定年後の起業を成功させるためのポイントとは
定年後の起業は成功しやすい?シニア起業の特徴やメリットとデメリット・成功のヒント
定年後にのんびり過ごすというのは、過去の話になりつつあります。
最近では定年後に再就職をするケースも多くありますが、定年後の起業を検討するシニア世代が増加中なのをご存じでしょうか。
定年後の生活を決めるのは自分自身です。この記事では、定年後の起業の特徴やメリットデメリット、ポイントなどを解説します。
ぜひ定年後の生活の参考にしてください。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
定年後は起業するか再就職するか
20代から60代まで約40年間働き続けると、多くの人が定年を迎えます。定年後は第2のライフステージといわれており、どのような生活をするかは人それぞれです。
以前は定年を迎えたらのんびりと余生を過ごす人が多くいましたが、高齢化社会が進むにつれ、働ける間は働く人も増えました。
企業によっては定年後に再雇用の仕組みを設けていますが、再雇用がない場合は自分で就職活動をして新しい職場を探さなければなりません。
そのような中で、再雇用ではなく起業を選ぶ人が増えつつあります。
60代で定年を迎えたあとに起業する人は「シニア起業家」と呼ばれています。
社会経験が豊富にあり、長年培ってきたスキルが十分にあるシニア世代は、起業にチャレンジしやすいのが特徴です。
定年後の起業の特徴
定年後の起業には若い人とは異なる特徴があります。ここでは、以下の3点に着目して解説します。
1.年齢は50代~60代がメイン
日本では、定年を迎える年齢は60歳が一般的であり、企業によっては50代で定年の場合もあります。
しかし、公的年金が支給される年齢は、現在は原則として65歳からで、60歳以降は再雇用制度があるケースが多くあります。
再雇用制度は定年前と同じように働けるとは限らず、多くの人は60歳を大きな節目と考えているかもしれません。
そのため、再雇用を選ぶ人やほかの仕事に移る人や起業する人など様々です。定年後の起業とは上記の人たちを指すため、年齢は50〜60代がメインといえます。
2.会社員経験を長く積んだタイミングで起業する
若者が起業する場合は、それまでの勤続年数が短い場合もあります。中には社会経験なしで起業する人もいるかもしれません。
しかし、定年後の起業は、約40年近く企業で働いてきた実績があるのが特徴です。
会社経験を十分に積んでいるため、社会人としての対応の仕方はもちろん、スキルもベテランのレベルといえます。
それだけではなく、人によっては幅広い人脈を活用することも可能です。
すべてを自分で行うのではなく、自分が関わる業務をしっかりと把握し、足りない部分は業務委託するなど、無理せずに行えるのもポイントです。
3.厚生年金を確保した上で起業する
定年後に厚生年金が受け取れる場合、安定した収入を得られるため安心感がある中で起業できます。
起業で得るお金がないと暮らせない場合は、どうしても成功させなければならないプレッシャーに押し潰されそうになるかもしれません。
しかし、年金に足すお小遣い程度の気持ちで始めると、プレッシャーが少なくて済みます。
年金がなく始める起業はうまくいかないと早めに廃業しなければならず、ほかの仕事を探す必要がありますが、定年後の起業はそこまで気負わずにチャレンジできるのが魅力です。
定年後に起業するメリットとデメリット
ここからは、定年後に起業するメリットとデメリットを紹介します。
定年後に起業するメリット
定年後に起業するにはメリットを十分に知っておきたいものです。まず、定年後に起業するメリットを紹介していきます。
豊富な経験や知識を活かせる
定年後に起業する場合、社会経験や企業で培った知識を活かせるのがメリットです。ひとつの企業で長年働いてきた人は、その職種のスペシャリストとして活躍できます。
反対に、いろいろな職種で働いてきた人は、複数の仕事を組み合わせた分野で起業できるでしょう。
若くして起業すると社会人経験やスキルの部分が不足し、ひとりで物事をこなすのが難しい側面もあります。
そのため、人を雇ったり、新たに勉強したりしなければならない場合があります。
