AWSはなぜ選ばれるのか?メリットやビジネスでの活用法を徹底解説

創業手帳

世界でトップシェア。人気の「AWS」でビジネスを加速化

サーバーやネットワーク、ストレージなどのITリソースをインターネット経由で利用できるクラウドサービスは、利便性が高いことからビジネスシーンでの活用が増えています。

中でも世界でトップシェアを誇る「AWS」はAmazonが提供するオンラインストレージで、サービスの豊富さや優れた拡張性、セキュリティレベルの高さなどで人気となっています。AWSがあれば、業務の効率化や加速化、新領域の開拓などが実現できます。

本記事では、AWSの特徴やサービスの種類、メリット・デメリット、活用法などについて解説します。導入時の注意点も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

AWSとは?

AWSは、Azure、GCPと並ぶ三大クラウドサービスのひとつです。最初にAWSの特徴を、Azure、GCPとの違いをまじえて解説します。

AWSの特徴

「AWS(Amazon Web Service)」とは、Amazonが提供する100以上のクラウドコンピューティングサービスの総称です。AWSは現在245の国と地域でサービスを提供しており(※1)、常に業界のトップシェア(※2 2023年第1四半期32%)を誇るパイオニア的存在です。

特に豊富なサービスと優れた拡張性、世界中のセキュリティ規制にも対応しているセキュリティレベルの高さなどが評価されています。またAWSのデータセンターは世界中分散されており、日本語によるサポートも24時間365日受けることが可能です。

※1:出典「AWS グローバルインフラストラクチャ」
※2:出典「第 1 四半期の企業のクラウド インフラストラクチャ サービスへの支出」Synergy Research Group

Azureとの違い

「Azure(Microsoft Azure)」は、Microsoftが提供しているクラウドサービスです。OfficeをはじめとしたMicrosoft系サービスやテクノロジーとの親和性が高いことが最大の特徴で、2023年第1四半期のシェアはAWSに次ぐ2位で23%(※2)となっています。
さまざまなアプリケーションやサービスとの連携のしやすさや、高いセキュリティ機能に定評があります。

GCPとの違い

「GCP(Google Cloud)」は、Googleが提供しているクラウドサービスで、AWS・Azureに継いで世界第3位のシェア(※2 2023年第1四半期10%)を誇ります。
セキュリティが強固で安全性の高いインフラ環境・技術を利用でき、特に機械学習やAI開発、ビッグデータの高速分析が得意分野です。

AWSの主な機能とサービス

AWSはクラウド上であらゆるサービスやソフトウェアを提供しています。ここからは、AWSの代表的な機能と提供しているサービスの種類を解説します。

【主なサービスとサービス名】

主なサービス サービス名
コンピューティングサービス Amazon EC2
データベースサービス Amazon RDS
ストレージサービス Amazon S3、Amazon EBS
ネットワークサービス VPC、CloudFront
アプリケーション開発サービス AWS CodeStar
データ分析ツール Amazon Forecast

コンピューティングサービス

コンピューティングサービスとは、データの計算や処理を行う仮想サーバーを提供してくれるサービスのことです。OSの実行環境を、必要なときに必要な分だけ簡単に用意することができ、自社でサーバーを購入・構築する必要がないため、サーバーの購入費用や保守・運用コストを抑えられます。
代表例として「Amazon EC2( Amazon Elastic Compute Cloud )」が挙げられます。

Amazon EC2( Amazon Elastic Compute Cloud )

「Amazon EC2」はAWSの最も基本的なサービスで、AWS上に仮想サーバーを作成するサービスのことです。Webスケールのクラウドコンピューティングを、簡単に利用できるように設計されています。
EC2を使ってインスタンスを複数構築して冗長化したり、必要に応じてハードディスク・メモリの変更したりなども、簡単操作でできるのがメリットです。

データベースサービス

データベースサービスとは、AWS上でデータベースを利用できるサービスです。顧客や商品のリストなど情報データベースを効率的にわかりやすく管理でき、データの移行や格納なども簡単に操作できるようになります。
代表例として 「Amazon RDS( Amazon Relational Database Service )」などが挙げられます。

Amazon RDS( Amazon Relational Database Service )

「Amazon RDS」は、クラウド内に簡単にリレーショナルデータベースを作成できるサービスで、MySQL、PostgreSQL、Oracleなど、6つの使い慣れたサービスから選択できます。
自動バックアップもできるためアクセスの負荷を軽減しながら冗長性を持たせられ、大規模なデータベースを構築することも可能です。

