【実例あり】店舗兼住宅の間取りのポイントやメリット・デメリットなどご紹介

創業手帳

店舗兼住宅(店舗併用住宅)を検討する前に知りたいことを解説


夢のマイホームと自分のお店を同時に叶えたい方におすすめな「店舗兼住宅」。住居と店舗を一体化することで、通勤時間の削減、コストの抑制、プライベート時間の確保など、多くのメリットを得られます。

しかし、店舗兼住宅の間取りを考える際には、一般的な住宅とは異なるポイントが存在します。また、その他にも用途地域や建築基準法、資金計画、立地、騒音対策など、さまざまな要素を考慮しなければなりません。

本記事では、店舗兼住宅の間取りを考える際のポイントや、店舗兼住宅のメリットとデメリットなど、事前に知っておきたい情報を解説します。

店舗兼住宅ならではの間取りの考え方やメリット・デメリットを十分に把握し、ハウスメーカーや工務店の営業マン、設計士などの専門家の意見を聞きつつ検討しましょう。

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【業種別・実例】店舗兼住宅の間取りを紹介


店舗兼住宅を建てる際は、一般の住宅以上に、慎重に間取りを考える必要があります。

店舗兼住宅の間取りは、暮らしやすさだけでなく、店舗の動線や雰囲気などにも影響するため、売上にも直結します。

ここでは、業種別に店舗兼住宅の間取りを紹介します。

店舗兼住宅の間取りの実例
  • 【店舗併用住宅】狭小地に建つ3階建の間取り
  • 【医院併用住宅】1階店舗・2階住宅の間取り
  • 【美容院併設住宅】40坪の敷地に建つ3階建の間取り
  • 【カフェ兼住宅】大きな吹き抜けがあるおしゃれな間取り

【店舗併用住宅】1階店舗・2&3階住宅 狭小住宅間取り

1階にカフェ、2・3階に居住スペースを設けた、都市型の3階建ての店舗兼住宅です。

1階の店舗では、作業動線をコンパクトに抑え、限られたスペースを最大限活用できるような空間設計になっています。

また、2・3階の居住スペースでは、吹き抜けにし、採光面を工夫。限られた敷地で、店舗も居住スペースも妥協しない、理想の店舗兼住宅を実現しました。

【医院併用住宅】1階店舗・2階住宅 広々とした間取り

一般的な住宅より、規模が大きくなりがちな医院併用の住宅です。

駐車場を広く取るために、横長の形状に配置。

患者さんを治療するためのブースを横長に設置することで、動線を確保している点が特徴的です。また、壁を白にすることで、店舗全体を明るく見せています。

建物の2階は居住スペースとなっており、広々としたリビングダイニングを設置し、家族の以降の場を確保しています。

【美容院併設住宅】1階店舗・2&3階住宅 狭小住宅間取り

限られた敷地で、美容院+3LDKを実現した実例です。

1階の店舗は、限られたスペースでスムーズな動線を確保。
2・3階の居住スペースは、広々としたLDKに加え、ウォークインクローゼットなど、充実した収納スペースを確保しています。

【レストラン兼住宅】1階店舗兼住宅・2回住宅 大きな吹き抜けのある間取り

1階には、店舗と住宅を隣接させ、客席に吹き抜けを設け、開放的な空間を演出しています。
店舗と住宅が同じ階に設置すると、業務の隙間時間に家事を片付けることができるメリットがあります。

店舗兼住宅の間取りを考えるときのポイント


店舗兼住宅は、住居と職場を同時に実現できる魅力的な選択肢です。しかし、仕事もプライベートも快適に過ごせる店舗兼住宅の間取りを実現するためには、さまざまな点に注意する必要があります。

ここでは、店舗兼住宅の間取りを考える際に重要な7つのポイントを詳しく解説します。

店舗兼住宅の間取りを考えるときのポイント
  • 店舗を1階にする
  • 店舗は外から店内が見えるように設計する
  • SNS映えする外観や内装を意識する
  • 店舗と住居の動線を分ける
  • 従業員用のスペースや事務所などのバックヤードを設ける
  • セキュリティ対策をする
  • バリアフリーな設計をする

