法人カードと個人カードの違いを比較!メリットや申し込みのポイントを解説
法人カードは作るべき?個人カードとの違いを理解して使い分けよう
クレジットカードは、法人カードと個人カードの2種類に大別できます。起業・開業にあたり、法人カードは作るべきか悩む方も多くいます。
法人カードと個人カードにおける様々な違いは、申し込める人や審査基準、サービス内容などです。その違いを良く理解し、使い分けることが大切です。
そこで今回は、法人カードと個人カードの違いから、法人カードを作成するメリット、申し込みのポイントまで解説します。
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法人カードとは
まずは、法人カードがどのようなクレジットカードなのか、概要をご紹介します。
企業・個人事業主向けのクレジットカード
法人カードは、企業(法人)や個人事業主向けのクレジットカードです。事業に関する経費の支払いに使用でき、名義人になっている社員のみが利用できます。
主な特徴は、利用枠が数百万円と大きく設定されていることが多い、従業員用のカードが発行できる、ビジネスに役立つ機能が付帯されていることです。
また、法人カードの引き落とし口座を会社名義の法人口座に指定でき、社員が経費の支払いで利用した分もその口座から引き落とされます。
法人カードは大きく分けて2種類
法人カードは、ビジネスカードとコーポレートカードに分類されます。どちらもクレジットカードの機能には大きな違いはありません。
しかし、発行可能なカードの枚数に違いがあるため、発行対象の法人の規模に違いが生じます。
ビジネスカードは、一般的に発行可能なカード枚数が20枚以下の法人カードを指します。
使用者の数が限られることから、主な発行対象は中小企業や個人事業主です。
基本的には法人の信用情報で審査されますが、代表者の信用情報で審査されるケースもあります。
起業して間もない時や個人事業主は、個人与信のビジネスカードがおすすめです。
コーポレートカードは、ビジネスカードと比べて利用枠や発行できるカードの枚数が大きく設定されています。そのため、主な発行対象は大企業です。
支払口座は法人口座が基本ですが、個人口座を設定できるカードもあります。また、使用者ごとに利用枠を設定することも可能です。
法人カードと個人カードの主な違い
法人カードも個人カードも決済に使用できるクレジットカードです。
しかし、指定できる支払い口座や審査基準、限度額、付帯サービスの内容など様々な違いがあります。
それでは、法人カードと個人カードの違いを比較していくので、確認してください。
指定できる引き落とし口座の違い
法人カードと個人カードでは、指定できるカードの引き落とし口座に違いがあります。
個人カードの場合、指定できる口座は個人名義の口座のみです。
一方、法人カードの引き落とし方法は、会社決済型と個人決済型に分別されます。
会社決済型は、法人口座が引き落とし口座に設定されます。組織が存在し、自社の社員が利用する場合は会社決済型を選ぶのが一般的です。
個人決済型は、個人名義の口座が引き落とし口座に指定されます。基本的に組織が存在しない個人事業主に利用されています。
審査基準の違い
クレジットカードの新規発行では、法人カード・個人カードを問わず審査があります。
いずれも申込者の信用情報をチェックして、カード発行の可否や限度額が判断されます。
法人カードの場合、代表者個人の信用情報だけチェックされる場合もあれば、法人の信用情報もチェックされることもあるので注意してください。
審査のために、登記簿謄本や決済書などの提出が必要で、それらの資料から経営実績や財務状況が確認されます。
経営状況も審査される分、個人カードと比べて審査基準は厳しい傾向にあります。
限度額の違い
法人カードと個人カードでは、限度額に大きな差があります。ランクにもよりますが、個人カードは10万~100万円が目安になります。
法人カードもランクがありますが、500万円を限度額にしているケースが多いです。
法人は支出の金額が大きくなりやすいため、経費の支払いに用いられる法人カードも必然的に限度額が高く設定されています。
ただし、実際の限度額は審査の結果で決まるので注意してください。
支払い方法の違い
クレジットカードは一括払いだけではなく、ボーナス払いや分割払い、リボ払いといった複数の支払い方法に対応しています。
法人カードと個人カードでは、対応している支払い方法にも違いがあります。
個人カードで対応している支払方法は、1回払い(一括払い)、2回払い、ボーナス一括払い、ボーナス2回払い、リボ払い、分割払いなどです。
