定年後に個人事業主になるメリットとは?必要な手続きや節税、年金がどうなるのかなどをご紹介
生涯現役で働きたいなら定年後は個人事業主で働こう!
「定年後はゆっくり過ごしたい」と考える方もいれば、「生涯現役で働き続けたい」と考える方もいます。
日本では高齢化が進み、定年後も現役で働く方が増えていますが、定年後に起業したいと考える方も多いかもしれません。
そこで今回は、定年後に個人事業主になるメリットやデメリットをはじめ、必要な手続きや節税対策について解説していきます。
定年後に自分の好きなことや経験を活かした起業を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
定年後に個人事業主になるメリット
定年後に個人事業主になる場合、どのようなメリットを享受できるか解説していきます。
これまでの経験やスキルを活かして働ける
定年後に起業したいのであれば、これまで培ってきた経験やスキルを活かせる事業で起業するのもひとつの策です。
何十年にもわたる社会人生活では、知識や技術、ノウハウなど、様々な経験をしてきたはずです。経験は大きな武器となるため、起業にも活かせると考えられます。
営業として活躍していたのであれば、培ってきた営業力で顧客を獲得し、事業を軌道に乗せられるかもしれません。
また、財務や経理の経験があれば、事業状況を分析しながらの経営を続けられます。
さらに、これまでに複数の業務を経験してきた方であれば、新しい業種にもチャレンジしやすいかもしれません。
経験やスキルを掛け合わせることで、多くの需要が生まれる可能性もあります。
なお、豊富な社会人経験によって身に付いた対応力があれば、トラブル時も的確に対処できるため、顧客からの信頼を獲得しやすいというメリットもあります。
定年がないので生涯働ける
会社員であれば、一定の年齢に達したら定年を迎えます。
同じ会社で働き続けたくても、年齢によって違う部署に異動する可能性もあり、希望する業務で働けないケースもあります。
また、定年後に同業種を営む会社への就職を目指そうとしても、年齢が原因で再就職が難しいことがあるかもしれません。
しかし、個人事業主には定年がありません。起業して経営者になれば、70歳や80歳を超えても現役で働き続けることが可能であるため、人生をより楽しめるでしょう。
収入が増える
定年後、お金の面で不安になる方は多いかもしれません。食費や日用品費、娯楽費など、定年後に生活をする上で必要な費用は複数あります。
年金の受給もありますが、大きな額でなければ生活は潤いません。
定年前に貯蓄をしていれば貯金を切り崩しながら生活ができますが、思うように資金を貯められないケースもあります。
生活に少しでも潤いを持たせるためにはお金が必要です。お金を稼ぐ方法として、再雇用やアルバイトが挙げられます。
しかし、給与が低いことも多く、思うように稼げずに悩んでしまう方もいるかもしれません。
定年後、個人事業主として起業すれば、年金以外の収入を確保できます。
仕事をする量も金額も自分の好きなように決められるため、仕事を増やして努力をすればその分収入も増えていきます。
成功すれば会社員時代よりも大きく稼げる可能性があるため、収入を増やしたいと考えている方は、起業も選択肢に入れて老後の計画をしてみてください。
自由に働ける
企業に所属していれば、勤務先のルールに則って働き続けなければいけません。始業時間や終業時間、休みや働く場所など、あらゆるルールが存在します。
しかし、個人事業主であれば、ルールを自分で決められます。
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- 平日は休んで週末のみ働く
- 昼間の時間帯のみ営業をして夕方以降はゆっくりする
- 自宅ではなく図書館やカフェスペースで仕事をする
- 夜間のみ仕事をする など
自分が希望する働き方ができるため、ストレスや負担を軽減しながら働き続けることが可能です。
定年後に個人事業主になるデメリット
定年後に個人事業主になることはメリットばかりではありません。注意点を把握し、対策を考えた上で事業展開を目指してみてください。
