アパート経営を始めるなら個人事業主になるメリットと成功への秘訣を紹介
アパート経営は個人事業主になった方が税制面で有利になる!
アパート経営を始めようと考えた際に、個人事業主として始めるかどうか悩む方もいます。
アパート経営の場合は必ずしも開業を行う必要はないものの、個人事業主として経営することで様々なメリットが得られます。
特に税制面で有利になることが多いため、個人事業主として経営することも検討してみるのもおすすめです。
今回は、アパート経営を始めるなら個人事業主になるメリットや経費計上できる項目、個人事業主になる際の注意点などを解説していきます。
これからアパート経営を始める方は、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
アパート経営で個人事業主になるメリット
アパート経営を行う際に個人事業主になることで、様々なメリットが得られます。まずはどのようなメリットを得られるのかについて解説します。
青色申告で控除が受けられる
個人事業主として開業した場合、確定申告で青色申告及び白色申告を選択することが可能です。
この時、青色申告を選ぶと「青色申告特別控除」を受けられるようになります。
青色申告特別控除とは、毎年3月15日までに青色申告で確定申告を行うことで、最大65万円の控除が受けられる制度です。
最大65万円の控除を受けるためには電子帳簿の要件を満たし、電子データの備付けや保存を行い、届出書を提出しなければなりません。
しかし、それでも65万円の所得控除は魅力的です。
なお、青色申告を希望する場合には事前に税務署へ青色申告承認申請書を提出しておく必要があります。
提出期限は開業してから2カ月以内になるので、開業届を出すタイミングで一緒に提出するのがおすすめです。
損益通算が可能になる
損益通算とは、事業で得た利益と損失を相殺することを指します。
例えば本業の仕事とは別に副業でアパート経営を始め、赤字計上となった場合、給与所得の黒字分とアパート経営での赤字を相殺させることで全体の所得額を減らすことができ、節税につながります。
損益通算によって所得税の税率が変わると、確定申告によって一部所得税が還付されます。
また、万が一赤字が出てしまった場合でも青色申告によって最大3年間は赤字を繰り越したり、繰り戻しが可能です。
特に、アパート経営を開始した初年度や大規模修繕を行った年は、支出が増え収支もマイナスになりやすくなります。
この時に発生した赤字分を黒字の年に相殺させることで、所得税・住民税の節税が期待できます。
法人よりも手間と費用がかからない
アパート経営を始めるにあたって、個人事業主の他に「法人化する」という選択肢も検討の対象となります。
しかし、会社を設立するには登録免許税を納めたり、定款を認証するために手数料を支払ったりするなど、コストがかかってきます。
また、今後会社を維持していくためには、個人事業主では発生しない手間やコストもかかりやすいです。
個人事業主なら開業届を提出するだけで開業でき、手続きに別途費用が必要になることもありません。
初期費用・ランニングコストをできるだけかけたくない場合は、法人化よりも個人事業主として開業した方が良いでしょう。
事業規模が小さければ所得税率は低くなる
アパート経営において事業規模がそれほど大きくない場合、所得税率は低くなります。
そもそも所得税は累進課税制度を取り入れており、課税対象額が多くなればなるほど税率も高くなっていく仕組みです。
もし課税対象額が500万円だった場合、税率は20%で課税額から427,500円が控除されることになります。
計算式にすると500万円×20%-427,500円=572,500円となります。この金額が所得税として納める金額になります。
事業規模が大きくその分利益が出ていると、所得税率もどんどん大きくなり納める所得税額も大きいです。
そのため、個人事業主として開業し、小規模な経営を行うことで所得税率を抑えられます。
融資が利用しやすくなる
アパート経営を始めるにあたって物件を購入する際に、多くの場合ローンを組んで融資を受けることになります。
金融機関から融資を受けるためには、審査を受けその審査を通過しなければなりません。
特に開業なども行わずに融資を受けようとした場合、事業に取り組む意欲などが見えないため、審査に落ちてしまう可能性もあります。
しかし、個人事業主として開業届を提出している事実がわかれば、金融機関にアパート経営を事業として取り組む姿勢が伝わり、審査にも通りやすくなります。
また、審査時に帳簿や事業計画書などを提出することで、より融資を受けやすくなります。
経費にできる項目を増やせる
