法人決算を自分でやるには?メリット・デメリットや申告の流れを解説
法人決算を自分でやることは可能!やり方や注意点を確認しよう
法人決算は、企業の業績を確定させるためのものです。中には、法人決算を自分でやろうと考えることもあるかもしれません。
自分で行うことも可能ですが、正しい方法や注意点などを決算前に把握しておくことがとても大切です。
そこで今回は、法人決算を自分で実施する時のメリットやデメリット、必要な書類、流れなどを解説します。注意すべきポイントも触れているので、参考にしてみてください。
この記事の目次
事業年度ごとに発生する法人決算とは?
法人決算は、企業や団体などの法人が毎年実施している財務状況をチェックするための作業です。
結果をまとめた決算書類を作成します。法人決算を行う際は、会社法や法人税法などの法律・規則に従わなければいけません。
法人決算を実施する目的は、企業や団体の財務状況を正しく判断することです。決算書類には、賃借対照表・損益計算書・株式資本等変動計算書・個別注記表などが含まれます。
このような書類があれば、資産・負債・純資産・費用・利益・売上高などの情報を客観的に判断できるようになります。
企業の経営者や株主、投資家などが業績・財務状況をチェックし、適切な経営戦略や投資判断の指標として活用することも可能です。
中小企業は法人決算を自分で実施するのに適している
法人決算を自分で実施するのに適しているのは、スタートアップ企業や中小企業です。
会計士や税理士に依頼するケースも多くみられますが、専門知識がなくても可能です。自分で行う場合は、簿記3級ほどの知識があると実施しやすくなります。
スムーズに法人決算を自分で行うためには、法人税申告書の作成などができる会計ソフトを利用することをおすすめします。
法人決算を自分で行うメリット・デメリット
法人決算を自分で行うメリットとデメリットを把握しておく必要があります。続いては、どのようなメリットとデメリットがあるのかをまとめました。
【メリット】税理士に依頼するコストややりとりの手間が減る
自分で法人決算を行えば、税理士に依頼するコストややりとりにかかる手間を省けます。
税理士費用が大きな負担になる場合もあり、削減できるのは大きなメリットだといえます。打ち合わせにも時間がかかるため、手間を省くためにも自分で行うのは有用です。
税理士に法人決算を依頼すると、15万~25万円ほどの報酬を支払うのが一般的です。税理士とのコミュニケーションがうまく取れずに苦労する場合もあるかもしれません。
自分で行えば、コストや時間的な負担を軽減できるといったメリットを享受できます。
【デメリット】専門知識が必要で申告作業に時間がかかる
法人決算を行うためには、専門的な知識が必要です。正しい知識がないと、その都度調べながら書類を作成しなければいけないので、膨大な時間がかかってしまいます。
コストの削減ややりとりの手間を省けても、時間がかかってしまえば結果的に自分で行うことのメリットは少ないといえます。
法人決算などに関する専門知識を持つ税理士からアドバイスを受けられないと、節税対策が不十分になることもあるかもしれません。
また、書類に不備があれば、差戻しや税務調査の対象になるリスクもあります。不備のない書類を作成するためには、入念なセルフチェックが必要不可欠です。
経理を雇って税務を担当させることも可能ですが、顧問税理士よりもコストがかかります。なぜなら、毎月給与として20万円ほどかかってしまうからです。
法人決算を自分で行うために必要なこと
前述のとおり、法人決算は自分で行えます。次に、法人決算を自分で行うために必要なことを解説します。
専門的な知識を身につける
法人決算を自分で行うには、専門的な知識を身につけることが必要不可欠です。
経営者が税理士に負けないくらい知識やノウハウを持っていれば、自分で法人決算を行っても問題ありません。
経営に関する知識はこれまでに身につけてきた税法だけではなく、税法改正に関する最新情報や投資経営に関するものなど多岐にわたります。
情報は、オウンドメディアや動画サイトなどで入手可能です。自身の会社の規模や経営状況に合わせた情報を取捨選択し、経営に活かせれば大きな強みになります。
多くの情報を手に入れるだけでなく、見極める力を培っていくこともポイントです。
経理担当者を雇用する
