30%が廃棄されている花の流通をITの力で変えるCAVIN代表にインタビュー

創業手帳
※このインタビュー内容は2021年08月に行われた取材時点のものです。

生産者がサイト上に花を出品し、それを生花店がスマートフォンやパソコンから直接注文できる革命的なシステムで生花流通を変える

福岡県で花屋と生花農家のBtoBサービスを展開しているCAVIN。一見、結びつきそうもない花とITが、なぜ花業界から注目されているのでしょうか?
また、なぜあえて「花」という分野で、「福岡」というローカルな地を選んで起業したのでしょうか? 代表の小松氏にインタビューしました。

Yuya Roy Komatsu
CAVIN 代表取締役社長 CEO
幼少期から日米を往来。
高校卒業後、フィリピンのスラム地区にてNGOボランティア後、渡米。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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人の気持ちを伝えるための、世界最古のギフトは花

大久保:CAVINさんは花のオンラインマーケットを提供しているんですよね。花とITってあまり結びつかないイメージがありますが、なぜ、花を選んだんでしょうか。

小松:それは、実は私がアメリカにいた時に親しくしていた友人が自殺したことに起因しているんです。
肝心な時に大切な人に言葉をかけることができず、友人がいなくなってしまったということを随分悔やみました。

そこから『SNSでは「いいね」や「シェア」を簡単にするのに、どうして直接言葉をかけることを皆あまりしないのだろう?』と現代のコミュニケーションに疑問を抱くようになりました。

特に日本は幸福度が低く自殺率が高い傾向がありますよね。

人は社会の発展とともに、大切なコミュニケーションの方法を失ってしまったのではないでしょうか。社会がどんどんデジタル化し、コミュニケーションツールが発展している今だからこそ、アナログのコミュニケーションで人と人は積極的に繋がっていくべきではないでしょうか?

大久保:確かに思い当たるところがあります。手書きの文字の温かさや人間味などは、あまり味わうことができなくなったもののひとつですよね。

小松:そうですね。でも、人間は思いを言葉では伝えられないことも多いのが現実です。言葉で伝えられない時、人は何で想いを伝えるのか考えました。

人が愛で、送り、想いを伝えるものが花です。

言葉で想いを全て伝えられるのであれば、花はいらないかもしれません。言葉が十分ならば、人は花を贈らないので。

花を通して人と人とのつながりや、社会の発展とともに忘れてきた何かを取り返したい。
それが私が花を選んだ理由です。

大久保:言葉が十分なら花はいらないというのは名言ですね。
メールやチャットも便利ですが、「花を1本もらう方が雄弁に想いを物語っている」というのは確かに言えるかもしれません。究極のアナログコミュニケーションツールなんですね。

小松:はい。僕は花は世界最古のギフトだと思っています。

花業界が抱えている問題点

大久保:ホームページでも拝見しましたが、花の流通ルートでは多くの花が廃棄されていると聞きました。花の業界が抱える問題点をお聞きしてもよいでしょうか。

小松:私たちが普段花屋で目にしている花は30%のロスが発生しています。廃棄される花の市場規模は実に1,200億円にものぼります。
これはDXによる、サプライチェーンのスリム化の未実施だけが原因だけではありません。

これまでの産業構造での中間業者のブラックボックス化が原因の一つに挙げられます。
例えば、適切な花の管理ノウハウが生産者から花屋に伝わっていないことや、消費者のニーズが花屋を通して生産者に伝わっていないため計画生産が難しいことなどが挙げられます。

それは、花が花屋に流通するまでには「生産者→市場→仲卸→花屋」という長い流通ルートを辿らなければならないということが原因です。

「花の命は短い」と言いますが、まさにその通りで、流通経路が長ければ長いほど、花は途中で枯れてしまい、廃棄せざるを得なくなってしまうのです。

そして、花が花屋に届くまでに存在する中間業者がブラックボックス化しているため、消費者の声が生産者に届かないという問題も抱えています。

生産者は消費者のニーズもよく分からないまま、花屋さんの顔も見えないまま、3割もの量が廃棄される花を生産しているというのが花業界抱えている大きな問題点です。

CAVINのプラットフォームが解決すること

大久保:廃棄率30%ってすごいですね。ネットだと供給までのステップが減るので、廃棄率を下げることができるのでしょうか。

小松:そうですね。CAVINは花屋さんが生産者から直接花を仕入れることができるBtoBのWEBマーケットです。市場も仲卸業者も介さずに、花屋さんは直接生産者から花を仕入れることができます。これによって、従来の流通経路と比べて花屋に届くまでの流通日数を少なくとも3日短縮することができます。これに加えて、さらに中間業者の冷蔵庫での保管期間分も短縮されるので、10日以上も鮮度が良くなることも珍しくありません。

