ジェイタマズ 小池 桃太郎|商談獲得ツール「OPTEMO」でWeb上での顧客と企業の関係性を最適化
リアル店舗で顧客が困っていたらスタッフが声をかける。これをWebサイト上で行うサービスが「OPTEMO」
リアル店舗で顧客が困っていたら、スタッフがすぐに声をかけて問題を解決することは当たり前に行われています。しかし、Web上では自動化、効率化ばかり重要視され、せっかくWebサイトに訪問してくれた顧客の困りごとが解決できず、商機を逃すことが多々あります。
この課題を解決するために、Webサイトに訪問した顧客と企業の関係性を最適化できるツール「OPTEMO」を提供しているのがジェイタマズの小池さんです。
そこで今回の記事では、小池さんが起業に至るまでの経緯やOPTEMOの機能、解決できる課題について、創業手帳の大久保が聞きました。
株式会社ジェイタマズ 代表取締役 CEO
東京大学大学院新領域創成科学研究科修了。新卒で総合電機メーカーに入社し、ウェアラブルデバイスの電気回路エンジニア、掃除機の商品企画を経て、新規事業プロジェクトのリーダーを経験。
2015年に経営コンサルティング会社へ転職後、中途最短キャリアで管理職へ昇進し、チーフ経営コンサルタントとして最大80社の経営者向け勉強会を主宰しながら約50社の経営コンサルティングを経験。
株式会社ジェイタマズを共同創業し、「IT業界のリアルを動画で伝える」業界研究プラットフォームcaripの開発、運営を行っている。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
家電メーカー、大手コンサルティングを経て「ジェイタマズ」を創業
大久保:学生時代から起業までは、どのような道を辿ってきたのでしょうか?
小池:大学では「遠隔コミュニケーション」を学びつつ、スタートアップでインターンをしていて、当時からいつかは起業したいという思いを持っていました。
なかなか起業する機会もなく、新卒ではTVを作っているメーカーで、電気回路のエンジニアをしていました。
その後、大手コンサルティング会社に転職し、デジタルマーケティングや、様々な会社様の業績アップを支援するような仕事をしていました。
ある程度経験を詰んだ後、昇進するか独立するかという分かれ道に差し掛かり、古くからの友人と起業の話をちょうどしていたため、起業することになりました。
大久保:大学で研究していた「遠隔コミュニケーション」とはどのような内容でしょうか?
小池:遠隔で話している時とリアルで話している時では、仲良くなる具合が違うと思います。そこで、伝わってない情報が何なのか?それを伝えたらどう変わるか?を研究していました。
結果的には、視聴覚情報の中で呼吸の情報をセンシングするデバイスを作って、片方の呼吸がもう片方に伝わると、心拍数にどう変化が生まれるのか、という研究をしていました。
そのため、離れたところでのコミュニケーションのあり方については、今でも気になっています。
会社員時代の経験で起業に活きたこととは?
大久保:会社員時代にはどのようなことを学びましたか?
小池:サラリーマン時代には多くの学びを得ました。
1社目は社員数3万人規模で、大企業ならではのプロセスや社会人としての基礎を叩き込まれました。さらに、普段使っているものがどうやって作られているのかを知り、作る側に回ることもできたのは、とても良い経験となりました。
2社目での経験の中で今に活きていることは、特に「戦闘力を上げるための経験」です。具体的には、ビジネスにおいて数字を上げていくために、戦略面から泥臭いところまで一気通貫で経験させてもらい、結果を出してくための思想を学ばせていただきました。
私がコンサルタントとして担当していたのは製造業でした。
良いものを作っているのに、世に伝わっていないがために売れていない、というケースが多くありました。そこに対して、デジタルマーケティングを始め、展示会での売り方、営業組織の体制作り、インサイドセールスの立ち上げなど、売り上げを上げるためのことを幅広く行っていました。
友人3名での共同創業がうまく行った理由
大久保:なぜご友人と起業の話になったのでしょうか?
小池:昔から仲が良かった3人なのですが、それぞれ起業を考えていた時期がたまたま重なっただけです。
大久保:起業する人数が1人だと自分の好きなようにできます。しかし、複数人だと歩調を合わせないといけないと思いますが、その点いかがでしたか?
