経営者が把握しておくべき経営リスクとは?リスク管理体制構築のポイントなども解説!

創業手帳

経営リスクを回避するにはリスク管理体制が重要


経営リスクは、自社内で発生する可能性のあるトラブルだけでなく、企業を取り巻く経営環境や社会的な影響によっても左右されます。
経営者は、どのような事態が起こっても適切に対処できるよう、常にリスク管理体制を意識しながら経営していかなければなりません。

そこで今回は、経営者が把握しておくべき経営リスクがどのようなものなのか、リスクマネジメントのプロセスや、リスク管理体制構築のポイントなどをご紹介します。
経営リスクを十分に理解し、強固な管理体制を構築していきたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

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そもそも経営リスクとは?


経営リスクとは、企業経営する中で発生する可能性のあるリスクです。
業界や業種によって起こり得るリスクは様々で、事前にリスクを予測するのが難しいケースもあります。

業界・業種を問わず起こり得るリスクと言えば、資金繰りの失敗やサイバー攻撃による情報漏えいなどが挙げられます。
不足の事態で起こる場合も多く、自然災害や盗難のようなケースも少なくありません。
発生したトラブルの状況によっては、事業の運営を続けるのが困難になることもあります。
すべての経営リスクを予測するのは難しくても、経営者はできる限り発生する可能性のあるリスクを把握し、的確に対処していく必要があります。

経営リスクにはどのような種類がある?


経営者が把握しておくべきリスクには、いくつかの種類があります。ここでは、把握しておくべきリスクについてそれぞれご紹介します。

1.経営戦略リスク

経営戦略リスクとは、その名の通り企業の経営戦略や事業目標等に影響し得るリスクです。
経営戦略は、企業が事業を進めていく上で必要不可欠なものである一方、企業の将来を見据えて構築するべきものであり、経営そのものに影響を及ぼします。
企業経営において成功する可能性があれば、同時に失敗する可能性もあると忘れてはなりません。

  • 資金計画
  • 新商品やサービスの開発
  • 価格設定
  • 海外進出
  • M&A など

経営戦略リスクを予測するには、会社の事業市場や法務・政治・社会環境に関する正しい知識と経営戦略や目標構築における理解が必要です。
不確実性の高い事象を、いかに筋道を立てて事業機会への展開方法を見出せるかが重要になります。

2.コンプライアンスに関するリスク

コンプライアンスに関するリスクとは、横領や不正、機密情報の漏えいなど経営者や従業員による不祥事をはじめ、製品・サービスの不備や関連法規制への抵触が挙げられます。
中でも経営者や従業員の不祥事によるリスクは、企業のブランドイメージを低下させ、社会的な信用が失われる可能性があります。
特に近年は、コンプライアンスについて厳しくなってきており、何らかの問題が発覚した場合には社会的信用を失ってしまいます。

企業側は、コンプライアンス順守を常に念頭に置き、リスクが起こらないよう未然に防ぐための対策を強化しなければなりません。
安定した経営を続けていくためにも、コンプライアンスに関するリスクを理解し、適切に管理することは必要不可欠です。

3.財務リスク

財務リスクとは、売上低下、経営不振で会社の経営状況が悪くなるリスクです。
例えば、事業の失敗や負債の蓄積による財政の圧迫、大口取引先の倒産といったリスクが挙げられます。
このほか、貸借対照表に計上していた金融資産の取引が不可能になる流動性リスクや、金利や商品価格の変動によって起こる価格変動リスクもあります。

企業にとって財務リスクは、何としても避けたいリスクの1つです。しかし、景気の悪化が影響する場合もあり、日頃から社会情勢を把握し対策しておく必要があります。
財務リスクは、未然に防ぐことも不可能ではありません。資金繰りの見直しや融資の返済、放漫経営に陥らないための対策が必要です。

