ビル経営はメリットが多い!?注意点・成功の秘訣までを徹底解説

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ビル経営のメリットやリスクを知って安定した利益を得よう!


不動産経営といえば、アパートやマンションといった賃貸住宅が主流です。それ以外にも、個人事業主や法人などが利用するビルも選択肢になります。
住宅のほうが需要は高そうなイメージがありますが、ビル経営にもたくさんのメリットがあるのでおすすめのビジネスです。

そこで今回は、ビル経営をはじめるメリットから注意点、成功のポイントまで詳しく解説します。不動産経営を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

ビル経営をはじめる6つのメリット


ビル経営をはじめることには、主に6つのメリットがあります。具体的にどのようなメリットがあるのか、詳しくご紹介します。

1.住宅系より得られる収入が大きい

ビル経営では、企業や法人などのテナントにビルの一室を貸出し、毎月家賃収入を得ることができます。この点は賃貸住宅と変わりません。
しかし、ビルは住宅系よりも賃料単価が高いため、大きな収入に期待できます。

東京や大阪などの主要都市の場合、1坪あたりの賃料単価は1~2万円近くが平均相場といわれています。
大まかな賃料は「賃料単価×面積」で計算できるので、4階建てビル・各階60坪程度・賃料単価1万5,000円を想定して、家賃収入の目安をシミュレーションしてみました。

(1万5,000円×60坪)×4階=270万円

上記の例では、毎月270万円の収入に期待できます。長期的に入居してくれる企業・法人であれば、安定した収益を得られます。
ただし、実際には必要経費が差し引かれるので、満額で受け取れるわけではない点に注意してください。

賃料以外の収入

ビルオーナーの収入は、テナントから毎月支払われる賃料だけではありません。ほかにも以下の費用がオーナーの収入です。

敷金(保証金) テナントが契約する際に預かる費用で、退去の際に賃料の滞納や借主の故意による破損・汚損などがあった際に差し引く
更新料 賃貸借契約における更新月が来た時、テナントが入居を続ける場合に支払う費用で、相場は家賃1~3カ月程
共益費・管理費 ビルの共有部・設備の維持管理に当てられる費用で、賃料とは別途で毎月テナントから支払われる
基地局設置料 屋上に携帯電話の基地局が設置されている場合、携帯電話会社から支払われる費用
自動販売機設置料金 自動販売機を設置している場合、飲料会社から支払われる費用
広告看板設置料 ビル屋外の一部に広告用の看板を設置している場合、広告出稿者から支払われる費用

ビル経営では敷金や更新料だけではなく、基地局設置料や自動販売機設置料金など二次的収入を得られるケースがあります。
これも住宅系と比べて高収益を得られる理由のひとつです。

なお、更新料に関しては、定期借家契約だと発生しないので注意してください。

2.建築の自由度が高め

商業地域に建築されることが多いビルは住宅系よりも制限がかかりにくいので、建築の自由度が高めです。
アパートやマンションは、建築基準法や都市計画法によって、周辺環境や土地の形状などに制限がかかることがあります。
そのため、たとえ条件が良い立地でも法的な制限によって建てられないことがあります。

一方、ビルであればアパート・マンションを建てられない形状の土地や日当たりが悪い土地でも建築できるかもしれません。
住宅用として条件が悪い土地の活用に悩んでいる方も、ビル経営に活用することで収益を増やすチャンスを得られる可能性があります。

3.相続税対策に活用できる

ビル経営をはじめることは、相続税対策にもつながります。テナントビルが建つ土地は、相続税評価で貸家建付地に区分されます。
貸家建付地は用途が制限されるため自用地よりも相続税評価が安く、その分相続税が減税されるのです。

長期的なビル経営で収益を得ながら、将来的に子や孫など親族に相続する予定であれば、相続税の減額に大きな効果が期待されます。
ただし、ビルは住宅用建物ではないため、住宅用地の特例による固定資産税の減税は適用されないので注意してください。

4.原状回復費用を負担する必要がない

テナントが退去する際、入居前の状態に戻すための原状回復工事が行われます。
その工事にかかる原状回復費用は借主が100%負担するので、オーナーには金銭的な負担が生じません。

賃貸住宅の場合、借主の故意による破損や汚損などであれば退去時に敷金(保証金)から原状回復費用が賄われ、不足分の請求が可能です。
しかし、経年劣化や自然に故障したものは貸主の負担で修繕しなければなりません。
そのため、オーナーは原状回復の負担を減らせる賃料設定が必要です。
賃貸住宅では入居者の部屋の使い方はほとんど変わらないため、ある程度劣化や損耗の範囲を予想でき、修繕費を考慮した賃料設定ができます。

