ITが苦手でも大丈夫!スタートアップが低コストでクラウドサービスAWSを使いこなす秘訣とは?
Amazon提供のクラウドサービスAWSで何ができるのか?メリット・デメリットや活用方法をITツールマスターが詳しく解説
「クラウドで何ができるのかよくわからない」
「ITスキルのない企業では使いこなせない」
と思い込んでいる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、スタートアップ向けにAmazonが提供するAWSについて詳しく解説していきます。世界で最も利用されているクラウドサービスであるAWSには、スタートアップに有利な特徴が多々あります。AWSのメリットや活用方法について詳しく見ていきましょう。
この記事の目次
AWSとは
AWS(Amazon Web Service)はインターネット書店として有名なAmazonが提供しているクラウドサービスです。2006年から始まり、もう15年にもなるしっかりとしたサービスで、インターネット経由でサーバーやデータベース、ネットワーク機器を利用できます。
2021年1月時点で、170を超えるサービス(機能)が提供されており、ユーザーは各サービスを組み合わせてシステムを構築することが可能です。自社でさまざまなIT機材を抱えることなく、必要な機能をワンストップで利用できます。
クラウドサービスとしてのAWSの特徴について、簡単に紹介します。
世界トップシェアのクラウドサービス
AWSは、現時点で世界トップシェアのクラウドサービスです。調査会社であるMM総研の調べ(※1)では、日本国内では「AWS」「Microsoft Azure」「Google Cloud Platform」が3強で、この3サービスで90%以上のシェアを占めます。AWSは国内シェアの約半分を占めるサービスで、世界中でも約3分の1のシェアを占めています(※2)。
※1:MM総研「国内クラウド市場は2024年に5兆円超え」
※2:Synergy Research Group「Quarterly Cloud Spending Blows Past $30B; Incremental Growth Continues to Rise」
従量課金で低コスト、しかも年々安くなる
AWSは従量課金制になっており、初期費用も無料です。そのため、システムを構築するだけでは費用は発生しません。さらに、無料利用枠のつくキャンペーンが多数あります。
従量課金は高いイメージがあるかもしれませんが、AWSではCPUやメモリの使用量、ネットワークやストレージに使用したデータ量などを基に計算するため、高い負荷をかけ続けるシステムでない限り非常に低コストで運用が可能です。
実は企業システムはほとんどの時間帯でリソースの半分も使っていないため、従量課金だとかなり低コストになります。そのため、レンタルサーバーやVPSを利用する場合よりも月々のコストがずっと下がるケースも少なくありません。
また、AWSでは規模の経済性や最新技術の導入によってその運用コストを削減しており、ユーザーにもその成果を還元しています。AWSは過去10年間で70回以上も値下げを実行しており、ユーザーは契約変更なしに年々コストダウンが可能です。もちろん、安かろう悪かろうではなく、ハイパフォーマンスでユーザーに喜ばれています。
拡張の柔軟性が高く時間と費用のコスト削減が可能
AWSをはじめとするクラウドサービスの特徴として、拡張の柔軟性があります。自社でシステムを保有する場合、サービスの追加や処理能力の向上のためには追加でサーバーの購入やセットアップが必要となり、コストと時間がかかります。
しかし、クラウドサービスであれば自社で必要なときに必要なシステムや追加のサーバーを導入し、不要になったら削減することが簡単にできます。しかも、そのための時間が劇的に短く、即日に拡張ができる場合も多いです。
責任範囲の明確な切り分けによる人的コストの削減が可能
自社でシステムを管理する場合、サーバーやネットワーク、利用アプリケーションの運用・保守が必要です。障害発生時には、これらのどこで障害が発生しているかを切り分けて対処する必要があります。
