変更登記とは?登記の種類と手続き方法

創業手帳

変更登記はどのような時に必要?必要なケースごとの提出書類と手続きの流れを解説


会社経営をしていると、状況によっては変更登記の手続きが必要となることがあります。変更登記にはいくつもの種類があり、内容によって手続き書類が異なります。

法人設立をするなら、変更登記の必要なケースや手続き方法などを知っておくことが必要です。
何を変更した場合に必要となるのか、手続きに何が必要か、変更登記の種類や手続きの方法、期間などをまとめて解説します。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

変更登記とは


変更登記とは、登記事項に変更があった時に行う手続きです。登記は行政の仕組みのひとつであり、種類は法人登記や商業登記、不動産登記などがあります。

個人や法人の財産の権利や義務などを登記簿に記載する手続きで、登記簿に記載された内容は権利の主張や信用性の維持に役立ちます。
登記簿の内容を変更することが、変更登記です。

法人設立登記に記載した内容に変更があった時に必要

変更登記は、法人設立登記に記載した内容に変更があった時に必要となる手続きです。
法人設立登記では、社名・所在地・代表者・役員・事業内容など、会社に関する重要な事項を登録し、一般に開示できるようにします。

情報の開示によって会社は信用性を維持し、顧客や仕入先にも安心して取引をしてもらえますが、登記の内容と実情が異なっていたら信用は失われます。
そのため、会社の組織や事業内容などに変更があったら、速やかに変更登記を行わなければいけません

何か変更があったにもかかわらず、変更登記をせずに放置しておくと、代表者個人に対し100万円以下の過料が課されることがあります。

費用は登記内容によって異なる

変更登記をする際には、手続きの費用として登録免許税が必要です。
登録免許税は変更登記の種類によっても異なり、同じ変更登記であっても会社の規模や行う内容によって違う場合もあります。

登録免許税の算出方法も、申請件数1件あたりや1カ所あたりで決まっているものや登記した金額に応じて計算するものなど、登記の種類によってバラバラです。
人や場所の変更は1件あたりで算出することが多く、資本金などの金額を変更する場合にはその金額に税率を掛けて計算します。

また、それ以外に印鑑証明書などの必要書類を揃えるための費用が発生することもあり、手続きを専門家に代行してもらう際には依頼料も発生します。

手続きの期限は2週間

変更登記の期限はほとんどの種類が2週間となっています。
一部の変更登記では3週間のものもありますが、いずれにせよ変更後は早めに手続きをしたほうが安心です。

会社の変更登記が必要なタイミングと必要書類・費用


会社で変更登記が必要となるケースは複数あります。
会社の変更登記の種類は、必要なタイミングごとに異なるため、何か重要な事項を変更した時には変更登記が必要か否かを必ず確認しておきましょう。

会社で起こりうる重要事項の変更で必要な登記の種類、必要書類と費用を紹介します。

取締役や監査役の就任・辞任・退任・解任

取締役や監査役などが変わった場合には役員変更登記が必要で、役員変更登記をするには、株主総会を招集し、決議を行うことも求められます。
決議後、登記の必要書類と費用を揃えて変更登記を行います。

役員変更登記では以下の書類が必要です。

  • 役員変更登記申請書
  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 就任承諾書
  • 印鑑証明書・本人確認書類
  • 定款
  • 辞任届・死亡届

役員が就任・辞任・退任・解任した場合など、それぞれの状況に応じて必要書類は異なります。

費用は資本金が1億までの会社では1件1万円、1億を超える会社では3万円です。複数の役員を変える際には、まとめて登記申請すると1件の費用で済みます。

役員変更登記の必要書類や費用について、より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
役員変更登記は自分でできる?登記手続きが必要な時期や方法、費用について解説

新規事業を立ち上げ・事業からの撤退

これまでとは違う新規事業の立ち上げや既存の事業からの撤退では、目的変更登記の申請が必要です。
事業内容は会社の事業目的として定款に必ず記載される「絶対的記載事項」のひとつです。定款を変えるためには、株主総会を開催して決議しなければいけません。