経営者が税理士並みの知識を持っていない場合は、経理担当者を雇用するという方法があります。
社内に知識や経験のある人材を雇用すれば、税理士に依頼しなくても安心して任せられます。
税理士ではなくても、会計事務所で働いた経験がある人材なら、決算作業や申告書の作成は可能です。
これまでに培ってきた経験をもとにアドバイスもしてもらえるでしょう。しかし、有能な人材は需要が高いのでなかなか見つかりません。
また、採用できたとしても常時雇用となるとコストが高くなってしまうので、それを加味した上で採用するか否かを決めるようにしてください。
法人決算で必要となる書類
法人決算を行うためには、準備しなければいけない書類があります。必要な書類は以下のとおりです。
書類の種類 | 内容 |
総勘定元帳 | 経理処理を科目ごとに記録した書類 |
領収書綴 | 経費や領収書を日付順に綴った書類 |
決算報告書 | 賃借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書・株主資本等変動計算書など |
法人税申告書 | 定められている複数の別表を決算報告書に添付した書類 |
法人事情概況説明書 | 事業内容・従業員数・経理状況・取引状況などを記載した書類 |
消費税申告書 | 消費税や地方消費税の申告を行うために必要な書類 |
税務代理権限証書 | 申告書の提出や税務署の立ち合い、問い合わせ対応などを税理士に委託した時に必要な書類 |
地方税申告書 | 法人住民税や法人事業税などの申告を行うために必要な書類 |
勘定科目明細書 | 主要な勘定項目ごとに収支の詳細を記載した書類 |
法人決算を行う流れ
法人決算を自分で行うなら、どのような流れなのかを把握しておくことも重要です。以下に、法人決算の流れをまとめました。
1.当年度分の帳票の整理・記帳を行う
まずは、当年度分の帳票の整理・記帳を行います。帳簿をもとにして決算が行われるため、記帳は決算処理前に完了させる必要があります。
決算の直前にまとめて帳票の整理や記帳を行おうとすると、作業料が多くなってしまうため、ミスを誘発しやすくなるので注意が必要です。
正しく作業を行うには、できるだけ溜め込まないようにしてください。毎月こまめに帳票のチェックや記帳を行っていれば、ミスを減らすことにつながります。
帳簿のデータと残高の突き合わせも忘れずに行い、内容が合っているか確認するとさらに精度が上がります。
2.試算表を作成する
帳簿の整理や記帳を済ませたら、試算表を作成します。このタイミングで作成されるのは「決算整理前試算表」というものです。
試算表は、記帳の整合性を確認するために使用する集計表の役割を担っています。
確認する時に重視されるポイントは、試算表における借方と貸方の合計値が一致しているかどうかです。
もし数値に違いがある場合は、仕訳や入力したデータに何らかのミスがあると考えられるため、見直しが必須となります。
3.決算整理仕訳をする
決算整理仕訳は、事業年度をまたいで行われる取引きを今期分と来期分に分け、整理します。
支払いが済んでいないものやこれから代金の受取りを行うものなどは、入金のタイミングが来期になる場合があります。
そのような取引きがあるかチェックし、帳簿の修正を行ってください。
決算のタイミングで棚卸資産の残高をチェックするため、在庫の点検や計測を行う実地棚卸を行って売上原価の計算、固定資産の減価償却をします。
決算整理仕訳が済んだら、試算表を再度チェックし、確定させます。
締め日が20日に設定されている場合だと、最終月の21日~末日の売上高は未計上です。
計上未済にならないようにするため、取引先から送られてくる翌年度の請求書をもとに、最終付の売上高を日割計算し、当期分に含めます。
4.決算書を作成する
次に、決算書を作成します。作成する書類と内容は以下のとおりです。
書類の種類 | 内容 |
貸借対照表(B/S) | 保有する資産や返済しなければいけない負債、返済しなくても良い純資産などを知る指標になる |
損益計算書(P/L) | 収益・費用・利益から分析し、問題がある場所を知るための指標になる |
個別注記表 | 貸借対照表や損益計算書などの書類の注記事項を一覧にまとめている |
株主資本等変動計算書(S/S) | 1年を通して株式資本がどのように変動したのか示す |
