【2025年最新版】商工中金とは?日本政策金融公庫との違いや融資の特徴、メリットを徹底解説!

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商工中金(商工組合中央金庫)は経営実績がある中小企業から選ばれやすい


政府系の金融機関には、商工中金や日本政策金融公庫があります。なかでも商工中金は中小企業でも融資を受けやすいのが特徴です。しかし、商工中金と日本政策金融公庫の違いについて詳しく知らない方も多いかもしれません。

そこで今回は、商工中金と日本政策金融公庫の違いや、商工中金のメリット・デメリットについて解説します。政府系の金融機関で融資を検討している方は、ぜひ最後まで目を通してみてください。

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商工中金とは?どのような機関なのか?


商工中金とは中小企業専門の金融機関のことで、全都道府県に最低1カ所ずつと海外にも5カ所の拠点があります。昭和初期の恐慌で多くの中小企業が危機的な状況に陥ったことで、政府と組合が共同出資する中小企業専門の金融機関として設立されました。

設立目的は、恐慌という厳しい状況で苦しんでいる中小企業の救済です。設立から現在に至るまで、商工中金は中小企業に特化した金融機関として、財務改善・事業再生・経営改善・海外進出といった幅広いサービスを提供しています。

新たに事業をスタートさせた経営者をはじめ、企業だけでは解決できない課題にも対応しており、中小企業の成長や発展をサポートできる強みがあります。

各地域の金融機関や業界団体と連携することも業務運営の一環としており、2018年に地域連携推進室も設置されました。

さまざまな機関と連携し信頼関係を強固なものにすることで、公的金融機関の枠組みを超えた、連携・協業機関とのコーディネーターとして活動しています。

商工中金融資の審査基準・利用条件について


商工中金から融資を受けたいたい場合には、融資審査に通らなくてはなりません。続いては、商工中金で融資を申し込みする流れなどについて解説します。

必要書類と申込の流れ

商工中金で融資を受ける流れは、次のとおりです。

  • 最寄り店舗へ電話で問い合せ
  • ・借入を検討している旨を伝える
    ・相談に必要な書類の確認と予約を行う

  • 窓口での相談
  • ・借入内容などを説明

  • 正式申し込み
  • ・必要書類すべて提出する

申し込みに必要となる主な種類は、以下のとおりです。

  • 会社案内
  • 決算書(3期分)
  • 商業登記簿謄本
  • 事業計画書
  • 直近の業況確認資料(試算表や金融機関取引別推移表)
  • 見積書(設備資金の場合) など

決算書が3期未満の場合は、不足分の収支計画または収支予想表を用意する必要があります。また、制度融資を利用する際には、準備する書類が別途必要です。

商工中金から求められた資料や書類は、不備なく準備することが大切です。すべての必要書類が揃うと、正式申し込みとなって審査が開始されます。

事業年数は問われる?

金融機関で融資を受ける場合、申し込み要件に事業年数が含まれていることが多いですが、商工中金では事業年数は問われません。

仮に申し込み時点では事業年数が3年未満だったとしても、審査には進めます。決算3期未満で決算書がない場合、不足分の収支計画または収支予想表が必要となります。

ただし、前述したように商工中金では、原則として決算書3期分が必要です。審査時には、事業の安定性や返済能力の有無は重要なチェック内容になります。事業年数が短い場合は信用能力が低いと判断されてしまいます。

個人事業主も利用できる?

個人事業主から商工中金へ融資申込が可能です。法人同様に審査したうえで、融資できるかどうかを判断します。

個人事業主であるため、確定申告書3期分が必要です。3期未満の場合は法人同様に収支計画または収支予想表を提出してもらいます。

ただし、融資契約の際には、商工中金の株主である中小企業団体の構成員になっている必要があります。

日本政策金融公庫とは?


日本政策金融公庫は、政府が100%出資している金融機関です。

2008年10月に国民生活金融公庫・農林漁業金融公庫・中小企業金融公庫・国際協力銀行の4つが統合して発足しました。その後、2011年に再び国際協力銀行が分離・独立しています。

現在は国民生活事業や農林水産事業、中小企業事業の3事業が連携して、融資や支援・情報提供といったサービスを行っています。

なかでも中小企業に関連するのは、国民生活事業と中小企業事業です。国民生活事業は、国民の教育ローンや恩給、共済年金といった融資をはじめ、小規模事業者の小口事業資金融資や創業支援、スタートアップ支援、海外展開支援などを行っています。

小口融資が主体になりますが、令和元年度末の融資先数88万先から令和6年度末には115万先まで増加しており、小規模事業者にとって頼りにされている銀行です。

中小企業事業は、中小企業を対象にした長期事業資金の融資で新事業支援やスタートアップ支援、事業承継支援・ビジネスマッチングによる経営課題解決支援などを行います。

日本政策金融公庫についてさらに詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてみてください。

日本政策金融公庫について、詳しくはこちらの記事を>>
日本政策金融公庫の起業時に利用できる3つの融資制度

【徹底比較】商工中金と日本政策金融公庫の違いとは?