ストレージサービス

ストレージサービスとは、オンライン上でデータの種類を問わずあらゆるデータを保存・共有・配信できるサービスです。AWS上のストレージサービスの活用で管理コストを抑えられ、BCP対策にもなります。
代表例として「Amazon S3(Amazon Simple Strage Service)」や「Amazon EBS(Amazon Elastic Block Store)」などがあります。

Amazon S3(Amazon Simple Strage Service)

「Amazon S3」は、クラウドサービス業界をリードするスケーラビリティやデータ可用性、高セキュリティ、高パフォーマンスが特徴のストレージサービスです。99.999999999%(9×11)という非常に高い耐久性を持つため、データ消失の可能性が限りなく0に近くなります。保存できる容量やファイル数に制限もないのも魅力といえるでしょう。

Amazon EBS(Amazon Elastic Block Store)

「Amazon EBS」は、Amazon EC2とセットで利用するEC2のデータを保存するためのブロックストレージです。 EC2とのセット利用でサーバーを停止してもデータが消えないため、ビジネスシーンでも安心して活用できます。EBSはEC2に直接アタッチできますが、S3ではできません。一方SC3は保存できる容量が無制限ですが、EBSには上限があります。

ネットワークサービス

ネットワークサービスとは、仮想ネットワークの構築や、ネットワーク上でコンテンツを配信することなどができるサービスです。代表的なサービスとして、「VPC(Amazon Virtual Private Cloud)」や「CloudFront」などが挙げられます。

VPC(Amazon Virtual Private Cloud)

「VPC」は、AWSのアカウント内に仮想ネットワークを構築できるサービスです。VPCを使って自分のAWSアカウント内に仮想ネットワークを構築し、そのネットワーク上に仮想サーバーのEC2を配置するなどが可能です。
ネットワーク構築をAWSのクラウドサービスで行うため、時間やコストをかけることなく仮想上のネットワーク形成ができます。またネットワークの中にサブネットワークをいくつでも作れ、インターネットに接続しないプライベートなサブネットワークを利用すれば、セキュアな通信が可能となります。

CloudFront

「CloudFront」は、ネットワークを経由したコンテンツの高速配信サービスで、動画やゲームなどの大容量データを、安全かつ大人数に対して配信する際に役立ちます。
世界中の主要都市に設置されているネットワーク拠点(エッジサーバー)の中から最寄りのエッジサーバーを使用するため、コンテンツファイルの高速な配信を可能とします。

アプリケーション開発サービス

AWSのアプリケーション開発サービスを使えば、アプリケーションをスピーディに開発、構築、及びデプロイすることができ、アプリ開発などをスムーズに行えるようになります。「AWS CodeStar」を活用するとよいでしょう。

データ分析ツール(AI含む)

AWSでは、データ分析や機械学習を実行・運用できるようなサービスも提供しています。大量のデータも高速で効率よく処理できる環境を利用できるため、新たなビジネスチャンスの発見などを期待できます。機械学習を使用して精度の高い予測を行う「Amazon Forecast」や、事実上全てのコンテンツからテキスト、文字、データの抽出を行う
「AmazonTextract」、AIによるレコメンデーション機能を利用できる「Amazon Personalize」などがこれに該当します。

IoT構築サービス

AWSには、IoT(Internet of Things)の構築に必要な機能もすべて備わっています。AWSの「FreeRTOS」を使えば、低電力小型エッジデバイスのプログラミングから管理まで、全ての操作を簡単に行えます。
クラウドサービスである「AWS IoT Core」、高性能なエッジデバイスに安全に接続する「AWS IoT Greengrass」 、IoTの膨大なデータを分析できる「AWS IoT Analytics」などと安全に接続でき、さまざまな機能を活用できるようになるでしょう。

AWSでできること・活用法

ここまで説明したAWSの代表的なサービスは、Webサイトの運用やデータベースとしての活用、ビッグデータの分析など、あらゆるビジネスシーンで活用できます。AWSでできることを下記にて詳しく解説します。

サーバー環境の構築、Webサイトの運用

主に使うサービス:「Amazon EC2」「Amazon Lightsail」

Amazon EC2を使えば、効率的なサーバー構築や運用が可能です。WindowsやLinuxといったOSやCore数、メモリ内容がなどを選べるインスタンスタイプ、サーバーにアクセスするポートを設定するセキュリティグループなど、幅広いカスタマイズが可能なのも魅力です。仮想サーバーを複数作成して冗長化したり、ハードディスクやメモリなどのスペックを変更したりする作業も、画面上の簡単な操作だけで行えます。

