融資を無担保・無保証で受ける方法は?メリットデメリットや具体的な制度3つを解説
融資を無担保・無保証で受けるには厳しい審査を通る必要がある!
事業や経営に必要な資金を調達したい場合に、融資を活用する方もいます。融資にも様々な種類がありますが、その中には無担保・無保証で受けられる融資もあります。
しかし、無担保・無保証の融資は厳しい審査を通過する必要があり、必ずしも利用できるわけではありません。
今回は、無担保・無保証で受けられる具体的な制度を解説しつつ、無担保無保証融資のメリット・デメリットや、審査に通りやすくなるためのポイントなどをご紹介します。
融資を受けたいものの、なるべく無担保・無保証で利用したいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
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この記事の目次
無担保・無保証の融資とは?
無担保・無保証の融資とは、その名のとおり担保や保証人を用意しなくても金融機関から受けられる融資のことです。
通常、返済が滞ってしまった場合には、担保に入れていたものを差し出さなくてはなりません。
例えば、不動産の抵当権などを担保に入れていた場合、不動産は金融機関が差し押さえます。
また、債務者以外の保証人を立てていた場合、金融機関は保証人に対して返済を求めるようになります。
返済が滞ってしまった場合に、金融機関は貸し倒れのリスクを避けるためにも、融資を受ける際には担保・保証人を立てる必要があります。
しかし、無担保・無保証の融資なら所有する不動産を差し押さえられたり、保証人に対して返済が求められたりすることはありません。
融資を受ける人にとってはメリットも大きいですが、金融機関側にとってはリスクのある融資といえます。
無担保無保証融資のメリット
無担保無保証融資における最大のメリットは、担保や保証人を用意しなくても良いことです。
不動産を所有していなかったり、保証をお願いできる人がいなかったりする場合でも融資が受けられます。
万が一、融資を受けた後で返済が滞ってしまっても、不動産を手放したり保証人に負担をかけたりすることもありません。
もうひとつのメリットは、無担保・無保証なので会社が倒産してしまった場合でも、個人の資産を切り崩してまで返済する義務がないということです。
会社の倒産によって大きな損失は生まれてしまうものの、借金さえ残らなければ再スタートも切りやすくなります。
無担保無保証融資のデメリット
無担保無保証融資のデメリットとして、金利の高さが挙げられます。金融機関は融資した資金の回収ができないため、金利を高く設定する傾向にあります。
確実に返済できるか厳しくチェックされることも多く、人によっては抵抗が生じることもあるでしょう。
審査内容も厳しくなることから、借り手側は事前に十分な準備を行っておく必要があり、その分手間に感じてしまう人もいるかもしれません。
また、会社が倒産した場合でも個人の資産を切り崩す必要はありませんが、返済不要になるわけではありません。
無担保無保証融資を受けた個人事業主が廃業した場合は、代表者が借入れを行っているため返済義務は残ります。確実な返済計画を立てることが重要です。
融資を無担保・無保証で受けられる制度
融資を無担保・無保証で受けたい場合には、日本政策金融公庫が提供する融資制度を活用するのがおすすめです。ここでは各制度の特徴についてご紹介します。
新規開業資金(創業融資)
新規開業資金は、新たに事業を始める方や事業開始からおおむね7年以内の方を対象に提供されている融資です。原則無担保・無保証で融資を受けられます。
融資限度額が7,200万円と高額に設定されているをはじめ、条件によっては特別利率の対象となり、低金利で融資を受けられる可能性もあります。
対象 | 新たに事業を始める方 事業開始からおおむね7年以内の方 |
自己資金 | 不要 |
限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
金利 | 基準利率 ※ただし要件に当てはまる人は特別利率A~Cのいずれか |
返済期間 | 運転資金10年以内(うち据置期間5年以内) 設備資金20年以内(うち据置期間5年以内) |
要件(特別利率) | 【特別利率A】 ・女性 ・35歳未満または55歳以上 ・外国人起業活動促進事業の特定外国人起業家で、新たに事業を始める方 ・創業塾・創業セミナーなどを受け、新たに事業を始める方 ・中小企業の会計に関する基本要領または中小企業の会計に関する指針が適用(予定も含む)する方で、事業計画書を自ら策定し、認定経営革新等支援機関から指導・助言を受けている ・地域おこし協力隊の任期が終了し、活動した地域で新たに事業を始める方 ・Uターンなど地方で新たに事業を始める方 【特別利率B】 【特別利率C】 【特別利率A・B・C】 |