開業届を提出しない場合でも経費計上ができる項目もありますが、個人事業主に比べると経費として認められる項目の範囲は狭いです。
また、個人事業主になると少額減価償却資産の特例を受けられるようになり、30万円未満の経費は年合計300万円までまとめて必要経費としての処理を行えます。
さらにアパート経営で入居者が夜逃げや自己破産を行った影響で家賃の回収が不能になった場合、その年の損失を経費として計上できます。
損失を計上できればその分課税所得も減らせるので、万が一の事態が発生しても安心です。
その他にもアパート経営において配偶者や両親などに給料を支払う場合、青色申告専従者給与に関する届出を事前に提出していれば、給料分を全額費用として計上できます。
アパート経営で個人事業主が経費計上できる項目
上記で個人事業主は経費として計上できる可能性が拡大する点についてご紹介しましたが、具体的にどのような項目が経費計上できるのか知っておきたいところです。
ここでは、個人事業主が経費計上できる項目をご紹介します。
減価償却費
アパートの建物部分は減価償却資産に該当し、年数が経過するごとに資産価値が下がっていきます。
法定耐用年数が種類によって決められており、アパートの取得額を耐用年数で分割して毎年計上していくことが可能です。
アパートの構造別法定耐用年数は以下のとおりです。
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- 木造:22年
- 鉄骨造(骨格材の厚みが3mm以下):19年
- 鉄骨造(骨格材の厚みが3mm以上4mm以下):27年
- 鉄骨造(骨格材の厚みが4mm以上):34年
- 鉄筋コンクリート造:47年
固定資産税・登録免許税などの税金
アパートを経営する上で発生する税金も、経費として計上することが可能です。経費計上できる税金は以下のとおりです。
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- 固定資産税
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 印紙税
- 事業税
- 都市計画税
ただし、不動産取得税や固定資産税などでもアパート経営に関連しない部分は経費として計上できないので注意が必要です。
また、個人の所得税・住民税なども経費計上はできません。
管理費・管理委託費
アパートを管理する際にかかったコストは「管理費」として計上することが可能です。
入居者が安全で快適な生活を送るためにも適切に管理する必要があり、そのためにコストがかかってしまうことも少なくありません。
また、自分自身で管理せず、不動産管理会社に管理業務を委託した場合の委託費も経費計上できます。
管理会社に委託することで、自分で管理するよりもコストは発生するものの、共用部の清掃や設備の手入れ、入居者対応なども任せられるので、委託も視野に入れておくのがおすすめです。
修繕費
アパートの経年劣化や老朽化によって不具合が発生したら修繕が必要です。この修繕でかかった費用も経費として計上できます。
また、入居者が退去した後に行う原状回復工事の費用も、経費計上できる項目として認められています。
ただし、修繕費を経費として処理するためには、以下の条件を満たす必要があります。
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- 1カ所の修理・改良に要する金額が20万円未満
- 修繕を3年以内の周期で行われている
また、修繕費なのかそれとも資本的支出なのかが不明な場合、以下の条件に該当すれば修繕費として計上できます。
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- 修理費が60万円以内、またはアパート取得金額の1割以下
- 毎年継続的に修理が必要な場合、修理金額の3割相当額またはアパート取得金額の1割相当額のいずれか少額な方
保険料
アパート経営を行うにあたって加入している保険の料金も、経費として計上できます。例えば火災保険や地震保険、施設賠償責任保険などです。
保険料を経費計上する際に注意したいのが、数年分をまとめて支払っているケースです。
数年分まとめて支払うことで保険料を安く抑えられますが、数年分の保険料をまとめて支払ったとしても経費として計上できるのは1年分だけになります。
広告宣伝費
入居者を集めるために募集広告を出稿したり、不動産ポータルサイトにアパート情報を掲載してもらったりする際の費用も、広告宣伝費として計上できます。
媒体や広告会社によって異なるものの、広告宣伝費の相場は家賃1カ月分です。