商工中金も日本政策金融公庫も、中小企業の融資を提供しているといった点は同じです。ここでは、2つにどのような違いがあるのか解説していきます。

1.創業融資として利用可能か?

商工中金では、創業企業に対する融資が可能であり、独自の商品を設計しています。ただし、創業融資の制度融資を取り扱っていません。

日本政策金融公庫の国民生活事業では、新たに事業をスタートさせる人や開業資金、運転資金を調達したいという人を対象に、新規開業・スタートアップ支援資金をはじめとした創業融資に力を入れています。なお、創業融資制度の内容は充実しており、創業者に魅力的です。

日本政策金融公庫も融資を受けるには所定の審査が必要ですが、創業融資として利用したいのであれば、商工中金よりも有利な条件になるでしょう。

2.対象となる企業の違い

商工中金も日本政策金融公庫も中小企業を対象にした融資を提供している点は同じですが、商工中金は株主となっている中小企業団体や、その構成員を融資対象としています。上場していない大手企業など、幅広い企業を対象にしていることがわかります。

一方、日本政策金融公庫は一般の個人をはじめ、個人事業主や小規模事業者、中小企業などが対象で、それ以外の大きな企業や上場企業は利用できません。

どちらも幅広いサービスを提供していますが、対象となる企業に関しては商工中金のほうが既存の中小企業や大きな会社向きとなっています。

3.保証人制度の違い

商工中金では、融資の内容に応じて保証人や担保が必要です。経営者保証に関しては、「経営者保証に関するガイドライン」に基づいています。

特にリスクが大きいと判断される貸付の場合、民間の金融機関と同じように信用保証協会の保証が求められる可能性があります。

日本政策金融公庫では、要件を満たしていれば融資を受ける際の保証人は不要です。ただし、保証人が不要とされる融資では融資額に限りがあります。また、個人事業で経営者が融資を申し込んだ場合や事業承継における融資の場合、保証人が必要になる可能性もあります。

参考:一般社団法人 全国銀行協会|経営者保証ガイドライン

4.融資の内容・限度額の違い

融資限度額は、融資制度で定められている上限です。貸付限度額や借入限度額とも呼ばれています。

商工中金では、個々の財務状況に応じた企業審査で融資限度額を設定しています。また、中小企業のニーズに合わせるため、融資上限額を超える場合でも、再審査で柔軟に対応します。長期的な融資をはじめ、短期的な融資にも対応可能です。

一方、日本政策金融公庫では開業資金や運転資金などさまざまな融資に対応していますが、融資制度によって融資限度額が設定されています。

例えば、新規開業・スタートアップ資金では7,200万円が限度額です。原則として、限度額の範囲を超える融資を借りることはできません。

5.金利の違い

商工中金の金利は、一般的に 年1〜2%台 が中心で、民間銀行と比べると低水準に位置づけられます。

また、政府による危機対応業務や自治体による公的融資である制度融資を利用可能であり、比較的低い金利条件を提案できます。

一方で日本政策金融公庫は商工中金より、さらに低金利の設定になりやすい傾向です。

政府出資100%の公的金融機関として、中小企業や個人事業主が資金調達しやすい金利設定になっています。また、国の政策に基づいた金融支援の面からも特別金利などが設定された融資制度が多くなります。

どちらの金利も民間の金融機関より低くなりますが、低金利を求めるのであれば日本政策金融公庫が優位性あるでしょう。ただし、日本政策金融公庫の制度融資は上限額が設定されています。

このため、実績や大きな資金を必要とする企業が低金利での調達を考える際には、商工中金が現実的な選択肢となります。

6.預金・決済機能の有無

預金・決済機能は、指定された口座から指定金額の引き落としや自動振替の手続きが行えるサービスです。

商工中金には預金・決済機能があるため、預金口座の開設や振込手続きが可能です。また、預金の入出金が確認できるため、融資金額の把握に加え、月々の支払いの確認も容易になるといったメリットがあります。

一方、日本政策金融公庫には預金・決済機能がないため、預金口座が開設できません。このため、新規取引時は別の金融機関で口座を開設する手間があります。指定された金融機関に融資金額が振り込まれ、返済する際も当該口座へ入金する形になります。

7.資金調達の仕組みの違い

商工中金と日本政策金融公庫では、資金調達の仕組みにも大きな違いがあります。

商工中金では、構成員による出資金・預入金・信託預金・商工債券などから資金調達を行っており、政府には依存していません。

一方、日本政策金融公庫では、財政融資金借入金や政府出資金・政府保証債・財投機関債から資金調達を行っており、政府に依存しています。

政府の出資金や国債による資金調達の場合、万が一の時でも資金調達が難しくなるといった心配がありません。

商工中金を利用するメリット


中小企業が融資を受けるために商工中金を利用する場合、相談のしやすさや低金利での借入れができるといったメリットがあります。
ここでは、商工中金を利用するメリットについて詳しく解説します。