店舗を1階にする

店舗兼住宅の間取りを考える際は、店舗を必ず1階にしましょう。
店舗を1階にすることで、下記のメリットがあります。

  • 人目につくため、集客力の向上が見込める
  • 仕事とプライベートの動線を分離できる
  • 店舗の日当たりや風通しがよくなる

1階は2〜3階に比べ、人目につきやすく、多くの人々に店舗の存在を認知してもらえるため、集客力の向上が期待できます。

また、フロアで店舗と自宅を分けることで、仕事とプライベートの動線を分離ができます。店舗と住居をフロアで分けることで、プライベート空間の確保が可能です。

さらに、1階は日当たりや風通しが良い場合が多く、快適な店舗環境を実現できるため、より良い店舗環境を実現したい人は1階に店舗を構えるようにしましょう。

しかし、フロアで店舗と住居を分ける場合には、防音対策が必須となります。快適に過ごすためにも、防音対策はしっかりとしましょう。また、店舗の種類や規模、 業種によっては、2階以上の階層が適している場合があります。ご自身が開業する業種や規模などを考慮したうえで検討するようにしましょう。

店舗は外から店内が見えるように設計する

店舗を設計する際は、お客様が入店しやすく、通りに向かって店舗の雰囲気をアピールできるように、外から店内が見える設計を心掛けましょう。通り沿いに、大きな窓を設置したり、大きな入り口を設けたりするなどの工夫が必要です。

店内が見えることで、お客様は店舗の雰囲気や商品を事前に確認できるため、お客様に安心感を与え、入店意欲を高めます。

また、店内が見えることで、こだわりの空間や商品を通りがかりの人々にアピールし、店舗の認知獲得やブランドイメージ向上に貢献します。

店舗の設計をする際は、下記のことを意識しましょう。

  • 大きな窓を設置する
  • 入り口を大きくする
  • 店内照明を明るくする
  • 商品ディスプレイを工夫する

しかし、美容院やエステサロンなどの場合は、プライバシーを考慮する必要があるため、目隠しを設けたり、マジックミラーを採用するなどの配慮が必要です。

SNS映えする外観や内装を意識する

SNSへの投稿や口コミが重要視される近年では、SNSで拡散されやすい店舗づくりも重要です。おしゃれな外観や内装や、コンセプトに沿った外観や内装にすることで、SNSでの投稿を促進させ、新たな顧客に認知されるきっかけとなります。

SNS映えする外観や内装にする際は、下記の事項を意識しましょう。

  • コンセプトに沿った、個性的な外観や内装にする
  • 写真映えするフォトスポットを設ける
  • 照明や壁紙、小物を効果的に活用する

例えば、イタリア料理店であれば、壁一面にアート作品を展示し、ユニークな空間を演出したり、天井から吊り下げられた照明で、おしゃれな雰囲気を演出したりするなどの方法が有効です。

店舗の外観や内装を考える際は、ターゲット層の好みに合わせたデザインにする必要があるため、アンケートを取ったり、同じターゲット層の店舗を偵察するなどして情報収集をおこないましょう。

店舗と住居の動線を分ける

プライバシー確保や、仕事とプライベートを両立させるために、店舗と住居の動線を明確に分けることも店舗兼住宅を考えるうえでは、非常に重要です。

動線を分離させるためには、下記の方法が有効です。

  • 出入口を別にする
  • 住居と店舗でフロアを分ける
  • 店舗に住居スペースが干渉する場合は、間仕切りで空間を分ける

小さな店舗で家族経営の場合や、お客様との会話を楽しみたい場合には、完全分離よりも、間仕切りや段差などで、緩やかに区切る方が生活しやすい場合があります。

動線を分ける際は、建築士や設計士に相談をして、アドバイスを受けるようにしましょう。

従業員用のスペースや事務所などのバックヤードを設ける

店舗の間取りを考える際には、従業員の休憩スペースや事務所などのバックヤードを儲けるようにしましょう。

バックヤードを設けることで、効率的に店舗運営ができ、従業員にとっても快適な職場環境となります。

バックヤードには、下記のスペースがあります。すべてを設ける必要はありませんが、必要に応じて検討しましょう。

  • 従業員休憩スペース
  • 事務スペース
  • 商品倉庫
  • 更衣室

店舗の規模や従業員数、在庫の量に合わせて、必要なバックヤードの広さを検討する必要があります。

また、法律上(※1)でも、従業員数に応じて休憩室の設置が義務付けられており、在庫を抱えるビジネスの場合、倉庫の大きさや店舗面積に占める割合は、売上に大きく影響します。

