消費税を申告するには?納税義務が生じる条件や税金の算出方法を解説

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課税事業者は消費税の申告が必須!申告方法を理解しておこう


消費税は、課税事業者であれば申告しなければいけません。納税地を所轄している税務署に提出しますが、確定申告とは提出の時期が異なるため、注意が必要です。
期限も定められていることから、期限内に提出することが重要です。

今回は、消費税の基本的な内容や課税事業者と免税事業者の違い、算出方法、申告の流れなどを解説します。
また、インボイス制度によって消費税の計算方法に変更された部分についてもご紹介します。

消費税とは?


消費税は、商品や製品などの販売をしたり、サービスを提供したりする際、公平に課税される税金です。負担するのは消費者、納付するのは事業者です。
商品やサービスに広く課税されますが、生産や流通など取引きの段階で多重に税金がかからないようにする仕組みも構築されています。

消費税が課税される場合、地方消費税も合わせて課税されます。こちらも負担するのは消費者で、納付するのは事業者です。

日本国内では、商品の販売や運送、広告といった対価を得る取引きはほぼすべて課税対象となります。外国から商品を輸入する場合も、同様に課税されます。

課税対象となる取引き

消費税について知識を深めるためには、課税対象となる取引きを把握しておく必要があります。続いては、どのような取引きが課税対象になるのかを解説します。

課税売上高

課税売上高は、国内で行われる取引きであること、事業者が事業として取引きを行っていること、対価を得ていること、資産の譲渡・資産の貸付け・役務の提供、というすべての条件を満たした売上高です。
つまり、日本国内で物の売買やサービスの提供を行った場合の売上高は課税売上高になります。

事業用の自動車や建物、会社の備品を売った時の収入に関しても、課税売上げに分類されます。
原稿料・印税・講演料・講師謝金・インターネットによる副業収入なども課税売上高となるので覚えておいてください。
課税売上高に該当する収入源は多岐にわたるため、間違えないように細かい部分まで確認することをおすすめします。

消費税が課税されない取引き

消費税は基本的に課税されるものです。しかし、中には課税対象にならない取引きもあります。具体的にどのような取引きに消費税が課税されないのかを以下にまとめました。

1.免税取引き

免税取引きは、海外へ輸出することで得た売上げが代表的です。それ以外にも、国内で消費されないものも消費税が発生しません。
実際は消費税がかかっていますが、一定の要件を満たすと免除される課税取引きに該当します。

最終的な消費税はかかりませんが、基準期間の課税売上高には含めなければいけないという点に注意が必要です。
また、海外から輸入されて国内で消費されるものの売上げには消費税がかかることも注意点として挙げられます。

2.非課税取引き

非課税取引きは、土地の売却や住宅用の家賃、有価証券などが該当します。課税対象としてなじまないものや社会政策的配慮などの観点から定められています。
土地の譲渡や貸付けは、1カ月未満の貸付けや駐車場などの施設利用にともなう場合だと非課税取引きにあたらないので要注意です。

また、株式・出資・預託といった形態によるゴルフ会員権などの譲渡も非課税取引きにはなりません。
非課税取引きに該当するものとそうでないものがあるため、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。

3.不課税取引き

非課税取引きではなく、不課税取引きというものもあります。不課税取引きに該当するのは、保険金の受取りや海外で行う取引きなどです。
課税売上高に要件からひとつでも外れている場合は非課税取引きになります。

労働の対価である給与や一般的に対価としてみなされない見舞金・助成金、対価の支払いがない見本品の提供などは不課税取引きです。
心身や資産などの損害が発生した時の損害賠償金も含まれます。

消費税を納める「課税事業者」と免除される「免税事業者」


事業者の中には、消費税を納めなければいけない課税事業者と免除となる免税事業者があります。
この2つの違いがわからない人もいるのではないでしょうか。次に、課税事業者と免税事業者との違いについて解説します。

課税事業者とは?

課税事業者は、消費税の納税義務がある事業者です。基準期間もしくは特定期間の課税売上高が1,000万円を超えている場合、課税事業者となります。
基準期間は前々年、特定期間は前年の上半期を指します。

基準期間の課税売上高が1,000万円に満たなかったとしても、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていれば課税事業者です。
該当する場合は、税務署に「消費税課税事業者届出書」を提出する必要があります。この書類には、納税地などの情報や事業内容などを記載します。

条件から外れた時は、「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」を提出してください。

免税事業者とは?