小池:今回は共同創業でしたが、個人的にはメリットが大きかったと思います。
ゼロイチの起業だったため、お互いを支え合うこともできました。
さらに、仕事の同僚などではないため、バックグラウンドが全く異なっています。お互いの強みも被らないので、できることをお互いに補完してあげるチームとなれました。
大久保:仲が良い人と起業してはいけない、という意見の人もいますが、逆に良かったという感じなんですね。
小池:トラブルや厳しい場面は必ず直面します。その時に友達と仕事仲間で切り替える必要はあるため、そこができれば良いと思います。
資金調達を機に大きなピボットを決意
大久保:事業内容は最初から今の事業なのでしょうか?
小池:途中でピボットしました。
創業時は新卒採用向けに動画サービスを行っていました。その後、ある上場企業とAIの共同研究が進んだり、大きめの代理店がついてくれたりしたのですが、さらに加速しようと資金調達に踏み込みました。
そこで、ある投資家から出資するからピボットしようと話を持ちかけられたことがきっかけです。ただし、ピボットする内容は君たちの自由だと言っていただき、私たちの意思でピボットすることにしました。
そこからクライアントや代理店にサービスをやめる話をして、スパッとやめました。
大久保:ピボットするにあたって、タイムリミットはありましたか?
小池:半年以内にシードで資金調達ができるようにしよう、という目標を設定したのと、イケてる会社のニーズを押さえて行こう、という指定はあったので、2軸を捉えながらピボットしていきました。
結果的に、ピボットして半年後にシードで資金調達を受けました。
サービスのローンチ前にイベントやカンファレンスで注目を集めたことが勝因の1つ
大久保:しばらく先行投資が続いたかと思いますが、その間いかがでしたか?
小池:我々のサービスは、簡単に作れるものではないと考えていました。そのため、ピボットを決めてからローンチまで、1年ちょっとかかりました。
その間、さらに資金調達を2回していますので、落ち着かない心境だったものの、良い株主さんに巡り会えたため、悲壮感は感じませんでした。
さらに良かったのが、ピボットしてすぐに「B Dash Camp」というカンファレンスに出場、その数ヶ月後には「TechCrunch」にも出場、そしてIVSでも入賞と、良い流れが続いてきました。
このように、選ばれるサービスということで自信がつき、世の中を変えていけるサービスだと確信を持てるようになりました。
大久保:ユーザーが着く前に、イベントやカンファレンスでの反響も大事ですね。
小池:はい、そして早めにパイロット版を作成し、フィードバックをもらうことも大事になってきます。
そのフィードバックを元にブラッシュアップしていくことで、実際にローンチする時には、お客様にとって良い製品を使っていただくことができます。
このように、コアの部分は変えませんが、その周辺の部分は作りながら走っていくことが大事です。
インサイドセールスの商談獲得ツール「OPTEMO」の3つの機能とは?
大久保:改めてサービスについて教えていただけますか?
小池:Webサイト上で企業とお客様がコミュニケーションを取るツールの「OPTEMO」というサービスを提供しています。
具体的にできることは3つあります。
1つ目はリアルタイムで可視化ができます。
Webサイトに訪問していただいたユーザーが、どのページのどの部分を見ているかが、リアルタイムで見れます。
2つ目はWebサイト上で音声通話ができます。
チャットはもちろん、クリックするだけで会話ができる機能です。
3つ目は最適なタイミングを通知でお知らせする機能です。
Webサイトには様々な方が訪れるため、温度感の高い方がいた場合は、OPTEMOからお知らせします。
この3つを掛け合わせると、温度感の高いユーザーの通知を受け、Webサイトのどの部分を見ているかを確認しながら、通話できるサービスとなります。
大久保:どういった人が見ているかというのもわかるのでしょうか?