※1:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 事務所則第21条関係、安衛則第618条関係

セキュリティ対策をする

店舗と住居の安全を守るために、防犯カメラや警報装置、シャッターなどを設置し、セキュリティ対策をおこないましょう。

具体的には、下記の対策が有効です。

  • 防犯カメラや防犯警報装置を設置する
  • 窓やドアに鍵をかける
  • 夜間の照明を明るくする

店舗の周辺環境によっては、より高度なセキュリティ対策が必要になる場合があります。特に、繁華街に店舗を構えている場合には、注意が必要です。

防犯設備の設置には費用がかかるため、予算と相談しながら検討する必要があります。具体的な防犯対策を検討する際には、警察庁の防犯対策情報やセキュリティ会社のアドバイスを参考にすると良いでしょう。

バリアフリーな設計をする

どのような人でも来店しやすい店舗環境を実現するために、バリアフリーな設計を積極的に検討しましょう。

具体的には、下記の方法が挙げられます。

  • スロープや手すりを設置する
  • 段差をなくす
  • 車椅子用トイレを設置

店舗の面積や立地によっては、バリアフリー化が難しい場合があります。また、バリアフリー化には費用がかかるため、予算と相談しながら検討する必要があります。

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店舗兼住宅のメリット・デメリット


店舗兼住宅には、さまざまなメリット・デメリットがあります。

店舗兼住宅のメリット
  • 通勤時間がない
  • コストを抑えられる
  • 固定資産税などの軽減措置を受けられる
  • 低金利住宅ローンを活用できる
店舗兼住宅のデメリット
  • 住宅ローンの活用に制限がある
  • 集客と住みやすさを両立した立地を確保しづらい
  • 建てられる用途地域に制限がある
  • 売却時に不利になることがある

店舗兼住宅は、ライフスタイルや経済状況に合わせて、メリットとデメリットの両者を適切に把握し、慎重に検討する必要があります。

メリット:通勤時間がない

店舗兼住宅のメリットとして、通勤時間がないことが挙げられます。

店舗兼住宅は、自宅に店舗を併設するため、通勤時間がありません。そのため、通勤時間が節約できるだけでなく、通勤にかかる労力やストレスもありません。

また、通勤時間を仕事や家族との時間に充てることも可能です。これにより、店舗経営をスムーズに進められるだけでなく、夕食を一緒に食べたり、子供と遊んだりして、家族とのコミュニケーションを深められます。

また、通勤時間がなくなることで、読書、映画鑑賞、スポーツなど、趣味の時間を充実させたり、スキルアップのための勉強や資格取得を目指すこともできます。

メリット:コストを抑えられる

店舗兼住宅は、住居と店舗を一体化することで、家賃や土地代などのコストを抑えられることも大きなメリットです。

他人が建てた店舗や空きテナントに店舗を出す場合、空いている店舗・テナントを探して借りる必要があるため、毎月の賃料を支払わなければなりません。しかし、店舗兼住宅の場合はその必要がありません。

また、店舗併用住宅では通常、住宅ローンと事業用ローンの双方を利用しますが、一定の条件を満たすことで、住宅ローンへの一本化が可能です。住宅ローンへの一本化ができると、事業用ローンより、返済期間が長く、低金利で借入ができます。

また、その際は建築費用の一部や、利息の支払いを経費として計上できるため、税負担を軽減できます。

メリット:固定資産税などの軽減措置を受けられる

一般的な住宅にはさまざまな税金の優遇制度がありますが、店舗兼住宅の住宅部分も、これらの制度の対象となります。

一般的な住宅の建物にかかる固定資産税が、新築から3年間は2分の1となる軽減措置があります。

店舗兼住宅も、居住部分の床面積の割合が全体の2分の1以上であれば、居住部分については固定資産税の軽減措置を受けられます。また、建物だけでなく、土地についても、住宅部分の面積が2分の1以上であれば、固定資産税等の軽減措置が適用されます。