マル経融資(小規模事業者経営改善資金)
マル経融資とは、商工会議所や商工会などから経営指導を受けている小規模事業者(商工業者)が、経営改善に向けて必要な資金を融資するための制度です。
商工会議所や商工会の長から推薦を受けた人のみに限定されますが、2,000万円を限度額に無担保・無保証で融資が受けられます。
対象 | 小規模事業者(商工業者に限る) |
自己資金 | 不要 |
限度額 | 2,000万円 |
金利 | 年利1.35%(2024年5月1日現在) |
返済期間 | 運転資金7年以内(うち据置期間1年以内) 設備資金10年以内(うち据置期間2年以内) |
要件 | 推薦要件 ・小規模事業者(常時使用する従業員が20人以下の法人・個人事業主) ・原則6カ月以上の経営改善普及事業に基づく商工会・商工会議所等の経営指導を受けている ・最近1年以上は商工会・商工会議所等の地区内で事業を行っている ・所得税や法人税、事業税および都道府県民税、市町村民税(均等割含む)を原則として、すべて完納している ・商工業者であり、日本公庫(国民生活事業)の非対象業種等ではない |
中小企業経営力強化資金
中小企業経営力強化資金は、事業サポートを受けながら利用できる融資制度です。
中小企業等経営強化法に定められた、認定経営革新等支援機関からの指導・助言を受けている場合に利用できます。
無担保・無保証でありながら融資限度額が高く、高額な融資を受けたい場合におすすめです。
対象 | 新規事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方 |
自己資金 | 不要 |
限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
金利 | ・税務申告を2期終えている人:1.85~3.05% ・税務申告を2期終えていない人:2.10~3.30% (2024年5月1日現在) |
返済期間 | 運転資金10年以内(うち据置期間5年以内) 設備資金20年以内(うち据置期間5年以内) |
要件 | ・中小企業の会計に関する基本要領または中小企業の会計に関する指針を適用している、適用する予定がある ・自ら事業計画書の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関から指導および助言を受けている |
融資を無担保・無保証で受ける時の審査ポイント
無担保・無保証の融資は一般的な審査に比べて厳しくチェックされる傾向にあります。ここでは、審査時のポイントを解説していきます。
事業計画書
事業計画書は、事業の方向性や将来性、戦略、財務計画などを示すための計画書です。第三者が事業内容を評価する上で欠かせない書類となります。
事業計画書は融資を受ける際に金融機関から提出を求められるケースも少なくありません。
無担保・無保証の融資を提供する金融機関は、事業計画書を確認することで、本当に利益を出せるような事業なのかどうかや、見通しが甘くないかを見極めていきます。
そのため、事業計画書の内容を抽象的かつ曖昧に作成してしまうと、審査に通らないかもしれません。
事業計画書を作成する場合は、なるべく具体的に根拠のある数字を示す必要があります。
事業計画書の作成に手間はかかってしまうかもしれませんが、事業計画書が問題ないと判断され融資を受けられることになれば、社会的な信頼を得られる可能性が高いです。
返済計画
無担保・無保証の融資を受ける際には、返済計画も立案しておくことが大切です。
確実な返済計画を立てておくことで、審査する際にも返済の見通しが立っていることがわかり、担保や保証人がなくても金融機関は融資をしやすくなります。
また、返済計画を立てて無事に借入れ分を返済できれば、返済した実績が残り、金融機関からの信用度も高まります。
この実績と信用度によって、より高額な融資を受けられる可能性も高いです。
返済計画を作成するには、借入額と返済期間、金利を確認し、毎月の返済額を算出していきます。不明点や無理が生じてしまう場合には、金融機関へ相談してみてください。
信用度
法人・個人で返済能力があると評価された場合には、信用度が高まります。
無担保・無保証の融資における審査では、信用度を分析するケースも多くあります。
例えば、借金やローンの支払いがあった場合でも、滞りなく完済できていれば信用度が高くなり、無担保・無保証の融資も受けやすくなるかもしれません。
なお、信用度の分析は単に借金を返済した実績だけでなく、財務状況や将来の事業で得られる収益の予測など、各要素も加味した上で評価されます。