目的変更登記では、以下の書類の準備が必要です。

  • 目的変更登記申請書
  • 株主総会で定款の変更を決議した議事録
  • 株主リスト

目的変更登記にかかる登録免許税は、一律3万円です。役員変更登記と同じく、申請件数1件あたりの金額となります。
今後の事業展開のために事業の追加や削除が複数予定されている場合には、できるだけまとめて申請するとコストダウンできます。

増資のために株式を発行

資本金を増額するために募集株式を発行する際には、募集株式の発行の登記が必要です。申請で必要となる書類は、取締役会設置企業と非設置企業とで異なります。

基本となる必要書類は以下の通りです。

  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 募集株式の引受けの申込みを証する書面又は総数引受契約書
  • 払込みを証する書面(通帳のコピーを綴じたもの)
  • 資本金の額の計上に関する証明書

取締役会設置企業では、以下の書類も揃える必要があります。

  • 取締役会議事録

増資の登記で必要な登録免許税の金額は、増加した資本金額の1,000分の7です。また、この金額が3万円に満たない場合には、申請1件につき3万円となります。

株式を分割

株式を分割した時に必要となるのは、株式分割登記です。取締役会設置企業では取締役会議事録、取締役会非設置企業では株主総会議事録の提出が必要となります。
それ以外の必要書類は以下の通りです。

  • 株式分割変更登記申請書
  • 株主リスト(取締役会非設置会社のみ)

株式分割登記申請でかかる登録免許税は、分割する株式の比率や株式数に関係なく一律で3万円です。

資本金の額の減少

資本金額が減った時には、資本金の額の減少登記をします。会社の資本金は登記事項のため、増えても減っても変更登記が必要です。
減資の際には、事前に減資について株主総会で決議するだけでなく、債権者保護の手続きも行わなければいけません。

債権者保護手続きとしては、資本金の減少の内容や債権者が異議を述べられる旨などを官報に公告し、知れている債権者へは個別催告を行う必要があります。

登記で原則必要となる書類は以下の通りです。

  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 一定の欠損の額が存在したことを証する書面
  • 公告及び催告をしたことを証する書面

また、変更登記に必要な登録免許税は3万円となっています。

会社の名称の変更

会社の名称を変える際には、商号変更登記が必要です。商号は定款の内容として記載されているため、株主総会で決議し、手続きを行うことになります。

商号変更登記で準備する書類は以下の通りです。

  • 商号変更登記申請書
  • 株主総会議事録
  • 株主リスト

また、登録免許税は一律3万円かかります。

社名変更について、より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
社名変更に必要な手続きと費用・注意点を解説

会社が移転

会社の所在地が変わった場合には、本店移転の登記を行います。
会社の移転の登記は、移転先が同じ法務局の管轄内か管轄外かによって必要書類が異なるため注意が必要です。

共通する必要書類は以下の通りです。

  • 本店移転変更登記申請書
  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 取締役会議事録(取締役会設置企業)
  • 取締役の決定書(取締役会非設置企業)

管轄外本店移転では、本店移転変更登記申請書が旧法務局提出用と新法務局提出用の2種類が必要となります。
また、新法務局へあらためて会社の印鑑を届け出るため、印鑑届書も必要です。

登録免許税は、管轄内の場合には3万円ですが、管轄外の場合には新旧の法務局それぞれに必要となるため、倍額の6万円かかります。

支店の設置、廃止

新しく支店を出したり廃止したりする際にも、それぞれ支店の設置、支店の廃止の登記が必要です。
取締役会設置企業では取締役会の決議で決定した後、非設置企業では取締役の過半数の一致で決定した後、登記を行います。