また「Amazon Lightsail」は、事前に設定されたWordPressなどのアプリケーションを使って、WebサイトやWebアプリを簡単に作れます。

データのバックアップやBCP対策

主に使うサービス:「Amazon S3」

オンラインストレージのAmazon S3は、データのバックアップや復元、分析などに活用できたり、インターネットを経由してさまざまなデータを保存できたりします。オンライン上で管理するので、災害などにあってもデータを保守できるメリットがあります。管理機能も使いやすく、高い耐久性を実現できるように設計されているのも魅力です。

汎用性の高いデータベースとして活用

主に使うサービス:「Amazon RDS」

Amazon RDS を使うと、簡単にクラウド上のリレーショナルデータベースのセットアップや、オペレーション、スケールが可能です。バックアップなどの管理タスクも自動化されており、使い勝手のよいデータベースとして活用できるでしょう。

ビッグデータの蓄積・分析・運用

主に使うサービス:「Amazon EMR」「Amazon Redshift」「Amazon Kinesis」

AWSのサービスを使えば、顧客情報やIoTデータといった、企業が扱う膨大なビッグデータの蓄積から分析、運用までを実現できます。ビッグデータの分析処理に優れたサービスのAmazon EMRは、機械学習、データ変換(ELT)などによる解析が可能です。
Amazon EC2やAmazon S3を用いてデータを蓄積し、Amazon EMRと連携すれば効率よくビッグデータを解析できるでしょう。

ECサイトでAIレコメンド機能を活用

主に使うサービス:「Amazon Personalize」

Amazon Personalizeは、Amazonの20年以上のレコメンデーション実績をベースに開発されているため、製品やコンテンツのレコメンデーションだけでなく、ターゲッティングされたマーケティングプロモーションの強化に活用できます。

AWSを活用するメリット

AWSの活用でコスト削減や業務の効率化、イノベーションの創出、BCP対策などが実現します。詳しく解説しましょう。

コストを抑えられる

AWSはサーバやソフトウェアを購入する必要がないため初期費用がかかりません。また、必要なサービスのみを必要なだけ選択して使った分だけ支払う従量課金制なので、運用コストを抑えることができます。たくさんの選択肢の中から自社の目的や用途に合ったリソースを選んで、低コストで利用できます。

すぐに利用できる

AWSはサーバーやHDDを準備する必要がないので、すぐに始められるのもメリットです。スペックの更新に時間がかからないのも、ビジネスの効率的でスピーディな進捗に役立ちます。

サービスが豊富

AWSは100以上のサービスを提供しており、一般的な機能だけではなく機械学習やブロックチェーンIoT、量子コンピューターなども含まれています。常に最先端テクノロジーに触れられるため、イノベーションの創出も期待できるでしょう。

拡張性に優れている


AWSはビジネスニーズに合わせて、必要なときに必要な数だけ利用が可能です。サーバーのCPUやメモリ、ストレージサイズも、ニーズに合わせて柔軟に変更できる優れた拡張性もメリットの1つです。

BCP対策になる

AWSは世界中にデータセンターを設置しているため、万が一大規模な災害やデータ障が起きてもリスク分散ができます。自社にサーバーがないため、災害などで自社の業務が停止してもインターネットに接続できる環境に移動すれば、速やかに業務を再開できます。AWSは、災害時でも自社の被害を最小限に留めるBCP対策(※3)としても有効です。

※3:BCP対策とはBusiness Continuity Planの略で、自然災害や人的災害などが発生した緊急事態時に、事業に関わる被害を最小限にとどめ、事業を継続するための体制を整えること

セキュリティレベルが高い

AWSは、クレジット業界の標準である「PCI DSS」など第三者機関の認証を多く取得しており、セキュリティレベルの高さには定評があります。
世界の一流企業であるマクドナルドやCIA(米中央情報局)、日本では国立研究機関やNTTドコモ、ソニー銀行などで導入されていることからも、信頼度の高さが伺えます。

高いパフォーマンスを維持できる

AWSのサーバは世界中の多数のエリア(リージョン)や地域(アベイラビリティーゾーン)に設置されており(※4)、ユーザーに最も近い拠点からサービスを提供しています。
そのため常に高いパフォーマンスを維持したままサービスを利用でき、業務の効率化やスピードアップを実現できます。また、特定のリージョンで構築したシステムを別のリージョンや異なるAWSアカウントで全く同じシステムを簡単に作れるため、グローバル展開も容易となるでしょう。