しかし、定年後の起業ではある程度のことが自分でできたり、新たな勉強は少しで済んだりと、手間がかからない場合も多いのが特徴です。
また、同じ業界での起業ではない場合も、共通点を見いだすことで今までの経験や知識が役に立ちます。
再雇用よりもチャレンジの幅が広がる
起業は自分で自由に働けるため、再雇用よりもチャレンジできることが多くなります。
再雇用は同じ企業または子会社などで働くことになるため、上司のもとで部下として働くということです。
今まで上の立場で働いてきた場合、自分よりも年下の上司の指示に従わなければならず、自由に働けないと感じることもあるかもしれません。
また、再雇用では重要な仕事を任せてもらえないケースもあり、自分がしたいことが十分にできず、ストレスが溜まる人もいます。
それに比べ、起業は自分の裁量で自由に働けるのがメリットです。
生涯現役で働ける
企業で再雇用されたり、新しい職場に採用されたりした場合は、いつかは辞めなければならない日が来ます。職場によっては、何歳まで雇用と年齢が決まっているからです。
しかし、起業した場合は個人事業主になるため定年がありません。自分が働ける間はずっと仕事ができるのがメリットです。
定年後に起業するデメリット
定年後に起業するには、メリットだけではなくデメリットも知っておくと安心です。定年後に起業するデメリットを紹介します。
失敗した時に再チャレンジ・再就職が難しい
起業は誰でもできるものですが、成功する保証はありません。1年や5年で廃業するケースも多くあります。
定年後に起業した場合、失敗した時に以前の会社の再雇用枠で戻るケースは考えにくいでしょう。
その場合、ほかの会社に再就職することになりますが、以前の会社で再雇用する条件に比べると、あまり良い条件とはいえない場合もあります。
年齢が上がるにつれて再就職は難しくなることは、覚えておく必要があります。
若い人より体力が劣る
定年後すぐは体力があると思っていても、年齢を重ねるごとに体力は徐々に低下します。
定年の時点でも若い人に比べると体力はないため、がむしゃらに働くことは難しいのが現実です。
自分の健康を過信して無理をしてしまうと、体を壊してしまうかもしれません。もっと働きたいのに体力が持たないと、もどかしい気持ちになる場合もあります。
視野が狭くなり柔軟に対応できなくなっていることも
経験が豊富でベテランだったり、上の立場に長くいたりした場合、起業しても以前のやり方を変えられずに苦労することもあります。
自分に自信を持つことは大切ですが、社会は変容を続けており、柔軟な対応ができないと人間関係などでトラブルが起こる恐れも出てきます。
起業するならば、初心に返り、他人の意見を聴く柔軟性を身につけることが大切です。
定年後の起業の方向性
定年後に起業するには、具体的な起業の方向性を知る必要があります。ここでは以下の4点に着目して解説します。
1.これまでの知識や経験を直に活かせる事業を立ち上げる
定年後の起業を成功させるには、自分の強みを活用するのがおすすめです。過去の知識や経験をアピールすれば信頼につながり、営業がしやすくなります。
また、知識があれば新しく勉強する手間が減るため、実際の業務に全力で取り組めます。
2.業務経験のない分野にチャレンジする
今までの知識や経験は活用できませんが、今までと違う仕事をしてみたい人や新しい世界を知りたい人には、業務経験のない分野にチャレンジしてみるのも良いでしょう。
自分の好きなことや趣味を仕事にしたい人におすすめです。
また、今まで家族や収入のために我慢して仕事をしてきた人は、同じ仕事を続けることはストレスになりかねません。
せっかく起業するのなら、自分が楽しく人生を謳歌できるものを選ぶのもひとつの方法です。
ただし、成功するまでには勉強をする努力が必要になります。また、成功までの時間もかかる場合があります。
3.やりがいや社会貢献を重視して事業を選ぶ
若い人の起業には生活がかかっている場合が多くありますが、定年後の起業は収入目的ではない人も多くいます。
収入目的ではない場合、収入を増やすことを第一に考えてやりたくないことをしたり、経験やスキルがあることに固執したりする必要はありません。
