クレジットカードで経費を支払った場合の対応は?精算・仕訳方法などを解説

創業手帳

クレジットカードで経費を支払うとメリットも。


近年はキャッシュレス化が進んでいることもあり、事業活動で発生した費用をクレジットカードで決済するケースがあります。
経費をクレジットカードで支払うことには、事業者にとって様々なメリットがあります。
しかし、経費をクレジットカードで支払った場合、どのように会計処理をすればいいのかわからないという人もいるでしょう。

今回はクレジットカードで経費を支払った場合の対応や注意点、決済にクレジットカードを使用するメリットなどについて紹介します。

創業手帳では、経費の取り扱い方についてわかりやすくまとめた『経費で損しないためのチェックリスト』を作成。このチェックリストでは、経費を「人件費」「交際接待費」「広告宣伝費」など23の経費科目ごとに分解し、それぞれの「経費削減のポイント」「節税につなげる」ポイントを整理しています。無料でお配りしていますので、このチェックリストをうまく活用し効果的な「使い方」と「処理方法」を活用してみてください。


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クレジットカードの支払いは経費にできる?


会計上、個人事業主や従業員の個人名義のクレジットカードで経費を支払うことは問題ありません。
また、事業活動によって生じた支出であれば、クレジットカードの決済でも経費精算が可能です。

ただし、個人名義のクレジットカードはプライベートでの支出でも使用することがあるので、経費としての決済と証明した上で処理しなければなりません。
特に個人のクレジットカードを頻繁に事業とプライベートで使っていたり、立て替えを行った従業員が多かったりすると処理にかなりの時間と労力を要することになります。
そのため、帳簿の入力ミスや計上漏れにも注意が必要です。

クレジットカードで支払った時の勘定科目・仕訳例


クレジットカードの支払いを経費に計上するにあたって、帳簿に取引内容を記録しなければなりません。
仕訳で使用する主な勘定科目は未払金・事業貸借・事業主貸の3種類があり、ケースによってどの勘定科目を使用するかが変わってきます。
ここで、各勘定科目の概要と仕訳例を紹介します。

未払金

未払金は、商品の購入やサービスを受け、現時点で費用の支払いが完了していない時に使用する勘定科目です。
クレジットカード払いは後日引き落としされる仕組みなので、物品やサービスの購入に使用した際は未払金の勘定科目を使います。

具体的には、販売を目的にした商品以外の物品にクレジットカードを使用した際に用いります。
例えば、事務作業で使う筆記用具や印刷用紙などは販売目的に商品ではないため、クレジットカードを使って決済した際は未払金で仕訳可能です。
なお、販売目的で購入した商品はクレジットカードでの支払いでも買掛金を用いてください。

未払金で仕訳をする際の具体例は以下のとおりです。

【事務所で使う消耗品を購入した場合】

日付 借方 貸方
○月○日 消耗品費 10,000円 未払金 10,000円

【クレジットカードの引き落としが発生した場合】

日付 借方 貸方
△月△日 未払金 10,000円 現預金 10,000円

事業主借

事業主借は、プライベートの資金を事業に使ったり、必要経費を個人で立て替えたりした場合に使用する勘定科目です。
例えば、個人事業主がプライベートで使っているクレジットカードで経費を立て替えた場合、事業主借を用いて仕訳をします。

事業主借の場合、貸借対照表の貸方(右側)になるのが特徴です。事業主借の勘定科目を使用する場合の仕訳例は以下のとおりです。

【出張費を立て替えた場合】

日付 借方 貸方
○月○日 旅費交通費 50,000円 事業主借 50,000円

事業主貸

事業主貸は、事業用の資金で個人的な支出を支払った場合に使用する勘定科目です。
例えば、個人事業主がプライベートで購入したものや生活費などの支払いに事業用のクレジットカードを使った場合、事業主貸で仕訳を行います。

事業の経費を個人の資金から立て替えた場合に用いる事業主借と対となるのが特徴です。
事業主貸の場合、貸借対照表の借方(左側)になるので注意してください。クレジットカード払いであれば、貸方は未払金で問題ありません。