体力面に不安がある
年齢を重ねるごとに体力は落ちていきます。体力に衰えがあれば、これまでできていたことが急にできなくなることがあるかもしれません。
繁忙期や納期前には仕事量が増えることも多くあり、体を壊してしまうケースも考えられます。
加齢による体力の低下は避けられません。体力を維持しようとスポーツをしていたとしても、無理をして体を壊す心配もあります。
そのため、体力面を考慮しながら業務量を調節することが必須です。そして事業が軌道に乗った段階で従業員を雇えば、体力面の負担も軽減するでしょう。
失敗した場合は再起が難しい
個人事業主としての起業は、必ず成功するわけではありません。起業にはリスクがあり、失敗する可能性があります。
1年や2年で廃業するケースも考えられます。もし、起業が失敗すれば再起が難しいかもしれません。
他の事業に挑戦して挽回できることもありますが、再度失敗する可能性もあります。
生涯現役で仕事をしたい場合、再就職を目指そうとする方もいますが、年齢により再就職が難しいこともあります。
また、退職金をすべて使い起業する場合は、その後の生活に支障を与えかねません。
そのため、失敗するリスクが低い業種を選ぶほか、小規模による事業展開から始めることが重要です。
開業資金を貯めなくてはならない
新しい事業を展開するためには資金が必要です。お店を構えたり、機材や設備を導入したりするなど、初期費用がかかるケースもあります。
まとまった資金が必要になるため、起業に向けた資金繰りが必要です。
退職金や貯金を利用しても資金が足りないのであれば、融資の利用を検討してみてください。
個人事業主が融資を受ける場合、原則として開業届の提出や確定申告を行っている必要があります。
金融機関のローン以外にも、日本政策金融公庫の融資や制度融資、プロパー融資など、融資には様々な種類があります。
それぞれの特徴や条件などを理解してから活用を検討してみてください。
老齢厚生年金を増やせない
国民年金による老齢年金を老齢厚生年金といいます。受給資格期間が10年以上で、65歳以上の方が受給できます。
個人事業主になった場合、働きながら年金を受給しても受け取る年金額が減額されることはありません。収入があっても年金を満額受け取れる点は大きなメリットです。
しかし、個人事業主の場合、老齢厚生年金を増やせないデメリットがあります。
個人事業主は厚生年金保険の被保険者にならず、保険料を納める必要がありません。
定年後に個人事業主になるために必要な手続き
定年後に個人事業主になる場合、開業に関する流れを知っておけばスムーズな事業展開を目指せます。
開業に向けた準備を整えるためにも、必要な手続きを把握しておいてください。
開業届の提出
事業を展開するためには開業届の提出が不可欠です。管轄の税務署に開業から原則1カ月以内に開業届を提出する必要があります。
届出書は税務署に設置されているほか、国税庁のホームページからダウンロードできます。
1カ月の期限を過ぎても罰則はありませんが、提出する必要があるので忘れないようにしてください。手数料なしで提出でき、郵送での提出も可能です。
青色申告書承認申請書の提出
節税対策を考えるなら、青色申告書承認申請書の提出も行ってください。開業から2カ月以内に提出する必要があり、開業届と一緒に申請すると手間を省けます。
青色申告書承認申請書を提出すれば、年間の所得から最大で65万円分控除されます。
税金の負担を軽減できる点は大きなメリットです。
青色申告書承認申請書の提出を行うためには、日々の売上げや仕入れを複式簿記で記入する必要があります。
複式簿記の記入が可能な青色申告ソフトの活用を検討してみてください。
社会保険の手続き
会社員と個人事業主では、加入する社会保険の種類に違いがあります。退職後は早めに手続きをして社会保険に加入してください。
個人事業主が加入できる社会保険は、国民年金と健康保険の2種類です。
国民年金は第一号被保険者として、自治体の窓口もしくは年金事務所での切り替え手続きが可能です。
しかし、60歳になると国民年金に加入する資格を失ってしまいます。