重視したいのは、やりがいや社会貢献です。やりがいのある仕事をすると、毎日が楽しく充実した生活を送れます。
特にやりたいことがない場合は、社会貢献できる仕事を選ぶことで自己肯定感を高められるでしょう。
4.M&Aで起業する
M&Aとは企業の合併と買収のことです。一から起業するのに比べて、ある程度形作られている企業を買収すれば、すぐに仕事に取り掛かれるのがメリットです。
起業する際には許可や認可、免許などが必要だったり、初期投資が必要だったりすることもありますが、M&Aならば、それらが不要なケースもあります。
買収には初期投資が必要ですが、定年後ならば若者と違って退職金でまかなえる可能性もあります。
ただし、買収前にはその企業についてしっかりと下調べをし、リスクを減らすようにしてください。
起業するにあたってのポイント
ここまで読んで、定年後の起業が身近に感じられてきたのではないでしょうか。
以下は、起業するにあたってのポイントを解説します。5つのポイントについて解説するので、参考にしてください。
安易に共同経営は選択しない
初めて起業する場合は、わからないことばかりで不安になるかもしれません。また、変わりゆく社会に年齢的についていけるかなど、心配な点もあるでしょう。
しかし、共同事業として共同経営者と一緒に会社を作るのはおすすめできません。なぜならば、共同経営者と揉めるケースもあるからです。
事業が失敗した際にはどちらの責任なのか、成功したらどちらが主導権を握るのかなど、難しい問題が出てくる場合があります。
若い人の起業とは異なり、自由に働けるのを目的とした起業ならなおさらです。セカンドライフにストレスを溜める要因は排除しておくと安心です。
老後の生活も考えて計画的に進める
会社員として家族を支えるために働いてきた期間と、老後の生活は大きく異なります。子どもの養育費が必要だった人も、子どもが独立することで変化が起こります。
パートナーと2人の生活が始まる人もいるため、今度2人でどのように生活をしていきたいかとしっかり話し合っておくことが大切です。
現時点で以前と変わらず動けて元気だとしても、今後はどうなっていくかわかりません。無計画で起業を進めると、体力の面で負担がかかる場合があります。
まずは、老後のライフプランを第一に考え、それに沿った起業計画を作成してください。
これまでの肩書や名声にしがみつかない
会社での肩書や名声は、長年作り上げてきた実績です。もちろん誇れるものですが、それにしがみついていると壁にぶつかる場合があります。
経験やスキルは起業した際に大いに役に立つものなので大切ですが、肩書や名声は足枷になりかねません。
新しい世界で生きていくと心に決めたのならば、一から始めるという謙虚な気持ちを持つことが必要です。
リスクを取ってまで規模を広げない
定年後に起業する場合は、リスクを少なくすることが重要です。リスクが高いにもかかわらず規模を広げてしまい、貯金がなくなってしまうと今後の生活にも影響が出ます。
定年後は新たにローンを組むことが難しく、また、若い人のように再起を図るのも困難な面があります。
なるべくリスクを取らないようにし、小さく起業するくらいの気持ちで始めるのがおすすめです。
肉体的に無理のない範囲で働く
定年後に起業する場合、その時点の体力で起業の計画を立ててしまうかもしれません。
しかし、60歳以降、個人差はありますが体力はどんどん落ちていき、自分が思っていた以上に身体が動かなくなる場合があります。
体力に自信があるからと無理をすると、そのあとに一気に疲れが来て動けなくなったり体を壊したりすることも考えられます。
定年後の起業は、肉体的に無理のない範囲で行うことが何より大切です。
人を雇うのはリスクがありますが、業務委託をしたり、他人の手が借りられる場合は借りたりするなど、細く長く働ける環境を作りましょう。
まとめ
定年後の起業なんて今更と思う人もいるかもしれません。しかし、定年後だからこその始めやすさもあります。
定年後に起業する場合は、若い人と同じように起業するのではなく、自分の年齢だからできることを考えるのがおすすめです。
余計なリスクは背負わずに、充実した毎日を送れるように計画をしてください。
(編集:創業手帳編集部)