事業主貸を使用する場合の仕訳例は以下のとおりです。

【プライベート用の雑貨を購入した場合】

日付 借方 貸方
○月○日 事業主貸 3,000円 未払金 3,000円

【自宅兼事業の光熱費を事業用クレジットカードで支払った場合】

日付 借方 貸方
○月○日 光熱費 15,000円 未払金 30,000円
事業主貸 15,000円

クレジットカードの経費精算で必要なもの


業務上、購入した商品・サービスの経費精算では、基本的に領収書が必要になります。
領収書が必要な理由は、いつ・どこで・いくら経費を使ったことを証明するためです。

しかし、オンラインで購入した時は領収書が発行されないことが多いです。
また、クレジットカードの決済も店舗やオンラインショップの領収書の発行義務がないので、領収書が用意されないことがあります。
ただし、店舗やオンラインショップによっては領収書を発行してくれるケースもあるので、決済前に確認することをおすすめします。

領収書が発行されない場合

クレジットカード決済の領収書がない場合、経費の支払いを証明できるものがあれば、それを証拠に経費精算が可能です。
具体的に領収書の代わりに利用できるものは、利用伝票(お客様控えや利用明細書など)やレシートです。

税法上、利用伝票やレシートを領収書の代わりにするには一定の項目が記載されている必要があります。
領収書と認められるために必要な項目は以下のとおりです。

  • 決済日(年月日)
  • 書類の交付を受けるものの氏名、または名称
  • 消費税率ごとに区分して合計した金額
  • 但し書き(決済対象となる資産、サービスの内容、軽減税率対象の旨の記載)
  • 発行元の氏名、または名称

但し書きには、支払った物品やサービスの具体的な内容などを記載してください。例えば、飲食代であれば同伴した相手や目的、料金/人数などを記載します。

クレジットカードの経費精算での注意点


クレジットカードの経費精算を適切に行うためにも、気を付けたいことがあります。その注意点は以下のとおりです。

立て替えのルールを明確にしておく

個人のクレジットカードを使って経費を立て替える場合、事前にルールを明確にしておきます。
事業活動では様々な支出・取引があるため、日々細かく経費処理をしなければなりません。
ルールを設けず、頻繁にクレジットカードの経費精算が発生すると経費処理が煩雑となり、ミスにつながる可能性があります。
また、ルールを設けなかったことで不正に経費処理が行われてしまう恐れもあります。

ミスや不正行為を防ぐためにも、継続的に利用する場合や一定額を超える利用に制限を設けるなど、立替え時にクレジットカードを使う場合のルールを定めてください。
ルールを策定したら、その周知を徹底させることも大切です。

領収書・利用明細書は7年間保管する

法人や確定申告をしている個人事業主は、クレジットカードの経費精算で必要になる領収書や利用明細書、レシートを7年間保管してください。
法人の場合、領収書などの証憑を7年間保存する義務があります。個人事業主は5年間で問題ありません。

しかし、税務調査では最大7年分の資料が調査の対象となるため、個人事業主も7年間は保管しておくと万が一の時も安心です。
紙の領収書や利用明細書に限らず、電子取引でも同様の保管期間が適用されます。

収入印紙が必要になるケースがある

5万円以上の支出が発生した場合、領収書や利用明細書などに収入印紙が必要です。
ただし、収入印紙が必要なケースは発行の時点で代金の支払いが完了しているケースになります。

クレジットカードは直接現金のやり取りをする決済方法ではなく、発行のタイミングでは代金の支払いが完了していないので、基本的には収入印紙は不要です。
しかし、領収書や利用明細書などに「クレジットカードでの支払い」といった旨の記載がないと、現金で受け渡ししたケースと同じ扱いになり、金額に応じた収入印紙の貼り付けが必要になります。

プライベートでの決済と混同させない

個人のクレジットカードで経費を支払う場合、プライベートでの決済としっかり区別できるようにしてください。
クレジットカードの経費精算では、利用明細書を用いるケースが多くなります。
プライベートと経費を区別せずに表示されるので、明細書を見ただけでどれが経費なのか判断するのは困難です。
正しく区別できるように、用途別に利用明細書を保管したり、メモを取ったりなど対策して、適切に経費処理してください。

クレジットカードで経費を支払うメリット


クレジットカードは経費精算には注意点がありますが、実は事業者にとって様々なメリットがあります。
そのメリットは以下のとおりです。

経費処理を効率化できる

経費の支払いにクレジットカードを使う大きなメリットは、経費処理を効率化できることです。
事業活動では、事務所の家賃や光熱費、通信費、出張やクライアントを訪問する際の交通費、商品の仕入れなど様々な経費が発生します。
これらの支払いをクレジットカードにまとめれば、いつ・いくら使ったのかは毎月発行される利用明細書やWeb上からいつでも確認でき、支出の管理がしやすくなります。

また、会計ソフトと連携しておけば自動的に入力や計算が行われるので、領収書や利用明細書などを見ながら手作業で処理する手間を省くことが可能です。
それによって、経費処理の効率化と同時に負担やミスの軽減につながります。