さらに、固定資産税の減税に伴い、都市計画税も減税されます。

メリット:低金利住宅ローンを活用できる

店舗兼住宅は、住宅ローン控除の対象となる場合があり、低金利住宅ローンを活用できます。

住宅ローンは一般的なローンと比較して低金利で借入ができるだけではなく、返済期間が長いメリットがあります。

また、一定の条件を満たすと、住宅ローン控除を受けられます。住宅ローン控除を受けることで、所得税と住民税を軽減できるため、大きなコストメリットがあります。

  • 居住部分の床面積が全体の2分の1以上であること
  • 店舗や事務所の部分は自ら使用するものであること
  • 居住部分と店舗や事務所の部分との間が壁、建具などで区画されており、原則として相互に行き来できる建て方であること
  • その他、金融機関の定める条件を満たすこと

デメリット:住宅ローンの活用に制限がある

店舗兼住宅には住宅ローンが活用できたり、住宅ローン控除を利用できたりするメリットがある一方で、住宅ローンの活用には制限があります。

店舗兼住宅を建築する際、店舗部分の床面積が50%を超えると、住宅ローンを利用できません。

住宅ローンを利用できない場合、自己資金や事業ローンなどで資金調達する必要があるため、資金調達のハードルが高くなります。また、事業ローンは住宅ローンよりも金利が高いため、金利負担が大きくなります。

コストを優先させる場合は、住宅ローンが活用できる範囲で間取りを検討しましょう。

デメリット:集客と住みやすさを両立した立地を確保しづらい

店舗兼住宅は、集客と住みやすさを両立した立地を確保することが難しい場合があります。集客をするためには、繁華街や交通量の多い道路に面したところなど、人が多く集まり、多くの人の目につく立地に店舗を構える必要があります。

しかし、店舗として多くの人が訪れる場所は、騒音やプライバシーの問題などが考えられるため、住環境としては望ましくありません。
一方で、人目につかない、閑静な住宅街などは、住環境としては適していますが、集客力には欠けてしまいます。

集客力を重視して、交通量の多い道路沿いに建築する場合、防音性の高いメーカーに依頼をしたり、ベランダには背丈の高い目隠しやルーバーを設置したりするなどの工夫が必要です。

デメリット:建てられる用途地域に制限がある

店舗兼住宅は、すべての用途地域で建てられるわけではありません。原則として、下記の地域で店舗兼住宅の建築が可能です。

  • 商業地域
  • 近隣商業地域
  • 準工業地域

上記以外の用途地域でも、一定の条件を満たせば店舗兼住宅を建築できる場合があります。

また、原則建築が可能な用途地域であっても、面積や建物の構造によっては、建築ができない場合や、建築が可能でも業種や業態によっては営業ができないケースもあります。

所有地や購入を検討している土地の用途地域で、建築・営業が可能かは、自治体、またはハウスメーカーや工務店の担当者に問い合わせてみましょう。

デメリット:売却時に不利になることがある

店舗兼住宅は、一般的な住宅よりも購入希望者が少ないため、売却時に不利になることがあります。

また、購入希望者が少ないため、売却に時間がかかったり、購入希望者が見つからない可能性があります。

しかし、下記の方法で、売却しやすくなったり、他の活用方法ができる可能性があるため、あわせて検討してみましょう。

  • 店舗部分を住居用にリフォームする
  • SOHO(※2)向けにリフォームする
  • 賃貸に出す
  • 複数の不動産会社に査定を依頼する

※2 SOHO:「Small Office Home Office」の略で、小さなオフィスや自宅兼オフィスとするワークスタイルや、その物件を指す。

まとめ・店舗兼住宅の間取りは様々なケースを想定しよう!

店舗兼住宅は、仕事と暮らしを両立したい方におすすめの選択肢です。

店舗と住居を一体化することで、通勤時間の削減、コストの抑制、住宅ローンの活用など、多くのメリットを得られる一方、用途地域や建築基準法など、建築前に確認すべきポイントも存在します。

本記事で紹介した情報を参考に、下記のことに留意して準備をしてみましょう。

  • 用途地域や立地の確認する
  • ローンの借入先と資金計画の検討する
  • 騒音対策など、住環境を考慮する
  • 専門家に相談する

店舗兼住宅を賢く実現し、素敵な店舗と充実したプライベートを手に入れましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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