レピュテーションリスクとは?具体的な原因や回避方法を徹底解説
レピュテーションリスクとは企業の評判が悪化すること
レピュテーションリスクとは、企業に対するネガティブな評判や情報が広がり、信用やブランドが既存されてしまうリスクのことをいいます。
インターネットの発達や社会のコンプライアンス意識の高まりから、レピュテーションマネジメントの必要性が高まっています。
レピュテーションリスクが顕在化しないように必要な対処をするとともに、実際に発生した時の対応を考えなければなりません。
レピュテーションリスクが起きる原因や対応方法を知っておきましょう。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
レピュテーションリスクとは?概要・重要性など
企業が事業を経営する上でリスクはつきものです。近年になって特に注目されるようになったのがレピュテーションリスクです。
レピュテーションとは英語で『reputation』、日本語で評判や評価、信用を意味します。
自社に対するネガティブな評判、噂が拡散されることでブランドの既存や企業価値、信用低下を招くリスクをレプリケーションリスクと呼びます。
企業にとって、顧客や取引先、一般社会からの信用や評判は無形の財産であり、企業の命運を握る存在です。
ここでは、レピュテーションリスクの重要性は似た言葉との違いを紹介しています。
レピュテーションリスクが重要な理由
レピュテーションリスクの把握やマネジメントが重要視される背景には、社会の変化があります。
情報の通信網が発達して、多くの人がSNSや口コミサイトで情報を集めるようになりました。受け手が多くの情報を集められる一方で、情報発信もしやすくなっています。
その結果、企業の良い評判だけでなく悪い評判も瞬く間に拡散されるようになった上、一度拡散された情報を消し去ることが難しくなりました。
企業の評判が一度下がってしまえば、顧客や取引先が離れ、売上げ低下や株価下落にもつながります。
最悪の場合は、企業の存続自体も危ぶまれるような事態に陥るかもしれません。
最悪の事態に陥らなくても、信頼を回復するための広報活動費用や機会損失も発生します。
レピュテーションリスクを放置したままにしていることは、企業を揺るがすような大きなリスクを見逃すことであるといえます。
オペレーショナルとの違い
レピュテーションリスクと似た言葉にオペーショナルリスクがあります。これは、すべての企業の通常業務(オペレーション)にかかるリスク全般を指す言葉です。
レピュテーションリスクが企業の評判の失墜などのリスクに限定されることに対して、オペレーショナルリスクは、レピュテーションリスクも含む幅広いリスクを意味する言葉です。
ブランドとの違い
企業に対する信頼や信用を表す言葉として、レピュテーション以外にブランドが使われることもあります。
ブランドは、企業が価値を演出して受け取り手がそれを認めることによって確立される価値です。
一方、レピュテーションは企業が主軸となって創造するというよりも、世論や世間が評価するものです。
つまり、ブランドが「企業が自ら演出する姿」であるのに対して、レピュテーションは「企業が外部から見られている姿」と表現できます。
レピュテーションリスクが起こる主な原因と具体例
レピュテーションリスクが顕在化してから対策に乗り出す企業も少なくありません。なぜレピュテーションリスクが高まるのか、その原因を具体例を挙げて紹介します。
商品やサービスの質の悪化
企業の評判や信用は、商品やサービスの質で作られます。高品質な商品やサービスをうたっているにも関わらず、質がともなっていなければ顧客の信用を裏切ることになります。
「飲食店で価格帯が高いのにあまり美味しくない」「他の店で食べたほうが良い」といったネガティブな口コミが寄せられることがあるかもしれません。
広告でアピールしている機能や性能にギャップがあるような場合もユーザーは不満を抱くでしょう。
期待を裏切るような商品やサービスを提供することで、他の類似の商品やサービスにユーザーが流れてしまうこともあります。