そのため、状況に応じて適切な支払方法を選択できます。
しかし、法人カードが対応しているのは、基本的に1回払いのみです。
ただし、カードによっては一部加盟店の利用時のみ2回払いやボーナス払い、リボ払いを選択できることがあります。
そのため、対応している支払方法を良く確認した上で法人カードを申し込んでください。
付帯サービスの違い
クレジットカードには、決済以外に嬉しい付帯サービスがついていることがあります。
法人カードの場合、出張費の飛行機やホテル予約の優待、備品購入の優待、ショッピング保険、ETCカードの発行など、ビジネス向けの特典が豊富です。
ただし、個人カードにはあるキャッシング機能はついていないことが多いです。
法人は支出が高額になりやすいため、貸し倒れのリスクを懸念してキャッシング機能を設けていません。
しかし、代表者個人の信用力からキャッシング枠を設けている法人カードもあります。
追加発行できるカードの違い
法人カードと個人カードでは、追加発行できるカードが異なります。個人カードでは家族カード、法人カードでは社員用に追加カードの発行が可能です。
家族カードは、契約者(本会員)の家族(配偶者、契約者の両親、子ども)に対して計3枚まで発行されるカードです。
本会員のカードと同様に、名義人のみが利用できます。本会員と同じ種類のカードが発行され、同じ付帯サービスを利用することが可能です。
法人カードの場合、追加カードを申し込むと代表者の家族や社員などの名義で発行されます。
法人カードの発行審査に通過していれば、基本的に追加カードの発行で審査はありません。
追加カードの名義人もメインで契約するカードと同様に付帯サービスを利用できます。
追加カードには発行枚数が設定されているので、保有できる人数に限りがあります。
名義人だけしか利用できないので、ほかの社員と共有で利用するのは規約違反です。その事実が発覚すると強制停止される可能性があります。
また、追加カードもメインカードと同じく年会費が設定されているケースがある点にも注意してください。
ほかにも社員に私的利用される可能性があるので、発行前にその対策も欠かせません。
法人カードを作るメリット
起業したばかりの小規模の法人や個人事業主の中には、当面の経費の支払いは個人カードで十分だと考える人も多いです。
しかし、法人カードの作成には様々なメリットがあります。そのメリットは以下のとおりです。
経理業務を効率化できる
事業における経費の支払いを法人カードにまとめることで、経理業務の効率化が図れます。
例えば、個人カードはその名義人しか利用できません。もしも社員が経費を立替えてくれた場合、清算用の現金の用意と社員の口座への振込みといった事務が発生します。
法人カードでは社員用の追加カードを発行できるので、経費の支払いを一本化が可能です。
そうなれば社員は立て替える必要はなく、無駄な事務業務も発生しません。支払いも法人口座からとなるので、支出の管理もしやすくなります。
法人カードの中には、会計ソフトと連動できるものもあります。利用明細を会計ソフトに取り込めるので、会計事務の負担が軽減されます。
また、社員も毎回発生する経費申請を省略でき、本来の業務に集中できる点もメリットです。
振込み手数料の削減になる
法人カードによって経費の支払いから引き落としまでが一本化されることで、振込み手数料の削減にもつながります。
支払いが一本化されていない状態で社員が経費を立替えている場合、清算のために振り込みが発生し、その都度、振込み手数料がかかってしまうでしょう。
少額の手数料でも、それが重なれば大きな支出になります。少しでも支出を抑えられる点は、経営において大きなメリットです。
公私混同を避けられる
仕事の支出と私的な支出を区別できるようになるのも、法人カードを作るメリットです。
個人事業主の場合、個人カードのみの利用だと経費と私的な費用が混同し、明細を見た時にどれが経費の支払いなのか、わからなくなることもあります。
また、個人と事業の明細を分ける作業が発生してしまいます。
事業用の支出は法人カードから決済する形にすれば、私的な費用を含まず経費の管理が可能です。
明細も分けずに済み、そのまま経費計上できます。正しく会計処理するためにも、法人カードと個人カードは用途に応じて使い分けることが大事です。
キャッシュフローの安定化につながる
法人カードの利用は、キャッシュフローの安定化につながることもメリットです。
例えば、現金や銀行振込みでその都度支払う形だと、手元の資金が減ってしまいます。