支店の設置の登記には期限が2種類あり、本店の所在地では2週間以内ですが、支店の所在地では3週間以内に登記することになっています。
ただし、本支店の法務局宛を一括して申請書を作成し、本店所在地で一括登記申請することも可能です。支店を廃止する場合も、一括申請できます。

必要書類は登記申請書と取締役会議事録です。登録免許税は設置と廃止、また、支店の場所によって金額が異なります。

本店と同じ管轄に支店を設置する場合、1支店につき6万円がかかります。
本店と異なる管轄の場合には、本店所在地の法務局で6万円、支店の所在地の法務局で9千円、登記手数料として300円が必要です。

本店と同じ管轄の支店を廃止する場合には登録免許税は3万円、本店と異なる管轄の場合には本店の分として3万円、支店の分として9千円、登記手数料として300円がかかります。

会社の分割

会社の分割には、吸収分割と新設分割があり、それぞれに異なる会社分割登記が必要です。
会社分割では、株主総会後、官報公告の期間を1カ月以上設ける必要があります。そのため、計画的に準備を整えて実施しなければいけません。

吸収分割で主に必要となる書類は以下の通りです。

  • 会社分割計画書
  • 承継会社の株主総会議事録
  • 官報公告のコピー
  • 会社分割に異議を述べた債権者がいない旨の上申書

状況によってはこのほかにも書類が必要となることがあります。

新設分割では、上記の書類に加えて、新たに設立する会社に関する書類が増えます。新設分割で必要となるのは以下の書類です。

  • 設立する会社の定款
  • 設立する会社の役員の就任承諾書
  • 設立する会社の役員の印鑑証明書
  • 設立する会社の資本金が会社法の規定に従って計上されたことを証する書面

状況によってはこのほかに必要な書類が増えることもあります。

分割登記にかかる費用は、登録免許税が6万円~、官報公告費用は文字数で費用が異なり、分割についてのみであれば7~8万円ほどです。
吸収分割登記の申請期限は2週間以内ですが、新設分割登記は申請をしない限り分割の効力は生じません。

会社の吸収合併

2つ以上の会社がひとつの会社になる吸収合併では、合併によって消滅する会社と存続する会社でそれぞれに登記が必要です。

消滅会社で必要な登記は解散登記と(必要に応じて)清算人選任の登記です。解散登記では以下の書類を存続会社が提出します。

  • 解散登記申請書
  • 消滅会社の登記事項証明書
  • 株主総会議事録、取締役会議事録
  • 債権者保護手続き書面

消滅会社は解散登記申請書と3万円の登記費用、清算人の選任した場合にはその申請費用9千円を支払い、手続きは完了です。

存続会社の必要書類は以下の通りです。

  • 変更登記申請書
  • 合併契約書
  • 合併に関する株主総会議事録
  • 債権者保護手続きに関する書類
  • 消滅会社の登記事項証明書など必要書類

 

吸収合併では、登録免許税のほか、契約書の収入印紙代や公告に関わる費用が必要となります。
登録免許税は、資本金が増加した場合には増加分に1,000分の1.5、算出された金額が3万円以下の場合や資本金の増加がなかった場合には3万円です。
収入印紙代は1通あたり4万円、公告の費用は目安として5~15万円程度を考えておきましょう。

有限会社から株式会社へ

有限会社が株式会社になるためには、商号変更による設立登記申請が必要です。申請には以下の書類が必要となります。

  • 株式会社設立登記申請書
  • 解散登記申請書
  • 定款
  • 株主総会議事録
  • 就任承諾書
  • 代表取締役の3カ月以内の印鑑証明書
  • 印鑑届出書