1.サービスが豊富で相談しやすい

商工中金の魅力は、中小企業のための金融機関というだけあって提供しているサービスが豊富です。資金調達はもちろん、資産運用や事業支援、経営サポート、海外進出支援など、幅広いサービスが用意されています。

一般的な金融機関ではサービスに制限があるところもありますが、商工中金では企業のニーズによって柔軟に対応してくれる点が大きなメリットです。行政との連携を密にしているため、企業が抱えている課題解決に向けた相談窓口としての役割という特徴もあります。

また、政府が災害や経済、伝染病などによる社会的混乱の危機事業を認定した際に、発動される危機対応業務の相談窓口も担っています。

本店・支店・出張所も全国各地にあるので、相談しやすいところも魅力です。丁寧に対応してくれるため、気付いていなかった問題の早期発見や解決にもつながります。

2.低金利で融資を受けられる

融資を受ける場合、できる限り低金利で受けたいと考えるかもしれません。しかし、民間の金融機関だと、中小企業を対象にした融資は金利が高くなる傾向にあります。

一方、商工中金では中小企業でも低金利で融資を受けられる可能性があります。政府主導による危機対応融資や自治体の制度融資の取り扱いがあるため、金利が低くなりやすい傾向です。

ただし、長期融資を行う際の基準金利とされる長期プライムレートは、みずほ銀行の長期プライムレート年2.20%(2025年8月27日時点)と同利率です。プロパー融資の金利は他行と同じような基準になるでしょう。

制度融資を活用して低金利で融資を受けられれば、返済額を抑えながらも効率良く資金調達ができるため、中小企業が運転資金や設備資金を調達する上でメリットです。

商工中金を利用するデメリット


中小企業が商工中金を利用するデメリットとして、金利が前もって確認できないことや、構成員になる必要があることなどが挙げられます。最後に、商工中金を利用するデメリットを詳しくご紹介します。

1.金利を前もって調べられないケースが多い

商工中金は、低金利で融資を受けられることは上記でもご紹介しました。商工中金では、長期融資と短期融資の際に基準金利とされる長期プライムレートと短期プライムレートをホームページにて公開しています。

より詳しい金利は、個々の企業ごとに融資期間や担保状況により決定されるため、審査通過後になります。審査結果によっては、想定を超える金利が提示されるケースがあり、デメリットといえるかもしれません。

2.構成員などにならなければいけない

商工中金で融資を受けるには、構成員や株主になっていなければなりません。なぜなら、商工中金が提供している融資は、構成員貸と組合員貸の取り扱いしかないためです。

構成員貸は、事業者の所属する団体が商工中金の株主である場合に利用できる融資形態で、組合員貸は商工中金の株主団体が行う共同事業に利用できる融資です。

商工中金の株主である中小企業団体の組合員になる場合、団体によっては年会費を支払わなければなりません。同様に、中小企業団体として株を取得する場合もそれにともなう費用が発生します。

商工中金についてよくある質問(FAQ)

商工中金へ申し込みする際に、よく問い合わせを受ける質問と回答をまとめました。

商工中金と日本政策金融公庫はどちらが創業者向き?

創業・スタートアップ支援資金の融資制度がある日本政策金融公庫の国民生活事業が、融資条件を考慮すると創業者に向いています。

ただし、商工中金でもスタートアップ企業への支援体制を強化しています。

商工中金の金利はどのくらい?

取引先ごとの財務内容や融資条件によって金利は異なります。長期融資の基準金利とされる長期プライムレートは年2.20%(2025年8月27日時点)です。

商工中金は「やばい」と言われるのはなぜ?

政府出資100%の日本政策金融公庫と異なり、政府出資が50%であった点と完全民営化に移行するためでした。実際に政府保有株は売却され、完全民営化の手続きが進められています。ただし、引き続き中小企業を支援する金融機関としての役割は変わりません。

商工中金を個人事業主が利用する際の注意点は?

個人事業主であっても、商工中金の株主となっている中小企業団体への所属が必要になります。

まとめ・特徴と違いを理解して商工中金と取引しよう

中小企業が事業の運転資金や設備資金のため融資を受ける際には、商工中金を検討するケースが多くなります。商工中金は、中小企業の安定した運営をサポートするために設立された金融機関であり、幅広いサービスに対応しています。

商工中金と日本政策金融公庫では、融資形態から保証人制度、融資の内容まで、さまざまな部分に違いが見られました。両者の違いをよく理解した上で、どちらの融資制度を利用するか検討してみてください。



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(編集:創業手帳編集部)

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