【2024年最新】中小企業向けの賃上げ促進税制とは?仕組みや適用条件などをわかりやすく解説!

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2024年4月から賃上げ促進税制が強化される!


賃上げ促進税制は、賃上げや人材育成などの投資を積極的に行う中小企業が税額控除を受けられる制度です。
要件を満たしている中小企業は2024年4月の強化で最大45%の税額控除を受けられるため、税金の負担を抑えつつ従業員の賃金をアップできます。
人材の定着や能力アップにも役立つ制度なので、前向きに検討している企業の経営者や人事担当者もいるかもしれません。

今回は、賃上げ促進税制の概要や適用対象、適用要件、活用するメリット、注意点について解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。

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中小企業向けの賃上げ促進税制とは?概要について


中小企業向けの賃上げ促進税制は、所得拡大促進税制から改正された制度です。要件の簡素化や控除率の引き上げといった内容の拡充が行われています。
まずは、賃上げ促進税制の概要から解説していきます。

制度の概要

賃上げ促進税制は、青色申告書を提出している中小企業などが、前年度の給与など(俸給・給料・賃金・歳費・賞与)を増加させた場合、増加額の一部を法人税から税額控除できるという制度です。
個人事業主の場合は、所得税から控除されます。

給与などの支給額を増やすと増加額の最大30%を税額控除でき、教育訓練費の増加で上乗せできる要件を満たした場合に控除できる税額は最大40%です。
この制度を活用することで、給与アップや教育訓練の拡充にかかる負担を軽減できます。

適用期間

制度は2022年4月1日から始まっていて、2022年4月1日~2024年3月31日までに開始する事業年度が対象となっています。
個人事業主に関しては、2023年度と2024年度が対象です。

制度の申請方法・書類

賃上げ促進税制を利用する際、税務申告する以前の届け出は必要ありません。
しかし、適用を受けるためには法人税(個人事業主の場合は所得税)の申告の行う時に、確定申告書などに適用額明細書や税額控除の対象となる控除対象雇用者給与などの支給増加額、控除を受ける金額と、その金額の計算に関連する明細を記載した書類を添付しなければいけません。
また、教育訓練費増加要件の上乗せを利用する場合は、「教育訓練等の実施時期、教育訓練などの実施内容と実施期間、教育訓練などの受講者、教育訓練費の支払証明を記載した書類」を作成し、保存する必要があります。
この書類に関しては、添付不要です。

このように必要な書類があるので、制度を活用しようと考えているのであれば、忘れずに準備してください。

2024年4月の税制改正による変更点

賃上げ促進税制は、2024年4月の税制改正で強化されます。2022年に改正された現行制度と比較し、どのような変更があるのか確認してください。
2024年4月1日から2027年3月31日までに開始する事業年度において、中小企業は全従業員の給与など支給額の増加した場合、最大45%の税額控除を受けられます。
個人事業主の場合は、2025年から2027年までの各事業年度が対象となります。

上乗せ要件である教育訓練費を満たすと控除率は前年度比+5%です。さらに、乗せ要件に子育てとの両立・女性活躍支援が追加されました。
子育てサポート企業の認定を受けた証である「くるみん」以上または女性活躍推進事業主を示す「えるぼし二段階目以上」の中小企業は、税額控除率がさらに5%上乗せされます。

【中小企業向け】賃上げ促進税制の適用対象


賃上げ促進税制を活用できるのは、適用対象の企業です。適用対象になるのは、以下の要件を満たす企業です。

資本金または出資額、従業員数が一定以下の法人

1つ目の要件は、資本金または出資額、従業員数が一定以下の法人です。対象となる中小企業は、以下のとおりです。

  • 資本金もしくは出資金の金額が1億円以下
  • 資本もしくは出資のない法人で、常時使用の従業員数が1,000人以下

ただし、出資金か資本金が1億円以下でも、以下に該当する場合は対象外となります。

  • 同一の大規模法人から2分の1以上の出資を受けている
  • 2つ以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受けている

賃上げ促進税制の適用となる事業年度が終了する時点で要件を満たしていない場合は、対象と認められないので注意が必要です。

常時使用している従業員の数が1,000人以下の個人事業主

2つ目の要件は、常時使用している従業員の数が1,000人以下の個人事業主です。
青色申告書を提出している個人事業主の場合に満たすべき要件です。従業員数が1,000人を超えていれば、たとえ個人事業主であっても賃上げ促進税制の適用はできません。
白色申告の場合も対象外となります。また、賃上げ促進税制を適用する都市の12月31日時点で要件を満たしていなければいけません。