4.人事や労務に関するリスク

人事や労務に関するリスクとは、いわゆる労働災害によるリスクのことです。
労災には、転倒・転落・業務機械による事故など様々なケースがありますが、過度な残業による過重労働や残業代の未払い、不当な解雇も含まれます。
心身の労働災害は決して珍しいことではありません。

そもそも、企業は従業員の適切な健康管理と労働環境を守っていかなければなりません。
しかし、中には物理的な対策に欠けてしまい、思わぬトラブルが発生するケースもあります。
一度でも人事や労務に関するリスクが発生すると、人材流出の発生や社会的な信用の失墜、損害賠償請求問題に発展する恐れもあります。

5.情報漏えいリスク

情報漏えいリスクは、データの破損やウイルス感染、サイバー攻撃によって企業が抱えている顧客情報が外部に流出してしまうリスクのことです。
近年はサイバー攻撃の手口も巧妙化しており、情報管理を徹底していてもデータの盗難に遭う被害が続出しています。

情報漏えいが起これば、情報管理の徹底が不十分だとして顧客や取引先からの批難を受ける可能性が高いです。
情報漏えいと同時に損害が発生した場合は、損害賠償請求の対応に追われることになるかもしれません。
顧客データや取引データを扱う企業では外部からのサイバー攻撃にも備える必要があり、セキュリティ管理を徹底していくことが大切です。

6.ハザードリスク

ハザードリスクとは、地震や水害、風害といった自然災害に加え、火災や事故、感染症拡大といった外的要因によるリスクのことです。
ハザードリスクは外的な要因がほとんどであるため、事前に予測することが困難です。近年は地球温暖化による環境変化に伴い、自然災害が毎年のように発生しています。

自然災害や突発的な要因によってハザードリスクが発生すると、会社の構造や設備の被害だけでなく、従業員が出勤不能となり業務自体ができなくなる可能性もあります。
不測の事態に対応するためには、日頃から防災意識を高め、被害が最小限になるような対策や早期復旧につながる体制を構築しておくことが大切です。

企業経営におけるリスクマネジメントは重要性を増している


リスクマネジメントは、起こり得る可能性のあるリスクを把握した上で、未然に防ぐためのプロセスのことです。
企業は、日頃から経営リスクに備え、十分な組織管理と損失低減を図らなければなりません。しかし、近年は企業のリスクマネジメントがさらに重要性を増してきています。

情報化社会の進展やグローバル化が加速する中、経営管理システムの多様化や業務そのものが複雑化しています。
経営リスクは決して自社の要因だけに留まらず、取引先のトラブルや外部のサイバー攻撃による影響も多くなっています。

だからこそ、会社内部はもちろん、外部にも着目したリスクマネジメント構築が必要です。
企業価値を高め、リスクに対する管理を組織的に行っていけば、未然に回避したり損害を最小限に留めたりできるようになります。

リスクマネジメントのプロセス


ここからは、リスクマネジメントのプロセスをご紹介していきます。
リスクマネジメントはリスクの特定や分析から行い、具体的な対策を検討し、実行する流れとなっています。
そして重要なのは、対策を実行したことの評価とさらなる対策の強化を続けていくことです。

1.リスクの特定や分析を行う

まずは、起こり得るリスクを把握・特定し分析していくところからスタートします。企業の事業内容や事業目的を踏まえ、どのようなリスクがあるのかを明確にしていくのです。
リスクが会社全体にどのような影響を与えるのか、発生確率はどれくらいかといったことを細かく分析すれば、リスクマネジメントをどのように行うべきかが見えてきます。

リスクの特定や分析にはブレインストーミングが効果的です。
ブレインストーミングとは、複数人で発生する可能性のあるリスクにおける意見を出し合ったり、アイデアを生みだしたりする方法です。
リスクの優先度や方向性が明確になれば、次のステップに進むことができます。

