法人の節税対策13選|社宅・保険・車・共済など効果的な方法を徹底解説

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法人ができる節税の裏ワザは多種多様!自社に合うものを選ぼう


会社の利益を最大限に手元へ残すためには、節税対策が欠かせません。同じ売上や利益の企業でも、節税しているかどうかで納税額は大きく変わります。

正しい知識で節税を毎年続けると、節税効果が積み重なり、長期的には数十万〜数百万円の資金が手元に残るケースも少なくありません。法人が効果的に節税するには、経営者自身が節税に関する知識を身につけていることが重要です。

この記事では、経営者が押さえておきたい節税の基本から具体的な実践方法まで解説します。記事を読み終えると、自社に合う効果的な節税対策を選び、すぐに実践できるでしょう。

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法人が節税する時の基本的な考え方


企業は事業で得た利益の中から法人税を納付する必要があります。しかし、少しでも多くの資金を手元に残したいと感じる経営者も少なくありません。企業努力の結果である利益を有効に活用するため、企業ではさまざまな節税対策が行われています。

法人税を節税する方法は、大きく分けて2種類あります。

ひとつは控除制度を利用する方法、もうひとつは損金計上を増やす方法です。控除制度とは、税額を計算する時に一定額を差し引く制度です。所得税額控除は代表的な税額控除となります。

また、損金を増やすことによって所得額を減らせば、課税される額も減少します。例えば、経費を漏れなく計上できているかどうかのチェックも節税の一環です。

ただし、節税と脱税はまったくの別物なので注意してください。節税は、納税額を減らすために法で認められた方法です。

一方で、脱税は意図的に申告すべき所得を申告しないといった納税を免れる違法行為です。虚偽の申告や脱税が発覚すれば刑事罰の対象になるため、法律の範囲内で、正しく制度を利用した節税対策をしましょう。

法人の節税対策(裏ワザ)一覧


企業が納税額を減らす方法は多くあるものの、企業の事業形態や規模、業種によって利用しやすいものとそうでないものがあります。主な節税対策としては、以下の方法が挙げられます。

▼法人節税対策の一覧表

節税方法 内容 メリット 注意点
損金計上 不要資産や在庫を処分 課税所得を圧縮 過度に下落した価格での処分はNG
役員報酬 適正な報酬額で損金算入 法人税軽減 個人税負担とのバランスに注意
未払金・未払費用 決算時点で計上 現金支出前でも損金算入可 債務の確定と金額明示が必要
減価償却特例 30万円未満の資産を即時一括で経費化可能 小口資産を即時損金化できる
  • 年間合計300万円の上限あり
  • 適用期限は2026年3月31日取得分まで
決算期変更 利益を分散 一時的な利益急増を翌期へ繰延 定款変更・届出など手続きが必要
消耗品購入 前倒し購入で経費計上 即時に経費で反映 不自然な量は調査されるリスク
設備投資 経営強化税制に基づき設備導入 税額控除や即時償却が可能 認定計画と期限あり
社宅制度 会社負担分の家賃を経費計上 法人・個人双方で節税 極度に安い家賃設定では個人課税リスクあり
社用車(中古) 耐用年数を短く設定して減価償却費を計上 減価償却を早期に進められる 過度な節税目的は指摘対象
福利厚生 健康診断・社員旅行などの費用を経費に 社員満足度・モチベーションが向上 要件を満たさないと経費不可
法人保険 役員や従業員が加入する保険料を経費に リスク管理と節税
  • 解約返戻金課税に注意
  • 解約返戻率に応じて損金算入の割合が異なる
共済制度 掛金を全額損金算入 将来の備えと節税 解約時に課税あり
分社化 子会社設立で利益を分散 法人税率の軽減効果 実態なき分社化は脱税リスク

下記では、より詳しい節税対策を紹介するので、自社でどれを利用できるかチェックしてみてください。

損金を計上する(不要資産や不良在庫の処分)

法人税は、企業の収益益金から損金を差し引いた課税所得で計算します。つまり、損金を計上して課税所得を減らすことで節税できます。損金計上するといっても、経費を増やすために新たに出費を増やす必要はありません。

例えば、今後使う予定のない固定資産がないか確認してみてください。不要な固定資産や不良在庫は、売却や除却により損金に計上可能です。

帳簿上の資産として計上されているものを処分することによって、売却損や除却損を計上します。売却損は、固定資産を売却した時に帳簿価格に対して売却価格が下回った場合の損金、除却損は売却ではなく廃棄した時の損金です。

また、在庫品は保管中に、型崩れや色褪せといった理由で商品価値が下がる場合があります。その場合には、仕入時点よりも価値が下がった分を評価損として計上します。

役員報酬を適正化する

役員報酬は適正に手続きすると経費として損金参入でき、課税所得金額を減らすことが可能です。ただし、不当に役員報酬を高く設定すると、役員個人の所得税・住民税が増えてしまいます。