※4:出典「リージョンとアベイラビリティーゾーン」

人的リソースを有効活用できる

AWSはクラウドサービスなので、ハードウェアやソフトウェアのメンテナンスや管理などの業務負担を軽減できます。その分人的リソースを、ほかのコア業務などに有効活用できます。

日本語のサポートを受けられる

AWSは、いつでも日本語でサポートを受けられるのもメリットです。何かトラブルが起きた際に、365日24時間日本人スタッフによるサポートが受けられれば、スピーディに問題解決もできるでしょう。

AWSを活用するデメリット

AWSは、ビジネスで活用するメリットが多い一方で、知っておきたいデメリットもあります。下記にて詳しく解説します。

専門的な知識やノウハウの習得が必要

AWSには100以上のサービスがあるため、自社に適切なサービスを選ぶ際や活用するシーンで、専門的な知識やノウハウが必要となります。
また、AWS導入後の管理は、ユーザー自身が行わねばなりません。全ての機能を使うのではなく、自社に最低限必要な機能から使い始め、必要に応じて専門家の協力を得るなどを検討しましょう。

コストを把握しづらい

AWSの各サービスは従量課金制なので、定額制のサービスと比較するとコストを把握しづらいというデメリットがあります。事前の予算化も難しくなるでしょう。
使った分だけの支払いとはいえ、使いすぎて定額制サービスよりも高額になってしまう可能性もあります。
AWSを使うならあらかじめ使える予算を決めておき、管理運用をしっかりして、想定外のコストがかからないように気をつけましょう。

カスタマイズの自由度が低い

AWSは手軽に運用できるものの、オンプレミス型(※5)のように細かいハードウェアの調整や、自社の独自運用に合わせたオプション設定が難しくなります。また、AWSのクラウドコンピューティングサービスは、決められた単位でリソースを増減する必要があり、用意されているプラン以外の増減は原則できません。AWSを利用するなら、自社の用途や目的に合わせたカスタマイズの必要性や内容などを事前に検討しておきましょう。

※5:オンプレミス型とは、システムの稼働やインフラの構築に必要となるサーバーやネットワーク機器、ソフトウェアなどを使用者の管理する施設内に設置して運用する利用形態のこと。一方自社で保有するのではなく、サービスとして起用されるものを利用するのが「クラウド型」となる。

AWS導入時に注意したいこと

AWSを導入するなら、目的を明確にするほかコスト管理、セキュリティ対策などを検討しておく必要があります。導入時に注意したいポイントを詳しく解説します。

導入目的を明確にする

AWSを導入する前に、自社における導入目的や活用目的をはっきりさせておくことが重要です。目的が曖昧だと必要のないサービスを導入してしまったり、機能が不足しているサービスを選んでしまったりする可能性が高まります。AWSを導入して何をしたいのか、何を実現したいのかなどを明確にして、自社にとって最適なサービスを見極めるようにしましょう。

移行計画をしっかりと立てる

オンプレミス環境からAWSなどのクラウド環境へデータやシステムなどを移行する際は、しっかりと計画を立てる必要があります。蓄積されたデータやシステムの種類が多ければ多いほど、移行作業は大変になります。自社対応が難しければ、移行が得意なベンダーなどに協力依頼すると、効率よく短期間で終えられます。

セキュリティ対策を考えておく

AWSはセキュリティの高さが特徴で、クラウド環境そのもののセキュリティはAWSが担保するものの、クラウド内のセキュリティは自社で責任を負う必要があります。AWSが責任を負う範囲と自社の責任範囲を正しく把握し、リスクヘッジとしてセキュリティ対策会社のサービスも合わせて検討するようにしましょう。

コスト管理に注意する

AWSの料金体系は利用時間や内容に応じた従量課金方式なので、コスト管理に注意を払っていないとコストが大幅に膨らむ恐れがあります。予算内に収まる利用時間や内容を事前に確認しておき、しっかり管理しましょう。

AWS担当者を用意する

できればリテラシーの高いAWSの専任担当者を置くと、AWSを有効にフル活用できます。自社目的の早期実現やビジネスの効果的・効率的な進行、新領域開拓なども期待できるでしょう。

まとめ

さまざまなメリットがあり豊富なサービスを提供しているAWSを上手に活用することで、自社業務を革新的に進化させることができ、コスト削減なども実現できるでしょう。導入するなら目的を明確にするなど抑えておきたい注意点もあるので、本記事をぜひお役立てください。

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(編集:創業手帳編集部)

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