そのため、借金を返済した過去があるからといって、必ずしも審査に通過できるわけではないことを覚えておいてください。
信用度を向上させるためには、まず自身の信用情報を把握することも大切です。
個人の信用情報を調べたい場合は、信用情報機関のCIC・KSC・JICCのいずれかに問い合わせてみてください。
自己資金
無担保・無保証の融資における審査では、自己資金もチェックされます。
自己資金が不要なケースもありますが、用意できればその分借入額を抑えられ、融資を受けるハードルも低くなります。
また、自己資金がどれほど貯まったか、どれほどの期間で貯めたのかなどがわかると、経営者にお金を管理する力があるかどうかが判断できます。
無担保・無保証の融資を受ける場合には、ある程度の自己資金を用意しておくと良いかもしれません。自己資金の目安としては、必要資金の3割程度といわれています。
経歴
審査を行う中で、経営者の経歴がチェックされる場合もあります。
特に創業時の融資では経営者としての実績がないこともあり、資金を回収できる可能性があるか見極めるのが難しくなるため、経営者の経歴も審査対象です。
また、これから立ち上げようとしている新規事業と経営者の経歴に関係性があるかもチェックしています。
もし新たに立ち上げた事業であっても、以前同業界で働いていた場合はそのノウハウが活かせることから事業が成功する可能性は高いと判断されます。
反対に、未経験で事業を立ち上げようとすると失敗する可能性があると判断され、審査に通らないことがあるかもしれません。
融資を無担保・無保証で受ける時の流れ
融資を無担保・無保証で受ける際の主な流れは以下の通りです。
1.必要書類の準備
2.申し込み
3.面談
4.融資可否の連絡
まずは無担保・無保証の融資を受けたい旨を金融機関などに相談します。借入申込書や事業計画書、返済計画書など必要な書類も準備しておいてください。
必要な書類がすべて揃ったら、融資を提供する金融機関に書類を提出します。書類を提出すると、担当者と面談する日程や持参する書類について連絡が来ます。
面談は提出した書類をもとにいくつか質問をされるため、書類の内容と矛盾しないように気を付けながら答えてください。
金融機関は書類の内容と面談を加味して審査していきます。無事に融資が決まれば契約を結び、指定口座に融資額が入金されます。
融資が無担保・無保証で受けやすくなる方法は?
無担保・無保証の融資は審査が厳しいものの、以下のポイントを押さえることで融資を受けやすくすることも可能です。
無担保・無保証でも融資が受けやすくなる方法を解説していきます。
金融機関と友好な関係を作る
まずは普段から金融機関と友好な関係性を構築しておくことが大切です。
金融機関は無担保・無保証の融資審査において、申し込んだ人の信用度だけでなく関係性も評価基準に入ってきます。
特に地元地域に根差した信用金庫・信用組合などは関係性が求められる可能性が高いです。
友好な関係性を構築するためには、融資以外にも定期的に相談しに行くことや、融資を受けている場合は計画的かつ滞りなく返済をするなど、日頃から少しずつ信用度を高めていくことが大切です。
入念な準備でアピールする
担当者は本当に融資をしても良いかを判断する際に、経営者が信用できる人物かどうかもチェックしています。
信用できる人物かを判断する上でポイントとなってくるのは、入念な準備を行っているかどうかです。
例えば、自己資金を一切用意していない経営者と、自己資金を必要資金の3割程度までコツコツと貯めてきた経営者がいたとします。
計画的に毎月資金を貯めてきた後者のほうが担当者も信用しやすいといえます。
自己資金を貯めた事実は新規事業に向けた熱意にもつながり、評価が高まります。
根拠のある数値で説明する
事業計画書や返済計画を作成する上で、具体的な数字を示す必要があります。
例えば、新規事業における1日の売上予測を算出し、どれほどの利益が見込めるかがわかることで、返済可能かどうかも判断しやすくなります。
いくら数字を示したとしても、そこに根拠がなければ意味がありません。
経営者は自身の希望も含めて数字を出してしまうこともありますが、客観性を失わずに根拠のある数値で説明することが大切です。
まとめ・融資を無担保無保証で受けるなら計画と資金を入念に準備しよう!
担保や保証人が不要になることで融資を受けるハードルは低くなりますが、その分審査内容が厳しかったり、金利が高かったりする傾向にあります。
無担保・無保証の融資制度を受ける際には、確実に計画を立て、自己資金などを事前に準備しておくことが大切です。
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(編集:創業手帳編集部)