企業にかかる法人税と個人にかかる所得税では税率も違うので、それぞれに課せられる税金を計算して適切なバランスにしなければいけません。

役員報酬は、自分だけでなく業務に従事している親族や家族に支払う方法もあります。適当な金額で役員報酬を決めている人や長く役員報酬を変えていない人は、節税に活用できないかどうか検討してみましょう。

ただし、役員報酬を変更できる時期は、事業年度が開始してから3カ月以内と決まっています。です。つまり、期末になってから所得の納税額を減らすために、急に役員報酬を増やすことはできません。

未払金・未払費用を計上する

決算前に漏れなく計上し、節税につながる経費には、未払金や未払費用もあります。

未払金とは、商品やサービスを購入して提供を受けたものの、現時点で代金の支払いが終わっていないものです。未払費用は、役務の提供を受けていて支払いが終わっていない費用です。例えば、まだ支払っていない保険料や従業員給与が該当します。

未払金や未払費用であれば、現時点で現金を支払っていなくても費用計上が可能です。ただし、未払いとして計上するためには債務の確定により支払いの義務が発生し、具体的な金額が明らかになっていなければいけません。

減価償却資産の特例を活用する(少額減価償却・即時償却)

資産の中には、時間とともに価値が減少する減価償却資産があります。具体例としては、車両や建物、機械装置、ソフトウェアなどです。減価償却とは、減価償却資産の取得費用を法定耐用年数に応じて分割し、経費計上する方法です。

青色申告をしている中小企業の減価償却では、2026年3月31日までに取得して事業の用に供した場合、30万円未満の資産であれば取得年度の損金として全額計上できます。本特例の適用を受けられる減価償却資産の取得合計額は、年間300万円までです。

適用を受けるには、確定申告で損金を計上し、「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書」を添付してください。

決算期を変更して利益を分散する

決算期を変更する方法も節税対策の一つです。決算期の直前になって大きな売上が計上されるケースに有効であり、利益を分散できます。決算月を売上が急増する前に変更すれば、その分の利益を翌期に回すことができます。

ただし、決算期の変更には定款変更や株主総会の特別決議、税務署への届出が必要です。議事録の作成も必要になるので忘れないようにしてください。

消耗品を購入する(決算直前の対応策)

決算直前に節税を検討する場合には、消耗品を購入する手段があります。事務用品やティッシュペーパーといった消耗品は、購入後すぐに経費計上が可能です。

ただし、不自然な量を購入すれば、税務調査で指摘されてしまいます。前倒し購入として妥当な範囲にとどめ、利益圧縮の手段として活用しましょう。

設備投資減税を活用する(中小企業経営強化税制)

設備への投資も、節税に効果的です。中小企業経営強化税制は経営力向上計画の認定を受けた中小企業が、計画に基づいて特定の設備を導入した場合に税額控除または即時償却が利用できる制度です。

設備投資減税とも呼ばれている制度で、税額控除であれば設備費用の税額を最大で10%控除できます。即時償却では、設備費用をその年度に全額損金算入できます。本制度の適用期限は2027年の3月31日までです。

社宅制度を導入する(役員・従業員向け)

役員や社員は、自分が住んでいる家を社宅扱いにすることで、家賃を経費計上できます。会社が家賃を負担することは、福利厚生の一般として事業上必要な経費と認められています。

また、会社が住宅を購入して貸し付ける形にすれば、住宅は会社の資産となって減価償却が可能です。会社が住宅を借りる場合には、住宅を役員や社員に貸して借上社宅とし、会社が負担する家賃の経費計上が可能です。社員の家賃を負担することは、会社にも社員にも両方メリットがあります。

例えば、給料から30万円支払っていたケースでは、給料を下げた分を会社が社宅として負担した場合、会社の経費として計上可能です。社員は課税対象となる給与が家賃分減少するため、所得税や住民税、社会保険料が減少します。

ただし、あまりにも役員や社員の家賃負担が少なくなってしまうと、会社が負担している家賃分が実質的な給与として扱われて個人の課税対象となる可能性もあります。

社用車は中古車を購入して減価償却を有利にする

会社で使用する社用車を購入する場合には、新車よりも中古車を選ぶことで節税になるケースがあります。新車と中古車では、減価償却費の計上方法に違いがあるためです。

一般的な新車の耐用年数は6年間です。つまり、6年間にわたって分割して減価償却していきます。一般的に耐用年数が少なくなると、一度に経費計上できる減価償却費は大きくなります。

中古車は、法定耐用年数ではなく事業の用に供した時以後の使用可能期間として見積もられる年数で計算可能です。また、法定耐用年数を越えた場合には、法定耐用年数の20%に相当する年数で減価償却が可能です。

つまり、中古車を購入すると、減価償却費をより多く計上する方法を利用できます。

福利厚生を充実させる(健康診断・社員旅行など)

社員のために会社が負担する福利厚生費も費用計上が可能です。社員旅行や健康診断の費用、レクリエーション費用といった充実した福利厚生は社員にとってもメリットがあります。ただし、福利厚生費として認められるためには、事業ごとに一定の要件を満たさなければいけません。