一方、ビルは業態によって部屋の使い方が異なるため、賃貸住宅と比べると劣化や損耗の予想が難しい傾向にあります。
さらに、内装や設備も業態ごとに大きく異なるため、自由に内装を変更できることを条件に原状回復費は原則借主の100%負担としているのです。

5.住宅系よりもトラブルのリスクが低い

ビル経営は、賃貸住宅よりも入居者トラブルが起きにくいこともメリットです。賃貸住宅では、家賃の滞納・騒音・ゴミ出しなど入居者トラブルが起きる可能性があります。
しかし、ビルは企業・法人が入居対象となり、居住用として使われるわけではないのでトラブルが起きにくいのです。

そもそも借りているテナントでトラブルを起こせば、法人側はイメージダウンや信用を失うリスクがあります。
その点も懸念しているので、ほとんどの借主がルールに従ってビルを使ってくれます。

6.ビルの転用がしやすい

ビルは賃貸住宅と比べて、ほかの用途に転用しやすいメリットがあります。ビルの場合、テナントと定期借家契約をするケースが多いです。
定期借家契約は借りられる期間があらかじめ決まっている賃貸借契約で、借主とオーナー双方の合意がない限り、基本的に契約満了後の再契約はできません。
つまり、定期借家契約であれば契約満了と同時に、ビルの用途を事務所の入るオフィスビルから店舗が入る商業ビルに転用といったことが可能です。

賃貸住宅では、特別な事由がない限りオーナーの都合で入居者を強制退去させることはできません。
そのため、一度アパートやマンションの経営をはじめると簡単に用途を転用することができないのです。

ビル経営のリスク・注意点


ビル経営はメリットばかりではなく、注意したいリスクもいくつかあります。ビル経営をはじめて後悔しないためにも、事前に知っておくべきリスクや注意点をご紹介します。

経済的なリスク

ビル経営をはじめるためには、まずビルを取得する必要があります。個人でも、10階までの小規模ビルであれば建てるのは難しくないかもしれません。
オフィス街にあるような超高層ビルとなると個人では厳しく、一般的に大手企業がオーナーとなっているケースが多いです。

小規模ビルとはいえ、アパートや駐車場と比べて初期費用は高額なものとなります。
建築費用だけで数億円以上となるケースもあるので、初期費用が高い点がビル経営の大きなデメリットです。

実際にビルを経営するためには、テナントが安心して一室を使えるように設備や環境も整える必要があり、建物以外の部分でも費用が発生します。
さらに、建てた後は共有部分の掃除やメンテナンスといった維持管理にもコストがかかるでしょう。

立地に関するリスク

ビル経営でも立地は重要な要素となります。
住宅用には使えない土地でも建てられることにメリットがあるビルですが、ビジネス用途の需要がないエリアでは借主が見つからない可能性があります。
建てられればどこでも良いわけではなく、人が多い場所や大きな土地があるエリアなど、ビル経営に適した立地を選択しなければなりません。
ビルの使い方が制限される分、立地の選択肢も制限される傾向にあります。

もしも立地選びに失敗すると空室リスクが高まり、収入を得られなくなってしまうので、どこで経営するか慎重に検討しなければなりません。
ビルが多い立地では、競合も多い点にも注意が必要です。現時点で強い競合のいない地域でも将来的に新しいビルが建ってしまうケースもあります。
競合にテナントを取られないように、差別化を図ることが大切です。

賃料に関するリスク

ビルに空室が出れば、その間賃料が発生せず、収入を増やすことができません。
ビルは景気の影響を非常に受けやすいので、テナントのビジネス状況に応じて頻繁に入れ替えが生じます。
フロアを多く占有するテナントが退去した場合、大幅に収入が減る恐れがあるかもしれません。
その状況でも維持管理費は発生するので、空室が続くと赤字になる恐れがあります。継続的に入居してもらえるように、空室対策を講じることが大切です。

また、ビルの階数によって賃料が変わることがない点にも注意が必要です。アパートであれば、高い階層ほど家賃が高くなります。
しかし、ビルはフロアごとに異なる賃料を設定することはありません。
なぜなら、テナントの中には複数のフロアを借りるケースがあるからです。
フロアごとに異なる賃料が発生すると金銭的な負担が大きくなるので、借主が現れない可能性があります。

専門知識とノウハウに関するリスク

ビル経営に特別な資格はなく、誰でもチャレンジできます。しかし、賃貸住宅とはまた違った専門知識とノウハウが必要です。
そのため、不動産経営の初心者には少しハードルが高いことがデメリットになります。