AWSではサーバーやネットワークといったインフラ部分の管理はすべてAmazon側で対応しますし、導入したサービス(機能)のアップデートなどもすべてAmazonが対応します。企業内の担当者は、自社で導入したアプリケーションの運用・保守に注力するだけでよく、人的リソースを有効に活用できます。
AWSのメリット~低コスト・高い柔軟性・人的コスト削減~
AWSを利用することで、スタートアップにはどのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットについて紹介します。
低コストでのシステムの構築・運用が可能
AWSを利用する最大のメリットは、低コストでシステムの構築ができることです。企業内で利用するシステムには、メールやWebサイト、CRM(顧客管理)システム、ファイルサーバーなどさまざまなものがあります。
これらをAWSの上に構築することで安価に利用できます。また、運用費用も従量課金になりますが、利用者の少ないスタートアップの場合は非常に低いコストで済む場合も多いです。
スモールスタート・スクラップアンドビルドが可能
AWSは従量課金で、かつ拡張性が高いため、外部向けサービスの開発に適しています。AWSなら小規模なサービスを作って公開し、その後の反応を見ながら機能や処理能力の拡張を行うなどの開発がしやすいでしょう。
また、Webマーケティングで行うA/Bテストのように、作っては廃棄するといった使い方でも比較的低コストで行うことが可能です。アプリやWebサービスを最小規模でスタートできるため、初期費用や開発期間を抑えることができます。
人的リソースの不足をまかないコストカットに
自社でシステムを管理する場合には専門のエンジニアが必要です。しかし、エンジニア人材はコストも高く、その人材を機器のお守りとして使うのはもったいないというのが経営社の本音ではないでしょうか。
AWSでは、保守の大部分をAWSに任せることができ、最小限度の管理さえできれば大丈夫です。また、パートナーとしてサポートを行ってくれるベンダーも多く、難しい作業や設計は任せてしまえるのもメリットです。
AWSではその知識やスキルを問う認定資格がありますが、実は認定資格取得者の半数以上は非ITのユーザー企業なのだそうです(※)。非IT企業でも学習しやすく、そのノウハウで企業の成長を加速させることができるのはAWSの大きなメリットです。
※ASCII.jp「AWSが感じている日本企業のクラウド活用の変化とは」
AWSのデメリット
メリットの多いAWSですが、AWSならではのデメリットもあります。主なデメリットについては意識しておく必要があるでしょう。
提供サービスが多すぎる
AWSの長所でもありますが、提供されているサービスが多すぎて困ってしまう人もいるでしょう。ITが苦手な人は、カタカナ言葉が多いと困るものですが、AWSはグローバルなサービスであるためにサービス名は略称も多く、アルファベット表記になっています。
「S3」「EC2」「RDS」「Lambda」「Aurora」などの表記が並ぶマニュアルや資料は慣れるまで時間がかかるかもしれません。
低コストだが費用が読めない
AWSは低コストでの運用が可能ですが、費用の予測がしにくいというデメリットがあります。そのため、予算を作り、きっちり守らないといけない場合には困るかもしれません。
また、アプリなどでシステムがループ状態に陥ってしまった場合に、過剰にリソースが消費されてしまえばその分課金されてしまうのも問題です。
システム構築は簡単だがAWS特有の技術が必要
AWSでは、システムに必要なサービスを選んで画面上で配置していくだけでシステムの基礎を構築できます。非IT技術者にも扱いやすいのですが、一方で一般的なITの技術やスキルが活かせず、AWSのためのスキルを修得し直さなければならないことも多いです。
また、簡単にシステムが作れるとはいえ、AWSはシステム構成によってパフォーマンスやコストが大きく変わってくる点にも注意が必要です。
AWSを活用するには?