2.プランを策定し、実行する

リスクの特定や分析が完了したら、発生確率や影響度が高いリスクに対し、具体的な対策やプランを策定していきます。
ここでは、リスクそのものの発生を抑えたり損失を削減したりするリスクコントロールと、リスク発生時に損失を補填するためのリスクファイナンシングとに分かれて適切な対応策を検討します。

具体的なプランを策定したら、従業員一人ひとりの役割を明確にし、会社全体でリスク対策を分担していくことで無駄のない対策が可能です。
リスク対策は具体的なスケジュールも同時に設定すると、実行後の評価やさらなる対策が組み込めるようになります。
実行して終わりとするのではなく、常日頃から経済リスクに備えるという意識を持ち、状況に合わせてプランを変化させていく必要があります。

3.実行後、評価や対策を繰り返す

具体的なプランや対策を実行し、設定したスケジュールを経過したら、その効果を評価していきます。
策定したプランによる効果は十分だったとしても、リスクの影響度が変化していたり、新たなリスクが発生していたりする可能性があります。
様々な側面から対策の見直しを行い、実行したことで見えてきた改善策を講じてリスクマネジメントを強化していきましょう。

企業が抱えるリスクは、社会情勢や業務の複雑化などによって変化し続けるものです。
リスクマネジメントプロセスを踏まえ、企業にとって常に効果的な対策を講じていけるよう、評価と改善を繰り返し、PDCAサイクルを確実に回していくことが大切です。

リスク管理体制を構築するためのポイント


企業がリスク体制を構築するには、3つのポイントを理解しておく必要があります。ここでは、3つのポイントについて具体的に解説していきます。

専任チームを設置する

効果的なリスクマネジメントを行うためには、リスク対策における専任チームの設置がおすすめです。
専任チームは、会社全体の状況を見て経営戦略リスクやコンプライアンスリスク、財務リスクといった様々なリスク対策を検討していきます。
会社全体の状況を把握するには、経営規格や経営戦略に携わる部署の人員が必要です。

もちろん、リスクマネジメントを専任チームに任せるだけではなく、全部署で連携しながらリスク対策を行うことが前提となります。
普段はリスクへの予防策や従業員への周知、リスクマネジメントの教育訓練の実施などを行いつつ、緊急時には経営者や経営部署とともに問題の早期解決に取り組みます。

リスク管理に関するマニュアルを作る

リスクマネジメントをPDCAサイクルで効果的に続けていけるよう、リスク管理に関するマニュアルを作成します。
危機管理マニュアルやBCP(事業継続計画)などと呼ばれることもあります。
リスク管理マニュアルは、企業が抱えるリスクを明確にして従業員に周知し、実際にリスクが起こった時の対処法を記載しておくものです。

リスクは常に変化し続けるものなので、リスク管理マニュアルも定期的に内容の見直しを行い、従業員への周知を徹底して会社全体で継続し続けられるよう努めなければなりません。

経営者自身が関わる

企業を経営していく上で、経営リスクがなくなることは決してありません。
だからこそ、リスクマネジメントには経営者自身が直接関わり、全体の指揮を取って効果的なリスク管理体制を構築していくことが大切です。

経営者自身が関われば従業員一人ひとりのリスク管理に対する意識も高まり、ステークホルダーからの信頼も得られます。
経営者が経営リスクやリスクマネジメントのプロセスを理解していれば、会社全体で適切に対処していけるようになります。

まとめ

企業経営では、様々なリスクが起こりえます。リスクマネジメントを強化し続けていけば、思わぬトラブルや危機が訪れても適切に対処でき、早期解決できるようになります。
会社全体でリスク管理の意識を持つには、従業員一人ひとりが経営リスクやリスクマネジメントの重要性を理解できるような体制を構築することが大切です。

創業手帳(冊子版)では、会社が抱えるリスクや効果的なリスクマネジメントについても紹介しています。経営者や効果の高いリスクマネジメントを講じていきたい方は、ぜひご活用ください。

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(編集:創業手帳編集部)

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