有限会社が株式会社になるには株式会社を設立し、有限会社を解散する登記を行うことになります。2つの申請を行うためにかかる登録免許税は、最低でも合計6万円です。

廃業・解散

会社の廃業・解散では、解散登記が必要です。株主総会での決議後、解散と清算人選任の登記を行い、清算後には清算結了の登記を行います。

登録免許税は解散と清算人選任の登記に3万9千円、清算結了の登記に2千円です。そのほかには、官報公告費用や証明書などの取得費用として4万円程度かかります。

代表取締役の住所変更

代表取締役の住所変更登記を行います。
登記申請書と住民票を準備し、登録免許税とともに手続きします。
資本金額1億円以下の株式会社では登録免許税は1万円で、1億円を超える場合の登録免許税は3万円です。

変更登記は自分でできるか


変更登記にはたくさんの種類があり、それぞれに登録免許税などの費用がかかります。しかし、自社で変更登記を行えば、専門家に依頼するよりは費用の削減が可能です。
変更登記は専門家の手を借りずにできるものなのか、考えてみましょう。

手間はかかるが自分でできる

変更登記は、必要書類を整えて管轄の法務局へ届け出る手続き方法です。基本的には、特に専門家のチェックを受けることなく、手続きを完了できます。
そのため、多少の手間を惜しまなければ、変更登記は自分で済ませることが可能です。
内容によっては知識が必要となる場合もありますが、法務局の相談窓口にも相談できます。

手間なく確実にするなら司法書士がおすすめ

変更登記は自分でも可能ですが、手続きの手間を省き、書類の不備などの心配なく行いたい人は、司法書士に依頼することをおすすめします。
司法書士に依頼すれば、自分が時間の都合をつけて書類を準備したり法務局へ出向いたりする必要はありません。

ただし、司法書士に依頼する場合には、手続きにかかる費用のほか、依頼料が必要となります。
登記の種類によっても手続きの難しさや手間に差があるため、費用対効果を考えて依頼を決めましょう。
また、司法書士に依頼した場合には、上記で紹介した手続き書類に加え、委任状が必要です。

変更登記の手続きの流れ


変更登記を自社で行う際には、準備から実際の手続きまでの流れを知っておく必要があります。
手続きの流れを確認して可能そうだと感じたら、自分で変更登記をしてみましょう。

必要書類を準備

まずは、登記で必要な書類を揃えましょう。どの登記にも必要となるのは、登記申請書です。
それ以外の書類は登記内容によって異なりますが、株主総会議事録も多くの申請で必要となります。

法務局へ書類を提出

法務局への変更登記の申請方法には、窓口申請のほか、郵送とオンラインの申請があります。
オンライン申請は申請用のソフトや電子署名できる環境などを整える必要があるため、主に司法書士が行う方法です。
自社で変更登記の申請をする場合には、郵送か窓口での申請が多くなります。

申請では、準備した必要書類を一式、法務局に提出します。窓口へ持参する方法の場合には、書類の不備も確認できるため安心です。

審査後に登記完了

申請書類一式を提出すると審査が行われます。その際に不備があったら法務局から連絡がありますが、登記完了の連絡は来ません。
終わったかどうか確認したい場合には、電話で問い合わせてみてください。

審査は1~2週間ほどですが、法務局ごとに完了期間は違います。完了予定日は法務局窓口、もしくは法務局のホームページから確認することが可能です。

まとめ

変更登記は原則2週間という期限があるため、早めに書類の準備をして申請することが必要です。
手順は基本的にはどの登記でも同じですが、中には官報公告の必要なものなどがあり、ほかの登記よりも費用や時間がかかる可能性があります。

変更登記が必要となったら、自社で行うか司法書士に依頼するかのどちらかで申請が可能です。
自社で行う場合には準備の手間や書類不備が起こるリスクなどがありますが、コストを抑えられます。

創業手帳の冊子版(無料)は、起業前後に必要な手続きや情報などを掲載しています。起業間もない時期のサポートにぜひお役立てください。
関連記事
会社の変更登記を費用を抑えて簡単に行う方法とは? 必要書類が最短7分で完成するオンライン登記サービス「GVA 法人登記」
役員報酬って変更できるの? 決め方や相場、税金について創業手帳の代表が解説します!

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す