中小企業等協同組合・出資組合などの組合組織

3つ目の要件は、中小企業等協同組合・出資組合などの組合組織です。一定の要件を満たしていれば、法人や個人事業主ではなく、協同組合なども対象になります。
対象となる組合組織は以下のとおりです。

  • 農業協同組合
  • 農業協同組合連合会
  • 森林組合
  • 森林組合連合会
  • 中小企業等協同組合
  • 出資組合である商工組合および商工組合連合会
  • 内航海運組合
  • 内航海運組合連合会
  • 水産加工業協同組合
  • 水産加工業協同組合連合会
  • 漁業協同組合
  • 漁業協同組合連合会
  • 出資組合である生活衛生同業組合

適用を受ける事業年度が終了する時点で要件を満たしている必要があります。

【2024年4月〜】賃上げ促進税制の適用要件と税額控除額


2024年4月からは、賃上げ促進税制が強化されます。具体的な適用要件や税額控除額は以下のとおりです。ここでは、中小企業の適用要件などをご紹介します。

適用要件

賃上げ促進税制を活用するには、最低限満たさなければいけない要件があります。通常要件は、雇用者給与等支給額が前年度と比較した時に1.5%以上増加していることです。
要件を満たすと、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%を法人税額もしくは所得税額から控除することが可能です。
増加の割合は、「(雇用者給与等支給額- 比較雇用者給与等支給額)÷比較雇用者給与等支給額」という計算式で算出できます。

雇用者給与等支給額は、賃上げ促進税制を活用したい事業年度で従業員に支給した給与等の支給額の合計を意味します。
比較雇用者給与等支給額とは、前事業年度における雇用者給与等支給額のことです。

上乗せ要件・税額控除額

上乗せ要件を満たせば控除率が高くなります。上乗せ要件は以下のとおりです。

上乗せ要件① 雇用者給与等支給額が前年度と比較し、2.5%以上増加している
上乗せ要件② 教育訓練費の額が前年度と比較し、5%以上増加している
上乗せ要件③ 子育てサポート企業の認定を受けた証である「くるみん」以上または女性活躍推進事業主を示す「えるぼし二段階目以上」の認定を受けている

子育てサポート企業の認定を受けた証である「くるみん」以上または女性活躍推進事業主を示す「えるぼし二段階目以上」の認定を受けている

控除率は上乗せ要件①を満たすと15%、上乗せ要件②を満たすと10%、上乗せ要件③を満たすと5%上乗せされます。
つまり、通常要件も合わせると最大45%の控除を受けられます。

中小企業が賃上げ促進税制を活用するメリット


中小企業が賃上げ促進税制を活用することで得られるメリットはいくつもあります。続いては、どのようなメリットを享受できるのか、4つピックアップしてご紹介します。

節税効果

賃上げ促進税制には節税効果があります。企業が支払わなければいけない法人税や個人事業主が支払う所得税に対して、税額控除が受けられる制度であるからです。
つまり、適用対象になれば支払う税額を減らせます。
2024年4月からは最大45%の税額控除ができるので節税効果は非常に大きく、企業のコスト負担を減らすためにもぜひ活用したい制度です。

赤字や法人税が少ない事業年度に関しては、使いきれなかった控除を翌期以降に繰り越せます。それも加味すると、活用しないという選択肢はありません。

賃上げによる負担が軽減

賃上げによる負担を軽減できることも、賃上げ促進税制を活用するメリットの1つとして挙げられます。
通常だと従業員全員の賃上げをするのは、企業にとって大きな経済的負担です。

しかし、この制度を活用し雇用者給与を上げると、一定額の税額控除が受けられるようになるため、企業が抱える負担を軽減することにつながります。
賃上げがなされないことで不満を感じている従業員が多い企業も少なくありません。
中小企業だと思い切った賃上げもしにくいケースもあるため、このような制度を利用して賃上げできるのは大きなメリットです。

人材の確保や定着

人材の確保や定着を実現しやすくなることも、賃上げ促進税制を活用するメリットです。多くの中小企業では人手不足が問題化しています。
賃金アップなどの労働環境整備は課題となっているケースも多くみられますが、コストがかかるので簡単に実行できることではありません。

