青色事業専従者給与で節税できる?条件や事業専従者控除との違いなどを詳しく解説!

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青色事業専従者給与は青色事業者(家族など)に支払う給与のこと


個人事業主の中には、家族や親族が自分の仕事に協力してくれるケースがあります。
その家族や親族に給与を支払う場合、「青色事業専従者給与」として支払うことをおすすめします。
青色事業専従者給与とは、生計を共にする配偶者や親族に支払う給与のことです。
普通に給与を出す場合よりも節税メリットがあり、個人事業主の所得税の負担を軽減できます。

家族と一緒に事業を行っているのであれば、青色事業専従者給与の知識や理解を深めておきましょう。
そこで今回は、青色事業専従者給与の特徴や節税効果などについて解説します。

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青色事業専従者給与の特徴とは?


青色事業専従者給与とは具体的にどのような制度なのか、まずは詳しい特徴を解説します。

青色事業専従者給与は青色申告の恩恵である

青色事業専従者給与は、青色申告をしている個人事業主が利用できる制度のひとつです。
つまり、青色事業専従者給与を家族に支払いたい場合、青色申告事業者になる必要があります。
事業を行う地域を所轄する税務署に「青色申告承認申請書」を出すことで、確定申告の際に青色申告が可能になります。
申請書の提出には、以下の期限が定められているので注意してください。

【新規開業の場合】
1月15日以前に開業する場合:青色申告をしたい年の3月15日まで
1月16日以降に開業する場合:業務開始から2カ月以内

【白色申告から切り替える場合】
青色申告をしたい年の3月15日まで

これから開業する場合、提出忘れを防ぐためにも開業届と一緒に青色申告承認申請書を出すことをおすすめします。

青色申告では、複式簿記での記帳が必要となり、単式簿記でも十分の白色申告よりも難しくなります。
しかし、青色事業専従者給与以外に、特別控除により所得税を大幅に削減できることも青色申告の大きなメリットです。

青色事業専従者給与なら家族への給与を経費にできるなど節税効果がある

詳しくは後述しますが、青色事業専従者給与は経費として計上できるため、結果的に個人事業主の所得税の軽減につながります。
ただし、支給できる対象者は青色事業専従者と認められた家族に限られます。専従者に承認してもらうためには、所轄の税務署に届け出を提出しなければなりません。

「青色事業専従者給与に関する届出書」は、承認を受けたい年の3月15日までに提出が必要です。
なお、1月16日以降に新規開業、または専従者がいるとなった場合は、事業開始・専従者がいる日から2カ月以内までとなっています。

また、経費に計上するために「届出書に記載された方法・金額で給与が支払われている」、「労務の対価として適切な金額である」という要件を満たすことも重要です。

青色事業専従者給与になる条件


家族に青色事業専従者給与を出すためには、青色事業専従者として認められるための条件をクリアしなければなりません。
ここからは、専従者になるための詳しい条件をご紹介します。

生計を共にする配偶者や15歳以上の親族であること

青色事業専従者と認められるのは、事業を経営する個人事業主と生計を共にする配偶者やその他親族です。
同居していない家族でも、家賃や学費、生活費などを個人事業主が負担していれば、生計を共にしている状態といえます。
個人事業主とは完全に別の生計で暮らしている親族の場合は、普通の従業員と同じように給与を支払うことになります。ちなみに、従業員に支払う給与は経費に計上可能です。

また、青色事業専従者になれる親族には年齢制限もあるので注意してください。当該年度の12月末の時点で15歳以上の親族であれば、青色事業専従者になれます。
反対に、14歳以下は事業を専従できないため、専従者にはなれません。

6カ月以上従事していること

半年以上、事業に従事していることも青色事業専従者と認められる条件のひとつです。
「週○日、1日○時間」と、労働時間や量は関係なく、事業に専従していることが条件です。
そのため、ほかに本業があって副業として事業を手伝っているのであれば、専従者と認められない可能性があるため注意してください。
個人事業主の事業に専従していれば、毎日ではなく年数回や単発で仕事をした親族も専従者と認められる可能性があります。