老齢基礎年金を受けられる加入期間を満たしていない場合は、60歳を過ぎても国民年金への加入が可能です。これを高齢任意加入被保険者といいます。
日本国内に住所を持つ60~65歳未満の方が任氏に加入できるので、加入したい場合は年金事務所に相談してみてください。
健康保険には、以下4つの選択肢があります。
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- 配偶者の扶養に入る
- 国民兼保険に加入
- 国民健康保険組合に加入
- 退職前の会社の健康保険を任意継続
退職する前の会社の健康保険を任意継続する場合は期限が定まっています。最長2年となるため、その間に次に加入する健康保険の種類を検討しておいてください。
定年後の個人事業主は節税対策と年金で手取りが増やせる
定年後に個人事業主になり、より多くの手取りを増やしたい方のために節税対策や年金について解説していきます。
生活費を経費にできる可能性がある
会社員時代には経費といった考えはあまりないため、確定申告とも無縁だった方も多いでしょう。
しかし、起業すれば事業収入から経費を差し引いて利益を計算しなければいけません。
経費は、事業収入を上げるために発生したお金を指します。自宅で仕事をする場合には、家賃のほかにも電話代や電気代などの一部を経費にできます。
これらの費用は会社員であれば生活費となりますが、個人事業主になれば税金を減らすための経費です。
ただし、個人事業主本人の給与や年金、保険料などは経費になりません。
住民税や所得税といった税金以外にも、私的な買い物や飲食代、資産として減価償却できる備品なども経費計上できないため、あらかじめ経費にできるものを理解しておく必要があります。
わからない場合は、税務署や税理士などに相談してみてください。
様々な節税制度が利用できる
個人事業主になれば様々な節税制度を利用できます。そのひとつが「少額減価償却資産の特例」です。
取得価額が30万円未満の減価償却資産を少額減価償却資産といい、取得価額すべてを経費計上することが可能です。
青色申告を行っている必要があるため、開業届を提出する際に一緒に税務署に提出してください。
ほかにも、小規模企業共済制度や中小企業倒産防止共済制度といった制度を活用して節税できます。
小規模企業共済制度は、退職金ともいえる制度です。任意の金額を月額の掛金として支払うことで、個人事業を廃業した際に給付を受け取れます。
掛金は所得から控除できるため、高い節税効果があります。
中小企業倒産防止共済制度は、取引先が倒産した際に融資を受けられる制度で、掛金を支払うことで無担保・無保証人で掛金の最高10倍までの金額を借入れできる制度です。
掛金は経費計上が可能なので、節税が可能です。個人事業主となる場合には、制度への加入を検討してみてください。
「事業収入」であれば在職老齢年金が減額されない
働きながら受け取る老齢厚生年金が、在職老齢年金です。年金と給与の月額が47万円以上になると、一部のみ支給停止もしくは減額されます。
年金受給額が減れば、生活に影響を及ぼすことも考えられます。
しかし、年金を受け取りながら働く個人事業主であれば、収入は給与ではなく事業収入となるため対象になりません。
そのため、いくら稼いでも満額の老齢厚生年金を受給できます。
まとめ・定年後に個人事業主・定年後に個人事業主になれば年金が減額されずに節税も可能!
定年後の企業は、これまでの経験や培ったスキルを活かしながら自由に働ける点がメリットです。
また、生活費を経費にできるほか、様々な節税制度も用意されています。事業収入であれば在職老齢年金となるため、年金額が減ることもありません。
それぞれの制度を理解してから加入してください。
しかし、企業に失敗した場合は再起が難しいかもしれません。小規模からの事業展開を目指して、リスクを抑えた起業を検討してください。
創業手帳(冊子版)では、個人事業主として起業する方に向けて役立つ情報を多数提供しています。
個人事業主となるための流れや節税対策など、幅広い情報をお伝えしているので、定年後に起業したいと考えている方は、ぜひ活用してみてください。
(編集:創業手帳編集部)