しかし、賃上げ促進税制を活用すると賃上げを実現できるため、優秀な人材の確保や在籍している従業員の流出防止につながるというメリットが生まれます。
従業員のモチベーション維持や成果・生産性の向上も見込めます。

従業員のスキルアップ

賃上げ促進税制の上乗せ要件には「教育訓練費の増加」が含まれています。
そのため、企業は人材育成に対する投資をしやすくなり、従業員のスキルアップを実現しやすくなります。
従業員がスキルを高めたり、将来的なキャリアの幅を広げたりするための知識を身に付けられたりするので、企業競争力の強化も見込めることが大きなメリットです。

スキルアップやキャリアップを目指せる環境は、従業員の帰属意識や貢献意欲の向上にもつながります。
さらに、業務へのモチベーションやパフォーマンスも向上しやすくなるため、企業の業績アップにつながることも期待できます。

中小企業が賃上げ促進税制を活用する際の注意点


中小企業が賃上げ促進税制を活用することで得られるメリットもありますが、把握しておかなければいけない注意点もあります。
最後に、どのような点に注意すべきなのか解説していきます。

記載ミスが多発している

賃上げ促進税制は、名前や要件などを変えながら、長期間運用されている制度です。中小企業向け賃上げ促進税制は、制度の変遷が原因ともいえる記載ミスが多発しています。
国税庁もミスの多発に関する注意喚起を行っているので、把握しておきましょう。

例えば、別表六(三十一)(令和4年4月1日以後終了事業年度分)の「5」欄(比較雇用者給与等支給額)の場合、前事業年度の月数が異なっているケースや組織再編成を行っていないケースを除き、前事業年度における雇用者給与等支給額を書かなければいけません。
しかし、一部の事業者では、前事業年度に退職した従業員に対する支給額を差し引いて記載するといったミスがみられました。
ほかにも、「適用年度の比較雇用者給与等支給額」や「前事業年度の雇用者給与等支給額」などの記載ミスが目立ちます。
修正申告や更正の請求を行っても、控除額の増額はできないので要注意です。

新規設立企業や赤字企業は使えない

新規設立企業の場合、賃上げ促進税制は利用できません。なぜなら、前年度の給与等支払額を増加させていることが条件になるためです。

また、赤字企業に関しては現行制度では利用できません。しかし、2024年4月以降は、繰越控除措置の利用ができます。
中小企業で要件を満たす賃上げを実施した年度に控除しきれなかった分を5年間繰り越せるようになるため、赤字であっても利用可能です。
これまでは赤字企業であれば活用できない制度でしたたが、改正によって間口が広がったことを把握しておいてください。

教育訓練費の増加は対象者や範囲に決まりがある

教育訓練費の増加は対象者や範囲に決まりがあることにも注意しなければいけません。
教育訓練を目的にしていた場合でも、対象外だと教育訓練費には含まれないので、どのような決まりがあるか把握しておく必要があります。

教育訓練の対象者となるには法人もしくは個人の国内雇用者です。以下の人物は、教育訓練の対象となりません。

  • 当該法人の役員または個人事業主自身
  • 役員を兼務する使用人
  • 該当法人の役員や個人事業主の特殊関係者
  • ①親族
    ②事実上婚姻関係とみなされる人
    ③役員・個人事業主から生計の支援を受けている人
    ④②や③と生計を共にする親族

  • 内定者などの入社予定者

また、以下に該当する費用であることも条件に含まれています。

  • 教育訓練などを法人や個人事業主自身が行う場合の費用
  • 第三者に委託して教育訓練などを行う場合の費用
  • 第三者が行う教育訓練などに参加させるための費用

まとめ・賃上げ促進税制はメリットや注意点を理解してから活用しよう

賃上げ促進税制は、賃上げや人材育成などの投資を積極的に行う中小企業が税額控除を受けられるようになるため、メリットが大きい制度です。
人手不足に悩む中小企業が抱える問題を解決するための糸口になる可能性もあります。
既存従業員のモチベーションや生産性の向上にもつながる可能性があるため、活用を前向きに検討する価値は大いにあります。
しかし、活用するためには注意点があることも把握しておかなければ、思ったような結果を得られなくなる可能性もないとは言いきれません。

創業手帳(冊子版)では、賃上げ促進税制などをはじめとした中小企業を支援する取組みについてもご紹介しています。各種制度の活用を検討している場合も、ぜひ参考にしてみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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