判断基準が少し曖昧になるため、どう判断すればいいのか迷った時は税務署に確認をとっておくと安心です。

税務署に届け出をしていること

事業を手伝ってくれる家族が上記の条件を満たしていれば、税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出してください。

届出書は税務署の窓口で受け取るか、国税庁のホームページからダウンロードし、印刷することで入手できます。
所轄の税務署名や事業所(自宅)の住所、電話番号など必要事項を漏れなく記載してください。
届出書には、青色事業専従者に支払う給与の金額も記載します。家族に対する給与が過度に高い場合、不当に経費を増やそうしていると思われる可能性があります。

ほかに従業員がいれば、同等の水準に合わせるのが妥当です。働き手が家族しかいない場合は、自分の事業の給与相場を参考にしたり、税理士に相談したりして決めてください。
ちなみに、専従者の数に上限はありません。条件を満たしていれば、届出書を提出することで人数を増やすことが可能です。

白色申告の事業専従者控除と青色事業専従者給与の違いは?


確定申告には、青色申告とは別に白色申告があります。白色申告にも事業専従者控除があるため、家族に給与を支払った場合に所得税の負担を軽減することが可能です。

ただし、青色事業専従者給与のほうが節税面では有利となります。ここで、2つの制度の違いをご紹介します。

白色申告の事業専従者控除について

事業専従者控除は、個人事業主が白色申告をする際に利用できる所得税の控除制度です。
生計を共にする配偶者や15歳以上の親族が納税者の事業に専従し、その対価として給与を支払った場合に使えます。

白色申告は、青色申告と違って承認申請は不要です。開業時に青色申告承認申請書を提出しなかった場合、確定申告は白色申告で行うことになります。
また、事業専従者控除を利用する場合、青色事業専従者給与のような届出書の提出も不要で、確定申告書の控除欄に記載するだけです。

ちなみに、白色申告には青色申告のような税制上で大きな優遇処置はないものの、帳簿や申告に手間がかからないという違いもあります。
開業したばかりで利益が少ない年度は、あえて事務負担が少ない白色申告にするというケースも珍しくありません。

白色申告で認められているのは定額控除のみ

白色申告の事業専従者控除の注意点は、家族に支払った給与をすべて経費として計上できないことです。
事業専従者控除は一定の金額範囲で控除が適用され、所得税を軽減できる制度になります。
また、給与を支給する相手が事業専従者に該当しないと、控除は利用できません。

【事業専従者の条件】
  • 白色申告者と生計を共にする配偶者やその他親族
  • 当該年度の12月31日時点の年齢が15歳以上
  • 当該年度に6カ月以上、白色申告者が経営する事業に従事している

 
専従者の条件は、青色事業専従者給与と変わりません。
そのため、ほかに本業がある時は専従者と認められず、事業専従者控除を受けられない可能性があるので注意してください。

【事業専従者控除の控除額】
以下2つの条件のうち、低い金額で控除されます。

①事業専従者が配偶者であれば86万円、それ以外の専従者はひとりにつき50万円
②事業専従者控除を利用する前の事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額(控除前の総所得額÷(専従者の人数+1))

どちらの条件が適用されるのか判断するためには、まず②の金額を求める必要があります。
例えば、配偶者と子どもひとりが事業専従者で、控除前の総所得額が500万円だとします。その場合の計算式は以下のとおりです。

500万円÷(配偶者+子どもひとり+1)=166万円

算出された166万円よりも①の条件のほうが金額は少なくなるので、上記のケースでは①の控除額が適用されます。

青色申告の場合は経費にできる

青色事業専従者給与では、事業専従者控除とは違って事業専従者に支払った給与を経費にできます。
前述したとおり、事業専従者控除では一定の金額範囲でしか所得税は抑えられません。

しかし、青色事業専従者給与であれば全額を必要経費にできます。
経費に計上できる青色事業専従者給与の支払い上限はないため、高額な給与も経費として扱うことが可能です。
上限がない分、事業専従者控除よりも大きな節税効果に期待できます。

青色申告は、帳簿付けや申告に手間がかかり、青色事業専従者給与の支給には手続きも必要です。
そのようなデメリットがありますが、節税効果は事業専従者控除よりも高くなる可能性があります。

ただし、節税効果を高めたいからと相場よりも高すぎる給与の支給・届け出の提出は不当な脱税にあたる可能性があるので、適正な金額を設定してください。

青色事業専従者給与は節税効果が期待できる!