寿命の短い花にとって3日は貴重です。3日短縮できれば、花屋でのフラワーロスの解消と、そもそも花屋に届く前工程で発生していたロスを解消することができます。

そして、生産者も消費者と直接接する花屋とコンタクトを取ることによって、消費者がどんな色のどんな花を求めているのかなどの消費者ニーズを把握することができるようになります。CAVINは流通経路の短縮によって花の廃棄を抑え、中間業者がブラックボックス化している業界の問題点を解決することができるんです。

大久保:CAVINの事業は全国展開しているんですか?

小松:やがては全国展開を視野に入れています。ただし今はまだ、シード期として検証を進めている段階です。

大久保:なるほど。まずはリアルに展開できるエリア的に強いところから始めているというイメージですね。

小松:そうですね。対象エリアをあえて限定することで、素早い対応が取れます。その点、福岡のマーケットは十分なサプライサイドとデマンドサイドが揃っている場所だと言えます。

大久保:顔を見てヒアリングできるのは大きいですね。

CAVINが福岡で起業した理由

大久保:スタートアップで福岡というのは非常に珍しいですね。
どうして福岡で起業したのでしょうか。

小松:僕は今後、大都市のコモディティ化は止まらないと思っています。
だからこそローカライゼーションが必要だと考えています。
私たちCAVINは仲間3人で立ち上げました。
福岡で立ち上げた時には「なぜ東京ではないんだ」との声もありましたが、私たちはあえて福岡での立ち上げにこだわりました。

確かに東京にいれば新しい情報、最新のトレンドを知り感じることができますが、それは私が考えるこれからの日本のあるべき発展ではありません。

それは、これからの日本はローカライゼーションが必要だと考えるからです。
私は歴史と自然資源こそが地域の価値だと考えます。
そこに古くから存在する資源を機能させることこそが、歴史をつむぎ、地域の価値を高めていく。
ローカルにもともと存在するものを生かしてこそ、地域が価値を高め、その地域がたくさん集まり日本全体の価値が高まっていきます。

大久保:花を市場に中央集権的に集めて分配するのは以前は革新的だったんだと思います。
しかし、今は、そうではなくて、通貨などで中央集権から非中央集権という流れがありますが、花の非中央集権というイメージでしょうか?

小松:そうです。
花の業界においても、これまでの市場と仲卸業者による花の中央集権から、BtoBの地方分権へとシフトすべきだと思っています。

それがローカライゼーションが必要だと考える主な理由です。

さらに福岡は花の一大生産地です。
切り花の出荷量が愛知県、千葉県に次いで全国3位となっていることから花のビジネスを行う場所としては最適です。
ビジネスとしてもあえて地域を絞ることによって素早い対応をすることができ、生産者のニーズもタイムリーに把握することができます。
今では福岡県中心部の3分の1の花屋さんが弊社のサービスに加盟しています。

今後のビジョンについて

大久保:趣味性が高い、好きな人が多い産業は昔から賃金が低いという現象があります。
アパレルとかデザイナーはそんな傾向がありますが、花業界についても同じような現象はあるのでしょうか。

小松:そうですね。アーティストの気質は強いと思います。

生花業界で働いている方は、報酬が高い安いではなく「花が好きだから」という理由で働いている方が非常に多いのが実情です。
そして、花が好きな人たちが、中央集権的な既存の流通ルートを使用していることによって、好きな花の30%を捨てているのも現実です。

弊社のサービスが普及していけば、30%もの花の廃棄は減少します。
そして、およそ1,200億円分もの廃棄になっている花が花屋の店頭に並ぶことで、生産者や花屋の売上や所得の向上も期待できると思います。

大久保:海外へはいずれ進出するんですか?

小松香港やシンガポールは秒読み段階でテスト輸送はもう終わっている状態です。今後はいたるところで事業展開していきたいと考えています。

大久保:今回は非常に興味深い話をありがとうございました。

創業手帳の冊子版では、時代の先を読むキーパーソン、起業家のインタビューを掲載しています。新しい知見の情報源としてぜひご活用ください。

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(取材協力: CAVIN 代表取締役社長 CEO Yuya Roy Komatsu
(編集: 創業手帳編集部)



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