小池:MAツールと連動することで社名と名前もわかるようになります。
大久保:問い合わせフォームに訪れた人と商談の日程が組める、といったビジネスを立ち上げられた人の話を聞いたこともあります。商談の日程を組むのも良いですが、その場で商談をしてしまうということですもんね。
小池:その企業は「問い合わせフォームを経た後」ですが、我々の場合は「その手前で商談」可能です。
なぜその設計にしたかというと、Webサイト上で問い合わせに至る確率は、1%ほどしかいないからです。99%の問い合わせしなかった人たちに対して、もっと開拓できる可能性を高めます。
興味がない人はWebサイトを見に来ないですし、問い合わせということ自体面倒なものになります。そこでもっと気軽にコミュニケーションを取っていこう、というサービスがOPTEMOです。
Webサイトへの訪問者の関心が最も高いタイミングで商談できるためコンバージョンに繋がりやすい
大久保:OPTEMOを導入することで何が変わるかというと、買うという行動が前にズレるイメージですね。
小池:間の無駄なステップを省くことができるので、顧客体験が良くなっていきます。
大久保:そうすると、売る側の労力もすごく減りそうですね。
小池:通常、資料ダウンロードした方の商談化率は30〜40%ほどなのですが、OPTEMO経由だと80%ほどに上がったケースもあります。
最初のコミュニケーションでお互いに信頼関係を築けているため、その後の接触率も非常に高くなっています。
例えば、OPTEMOでは、Webサイトに訪れたユーザーの観覧履歴を動画に残せます。
これを見た上で電話をかけるだけでも、インサイドセールスのやりやすさは格段に上がりますし、働き方自体変えられます。
さらにその先で、カスタマーサクセス、カスタマーサポートの文脈でも活用できるように、機能を広げていきたいと考えています。
大久保:ヒートマップとして情報を残すツールはよくありますが、録画しているとより解像度が上がりますね。
小池:マーケティングツールか、セールス向けのツールかという大きな違いです。
統計的に30%の人がこの部分を見ていたとデータを見ても、今から電話で話す方がそこを見ていないと意味がありません。
そのため、セールスに対しては「そのお客様がどうだったか」という点が重要になってきます。
大久保:他のCRMツールとの連動はしているのでしょうか?
小池:まだまだこれからなのですが、今でいうと、Adobe Marketo Engage、HubSpot、Marketing Cloud Account Engagement(旧Pardot)、Salesforce、kintoneと連携でき、通知先としては、Slack、Google Chat、Chatwork、Microsoft Teamsとなっています。
セールスにおいての大事なポイントは「相手に最適化すること」
大久保:従来のセールス方法とは違うように思えますね。
小池:自動化、仕組み化は大事ですが、相手が人であることは忘れてはいけません。
ショッピングモールに行くと、接客ロボットが少ない理由と同じです。自動化すればするほど、その人に合ったコミュニケーションができなくなります。
インサイドセールスという職種がもっとポテンシャルのある職種だと思っています。マーケティングとフィールドセールスの繋ぎになっている職種です。なのに、現状のインサイドセールスの業務スコープがすごく狭い場合が多いので、その可能性をOPTEMOは広げられると思っています。
そして「企業と顧客の関係性」をWebで最適化したいと思っています。
一般的なWebサイトは、顧客の情報を取ることを第一に考えているため、顧客体験が悪いことが多々あります。
これをもっとスムーズに話ができるようになれば、市場も変わっていくと思います。リアルの店舗だと、困っている人がいたら話しかけるのが当たり前ですが、Web上だとそれができていません。
Web体験をアップデートすることで日本の商習慣を変える
大久保:今後の展望を教えてください。
小池:Webサイトの当たり前、Web体験をアップデートしたいと考えています。そしてその先には日本の商習慣を変えていきたいです。さらに、日本に閉じる話ではないので、グローバルに向けて、ガシガシ頑張っていきたいと思っています。
大久保:今まで技術的にはできたことが、できないと思われていた盲点のようなビジネスですね。
小池:おっしゃる通りです。デバイスや通信環境が変わって、2020年ごろからコロナが始まって、オンラインで初めての方とお話しすることに多くのビジネスパーソンが慣れました。
このタイミングで我々もオンラインでの接客コミュニケーションをアップデートしてきましたので、タイミングの良さもあったかなと思います。
大久保:起業家に向けて一言いただけますか?
小池:起業して今振り返って思うことは、最高に楽しいので、起業した時のワクワク感をずっと持ちながら、一緒に切磋琢磨できると嬉しいなと思います。
ハードルが高ければ高いほど、乗り越えた時の喜びを感じる。それが起業だと思っています。
大久保の感想
(取材協力:
株式会社ジェイタマズ 代表取締役 CEO 小池 桃太郎)
(編集: 創業手帳編集部)
従来だとできなかったサービスも時代の進化ととも実現できることがある。伸びそうな領域なので今後に期待ですね!