社員の不祥事やコンプライアンス違反
SNSの発達によって、人々の行動は瞬時に拡散されてしまいます。いわゆる「バイトテロ」は、現場の従業員が不祥事を起こして会社の信用を失墜させる行為のことです。
消費者向けのビジネスでは、消費者と接する現場の従業員の挙動によって企業も評価されます。
しかし、会社の規模が大きくなれば経営側の監督が現場に行き届かず、不祥事を起こしてしまうリスクは高まるかもしれません。
従業員個人の行為ではありますが、企業側も管理責任を問われます。バイトスタッフが備品や商品で悪ふざけする動画をSNSに投稿するといった事件は何度も発生しました。
また、従業員の顧客リスト転売により情報が流出するケースもあります。その結果、顧客離れが進んで売上げが低下し、経営が悪化するケースも多数あります。
関係者からの内部告発
レピュテーションリスクが高まるような情報は、会社の内部から発信されることもあります。社内の労働環境が劣悪で、従業員が内部告発するようなケースです。
違法な長時間労働やハラスメントは、商品やサービスに直接関係がなくても企業のイメージを損ないます。
ブラック企業であると判断されると、将来的な人材採用に悪影響を及ぼすかもしれません。
具体例として、企業の不正行為を発信するものもあります。食品加工会社で原産国や原料を偽装していたり、ゼネコンで建築基準法に違反していたりするケースです。
レピュテーションリスクが顕在化する前に、労働環境やコンプライアンス意識についての見直しが必要です。
根拠のない噂による風評被害
レピュテーションリスクは、不祥事やコンプライアンス違反といったものだけが原因ではありません。根拠のないデマや風評被害から発生するケースもあります。
悪い噂やデマ、誹謗中傷が広く拡散されてしまえば信じてしまう人もいるかもしれません。
例えば、退職した元社員や在籍社員が企業の悪評を発信するケースがあります。転職サイトや掲示板など、匿名で発信できる場所も風評被害を生み出す原因のひとつです。
根拠がない風評被害は対応が難しいものの、日ごろからコンプライアンス意識を高めユーザーからの信用を高めておくことが大切です。
レピュテーションリスクによる影響は?
レピュテーションリスクが与える企業への損失は大きく、決して軽視できません。適切な処置や対応がなければ、企業の将来にも影響します。
レピュテーションリスクを起因として、どのような影響があるのか以下でまとめました。
信頼性・イメージの低下
ユーザーからのイメージや信頼性には、レピュテーションリスクが悪影響を及ぼします。
食品偽装や不正があった会社の商品は、ユーザーが離れてしまうものです。
一度悪いイメージを持たれてしまえば、再度信頼を得て元の関係性を構築するまでに長い時間がかかります。
消費者向けの商品や競合他社が多い商品は、乗り換えられて顧客が戻ってこないこともあります。
ユーザーが戻るように広告宣伝をしたり、コンプライアンス遵守のために専門家に依頼したりすると、不要な時間やコストが発生してしまうでしょう。
利益の低下
レピュテーションリスクは、売上げや利益などの数字にわかりやすい形で影響するケースもあります。
口コミやSNSでネガティブなコメントが多ければ、商品の売上げが下がって収益も低下します。
商品やサービスの質が高ければ短期的な影響にとどまるケースもありますが、利益が回復することなく市場から撤退する可能性があるかもしれません。
優良な人材の不足
レピュテーションリスクの影響の中でも、長期的に見てデメリットが大きいのが人材リソースへの影響です。
評判が悪くなることで、優秀な人材が集まらなくなったり、人材が離れたりすることがあります。
求職者は事前に企業情報や評価を確認して就職活動に進みます。企業の口コミがポジティブなものであれば問題ありません。
しかし、ネガティブな評判が広がれば、それを目にした応募者が辞退したり、応募を取りやめたりすることがあります。
レピュテーションリスクを回避できる「レピュテーションマネジメント」とは?
