小さい飲食店を開業するまでのステップ!費用からポイントまで
小さい飲食店なら一人でも開業できる
小さい飲食店の経営は、初期費用や運転費用を節約しながら開業できるビジネスです。
店舗が小さいことで集客が困難に思われがちですが、顧客それぞれに丁寧に接したい、自分が納得できる食事を提供したいと考える事業主にもおすすめします。
また、飲食店の業態も増えていますので、資金やターゲットに合わせて宅配専門店やキッチンカーで開業することも検討するとよいでしょう。
今回は小さい飲食店を開業するまでの流れをまとめました。
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この記事の目次
小さい飲食店の開業ステップ
飲食店の開業を目指している人は多くいます。小さな飲食店であれば、比較的スタートしやすく将来的にビジネスを大きくする足掛かりにもなります。
しかし、小さい飲食店をどうやって開業すればいいのか、資金はどの程度準備すればいいのかと悩む人もいるはずです。
ここでは、小さな飲食店を開業するまでのステップを紹介します。
ステップ1:独立かフランチャイズかを検討する
ひとりで開業するのか、フランチャイズにするのかによって飲食店を開業するステップはまったく違います。
独立してひとりで開業する場合は、物件を探して設備を整えたり、メニューを開発したりと準備が多くなります。
開業してからも、スタッフの教育や集客施策も自分で考えなければいけません。ひとりでの開業は苦労も多く資金もかかります。
しかし、自分で理想の店を一から立ち上げられるやりがいがあり、成功した時の利益も大きくなるという魅力があります。
フランチャイズ経営は、フランチャイズに加盟してブランド名を名乗って開業する方法です。
加盟店はフランチャイズ本部にロイヤリティを支払って、ノウハウや材料の提供といったサポートを受けます。
フランチャイズ経営は経営の知識が少なかったり、資金が乏しかったりする場合にも適した方法です。
ブランド力があるので、ある程度集客が見込める点も魅力です。
しかし、お店の運営は本部に従わなければならないことも多く、自分のアイデアや考えで経営したいと考えている人には不向きです。
ステップ2:コンセプトや事業計画を立てる
小さい飲食店といっても、その業態は多種多様です。カフェや居酒屋、スイーツやラーメンといったメニューのほか、開業形態の違いもあります。
例えば、店舗型のほかにデリバリー、テイクアウトのほか、キッチンカーや移動販売を選ぶ事業者もいます。この数年はテイクアウトで食品を提供する飲食店が増加しました。
小さい飲食店を開業するには、どのような飲食店を開業するのかコンセプトを決めてから、開業する立地やターゲット層を調査していきます。
利益をプラスにするための事業計画も立ててください。
ステップ3:メニューを開発する
お店のコンセプトが決まったら、メニューの開発に着手してください。ターゲット層にマッチしたメニューはもちろん、どの程度のメニュー数を提供するかも考えます。
近隣には似たコンセプトのお店もあるかもしれません。
特別感があるメニューで差別化したり、利益率が高いメニューを開発したり、いくらでどれだけ売れれば経営が軌道に乗るかどうかまで考えながらメニューを開発してください。
ステップ4:エリアや物件を探す
物件を探す時には、立地やエリアのほか、広さ、賃料も条件を決めておくようにしましょう。
内外装を依頼する業者が決まっている場合には同行すると施工がスムーズに進みます。
物件を契約しても設備の搬入や工事で開業までは時間がかかるので、できるだけ早めに物件探しをスタートしてください。
ステップ5:資金調達をする
飲食店を開業するには、初期費用と運転資金が必要です。自己資金だけで開業しようとしても、なかなか貯金できず開業が遅れてしまうかもしれません。
自分で資金を貯める以外には、銀行からの融資を受けるほか、補助金や助成金制度を利用する方法があります。
地方独自の補助金や助成金制度が用意されている場合もあります。
商品やサービスが目新しく注目を集めるようなものであれば、クラウドファンディングも視野に入れてみてください。
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ステップ6:店舗の設計や施工をする
物件を契約してから、飲食店として開業するための工事や施工を行います。物件の中には、居抜き物件で以前営業していた店舗の設備を流用できることもあります。
資金を節約するためには、厨房施設や空調を活用できる物件も検討してください。どのような店舗にするかによって厨房の広さや必要な設備が違います。
実際の大きさを測って、店舗の設計や入れる調理器具を検討しましょう。
ステップ7:調理設備や備品の購入をする
飲食店開業には様々な備品が必要になります。調理に関する設備のほか、テーブルや椅子、カトラリー、店舗の看板なども用意しなければいけません。
費用がかさむ場合には、リースやレンタル、中古品も検討してください。
ステップ8:資格を取得する
飲食店開業にあたって、資格も取得しなければいけません。個人経営であっても食品を調理するため、安全のために定められた資格なので必ず取得してください。
以下では飲食店開業にあたって必要となる2つの資格を紹介しています。
食品衛生責任者
飲食店を営業するには、営業者は施設ごとに食品衛生責任者を定めなければいけません。
食品衛生責任者の資格は各都道府県の養成施設で実施されています。
講習会の内容や受講料については、各ホームページを確認してください。
防火管理者
防火管理者は、すべての飲食店で選任されるわけではありません。飲食店の場合には、客席数が30人以上の場合に防火管理者の選任が必要です。
都道府県知事や各自治体消防の消防長、総務大臣登録講習機関が行う防火管理講習を受講して取得します。防火管理者は、防火対象物の規模や用途によって分けられます。
受講料は、甲種新規講習で8,000円、乙種講習で7,000円です。
ステップ9:開業のための必要な届け出を出す
飲食店を開業するには、届け出も必要です。どういった届け出が必要なのか確認してください。
食品営業許可申請
食品営業許可申請は、すべての飲食店に必要な申請です。各自治体の保健所に提出して、保健所の検査で問題がなければ営業許可の交付を受けられます。
手数料もかかるので、あらかじめ都道府県のホームページから実施案内を確認してください。
火を使用する設備等の設置届
店舗でコンロのように火を使う設備や調理器具を使う場合には、火を使用する設備等の設置届を提出します。
厨房設備に限定せず、ボイラーや温風暖房機でも設置届が求められます。
原則として消防署の検査も受けなければならないので早めに手続きをしてください。
上記では代表的な届け出を紹介しましたが、お店の業態や規模によってはほかにも提出しなければならない届け出があります。
深夜12時以降にアルコール類を販売するのであれば深夜酒類提供飲食店開業開始届出書、人を雇うのであれば労災保険や雇用保険加入の手続きもしなければいけません。
事業計画の段階で、どのような資格や届け出が必要で、いつまでに手続きをしなければいけないのかスケジュールをまとめておくことをおすすめします。
小さい飲食店を開業するための費用はいくら?