免税事業者は、納税義務が免除となる事業者です。
開業1年目、基準期間または特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていない場合のどちらかに該当する事業者が対象になります。
事業をスタートした年は、判断材料になる基準期間や特定期間の課税売上高がないので自動で免税事業者となります。
しかし、2年目以降の特定期間で1,000万円を超える売上げがあった場合は課税事業者になるので注意が必要です。

3年目以降は、基準期間と特定期間の課税売上高で判断されます。課税事業者となったら、「消費税課税事業者届出書」を税務署に提出してください。
特定期間の課税売上高は、期間中の給与などの合計額とすることも可能です。

消費税を算出する方法


消費税を納税するためには、算出方法も把握しておく必要があります。続いては、原則課税と簡易課税を算出する方法を解説します。

原則課税を算出する方法

原則課税は、一般課税や本則課税と記載される場合もあり、いずれも同じ意味です。
原則課税は、課税売上高にかかる消費税額-仕入れや経費で支払った消費税額=納付する消費税額という計算式で算出されます。
仕入れや経費で支払った仕入税控除額は、10%と8%に区分するという点に注意が必要です。
取引きの中に非課税取引きに該当するものがある場合は、それを除外することも忘れてはいけません。

簡易課税を算出する方法

簡易課税は、課税売上高にかかる消費税額-(課税売上高にかかる消費税額×みなし仕入率)=納付する消費税額という計算式で算出されます。
簡易課税を選べるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者のみです。

業種ごとのみなし仕入率は以下のようになっています。

事業の区分 みなし仕入率 事業内容
第1種事業 90 % ほかから購入した商品の性質などを変えずに、ほかの事業者に販売する卸売業
第2種事業 80 % ほかから購入した商品の性質などを変えずに、ほかの事業者に販売する(第1種事業以外)小売業、飲食料品に関わる農業・林業・漁業が該当
第3種事業 70 % 飲食料品に関わる事業を除く農業・林業・漁業、鉱業、建設業、製造小売業を含む製造業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業が該当
第4種事業 60 % 第1~第3、第5、第6の事業に該当しない飲食店業など
第5種事業 50 % 運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業以外)が該当し、第1~第3に該当する事業を除いたもの
第6種事業 40 % 不動産業

消費税申告・納税で気を付けたい3つのポイント


消費税の申告や納税を行う時、いくつか気を付けたいポイントがあります。ここでは、特に重要なポイントを3つピックアップしてご紹介します。

1.消費税還付を受けられるのは原則課税方式で納税した場合

ひとつ目は、消費税の還付を受けられるのは原則課税方式で納税した場合のみという点です。
課税事業者は、設備投資などで多くの消費税を支払っているため、支払った税額が預かった消費税を上回ると差額が還付される仕組みになっています。

しかし、簡易課税事業者は、実際に支払いをした消費税額ではなく、売上げの消費税額にみなし仕入率をかけています。
そのため、実際に支払った消費税額が大きかったとしても還付は受けられません。
大規模な設備投資などを行う予定がある場合は、原則課税方式と簡易課税方式のどちらが良いかを慎重に判断してください。

2.簡易課税に変更すると2年間は戻せない

2つ目は、簡易課税に変更した場合、2年間は戻すことはできないという点です。
原則課税方式から簡易課税方式への変更は、「消費税簡易課税選択届出書」するだけなので簡単です。書類を提出すると、その翌年から適用となります。

しかし、簡易課税方式に変更してしまうと原則課税方式へ戻すのは簡単ではありません。
2年間は戻せないという決まりになっている点も念頭に置き、本当に変更して問題ないかを考えてみてください。

3.簡易課税で納税額が増える可能性も

3つ目は、簡易課税にすると納税額が増えてしまうことがあるという点です。
仕入れなどにかかる消費税額が少なく、みなし税率で計算したほうが大きくなる場合は、節税効果が期待できます。
しかし、仕入れなどにかかる消費税額のほうが大きいケースだと、納税額が多くなってしまうことがあるので注意が必要です。

現在行っている事業の売上げなどを考慮し、どちらがお得になるかを考えてみてください。
簡易課税方式で納税額が増えてしまうのであれば、原則課税方式のままにしておいたほうが無難です。
特に将来的に仕入れが多くなる予定がある場合などは、原則課税方式をおすすめします。

消費税を申告する流れ


消費税の申告をするためには、書類の準備が必要です。必要な書類の準備を含む流れを下記にまとめました。

1.消費税申告書を準備する

消費税申告書は、国税庁のホームページでダウンロードしたり、国税庁のホームページ内にある確定申告書作成コーナーで記入してプリントアウトしたりできます。
また、税務署の窓口でも入手可能です。