計算書類に係る附属明細書 | 計算書類(貸借対照表・損益計算書・個別注記表・株主資本等変動計算書など)を補足するための重要事項を示す |
事業報告書 | 事業年度ごとの事業内容などをまとめている |
5.法人税申告書の作成
決算書をもとに納めなければいけない税金を計算したら、法人税申告書の作成を行います。
法人が申告する税金には、法人税・消費税・法人事業税・法人住民税などがあります。法人税の申告書は自分で作成するのが難しいので、税理士に依頼するのが一般的です。
法人税の金額は、「所得金額=税引き前利益+加算-減算」、「法人税額=所得金額×法人税率」という計算式で算出できます。
法人税申告書は、複数枚の別表で構成される書類です。会計ソフトを使えば、科目内訳書や事業概況説明書もほぼ自動で作成でき、印刷すれば完了するので非常に簡単です。
6.法人税申告書の提出・納税
法人税申告書を作成したら、決算書と一緒に税務署へ提出します。
そして、確定した税金を納めます。税務署や都道府県税事務所など、税金によって申告先が異なるので注意してください。
申告と納付の期限は、事業年度終了日の翌日から2カ月以内と定められている点のも注意しなければいけません。
また、提出した書類は保管しておく必要があります。税法上では7年、会社法では10年の保管が定められています。
貸借対照表・損益計算書・個別注記表など保管しなければいけない書類が決まっているので、あらかじめ確認しておいてください。
法人決算を自分で行う時の注意点
法人決算を行うために必要な書類の作成には手間がかかります。そのため、こまめに経理作業を行い、できるだけ早く申告作業を行うのが得策です。
日頃から管理が徹底されていれば、決算のタイミングで慌てずに済みます。
記載漏れやミスがあっても気がつき、修正する心の余裕も生まれます。経理業務を最適化し、効率的な処理を行えるように心掛けておくことが大切です。
相談できそうな税理士が周りにいる場合は、請求書や通帳のコピーなどをクラウドサービスなどで共有することをおすすめします。
データが更新されてもすぐに共有できる環境が整っていれば、決算書類を作成する時にも相談しやすくなります。
法人決算は税理士に依頼したほうがいい?
法人決算は自分でも行えますが、専門的な知識がない場合や社内に経理スタッフがいない場合などは難しいと感じるかもしれません。
最後に、法人決算を税理士に法人決算を任せるメリットや税理士に依頼する際の注意点をご紹介します。
税理士に法人決算を任せるメリット
法人決算に必要な書類は非常に煩雑です。そのため、知識がないとミスや漏れが増えやすくなります。
間違えた書類を提出すると、前述したように税務調査の対象になったり、書類の書き直しをしなければいけなくなったりします。
そうなることを防ぐには、税理士へ依頼するのが無難です。
税理士に依頼することで、決算書類の作成にかかる手間を省いたり、ミスのない申告を行ったりできるようになります。
税法の改正も税理士は熟知しているので、優遇措置や補助金、助成金なども利用しやすいでしょう。
有益な情報を見落としてしまったり、税金を納めすぎたりするといった事態の回避にもつながります。
税理士に依頼する場合は相性が大切
税理士に依頼するのであれば、相性がとても重要です。相性が悪い税理士だと、根本的な考え方に相違が生じる場合もあります。
依頼する前に、直接会って話してみてください。実際に話してみると、話しやすいか、考え方に相違がないかなどを把握できるからです。
あらかじめどのような人物かを知っていれば、「この人なら安心して任せられる」・「考え方が違うから、うまくいかなそうだ」などを分析しやすくなります。
相性が良い税理士に出会うことができれば、相談もしやすくなるので書類作成などもスムーズにできるようになります。
まとめ
法人決算は、経営者などが自分で行うことも可能です。しかし、書類が煩雑でミスなどもしやすいため、税理士に依頼するのが一般的です。
コスト削減などを目的に自分で行う場合は、今回紹介した基本的な流れなどを踏まえた上で、綿密に必要書類を作成することをおすすめします。
(編集:創業手帳編集部)
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