ブレインウェーブコンサルティング株式会社、プロンプトテックスターズ株式会社の2社を創業し、さらに『ChatGPTの衝撃』を一気に書き上げてしまいました。

ChatGPT関連の事業を展開する2社の事業概要


大久保:今回創業された2社の事業概要についてお聞かせください。

えらてん:まだそこまで決まっているわけではないのですが、ブレインウェーブコンサルティング株式会社の方では先日、「AIマッハ履歴書」というサービスをリリースしました。「志望動機」「志望企業・応募求人の概要」「応募職種」「自分の強み」「これまでに経験した仕事やスポーツ、それらを通して得た能力」などを入力すると、就職活動で使える自己PRをChatGPTが300文字以内で作成してくれるサービスです。

他にもChatGPTを使ったコンサルティングサービスや、うつ病患者のふりをするAIのサービスなどを作ろうと考えています。

大久保:うつ病患者のふりをするAIのサービスとは面白いですね。どのように使うのでしょうか。

えらてん:例えば友達がうつ病になってしまったときにどのように対応すれば良いのか、AIを使って練習できますよね。そんな風に使ってもらえないかなと思っています。

ただ、ChatGPTは割とポジティブ思考なので、うつ病患者のようにネガティブなことをなかなか言ってくれず、苦戦しています。

大久保:なるほど。もう一社、プロンプトテックスターズ社の事業についてお聞かせください。

えらてん: 実店舗にChatGPTやStable DiffusionなどのAIサービスを熟知しているスタッフを置いて、来店者がAIサービス利用するサポートをするサービスです。ChatGPTが使いたくても、使い方がわからないという方は多いと思うので、そうした方に来店してもらえれば良いかなと考えています。

大久保:面白い発想ですね。ちなみに、AIを使ったサービスを作るのに必要なエンジニアのレベルはどの程度のものでしょうか。

えらてんAPIを呼び出せるレベルであれば全然問題ないです。エンジニア初心者でも問題ないと思います。

ChatGPTでライターやエンジニアを多数抱えられるようになった


大久保:ChatGPTの活用法で、効果的なものには他にどのようなものがあるでしょうか。

えらてん『ChatGPTの衝撃』の中でもいろいろと紹介していますが、例えば、コールセンターや不動産営業のトークスクリプトを作成することや、契約書作成などに効果的かなと思っています。

創業手帳さんの業務であれば、ライターやエンジニア、デザイナーの業務などはもしかすると一部ChatGPTで代替できるかもしれませんね。

大久保:なるほど。

えらてんよく「ChatGPTで仕事がなくなる」と恐れる人がいますが、逆に「ChatGPTがあることで、低コストで一定レベルの仕事ができるライターやエンジニア、デザイナーをたくさん使えるようになった」と考えて、その前提の上で新たな付加価値を作るために活動していく方が生産的です。

ChatGPTは生産効率が高いのがメリットなので、とにかくヒットが出るまで高速にたくさんのコンテンツを作り続けるなど、いろいろな使い方があると思います。

大久保:ChatGPTが苦手なことは何でしょうか。

えらてん小説を書くなど、創作することはできますが、やっぱり苦手だなと感じますね。面白い文章はまだ書けないです。

なぜ、次々と起業アイデアを思いつけるのか?


大久保:えらてんさんは、イベントバー「エデン」や、クイズバー「スアール」など、多くの事業を起業し、成功に導かれてきました。どのように事業を思いつくのでしょうか。

えらてん: イベントバー「エデン」では、バーテンが1日ごとに入れ替わりでイベントをしているのですが、その中で「クイズバー」というイベントをやってもらったところ、すごく盛り上がったので、「じゃあ独立してクイズバーを作ってみたらどうか」と着想しました。最近始めた学問バーも、もともとは大学院生がやっていた1日イベントから着想しました。

それ以前にもリサイクルショップや学習塾を起業しましたが、まったくのゼロから起業したことはあまりないですね。

大久保:それこそ、起業したい人は「エデン」でイベントをしてみると良いかもしれませんね。

えらてん:そうですね。エデンは誰でもイベントが開催できるので、「起業したいバー」みたいなイベントをやればアイデアもお金も集まるかもしれません。

大久保:えらてんさんは最初、リサイクルショップの起業から始められたんですよね。

えらてん:はい。場所代50万円だけでスモールスタートしました。リサイクルショップは仕入れにお金が要らず、もらったものを売れば良いので、スタート時にお金がかかりません。自分1人食べられるくらいの売上は結構すぐ作れると思いますよ。軽トラックで街中回ってゴミを回収して、その中から売れそうなものを売るだけです。お金がない人は、リサイクルショップから起業してみても良いですね。

