クリプトリエ 手塚康夫|web3がスタンダードになる時代はもはや遠い未来ではない

創業手帳
※このインタビュー内容は2024年02月に行われた取材時点のものです。

さまざまなビジネスに活用できるNFTの可能性とは

現在のインターネット(Web2.0)はGAFAと呼ばれる巨大企業が提供するプラットフォームにほぼ依存していて、インターネット上のデータは中央集権的に企業によって管理・運用されています。

これに対して次世代の分散型インターネットを意味する言葉がWeb3です。ブロックチェーンなどの技術を活用して、データをユーザー自身によって管理・運用できるようになるとされています。

このWeb3を利用したビジネスを展開しているのがクリプトリエの手塚康夫さんです。2社目の創業となる同社を立ち上げる前のキャリアや、Web3を利用したビジネスの展望などについて、創業手帳代表の大久保が伺いました。

手塚康夫(てづか やすお)
株式会社クリプトリエ 代表取締役 CEO
2006年に株式会社ジェナ(現:HiTTO株式会社)を創業、エンタープライズ向けAIチャットボットを提供し、2021年にマネーフォワードにM&A。現在は2023年にクリプトリエを創業し、法人向けのweb3ビジネスを展開。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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起業家は新しいことを始めるのが好き?

大久保:2023年に立ち上げられたクリプトリエは2社目の創業だそうですね。それまでの歩みを教えてください。

手塚:慶応義塾大学環境情報学部在学中から、複数のモバイル関連ベンチャーに参画し、それらの経験を生かして25歳のときに1社目となるジェナを立ち上げました。

法人向けにモバイル(スマートフォン・タブレット)アプリの受託開発のビジネスや、BtoB SaaSモデルのIoTやAIのプロダクトを提供するビジネスを展開し、15年ほど経営に携わっていましたが、最終的にはマネーフォワードさんにM&Aし、退任しました。

もともと、新しいテクノロジーを活用した法人向けのサービスを作るのが好きなので、「この後どういった領域でビジネスをやろうか」と考えていたところ、当時注目されていたNFT(広義でいうとWeb3)という技術に興味を持ち、2年ほどNFTの事業に携わる機会がありました。

新たな会社の設立に至ったのは、今後5〜10年で事業成長が期待できる自分が好きな領域にコミットしたいと改めて思ったときに、自らWeb3のビジネス活用の可能性に賭けてみたいと思ったからです。

大久保:いま40代ということですが、大学時代に進路を決めるときは、まだ大企業志望が多かったのではないですか。

手塚:そうですね。外資系企業、国家公務員、大企業のような進路を選ぶ同期が多かったですが、私が行っていた慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス(SFC)はカルチャー的に起業やベンチャーの比率が高かったですね。

大久保:大企業の人はひとつのことをやり続けることに抵抗がないけれど、起業家はいろんなことを始めたい人が多い傾向があると思います。

手塚:ジェナを創業してからしばらくの間は、新しい事業を次々とたくさん立ち上げていました。

しかし、株主が増えてIPOを本格的に目指すようになってからは、短期間で急成長を実現するために、複数やっていた事業をM&Aで売却し、成長率が高い1つの事業に集中することにして、実際に事業は大きく成長をしましたが、結果として「選択と集中は苦手」ということに気がついてしまいました(笑)。

1社目を経験してよかった点は、いかに事業を立ち上げて成長させるかというグロースの段階のノウハウをしっかりと身につけることができたことです。

昨年に創業したクリプトリエでは、一度プロダクトビジネス、BtoB SaaSビジネスを経験した人材が集まっているので、最短距離でゴールに到達するような勝ち方をしていけると考えています。

御朱印をNFTにし地域活性化を意識した取り組みを


大久保:Web3やNFTについて、どんな部分が今後成長すると感じられたのか、詳しく聞かせていただけますか。

手塚:Web3はまだ登場してから数年の概念なので、「これをやれば成功する」というセオリーがまだ確立できておらず、事業者がさまざまなプロダクトを作り、勝ち筋を見つけるために試行錯誤している段階です。

比較されることが多いAIや生成AIは、企業内でどう活用するかを10年以上前から試行錯誤してきて、今ではある程度活用例がわかっていますが、Web3はこれからといった状況ですね。

2030年には10億人が暗号資産にアクセスできると我々は予測していますが、いま企業が消費者に提供できるWeb3領域のサービスとしては、NFTを活用するということが現実的といえます。ビットコインのような通貨的なトークンのことをFTと呼んでいますが、今の日本の法律では企業がFTを発行するのは難しいんです。

少し前にデジタルアートやアニメのキャラを使ったアートをNFTとして販売するのが話題となりましたが、我々がローンチしたNFTマーケティングのプロダクトはまったく逆のアプローチです。

NFTの販売によってお金を得るのではなく、企業が自社のサービスや商品のプロモーションを目的にNFTを配布するマーケティング施策のことですが、ここ1年ほどお客様と話していて既にニーズがあることを感じ、ローンチしました。

大久保:スポーツ球団でファンから資金調達のためにNFTを発行するというケースもありますね。ある種のクラウドファンディングという感じでしょうか。 

手塚:ファンとのつながりを作るという意味ではNFTは使いやすいツールかもしれませんね。通貨ではないが経済的価値のあるデジタルグッズとして、一番扱いやすい共通規格なので。

仮想通貨が普及していくのと同様に、Web3も世界で当たり前になっていく存在だと思います。

大久保:手塚さんが1社目であるジェナを創業したぐらいの時期は、さまざまな企業がポイントを発行した時代でしたよね。ポイントとNFTは何が違うのでしょうか?