記入する内容は、提出日・提出先の税務署名・納税地・名称もしくは屋号・個人番号もしくは法人番号・代表者の氏名または氏名です。
確定申告のサポートをしてくれるソフトやサイトなどを使うと簡単に入力できます。

2.必要書類を用意する

書類の準備も忘れてはいけません。必要な書類は、原則課税方式と簡易課税方式で異なることも注意すべきポイントです。

原則課税の場合は、以下の書類が必要です。

  • 消費税及び地方消費税の確定申告書(一般用)
  • 税率別消費税額計算表兼地方消費税の課税標準となる消費税額計算表
  • 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表
  • 消費税の還付申告に関する明細書(還付の場合)

簡易課税は以下の書類が必要となります。

  • 消費税及び地方消費税の確定申告書(簡易用)
  • 税率別消費税額計算表兼地方消費税の課税標準となる消費税額計算表
  • 控除対象仕入税額等の計算表

3.税務署へ提出する

消費税の申告書は、納税地を所轄する税務署に提出します。提出する場所は、個人事業主でも法人でも同じです。
しかし、提出期限は個人事業主だと翌年の3月31日まで、法人だと決算期末から2カ月以内となっているので注意してください。

また、課税期間も異なります。個人事業主は3カ月ごとに分ける時は1月1日から、1カ月ごとに分ける時は1月1日から区分したそれぞれの期間の消費税を計算します。
法人が課税期間を分けるのであれば、事業年度の初日から3カ月もしくは1カ月ごとに分けたそれぞれの期間が課税対象になります。

消費税の申告をしないとどうなる?


消費税の申告を正しく行わないと、付帯税が課されてしまいます。申告期限を過ぎてしまったり、申告内容に誤りがあったりした場合に課されるので注意してください。

付帯税には、無申告加算税や過少申告加算税、延滞税といったものがあります。
無申告加算税は申告の義務を怠っていると発覚した場合に課されるもので、税率は税額50万円までは15%、50万円を超える部分は20%です。
過少申告加算税は本来の金額よりも少なく納付した時、延滞税は申告期限を過ぎた時に課されます。

最も重いのは重加算税です。これは悪質性が高いと判断された時に加算されます。
期限内では、過少申告加算税に加えて納付すべき金額の35%、期限を過ぎた場合は無申告加算税に加えて納付すべき金額の40%と非常に重い罰則です。

インボイス制度の導入による消費税計算の変更点


2023年10月1日からインボイス制度がスタートします。インボイス制度が始まると、消費税の計算にも変更点が出てきます。
最後に、どのような変更点があるのかをまとめました。

1.仕入税額控除の対象か判別しなければいけない

インボイス制度は、「インボイス(適格請求書)」に該当する請求書が必要になります。そうではない請求書を使った場合、仕入税額控除の対象となりません。
インボイスの発行ができるのは、前期の売上高が1,000万円以上などの条件をクリアした課税事業者だけなので、対象となるか確認する手間が増えてしまいます。

消費税の計算が複雑になってしまいます。また、消費税の計算だけではなく、取引先などの情報管理も含めて計算しなければいけません。

2.端数処理は1インボイス・各税率で1回

インボイス制度がスタートする前は、消費税の端数計算を購入した商品ごとに行います。
しかし、インボイス制度開始後では1インボイスにつき、税率1回ごとと変更されています。
計算方法自体が変わるため、消費税の計算方法がどのようになるのかを確認しておくことが大切です。

このような計算は、支払い・債権債務管理システムで行われているケースも多くあります。そのため、システムの改修に大きなコストがかかってしまう場合があります。

3.積上げ計算による消費税額の算出も可能に

インボイス制度では、積上げ計算による消費税額の算出も可能です。
それまでは、1年間の総売上げに対して発生する消費税を計算する「割戻し計算」だけが認められていました。
小売店などは積上げ計算の利益が大きくなるケースもあるため、メリットが大きいと感じる業種は増える可能性が高いでしょう。

業種によってはメリットが増えるため、インボイス制度が開始されたら積上げ計算を採用する企業が多くなると予想されます。
しかし、これまでと異なる方法になることから、システムを対応させるための労力などは大きくなることは避けられません。

インボイス制度の最新情報について、詳しくはこちらの記事を>>
【最新】インボイス制度、どうなる?令和5年度税制改正大綱による変更点・経過措置を解説

まとめ

消費税の申告は、課税事業者であれば必要不可欠です。申告のために必要な書類や期限を確認し、漏れがないように気を付けてください。
期限を過ぎてしまうなどすると付帯税が課せられて大きな負担になってしまうため、注意が必要です。
また、2023年10月から開始されるインボイス制度では、消費税の計算で変更点があるため、制度開始前に確認しておきましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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