大久保:えらてんさんの周りには起業家のお知り合いも多いようですが、最近注目されている取り組みなどあればお聞かせください。

えらてん:兵庫県川西市で私の盟友の久木田さんという方がカレー屋を経営されているのですが、彼がそこでシェアハウスを作って全国から「しょぼい起業家」を移り住ませ、それぞれ川西市で店を開業させています。

川西市の観光は、彼らの事業活動によってこれからどんどん盛り上がっていくはずです。みんなで小さな起業家コミュニティを作っていて、すごく面白いです。

大久保:地方だとコストもかからないですしね。

えらてん:東京だとやっぱり家賃が高いので、付加価値が高くないと生き残れないですが、地方都市は家賃が安いので、飲食店のような業態で生き残れる確率はやっぱり上がりますよね。単純に、利益に対してコストが安ければ儲かりますので。

大久保:しょぼい起業をするには、地方の方がおすすめということですか。

えらてん: 単純にそういうわけでもありません。ただ、私と久木田さんで最近話したのは、「東京では減らないものを売らないといけない」ということです。例えば、YouTube動画はいくら観られても減らないじゃないですか。創業手帳さんの記事もそうです。書籍もそうですよね。東京で大資本と勝負するなら、そのような減らないものを売って、高付加価値で勝負できる業態でやるべきかなと思います。飲食店は作ったものがすぐ食べられて減ってしまうので。

起業して失敗しても、問題ない


大久保:時代の変化が目まぐるしいですよね。今回のChatGPTの登場で、スタートアップが置かれた状況も、戦略も、だいぶ変わってくるかと思います。

えらてん:根本的な条件が変わってしまいましたよね。ChatGPTにどう命令するか、という時代になってしまったので。

最近読んだ本で、「なるほどそうだな」と思ったんですが、高度産業の良いところは、需要に応じてすぐに生産するものを変えられるところだ、ということです。ChatGPTが当たり前の社会になると、これまでよりさらに、需要に応じて提供する商品・サービスを柔軟に変更していける組織づくりが重要になっていくのではないでしょうか。

大久保:なるほど、そうですね。最後に、これから起業したい人にメッセージをお願いします。

えらてん:正直に言って、起業はあまりおすすめしません。私は朝起きられず、サラリーマンができないと思って起業したタイプなので、偉そうなことは言えないのですが、起業して失敗しても、マイナスにはならない、ということは言えますね。最近だと起業して失敗したことをキャリアとして評価してくれる会社もあるみたいなので、起業したければしてみるのもありかなと思います。世の中に何らかの価値を提供できれば儲かるはずです。

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大久保写真創業手帳 創業者・大久保の解説「えらいてんちょうはなぜえらいのか?」

起業家=凄いというイメージはつきものです。

実際、凄い面もありますが、ゆるっと始まって大成功した会社もあり、そもそも上場したり大きな成功だけが起業の目的ではありません。
また事業によっては市場が狭かったりすると、大きく投資すると失敗ですが、小さくやれば成功というパターンも存在します。

スタートアップで投資を受ける場合、自動的にスケールとエグジットが求められるので起業=「凄い起業」にならざるを得ない、言わざるを得ない面があり、そういった会社ばかりメディアに取り上げられがちです。精一杯背伸びして走り続けるやり方だと表現できるでしょう。

こういった起業も確かに必要で、凄いことです。しかし起業はもうちょっと幅広いスタイルがあり、その事がより広く知られても良いでしょう。

えらいてんちょう・矢内さんは、身の丈にあった今の感覚にあった起業を実践しています。
身の丈に合ったサービスを提供してニーズを掴みながら、拡張していくやり方です。
無理もないので、実は大きな成功ではないものの、大外しはしていません。

えらいてんちょうの考え方は、スーパースターのホームランバッターではなく「とりあえずフォアボールでもなんでもいいので塁に出る」というようなやり方といえます。
実はそういったやり方のほうが現実的であり、上手くいく確率も高いのです。

えらいてんちょうが偉いのは、凄い起業ばかりが起業じゃないということで、より多くの「普通の人」に起業という選択肢があるよ、という事を気付かせてくれていることでしょう。

自分で「しょぼい起業」と言い切れるのは、実は自信がないと言えないことではないでしょうか。
そして普通の人でもできる起業だからこそ、多くの人に役立つものです。
だから「えらいてんちょうは偉い」と思った取材でした。

創業手帳では現実的な起業や開業のやり方も紹介していますので、えらいてんちょうのしょぼい起業の本と合わせて読んでみてくださいね。

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(取材協力: えらいてんちょう 矢内 東紀
(編集: 創業手帳編集部)



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