例えば、健康診断の場合には以下の要件が必要です。

  • 全社員を対象にしている
  • 社員全員分の費用を会社が負担している
  • 合理性のある内容にしている

導入する際は、福利厚生を拡充する場合には、経費として計上できるかどうか事前に確認しておきましょう。

法人保険に加入する

法人向けの保険に加入すると、保険の種類によっては保険料の全額か一部を経費計上できます。役員や従業員を被保険者として保険に加入することによって、会社のリスクマネジメントにもなります。解約した際には、解約返戻金も受け取ることが可能です。

ただし、保険料によっては資金不足になってしまう、解約のタイミングによって損する可能性もあるため、注意が必要です。いつまで支払いを継続できるかをシミュレーションして検討しましょう。

中小企業向け共済に加入する(退職金共済・経営セーフティ共済など)

「中小企業退職金共済」や「経営セーフティ共済」の掛金は、全額損金として計上できます。

「中小企業退職金共済」は、退職金制度を自社で準備することが難しい中小企業向けの共済です。退職金共済契約を結ぶことで、退職者に退職金を支払えます。

「経営セーフティ共済」は、取引先の倒産などで売掛金が回収できなくなった時に事業資金を借入れできる共済制度です。自己都合で解約する場合には、解約返戻金が課税対象になるものの合法的に節税が可能です。

社内事業を分社化して利益を分散させる

経営が軌道に乗って売上げが伸びてきたら、事業部を子会社化して利益を分散する節税方法があります。子会社化することによって利益が分散されるため、適用される法人税率を低くできます。

加えて、子会社に移す際に退職金を支払えば、この退職金は経費として計上可能です。分社化は高度な専門知識を要しますが、大きく節税できる方法なので検討してみましょう。

法人が節税する時の注意点


節税には多くの方法がありますが、どの方法でも取り組めばいいというわけではありません。過度な節税は税務署からの指摘につながるリスクがあります。

ここでは、企業が節税する時に意識すべき注意点をまとめました。

スケジュールを意識する

決算直前に慌てて節税しようとしても、選べる節税対策は限定されます。売上を予測しながら計画的に実行することが重要です。可能であれば、年度の初めには納税のスケジュールと節税対策を講じるためのスケジュールを立てておきましょう。

決算の3カ月前には、納税額をシミュレーションし、実行できる対策を検討するおくことをおすすめします。

無駄な出費をなくす

節税のためとは言っても、無駄な出費をして資金繰りを悪化させてしまえば本末転倒です。

例えば、売上が急伸したからといって来年度以降も好調とは限りません。節税として必要がない設備導入や、福利厚生の過剰な拡大は来年度の資金繰りに影響する可能性があります。

事業に必要な設備かどうか、社員にとってメリットがあり適正な福利厚生かどうかを判断して行いましょう。

適正な会計に努める

節税対策は、法に則って税金を減らす方法であり、適正な会計処理が前提です。しかし、売上を偽装したり経費でないものを計上したりすれば、税務調査で指摘されてしまいます。

指摘を受けると、修正申告や正しい額での納税、場合によっては過少申告加算税や延滞税などが求められます。日頃から税務処理に関する資料を適切に保管し、適正な会計処理の根拠を客観的に回答できるよう税務調査に備えておきましょう。

ペーパーカンパニーは脱税になる危険性がある

親会社と利益を分ける節税方法を上記で説明しましたが、実態のないペーパーカンパニーを利用すると脱税とみなされるリスクが高まります。ペーパーカンパニーの設立自体は合法でも租税回避への規制は厳しくなっています。

分社化する場合には、事業実態をもった企業として指摘を受けることがないように実施しましょう。

【事例付き】節税と脱税の違い

節税と脱税の大きな違いは、合法か違法かです。ここでは、社宅を事例に判断基準を見ていきましょう。

判断 事例 内容
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福利厚生と認められる社宅 ・役員や従業員が適正な家賃負担
・福利厚生として妥当な実態が伴う
否認リスクあり 相場から逸脱した社宅 ・役員の家賃負担が極端に低い
・実態が役員への給与と判断される
脱税 実態のない社宅 ・賃貸契約があるものの誰も住んでいない社宅
・役員親族などが無償で居住

節税とみなされるか、脱税とみなされるかは、実態が伴っているかどうかで判断されます。脱税行為が発覚すると、本来の納付税額の1.5倍以上の支払額になるケースも少なくありません。また、行政上の処分や刑事上の処分、社会的な制裁が下されることになります。

脱税がもたらすリスクは計り知れないため、正しいルールの中で計画的に節税を行い、会社の健全な成長につなげましょう。

まとめ・法人の節税対策は適正な手続きで実施しましょう

企業にとって資金繰りは、どれだけの資金が手元に残せるかが重要な問題です。売上が伸びてきたばかりの時期は節税対策をしなければ、納税額が大きくなり、手元資金が不足してしまいかねません。

少しでも多くの利益を事業資金として活用するためには、さまざまな節税対策の知識を習得しておくかが重要です。自社で着手できる節税対策がないか本記事で解説した内容を参考にチェックしてみてください

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(編集:創業手帳編集部)

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