支出額によっては、売掛金など利益が入るまで資金繰りが厳しくなってしまう可能性が高いです。
一方、法人カードの利用代金は、毎月指定日に設定した口座から引き落とされます。
決済から代金の支払いまで猶予があるので、手元にお金を残すことが可能です。
そのため、急に資金繰りが悪化するリスクを回避できます。
また、経費の支払いがひとつにまとめられることで、資金計画も立てやすくなります。
経費を上手にコントロールできれば、安定したキャッシュフロー経営を実現できるでしょう。
ビジネスに便利な付帯サービスを利用できる
ビジネスに役立つ付帯サービスを利用できる点もメリットです。
例えば、経費の支払い額に応じてポイントが還元され、貯まったポイントを消耗品などと交換できるサービスを用意していることがあります。
ビジネスに必要な用品と交換できれば、購入費の削減につながります。
ほかにも空港ラウンジの利用、ホテルや飛行機の予約優待、海外旅行損害保険などが付帯しているカードもあります。
これらのサービスは、出張や海外研修、社員旅行などの利用に便利です。各種施設の優待割引といった福利厚生サービスを利用できる場合もあります。
法人カードを申し込む際のポイント
法人カードを発行している会社は多数あるので、自社に合ったカードを選ぶことが大事です。
ここで、法人カードを申し込む際にチェックしておきたいポイントをご紹介します。
審査基準や期間を確認する
法人カードの新規発行では審査があるので、審査基準や期間を確認することは大事です。
銀行と信販会社の法人カードでは、銀行のほうが審査は厳しいとされているのが一般的です。
審査基準は明確に公表されていませんが、一般的に設立3年以上で2期連続黒字の実績がないと通過は難しいとされています。
ただし、申し込み資格を確認すると、「設立1年目から可」や「個人与信をもとに審査」などの記載があります。
そこから、起業や開業間もない場合でも審査が通る可能性があるか、ある程度判断することが可能です。
早めに法人カードを取得したい場合は、審査期間にも注目してください。審査が厳しい傾向にある銀行は、審査に時間がかかりやすい傾向にあります。
少しでも早く取得したい場合は、信販会社の法人カードへの申し込みを検討してみてください。
年会費やポイントの還元率を確認する
法人カードはサービスが充実している分、個人カードと比べて年会費が高額です。
サービスの充実度を優先するばかりに高額な年会費を支払い続けることになると、経営の負担になってしまう可能性があります。
サービス面とコスト面のバランスを考えて、自社にとって年会費の負担が少ない法人カードを選ぶことが大切です。
また、ポイントの還元率もチェックしたい項目です。還元率が高いほど、ポイントは溜まりやすくなります。
還元率が加算される優待特典の有無も一緒に確認しておいてください。
出張や社員旅行で飛行機を利用することが多い会社は、マイル還元率のチェックもおすすめです。
マイルが貯めやすいカードなら、貯まったマイルで航空券などに交換できるので経費削減につながります。
限度額や発行枚数の上限を確認する
法人カードの限度額を調べて、自社にとって十分な金額であるかチェックすることも大事です。
カード会社によっては限度額の引き上げにも対応しているので、その条件や手続きも確認してください。
また、追加カードの発行枚数の上限もチェックしておきたい部分です。
1枚のカードを複数人で使い回すことができないので、保有する人数分を発行できるカードを選んでください。
ETCカードを発行できる場合も同様に、枚数の確認が必要です。
利用したい付帯サービスがあるか確認する
法人カードごとに付帯サービスの内容は異なります。
そのため、自社が利用したいサービスがあるかどうかも重視したいポイントです。
付帯サービスと自社のニーズが一致していないと、法人カードを利用するメリットが半減してしまいます。
また、サービスが充実しているほど年会費は高くなる傾向にあるため、利用しないサービスが多いほど損をすることにもなります。
法人カードを損せず活用するためにも、自社に有益なサービスを提供するカードを選択することが大切です。
まとめ
法人カードと個人カードは、発行の対象や用途、限度額、審査基準、引き落とし口座などあらゆる点で違いがあります。
法人カードを作れば、経費の支払いの一本化により経理管理がしやすくなる、安定したキャッシュフロー経営を確立できるといったメリットを得られます。
年会費や付帯サービスなどはカードごとに違うので、自社に合った法人カードを取得し、経費の支払いに活用してみてください。
(編集:創業手帳編集部)