キャッシュフローを改善できる

経費をクレジットカード払いにすることで、キャッシュフローを改善できる可能性があります。
クレジットカードの場合、実際に費用が引き落とされるタイミングは決済日から1~2カ月後です。

現金の場合、決済日までにお金を用意しなければならず、タイミングによっては間に合わないというケースもあります。
しかし、クレジットカードなら1~2カ月の余裕があるので、引き落とし前までにキャッシュフローの改善に集中することが可能です。

ポイント・マイルを貯められる

クレジットカードの場合、使用するたびにポイントやマイルを貯められることもメリットです。
貯まったポイントやマイルは、商品の購入や航空券の交換など様々な用途に使うことができます。

個人のクレジットカードの支払いで付与されるポイントやマイルは、取得者の経済的利益になると考えられます。
ただし、会社の経費の立替えに個人のクレジットカードを使った場合、付与されたポイントは会社に帰属されるという考え方もあるでしょう。
大半の企業は、ポイントの扱いについて厳しく追及することはありません。
しかし、トラブルを避けるためにも、立て替えによって発生したポイントの取り扱いについて就業規則で決めておくと安心です。
また、ポイントの帰属に関してトラブルを防ぎたい時は、個人のクレジットカードを使っての立替えは避けるのが無難です。

緊急性のある出費に対応できる

緊急性のある出費に対応できるのもクレジットカードのメリットです。
出張先で急に想定外の支出が発生し、現金を持ち合わせていない場合、クレジットカードがあればスムーズに決済できます。

後で清算処理を行えば、個人のクレジットカードで支払った分の費用を取り戻すことが可能です。
ただし、悪用されないためにも、どの程度の緊急性に対して、いくらまで対応可能かなど、ルールを決めておくことが重要です。

経費の支払いは法人カードの利用がおすすめ


クレジットカードで経費を支払う場合、経費の支払い専用に使える法人カードの利用がおすすめです。ここで、法人カードがおすすめの理由を紹介します。

個人事業主でも作成できる法人カードがある

法人カードというと法人しか取得できないイメージがありますが、個人事業主でも取得できるカードも存在します。
法人カードには、ビジネスカードとコーポレートカードの2種類に分けることが可能です。
このうち、中小企業や個人事業主向けの法人カードがビジネスカードになります。

ビジネスカードは開業・設立から年数が浅かったり、赤字決算であったりしても申し込めるケースがあります。
そのため、開業したばかりの個人事業主も比較的取得しやすいでしょう。

支出をプライベートで分けて管理できる

法人カードを利用する大きなメリットは、プライベートと経費の支出を区別して管理できるようになるからです。
法人カードは経費の支払い専用のクレジットカードであり、プライベート用のクレジットカードと分けて所持することができます。

また、法人カードの支払いは法人用の口座から引き落とされるため、プライベート用の口座から引き落とされることもありません。
このような特徴からクレジットカードを使った場合の経費管理がやりやすくなります。
従業員用のクレジットカードも発行できるので、個人のクレジットカードで立て替えるケースと比べて、経費精算の手間も軽減することが可能です。

ビジネスに活用できる特典を利用できる

法人カードには、ビジネスに役立つ特典が付帯されていることもメリットです。
例えば、経費の支払いでの利用が前提であるため、利用限度額が個人用のクレジットカードよりも高く設定されています。
ほかにも海外旅行損害保険、優待価格で航空ラウンジや高級レストランなどを利用できるといった特典を用意していることが多いです。

また、法人カードも支払い金額に応じてポイントやマイルが還元されます。
水道光熱費といった固定費の支払いや事業用の消耗品の購入、出張時の交通費・宿泊費などに使えるので、経費削減になります。
個人のクレジットカードだとポイントの取り扱いに悩みますが、法人カードに付帯されるポイントは会社に帰属すると考えられるので、従業員とトラブルになりにくいこともメリットです。

まとめ・クレジットカードで経費処理を効率化させよう

クレジットカードは手元に現金がない時も支払いができるため、経費の支払いにおいても非常に便利です。
経費処理の効率化や貯まったポイントを活用できるといったメリットもあります。
ただし、個人のクレジットカードで経費を立て替える際は適切に経費精算をする必要があります。
不正やトラブルを防ぐためには立て替えのルールを明確にしなければなりません。

もっと便利にクレジットカード払いを活用したいのであれば、経費の支払いに特化した法人カードの取得を検討してみましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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