便利なAWSを活用するためには、どのような手順を踏んで進めていけばいいのでしょうか。以下、AWS活用のための手順を紹介します。
既存あるいは新規のITシステムをリストアップする
まず、社内向け、社外向けに利用しているITシステムをリストアップします。今後導入を予定しているものを含めてももちろん構いません。その中で、パフォーマンスや運用面、コスト面などで不満があるものをピックアップします。
AWSのサービスを調べる
次に、AWSでどのようなサービスが提供されているかを簡単に調べます。さすがに170種類以上のサービス内容をこと細かに調べるのは難しいので、主なものや対象となるシステムに関連しそうなものに絞って調べましょう。
参考に、スタートアップに役立ちそうなサービスをいくつか挙げておきます。
EC2(Amazon Elastic Compute Cloud)
さまざまなスペックの仮想マシンを作って実行できるサービス。外部サービス用環境や実験環境の構築などさまざまな使い方がある。
RDS(Relational Database Service)
リレーショナルデータベースを提供するサービス。PostgreSQL、Oracle、Microsoft SQL Server複数のデータベースソフトから選択可能。
S3(Simple Storage Service)
年間で99.99%の可用性と99.999999999%の耐久性を実現するよう設計されたオブジェクトストレージ。ファイルサーバーやログサーバー、コンテンツ用サーバーなどさまざまな用途で使える。
DataSync
オンプレミス(据え置き型)のストレージと、AWSのストレージの間でデータ移動を自動化するサービス。データのバックアップや、ファイルサーバーの負荷分散などで利用できる。
CloudFront
静的および動的Webコンテンツを配信するCDNサービス。サイト上の動画再生などの重いコンテンツを快適に配信可能。
CodeBuild
ソースコードのコンパイルおよびテストを実行できる開発者向けツール。
RoboMaker
ロボットアプリケーションの開発、シミュレーション、テスト、デプロイ、更新、管理などを行えるサービス。他サービスと連携させることで高度な開発も可能。
CloudWatch
AWSのリソースおよびAWSで実行しているアプリケーションのモニタリングを行う。トリガーを設定して、自動的に通知を行うことも可能。
SageMaker
機械学習モデルを早く簡単に構築、トレーニング、ホスティングできる機械学習サービス。目的向けにさまざまにサービスが枝分かれしており、用途に合ったものを選択可能。
Comprehend
自然言語処理サービス。テキスト(文字列)の中から場所や人物、キーフレーズ、感情(肯定的/否定的/混在/中立)などを検出でき、テキストマイニングなどで利用される。
Lex
チャットボットなどの音声やテキストに反応する対話型インタフェースを構築できるサービス。自然言語処理はAmazonのAIとして有名なAlexaと同種のものを利用可能。
Machine Learning
機械学習を簡単に利用するためのサービス。機械学習モデルの構築や、構築したモデルを使った予測機能を提供する。
IAM(Identity and Access Management)
AWSのリソースへアクセスするためのユーザー認証やアクセス許可を制御するためのサービス。
Single Sign-On
Microsoft Active Directoryの認証情報を使用してシングルサインオンを実装・管理するサービス。
Connect
クラウド型のコンタクトセンターサービス。自動音声対応の作成、着電管理、ケース追跡などの機能を提供する。
アイデアベースから気軽に相談
自力でAWSを使ってシステムを構築してもいいですが、スムーズな導入を目指すなら、AWSに直接問い合わせて相談してみるのが一番です。システムの要件に合ったサービスや、効果的な構成について助言をもらえたり、ニーズに合ったパートナー企業を紹介したりしてくれます。
問い合わせはもちろん、個別相談や構成相談も無料で行ってくれますので、アイデアベースから相談してみるのもよいでしょう。また、多くのWebセミナーやイベントでAWSの活用事例が紹介されています。AWSはクラウドサービスでは老舗ですので、参考になる情報が多いのも強みです。
導入後は利用状況を調べてチューンアップする
AWSを効果的に利用するためには、導入後も定期的に状況を確認し、改善を重ねていくことが大切です。AWSにはシステムの利用状況を調べるためのツールも数多く用意されています。
システムを導入するだけでなく、より良いパフォーマンスやコストを模索することが効率的なAWS活用には欠かせません。システムの拡張・縮小、サービスの追加・削除を必要に応じて行い、最適な利用状況を保ちましょう。
低コストで快適なシステム管理ができるAWSを活用しよう
AWSは低コストでハイパフォーマンスなITシステムを構築できるクラウドサービスです。スタートアップにとっては、低コストのシステム利用や、スピーディーなシステム開発ができる、先端IT技術を利用できるなどさまざまなメリットがあります。
システム構築にはノウハウも必要ですが、AWSやパートナーと相談しながら進めることができますし、ITをゼロから学ぶよりもずっと学習コストは低いです。
現行システムの改変や新規の開発のためのアイデアとして、AWSの利用も考えてみてはいかがでしょうか。
創業手帳(冊子版)は、資金調達や販路拡大など起業後に必要な情報を数多く掲載しています。母子手帳のように会社が時期に合わせて行うべきことをまとめていますので是非ご利用ください。
(編集:創業手帳編集部)