電通流!事業の本質を言語化する”右脳型経営術”とは
電通の未来創造グループ プロデューサー山口氏 インタビュー(1/2)
(2016/07/20更新)
株式会社電通の「未来創造グループ」は、広告代理店として培ったノウハウを活かし、大企業からベンチャー企業まで、様々な経営者を支援しています。単に広告のアイデアを提供するだけでなく、人材採用、育成、商品開発、新規事業など解決する問題点の幅が広いのが特徴。「右脳型経営コンサル」として、広告代理店とも、経営コンサルタントとも違う独自の解決手法を提案しています。
今回は、事業の本質を掘り下げるプロセスや、ベンチャー支援の裏側について、未来創造グループ プロデューサー・山口直樹氏にお話を伺いました。
経営者の「右脳」になる
山口:未来創造グループは、経営者のもう一つの「右脳」としてアイデアを提供し、企業活動を活性化させるために2010年4月に発足した組織です。
広告代理店としての企業支援ではなく、人材の採用や教育、商品開発、店舗開発といったありとあらゆる経営の周りにあるものを、広告で培ったアイデア・発想で解決するというチームです。ですから、イノベーションを求める大企業だけではなく、ベンチャー企業のお手伝いもしています。
大きな会社になるほど、経営者は意外と孤独な場合が多いです。そこで、経営者のもう一つの「右脳」として、アイデアを提供し、判断の幅を増やしてあげられるというようなポジションをとっています。社員証までいただいて、社員と同じような立ち位置で取り組んでいる場合もあります。
アイデアには、大きい小さいは無いので、ベンチャー企業や未来がある会社とでも、新しい報酬体型にチャレンジすることを通して、パートナーとしてご一緒できるのです。
事業の本質を言語化し、事業領域を拡大する
山口:代表的なひとつの事例になっているのは新潟県三条市のアウトドアメーカーのスノーピークです。
私たちは、企業さまと、ご一緒するにあたって、まずは、ブランド本質を掘り下げていきます。その話し合いをする中で、印象的な言葉がありました。
スノーピークとしては、キャンプ事業をより拡大しながら、新しい取り組みにチャレンジしようとしていくタイミングでした。山井社長と、話を進めていくと、「キャンプをすることによって子どもは普通になる」という発言をされたのです。
つまり、キャンプを通して、子供が子供らしく普通に生きる力が身に着くんだと。この発言を一緒に本質的に掘り下げて、「私たちがやっているのはキャンプ事業だけではなくて、人間回帰事業なんだ」という点にたどり着きました。
経営者と話していく中で、その企業の核を見つけ、言語化する。そうやって事業領域が定まると、今まで思いつかなかったアイデアが次々と生まれます。
例えばディベロッパーと組んで、マンションを一緒にコラボレーションしてみたりとか、飲食業界に進出し、アウトドア料理をやってみたりとか。
「キャンプ事業」だけにとどまらず、事業の本質に沿って新たなアイデアを生み出し、新しい領域でも、大きな成果をだしています。
もちろん、私たちとの取組みの成果以上の、経営陣や社員のみなさんの推進力で、スノーピークは成長を加速し、2014年には、マザーズに上場、翌年2015年12月には東証一部に市場変更しました。
経営コンサルでも、広告代理店でもない
山口:そうです。スノーピークは特に分かりやすくて、未来創造グループがヒューマンリソースを提供しますという形。スノーピークの中に未来創造室っていうセクションを作っていただき、そこの室長が電通未来創造グループ代表の国見。私もその室員という位置づけです。
私たちは、通常の経営コンサルと違って、知識を一気詰め込むやり方はほとんどしません。企業の課題や、プロジェクトの本質をとらえ、「これやった方がよりいいんじゃないか」と提案するやり方を取ることもあれば、企業のみなさまから意見をもらい、相互のやり取りで一緒に考える進め方をしたり、知恵を絞りながら、様々な方法でプロジェクトを進めています。
山口:はい、そういうふうに私たちは考えています。
たとえ話になりますが、経営コンサルは病気の人を普通の状態に戻すのが得意ですが、私たちは普通の人をもっとこうしたらかっこよくなりませんか、あなたダンスが踊れるのではないですか、と新しいことを提案する存在です。ゼロをプラスにするアイデアに気づけるかという点が違うのではないかと考えてます。
広告を創るノウハウを経営に活かす
山口:そうです。未来創造グループは、もともと戦略プランナーだったリーダー(国見)の構想から始まったのですが、最初は、広告担当営業の私と、コピーライターと、戦略プランナーの4人を中心として6年ほど前に生まれました。
これまでは、広告の業務は、社内でそれぞれの役割で分業だったのですが、私たちは営業・プランナー・クリエイティブが同じ組織のなかで、一緒になって取り組むというチームです。電通の中の、小さなベンチャーみたいな存在でした。
山口:そうです。走りながら考えていて、それが少しづつ上手く行き出して、今は大きくなって、40人ぐらいの規模になりました。去年、おととしの電通の採用のコンセプトも作っています。未来創造グループも、以前よりもだいぶメジャーになってきました。僕らのやり方が、間違いではなかったと思えるようになってきました。
私は、プロデューサーという立場で、未来創造グループのアイデアをどういう企業にぶつけたら、日本が良くなるのかということを考えています。時には、未来創造グループだけではできないこともあります。そんな時は、ある企業と一体となることで、大きなことを成し得ることができるチームです。
(取材協力:電通 未来創造グループ/山口直樹)
(編集:創業手帳編集部)