シニア起業で失敗しないための、やりたいことを仕事にするコツ

創業手帳

経験を財産にするソーシャル・ブランディングとは?

(2017/05/17更新)

人生100歳時代、50歳前後から起業を志す方が増えていらっしゃいます。これまで培ってきた経験やスキル,人脈を活かせるシニア・プレシニア世代は、起業には有利と言えるでしょう。しかし、シニア起業のメリットを最大限に活かすには、ちょっとしたコツがあります。それは“ソーシャル・ブランディング”を丁寧に行う事です。

自分の経験を財産にする「ソーシャル・ブランディング」とは?今回は、シニア起業のコンサルティングを数多く手がけている、志事創業社の臼井氏に解説していただきました。

シニア起業に必須の「ソーシャル・ブランディング」ってなに?

ソーシャル・ブランディングとは、簡単に言うと自分が熱中してできることで、誰かに喜んでもらうことを具現化することです。
ビジネスに関しては、自社を「社会に良いことをしている応援したい企業」として世間で認知してもらうことがそれにあたり、創業間もない小規模事業者が、自社の事業モデルを魅力的に整え、顧客を開拓する上で、効果を発揮します。

そのためには、お客様をどう開拓していくのか、どのような商品・サービスを揃えていくのか、競合他社にどう対抗していくか、など自社の事業をどう特徴づけるかという点をハッキリさせることが重要です。

実は、50歳前後、いわゆるシニア・プレシニア世代の起業家は、これまでの人生の中で様々な経験を重ね、価値観をしっかりと持っている方が多いので、「ソーシャル・ブランディング」とはとても相性が良いのです。

ビジネスを考えるうえで大切な「3つの視点」

では、どのようにソーシャル・ブランディングを考えていけばいいのでしょうか?
そのためには、ビジネスを考える際に大切な3つの視点(領域)を意識する必要があります。

  • やりたいこと(ビジョン/志/プラン)
  • 求められること(マーケット/顧客/バリュー)
  • できること(スキル/商品/リソース)

この3つの視点(領域)の交わるところが、ご自身でビジネスを築く良いポイントになります。
それぞれの視点も大事ですが、特に重要なのは「考える順番」です。まずは「やりたいこと」、次に「求められること」、最後に「できること」です。この順番が、「ソーシャル・ブランディング」のプロセスそのものとも言えます。

ここで多くの方が間違えがちなのが、「やりたいことが仕事になるようなら苦労しないよね」と考えて、求められることや、できることからビジネスを考え始めてしまう点です。
順番を間違えてしまうと、折角の経験がビジネスに繋がりにくくなります。しっかりと順番を意識しましょう。

それでは次の章から3つの視点について、それぞれ解説していきます。

1. やりたいこと:自分の想いを最初に確認する

突然ですが、皆さんは成功している起業家の話を聴いたり、書籍を読んだりしたことはありませんか?心に残る話には、必ず、他の人に共有したくなる物語やドラマがあり、使命感や誇りを持って事業に取り組む姿勢に私たちは共感を覚えます。

これが「やりたいこと」を考えるうえでの第一歩です。求められることやできることに自分自身が熱中できないとしたら、そこを起点に考えたビジネスに共感は生まれません。端的に言うと、お客様がつきにくい状況になります。

シニア起業を志す方には、これまで歩んできた人生の中で、心が動かされた場面が必ずあると思います。その場面をなるべく具体的に思い出し、その時の気持ちを振り返ってみましょう。何かしらの想い、言い換えれば自分の価値観に気づくと思います。これが、「やりたいこと」をストーリーとして人に語る際の武器になり、「ソーシャル・ブランディング」のスタート地点にもなります。

2. 求められること:社会の課題・関心事と結びつける

ストーリーとして人に語れる価値観を言語化できたら、次はそれを社会の問題・関心事に結びつけてみましょう。社会問題などと言うと、貧困問題や環境問題など、とても自分ひとりでは手に負えないことと感じるかもしれませんが、ここではもっと軽く考えていただいて構いません。
例えば、「子供の学校のPTA活動の担い手がいなくて大変な想いをしている」という社会の問題が気になって、PTA役員活動の代行というビジネスを創った方がいらっしゃいます。「困っている人を助けたい」という自分のやりたいことを、社会の問題と結びつけました。
顧客開拓をゼロから始めるには大変な労力が必要ですが、社会の問題・関心事として見つけたテーマは、既に「求められていること」なので、将来の顧客がその周辺に必ず存在します。自分の想いと社会課題を結びつけ、ターゲットとする市場を把握することで、ソーシャル・ブランディングがビジネスに近づいてきます。

3. できること:自分の可能性は柔軟に考える

さて、いよいよ「できること」、すなわち提供する商品やサービスを考える段階になりました。
ここでのポイントは柔軟性です。普段自覚していない、自分の中にある様々な可能性を引き出しながら、「できること」を考えましょう。
「自分の得意分野で勝負したい」と最初から内容を絞り込んだり、あるいは逆に「自分には専門性が無いので可能性がない」と、諦めてしまう方もいらっしゃいますが、折角の経験を活かすために、視野は広く持ったほうが良いでしょう。

例えば、あるエンジニアの方は「口下手な自分は図面を見ていることが好きで、対人関係の仕事は絶対に無理だと思っていた」そうですが、今はキャリア開発のコンサルティングをされています。そのきっかけは、ご自身の「婚活」。「年齢の高い自分が、結婚を意識した際にどういうプロセスで人と仲良くなれば良いのかを徹底的にエンジニアとして分析し、それを実行したところ、結婚にこぎつけた」とのことで、そんな話を周りの方にしたら、これが評判になったそうです。分析というエンジニアの「できること」の対象が、ものからひとに変わったことで、新しいビジネスにつながった例です。

柔軟性を持って「できること」を考えるには、なるべく多くの人と接点を持ってフィードバックをもらう事が大切です。この際に、最初に考えた自分の想いがこもったストーリーが、相手に話を聴いてもらう材料になります。

自分が熱中してできることで、誰かに喜んでもらうために

「やりたいこと」、「求められること」、「できること」。この重なりを見つける作業が、「ソーシャル・ブランディング」の目的と言えます。
人生の経験を積んだ50歳前後からのプレシニア・シニア世代だからこそ、このようなアプローチでビジネスを興せる可能性が高いのです。
もちろん、既に起業している方にも事業のレベルアップに役立ちます。自分自身の想いを再認識する機会となり、事業を進めていく確信につなげていくことができるので、興味がありましたら始めてみてはいかがでしょうか。

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(監修:合同会社 志事創業社 臼井清(うすいきよし))
(編集:創業手帳編集部)

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