レピュテーションリスクが注目されるとともに、それを管理するレピュテーションマネジメントの考え方も広がりつつあります。
レピュテーションマネジメントは、自社の評判やブランドイメージが悪くならないように、評価をより向上させるための企業活動です。
評判は外部によって作られるものではありますが、企業が積極的に加入して自社が望む評判を構築する活動が注目されています。
ここでは、レピュテーションマネジメントの基本を紹介します。
レピュテーションマネジメントの対象
レピュテーションマネジメントでは、対象となるステークホルダー(利害関係者)が場面ごとに存在します。
代表的なものは消費者や取引先ですが、消費者に影響力を持つインフルエンサーも該当します。また、企業の将来性を判断する株主や投資家も対象です。
企業の社会的な評価は、在籍している従業員も注目しています。企業に関るあらゆる属性がレピュテーションマネジメントの対象であると考えます。
ステークホルダーによって評価のポイントが異なるため、マネジメントの際には最初に対象を明確にしてください。
レピュテーションマネジメントの種類
レピュテーションマネジメントは、「攻め」と「守り」に分けて導入するとわかりやすくなります。
「攻め」は、現状の評判を維持、向上させるためのレピュテーションマネジメントです。「守り」では、トラブル発生時の信頼回復に努めます。
この2つのレピュテーションマネジメントを効果的に使い分けることで、ユーザーや株主、従業員など、幅広い関係者に対してアプローチが可能です。
攻めのレピュテーションマネジメント
攻めのレピュテーションマネジメントでは、元のイメージを維持しながら好感度を高める取組みを行います。
具体的には、日常的な広報活動やSNSを使った情報発信など平常時のコミュニケーションです。
以下では、攻めのレピュテーションマネジメントとして実施できる取組みを紹介します。
-
- 日頃から顧客と連絡を取り合う
- 消費者や顧客の意見に耳を傾ける (対話チャネルの設定)
- 揺るぎない企業姿勢の形成とブランディング、広報活動を行う
従業員へのレピュテーションマネジメントも必要です。レピュテーションマネジメントの専門企業に依頼して、従業員向けの教育や意識改革を実施してください。
守りのレピュテーションマネジメント
不祥事に備える守りのレピュテーションマネジメントも重要です。
不祥事や不正といった不測の事態が発生した時には、早期にトラブルを解決するために迅速に対応しなければなりません。
守りのレピュテーションマネジメントとして、まずどのようなレピュテーションリスクがあるのかを想定してみます。
そこからリスクに対してどういった対応ができるかを検討し、発生時に取るべき体制を構築してください。
主に以下の項目を意識していつでも対応できるようにマニュアル化することをおすすめします。
-
- 問題発生時の社内フローを徹底しておく
- 問題が起きたと想定して模擬訓練を行う
- 危機対応の事例を自社に置き換えて想定する
企業の対応や発言によって、広がった悪評が沈静化せず、むしろ悪化することもあります。
会見やメディアを通じて発信することも想定して、内容や項目を定めておくようにしてください。
レピュテーションリスクによるトラブルの対処法
レピュテーションリスクをコントロールするためには、事前にトラブルの対処についても考えておく必要があります。以下の対応ポイントに留意して、会社の損失を最小限にできるよう対応を行ってください。
情報が正しいか否か確かめる
レピュテーションリスクが顕在化した時でも、冷静かつ迅速に対応するのが困難な場合もあります。
初めにするべきことは、事実確認と情報整理です。何が問題となっているのかを迅速に把握して対応を考えてみてください。
レピュテーションリスクにさらされた状態では、情報もすぐに広がっていきます。早期に問題の本質的な部分を突き止めて正しい方向性で対応しなければいけません。
緊急事態時のマニュアルに従う
想定されるレピュテーションリスクに対して、事前に対応フローや危機管理マニュアルを作成してください。
緊急時には社内も混乱してしまうかもしれません。しかし、影響を最小限にするためには迅速な行動が求められます。
事前にマニュアルを作成していれば、緊急時にも冷静かつ迅速な対応が可能です。マニュアルでは指揮命令系統やタスクを整理しておいてください。
クライアントや株主への説明を行う
レピュテーションリスクにさらされた時、クライアントや株主も不安にかられます。上場していれば狼狽した投資家が売却して株価が暴落することもあります。
また、取引先が取引きの打ち切りを打診するかもしれません。こういった事態を防ぐには、会社がいち早くクライアントや株主に対して対応状況を説明することが大切です。
混乱を招かないように早急に適切な状況説明を行ってください。
再発防止策・改善策を練っておく
レピュテーションリスクは、対応を適切に行うことで信頼の回復が可能です。
しかし、再度レピュテーションリスクに関わる事案が発生すれば、信頼回復が困難になります。
トラブルが起きた根本的原因はどこにあるかや、再発しないためにどうするかをよく考えなければいけません。
再発防止策や必要な改善策についても練っておくようにしてください。
まとめ・レピュテーションリスクとは日常的な対策と緊急時の対応で回避できる!
レピュテーションリスクは、インターネットやSNSといったツールが普及するにつれて意識されやすくなりました。
レピュテーションリスクが顕在化すれば、企業の経営や存続にも影響を与えます。
レピュテーションリスクをゼロの状態にするのは不可能です。それよりも、レピュテーションリスクを把握して、どのように対応するのかを考えてください。
マニュアルや対応フローの作成など事前に対策することで、被害は最小限に食い止められるでしょう。
創業手帳(冊子版)は、個人事業主にも法人にも役立つ情報を多数掲載しています。リスクマネジメントにもぜひ創業手帳をお役立てください。
(編集:創業手帳編集部)