公告とは。公告方法と変更方法について解説

創業手帳

何を公告するのか? 経営に必須の知識を学ぶ

(2019/02/08更新)

株式会社の義務のひとつ、「公告」について、どのくらい理解できていますか。
「公告」とは主に、決算の内容や重要な決定事項を公衆一般に知らせることを言います。

ちなみに、よく使われる「広告」は、私人や企業が不特定多数の一般に向けて行う宣伝活動などを指しますが、それに対して「公告」は“法令上の根拠にもとづいた公的な情報”“利害が発生する相手に向けて”お知らせするものだという違いがあります。

公告には3つの方法があり、どれを選ぶかを定款で定める必要があり、怠ると罰則をうける可能性もあります。
起業時にしっかり理解して設定しないと、思わぬ手間がかかってしまうかもしれません。

この記事では、公告すべき内容やタイミング、公告の方法、公告方法の変更方法など、公告に関する基本的な知識をわかりやすくまとめて解説します。株式会社の設立を検討している起業家の方にとっては必須の知識です。いざというときに困らないよう、しっかり理解しておきましょう。

会社には公告の義務がある

前提として、規模の大小を問わず、株式会社には公告をする義務があります。具体的には、決算のときや株主に重要な影響を及ぼす事項があったときに公告を行わなければなりません。

公告とは

そもそも「公告」とは、「特定の事項を、広く一般に告知する」という意味の法律用語です。先にも述べたように、よく使われる「広告」とは意味が異なります。会社が、株主や取引先など利害関係のある相手へお知らせをするものが「公告」である、と理解してください。
会社法によって、規模の大小を問わず株式会社には公告を行う義務が課されています。その義務を怠った場合、100万円以下の過料が課されることになっています。

公告方法は会社法で決まっていて、どの方法を選ぶかは登記事項に定められています。登記簿にも公告方法が記載されますし、一般的には定款で公告方法を定めることになります。

なにを・どのタイミングで公告するのか

公告には、大きく分けて「決算公告」「決定公告」という2つの種類があります。

決算公告とは、その名の通り決算の内容(賃借対照表の内容や、その要旨)を記載する公告のことです。決算の承認をした定時株主総会のあとに、遅滞なく公告する必要があります。

決定公告とは、株主に重要な影響を及ぼす事項があったときに行う公告のこと。具体的には、資本金の減少や、合併・吸収分割が行われる際などに実施します。決定公告の中には、合併公告・資本金額の減少公告・解散公告などのように、法令で官報掲載と定められているものもあります(債権者に向けた意義申述等公告)。この場合、官報での公告に加え、個別に通知する必要があります。

株券提出公告や基準日設定公告などは、定款に定めた方法で行います。この場合は、株主に直接通知することで公告を省くこともできます。起業したての時期など、規模が小さい場合は直接通知するほうが親切で安く済むかもしれません。

3つの公告方法


公告には3つの方法があります。
先述の通り、合併や解散のときなど債権者に向けた意義申述等公告の場合は必ず官報で行わなくてはなりませんが、決算公告などは「官報」「新聞公告」「電子公告」の3つの方法から選び、あらかじめ定款で定めておく必要があります。

以下、3つの方法についてメリットや費用、手続きについて比較してみましょう。

官報に公告を掲載する

官報とは、法律や政令の内容などが掲載されている国発行の機関紙です。紙ベースのものだけでなく、インターネットでも閲覧できます。定款で公告の方法を定めなかった場合、官報が公告方法になります。手続きが手軽なので、多くの企業が選択している方法です。

最寄りの官報取次書へ申し込み、インターネット、FAX、郵送、来店などで原稿を入稿すれば作業は完了です。

決算公告は枠単位での申し込みとなり、最低2枠は必要となるので、3万円×2枠分以上の費用がかかります。なお、決算公告以外は1行3,000円で掲載可能です。

新聞に公告を掲載する

日刊新聞紙に公告を掲載する方法もあります。全国紙でなくても、地域紙でも問題ありません。

ただ、費用が高くなるのがデメリットで、掲載する新聞にもよりますが、50万円以上かかることがほとんどです。新規に設立される会社が、あえて新聞公告を選択することはほとんどありません。

合併や資本金の減少公告(減資)などの際は、各債権者への催告を省略することができるため、状況によって採用される場合もあります。

電子公告を利用する

電子公告とは、ウェブページに公告を掲載する方法で、登記の際に、公告を掲載するウェブページのアドレスを記載する必要があります。電子公告はサーバーやドメインと言ったウェブサイトの維持費用以外がかからないので、官報公告・新聞公告に比べてランニングコストを抑えられるというメリットがあります。

自社のウェブサイトがない場合は、公告掲載専門のサイトを利用する方法もあります。その場合の利用料は、月数百円から数千円程度です。サイトを管理する手間を考えて、こういったサービスを使うのもよいかもしれません。

決算公告だけを行う場合は、電子公告が一番簡単でコストも少ない方法と言えます。ただ、官報公告や新聞公告を行う際は賃借対照表の要旨掲載でOKですが、電子公告では賃借対照表の全文を掲載する必要があります。また、5年間掲載し続けなくてはなりません。ですので、賃借対照表の全文を公開したくない場合などはこの方法は不向きと言えます。

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なお、決定公告については、電子公告で行いたいという場合に注意が必要です。決算公告以外の公告については、「電子公告調査」(法定期間中、正しく公告がされていたかの調査)をうける必要があり、この調査には官報掲載費用より高い費用がかかる場合もあるからです。

いずれの方法も一長一短がありますので、コスト面や作業量を考えて選択すると言いでしょう。決算公告は電子公告で、それ以外は官報でというように、複数の方法を組み合わせることもできます。

公告方法を変更するには

公告の方法は、状況に応じて適宜変更することができます。例えば、最初はすべて官報で行うとしていた場合でも、決算公告を電子公告で行うよう変更する、という対応が可能です。

公告方法は、すでに定款で定められているはずの事項です。つまり、それを変更するということは定款内容を変更するということです。

定款を変更するには、株主総会で定款変更を決定し、議事録に記載します。株式会社において、公告の方法は相対的記載事項なので、定款を変更したからと言って必ず登記変更をしなければならないとうわけではありません。

定款変更については、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
定款変更をしたいときに必要な手続きとは?

まとめ

株式会社を経営する以上、公告する義務があるということを覚えておきましょう。決算公告もあるので、年1回以上は発生する業務です。公告を怠ってしまうと罰則をうける可能性もあるので、決して軽く見ずに、漏れがないよう準備しておいてください。

複数ある方法のうち、費用や作業の手間を考えてどの方法を選ぶかを決定しておきたいですね。

(編集:創業手帳編集部)

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