手塚:例えばある企業のマイレージから違う企業のポイントに移行しようとすると、システム開発するのも違う技術や枠組みを使っているので大変ですが、NFTは共通の規格を持っているので、異なる企業間・システム間であっても、特にシステム開発を行うことなく、やりとりすることが可能です。

大久保:企業がNFTを活用する時の課題はありますか?

手塚NFTをただ配布することで終わってしまっている企業が多い現状があります。

NFTを配布するだけではなく、NFT配布時にどれだけ新規顧客を獲得できたか、既存顧客のロイヤリティーやLTVの向上に貢献したかなどのビジネス上の成果を出すことが本当は重要なのではないでしょうか。

企業が自社の商品やサービスをプロモーションする手段として、NFTを配布するだけでなく活用するという世界にもっていきたいという思いがあります。

新しい概念なので、ユーザーにとっていかに知識的にも技術的にもハードルを低く導入してもらえるかがカギだと考えています。

大久保:実際の活用例としてはどんなものがあるのですか。

手塚:4社で連携した地方創生の事例として、三重県の神社の御朱印をNFTとして配布しました。スタンプラリーのように複数の御朱印のNFTを集めると、地域の店舗で利用ができる特別なクーポンを獲得できるという、配布したNFTを活用できる地域活性化を意識した仕組みも提供しています。

大久保:御朱印とNFTは相性がよさそうですね。神社に行くと寄進した人の名前が刻まれているじゃないですか。あれもある意味アナログなNFTだと思いますが、デジタルで永遠につながりが持てるというのもファンにとってはお金を出す価値がありますね。

手塚:自治体とか観光の事例でいうと、スタンプラリーをやりたいという声は多いです。NFTを配り、何種類か集めた人には近くのお店で利用できるスペシャルなクーポンNFTがもらえたり、特定のイベントに参加できたりするという試みをしています。

Web3が当たり前の時代に、誰でも簡単にNFTが使えるように

大久保:素人からすると、NFTや仮想通貨はなんだかわからなくて怖いという気持ちもあると思います。例えば発行する組織がなくなってしまっても大丈夫なんですか。

手塚:NFTはブロックチェーンに記録してあるので、サービスを運営する会社や組織がなくなっても消えることはありません。企業や組織などの中央集権的な仕組みを通してではなく、分散化して管理されており、ユーザー個人がデータを所有することができるのが大きな特徴です。

一般的に、ユーザーはNFTを受け取るためにMetaMaskのような初心者には管理が難しいWeb3ウォレットを用意する必要がありますが、当社のサービスでは、メールアドレスさえあれば受け取れるようにしています。

またNFTを発行する企業側は、ガス代と呼ばれるネットワークの手数料を支払うために暗号資産を持つ必要があるのですが、企業が暗号資産を持つと会計上の論点になったり、監査法人が監査を受けてくれなかったりというケースが発生するので、我々が発行手数料を負担して企業が暗号資産を持たなくてもいいように配慮しています。

導入が難しいとやはり使っていただけないと感じていますので、誰でも簡単に安心して使えるように環境を整えています。

大久保:ユーザー側がメールアドレスでNFTを受け取れるのはいいですね。

IT業界にいると、先に進みすぎていて世間の感覚がわからなくなることがありませんか。

コロナ前の2019年ぐらいに「DXって来年ぐらいにはもう終わっていてすぐに死語になるんじゃないか」という話をしていたんですがまったくそんなことはありませんでした(笑)。都会でもまだ普及しきってないものって日本の平均で考えるとより道は長いですね。
普及のフェーズは息が長いと感じます。それだけ大変ということだと思いますが。

手塚:去年から今年にかけて徐々にWeb3やNFTへの企業の取り組みが始まっているような状況ですので、まだWeb3やNFTが普及してないということは十分承知しています。その上で、今後いかに大衆の方に使ってもらえるか、Web3が当たり前となる時代にみんなが気軽にNFTを使える時代になればいいなという気持ちでこの事業に取り組んでいます。

Web3は数年ほど前から注目され、国内でも導入事例が少しずつ増えてきていますので、キラーユースケースが一度でてきたら、それを起点にWeb3の利活用が普及・拡大していくのではないかと考えています。クリプトリエでは、NFTマーケティングがそのキラーユースケースになり得るのではないかという仮説を立ててローンチしました。

2015年ごろは「AIを使って何かをしたいけれど、何をやりたいかはわからない」という企業が多かったんです。その後、AIによる画像解析やチャットbotといったキラーユースケースが広まり広く普及・拡大が進みました。今のWeb3はその状況に似ていると思っています。

「何をやりたいかわからない」というのがダメなのではなく、Web3を使って何かしたいと相談していただければ、我々が御社の場合はこれとこれに使えますよというアドバイスをすることができます。

NFTやWeb3をさまざまな形で使っていただいて、ユースケースを増やしていきたいですね。我々のようなスタートアップがWeb3やNFTといった新しい技術を活用したプロダクトやサービスを作り、それによってお客様の課題を解決できると思っています。

NFTのビジネス活用を月額5万円から始められるプランもあります。興味を持たれたらぜひ一度お気軽にお声がけいただけたらと思います。

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(取材協力: 株式会社クリプトリエ 代表取締役 CEO 手塚康夫
(編集: 創業手帳編集部)



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