青色申告では条件を満たせば55万円、もしくは65万円の特別控除を利用できるので非常に節税効果が高いです。
その上、青色事業専従者である家族に給与を支払っていればより節税効果も高くなります。

ここでは、青色事業専従者給与の詳しい節税効果の仕組みについて解説します。

どのくらいの節税効果が期待できる?

所得税は、「(年収-必要経費-各種控除)×税率-課税控除額」で計算できます。
税率は必要経費と各種控除を差し引いた課税所得によって変わるため、国税庁のホームページで確認してください。

青色事業専従者給与は、必要経費に含んで計算する必要があります。青色事業専従者給与を活用する場合、具体的にどのくらい節税効果があるのか試算してみました。

【条件】
  • 個人事業主の年収:1,000万円
  • 青色事業専従者給与の年額:250万円
  • その他経費の合計金額:300万円
  • 各種控除の合計金額:100万円

青色事業専従者給与を支払わない場合、所得税は以下のとおりです。

(1,000万円-300万円-100万円)×20%-427,500円= 772,500円

青色事業専従者給与を支払った場合の所得税は以下のように算出されます。

(1,000万円-(300万円+250万円)-100万円)×20%-427,500円=272,500円

通常であれば、個人事業主は約77万円の所得税を納税しなければなりません。
しかし、事業に従事する家族に年250万円の青色事業専従者給与を支払っていた場合、約27万円に抑えられます。

また、専従者の所得税には基礎控除48万円と給与所得税が適用されるので、それにより一家が支払う所得税はさらに少なくなります。

節税できるのはなぜ?

青色事業専従者給与で節税できる理由は、給与を経費に計上することで所得を減らせるからです。
個人事業主が生計を立てている場合、仕事を手伝った対価として家族に給料を出しても、ひとつの財布の中でお金が移動している状態とみなされてしまいます。
そのため、普通に支払った給与は経費として認められませんが、青色事業専従者給与なら全額経費にすることが可能です。

所得税は、必要経費と各種控除から差し引いた所得金額から求めるため、所得が少ないほど税金は安くなります。
さらに、所得税の計算で使う税率は所得の金額によって変動するので、経費が増えることで税率が下がる場合があり、それも節税につながる要因です。

また、事業を行っている人は事業税の支払いも生じます。事業税は売上げと必要経費、控除を差し引いた事業所得に、税率をかけて算出されます。
事業所得を求める際の必要経費に青色事業専従者給与も含まれるので、経費を増やして課税所得を抑えることで事業税の削減が可能です。

青色事業専従者は配偶者控除や扶養控除と比較して決める

節税効果に期待できる青色事業専従者給与ですが、家族を青色事業専従者にするかどうかは状況を見て判断することが大切です。
例えば配偶者に青色事業専従者給与を支払っている場合、配偶者控除や扶養控除を受けられなくなってしまいます。

配偶者控除の場合、最大38万円の控除を受けられます。
青色事業専従者給与が年収38万円以下の場合、配偶者控除が適用されない分、個人事業主が支払う所得税・住民税の負担が増えてしまうのです。

仕事内容や仕事量から相場的に給与を決めて年間38万円以下になってしまう場合は、青色事業専従者給与を出さず、配偶者控除や扶養控除を優先したほうがお得になる可能性があります。
青色事業専従者給与の節税効果ばかりに目を向けず、ほかの控除制度のことも考慮した上で専従者にするか決めてください。

まとめ

給与は経費に計上できますが、生計が一緒の家族に支払う場合は例外です。給与を経費にできないと個人事業主の所得が増えて、所得税や住民税の負担が大きくなってしまいます。
家族を青色事業専従者にして給与を支払うことで、大きな節税効果が期待できます。

家族と一緒に事業を営む予定であれば、青色事業専従者給与を検討してみてください。

創業手帳(冊子版)」では、個人事業主にとって大切な確定申告や控除などの情報を提供しています。経営に役立つ情報をお届けしているので、創業時の情報収集に活用してみてください。
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(編集:創業手帳編集部)

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