アパートの借入れを返済する際に支払う利息分
アパートの取得でローンを利用した場合、借入金を返済する際に支払う利息分は経費として計上することが可能です。
ローンを借り入れた場合、元金だけでなく設定された金利に合わせて利息も支払っていくことになります。
この時、元金の分は経費として計上できないものの、利息分は経費として計上できるため、税負担を少しでも抑えられます。
アパート経営で個人事業主になる際の注意点
アパート経営で個人事業主になると様々なメリットが得られますが、いくつか注意すべきポイントもあります。ここで個人事業主になる際の注意点を確認していきます。
個人事業税が発生する
アパート経営で個人事業主になると、所得税とは別に個人事業税を納めなければなりません。
個人事業税は貸付けの規模やどの程度の家賃収入があるかによって判断されます。
一般的には10室以上のアパートを経営していると第1業種の「不動産貸付業」とみなされ、5%の税率がかかってきます。
なお、個人事業税には事業主控除として最大290万円の控除が受けられます。また、個人事業税は所得税のように別途申告手続きを行う必要もありません。
確定申告をすることで納付書が送付されるので、記載された金額を納めれば完了となります。
簡易簿記と比べて記帳が複雑になる
個人事業主で青色申告を選ぶと、最大65万円の特別控除が受けられるなど様々なメリットが得られます。
しかし、その反面簡易簿記と比べて作成が難しくなる「複式簿記」で記帳する必要があります。
複式簿記は簡易簿記より提出する書類の数も多くなるため、確定申告が複雑になる点を念頭に置いてください。
失業保険を受け取れなくなる
会社を辞めてから失業保険を受け取った場合や、これから受け取ろうと考えている場合、個人事業主になると失業保険を受け取れなくなってしまうので注意が必要です。
そもそも失業保険は、生活と雇用の安定を図るために給付されるものです。
もし失業保険を受給している最中に個人事業をスタートさせた場合、ハローワークに申告しないと失業保険の不正受給とみなされてしまいます。
所得が大きい場合は法人化の方がメリットも多い
個人事業主は法人化に比べて手間や費用が発生しないことを上記でもご紹介しましたが、所得額によっては法人化した方がメリットを得られる場合もあります。
例えば個人事業主だと累進課税制度によって所得が大きければ大きいほど税率が上がっていきます。所得税と住民税を合わせれば、税率は最大55%にもなります。
一方、法人の場合は所得税ではなく法人税を納めます。法人税は比例税率制度を取り入れており、ほぼ一定の税率です。
法人が納める税金の税率は、法人税以外も合わせて30~35%になります。
つまり、所得金額によっては法人税の方が税負担を軽減できることになります。特に年間所得額が1,000万円を超えた場合、法人化によって節税効果が期待できるでしょう。
個人事業主がアパート経営を成功させるためのポイント
個人事業主がアパート経営を成功させるためには、以下の2点にも留意する必要があります。
赤字が出ても確定申告は行う
アパート経営においてその年度が赤字決算となった際も確定申告を行うことが重要です。
確定申告を行えば損益通算により本業の所得から赤字分を差し引き、所得税額を計算できます。
「赤字なら確定申告をする必要がない」と考えてしまう方もいるかもしれませんが、余計に税金を納めないためにもきちんと確定申告を行ってください。
リスク管理を徹底する
アパート経営を行う上で、様々なリスクが発生してきます。
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- 空室
- 市場の変動
- 家賃未払い
- 入居者同士でのトラブル
- 物件の老朽化
- 金利上昇
- 自然災害 など
これらのリスクを回避するためにも、事前にリスク管理を徹底しておくことが大切です。
例えば自然災害が発生しても補償を受けられるように保険に加入したり、空室リスクを回避するために条件の見直しや環境整備を行ったりするなどです。
もし自分だけで管理するのが難しい場合には、不動産管理会社に相談しつつリスク管理を行ってください。
アパート経営は個人事業主として行い節税につなげよう
個人事業主にならなくてもアパートを経営すること自体は可能ですが、個人事業主になることで節税などのメリットが得られます。
節税効果を高めるためにも、アパート経営を始める際には個人事業主としての開業も検討してみましょう。
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(編集:創業手帳編集部)