大きな収益を上げているビルは、不動産経営を熟知している大手不動産であるケースが多いです。
その相手が競合となることもあるため、安定した経営を実現するためにはビル経営の実績が多い管理会社に管理や運営を委託するのがおすすめです。

ビル経営を成功させる秘訣


ビル経営で収入を得るためには、テナントに入居してもらわなければなりません。ここで、ビル経営を成功させるためのポイントをご紹介します。

返済リスクに備えて十分な自己資金を確保しておく

ビル経営をはじめる際は、ある程度の自己資金を確保しておいてください。
ビルの建築費用や購入費は高額になるので、金融機関からの借入れを行うことがあります。借入れを行えば、毎月返済が必要です。

しかし、空室が増えたり、長く続いたりすれば収入が減り、借入金の返済が滞るリスクがあります。
自己資金を確保しておけば、収入が少ない状態でも返済することが可能です。
不動産投資では、建物価格の30%を目安に自己資金を確保しておくと良いとされています。

テナントが集まりやすい立地を選ぶ

ビル経営の成功を大きく左右するのが、立地選びです。空室リスクを抑えるために、ビジネス用途の需要が高いエリアを選ぶことがポイントです。
一般的にビル経営にふさわしい立地には、以下の条件が挙げられます。

  • 人口が密集する立地
  • 駅に近い立地
  • 交通量が多い大通りに面した立地

商業ビルやメディカルビルは、利用者のニーズを考えて人口が密集する地域が理想的です。
交通機関を利用して出勤や来店する人も多いので、駅へのアクセスが良い立地もビル経営に適しています。
また、業態によっては大通りに面した立地もアクセスの利便性が高いので、ビジネス向きといえます。

省エネ性や設備を充実させて誘致しやすいビルにする

テナントを誘致しやすいビルに工夫することも大切です。まず、テナントが事業活動を行えるように、必要な設備を用意しなければなりません。
主に必要となる設備例は以下のとおりです。

  • 電気設備(受変電設備や非常用電源など)
  • 全館空調システム
  • 24時間換気システム
  • 給水設備
  • 水回りの設備(キッチンやトイレなど)
  • エレベーター
  • 防犯設備
  • 資材や荷物などの搬入口

場合によっては、車移動や来訪者用の駐車場の設置が必要になることがあります。
テナントが支払う光熱費の負担を軽減するために、省エネ性の高い設備を選択するのもおすすめです。
ほかにも外観やエントランスをおしゃれなデザインにすることで、おしゃれな店舗や事務所にしたいテナントから注目されやすくなります。

貸出のルールを作る

テナントとのトラブルを避けるために、貸出す際のルールを整備してください。例えば、賃貸借契約書には、転貸やほかの業種との同居を禁止する旨の記載が必要です。
オーナーを介さず、テナントのA社が独断でB社にビルの一室を貸した場合、A社が退去する際に立ち退きを巡ってトラブルが起きる可能性があります。
そのため、不動産経営では転貸・同居を禁止しているのが一般的です。

ほかにも管理上の責任や負担でトラブルが起きないように、オーナーが管理する共有部とテナントが管理する専有部の区分を明確にしておくことも大切です。
また、内装工事に関する内容や範囲の定義を確立しておくと、テナントも安心して内装工事や原状回復工事が行うことができます。

店舗として貸出す際は、更新なしの定期借家契約がおすすめです。廃業や移転といった借主の都合で退去する場合、立ち退き料が発生します。
店舗の場合、立ち退き料に営業補償が含まれるので、事務所の立ち退きよりも高くなってしまうのです。
そのため、テナントに負担をかけない策として、店舗は定期借家契約にするケースが増えています。

管理をビルに特化した管理会社に委託する

ビルの管理には、ビル管理士や電気主任技術者などの資格が必要になります。
そのような資格がなく、ビル管理の専門ノウハウがない場合、管理会社に管理を委託するのがおすすめです。
不動産の管理会社が多数ありますが、ビル管理に特化した会社を選ぶことがポイントです。

ビル管理の実績が多い専門の管理会社であれば、適切にビルを管理してもらえます。
テナントとの交渉やトラブルが発生した際、専門知識や経験をもとに対応してもらえるので安心です。
管理会社のサービス内容や料金、管理物件数などを確認し、安心して任せられる会社を見つけてください。

まとめ

ビルは賃貸住宅の経営よりも利回りが良く、高収入を狙える可能性がありますテナントの入居率が高いビルができれば、安定収入を得ることができます。
ただし、ビル経営を成功させるためには、専門的な経営知識・ノウハウが必要です。
不動産投資や管理をサポートしてくれる信頼できるパートナーを見つけた上で、ビル経営をはじめましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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