開業する時にどうしても課題となるのが開業費用です。小さい飲食店であっても開業するまでには、まとまった金額を用意しなければいけません。
どの程度の費用を用意すればいいのか目安を紹介します。
開業資金は1,000万円を目安に用意する
飲食店を開業する資金の目安といわれているのが1,000万円です。もちろんフランチャイズを利用したりキッチンカーにすれば、さらに少額でも開業は可能です。
開業する場所や業態によっては1,000万円以上かかることもあります。開業資金は自己資金が望ましいですが、銀行からの融資や補助金や助成金を使う方法もあります。
どれだけの費用が必要か、自己資金でいくら用意できるかをシミュレーションしてください。
銀行融資を受ける場合には、売上から返済もしなければいけないので、どれだけ利益を出せるかも重要です。
開業資金には、物件取得費や内装工事費といった初期費用と月ごとに発生し続ける運転費用があります。以下で飲食店開業にかかる費用を確認してください。
飲食店の初期費用内訳
初期費用の中でも大きいのが物件に関わる費用です。それぞれ確認してください。
物件取得費
物件取得費用には、物件を借りる時の前家賃のほか、保証金や礼金、仲介手数料があります。一般的には家賃の6~10カ月分が相場といわれています。
地域によっても礼金や保証金の相場が違うので、物件を探す時には注意してください。
内装・外装費
内装・外装工事費は、一からスタートして500万円程度はかかります。内装・外装費用を節約するのであれば、居抜き物件を探してみるようにします。
そのまま流用できる居抜き物件であれば、費用を大幅に圧縮可能です。
厨房内設備費
厨房機器は、規模によっては100万円以上かかります。こだわらないのであれば、中古やレンタルも探してみてください。
居抜き物件で厨房設備が残っている場合もあります。厨房設備をそのまま利用できれば、大幅にコストカット可能です。
ただし、居抜き物件にこだわり過ぎないようにしてください。居抜き物件の多くは、入居していた店舗が撤退した後なので、営業が不利であった可能性もあります。
備品費(食器・調理道具など)
飲食店には、食器や調理道具のようにこまごまとした備品も必要です。また、レジ設備も用意しなければいけません。
食器やカトラリーは余裕がある数を用意してください。
広告費
飲食店を始める時には、集客についても検討しておく必要があります。
お店がオープンするにあたってグルメサイトに掲載したり、チラシを配布したり、どうやってお店を知ってもらうかを考えておいてください。
また、SNSでの広告は無料で始められるものが多く、日々のメニューやキャンペーンをこまめに発信できます。
SNSの中には有料オプションとして広告配信できるものもあるので利用を検討してください。
飲食店の運転費用内訳
飲食店での運転資金には、以下のものがあります。
食材費
飲食店には多くのジャンルがあるものの、飲食店は必ず必要です。メニュー数が多すぎると、用意しなければいけない食材費もかさみます。
開業してすぐは客数も安定しないため、ストがかさみ過ぎないようにメニュー数を絞ることも検討してください。
人件費
小さい飲食店は人件費も少なくできる点がメリットです。規模が大きくなればなるほど、人件費もかさみます。
人を雇用することになれば、費用だけでなく手続きも増えるので慎重に決めてください。
家賃・水道光熱費
家賃や水道光熱費は、毎月必ずコストが発生します。電気料金は、プランの見直しも定期的に行うようにおすすめします。
毎月発生する経費なので、無駄が発生していないか小まめにチェックしてください。
広告費
広告費は開業してからも必要になります。できるだけ広告費を抑えるにはリピーターを作ってください。
広告費は繁忙期や閑散期といった時期に合わせてコスト調整がしやすいので、利益を圧縮する節税対策としても有効です。
開業しやすい小さい飲食店の形態を紹介
小さい飲食店といっても様々な種類があります。どの要素を小さくするのか考えながら、以下の開業しやすい小さい飲食店の種類を比較してみてください。
1人利用が多く間取りが小さい
お客様が1人で利用される飲食店は、省スペースで開業できます。例えば、カウンターでお酒やコーヒーを提供するお店や、テイクアウト専門店などです。
これらの飲食店は、調理スペースとカウンターと椅子だけ、または調理スペースと商品をお渡しする窓口があれば開業できます。
一方で家族連れが訪れるような飲食店の場合は、2人以上が座れるテーブル席が必要になるため、間取りの広い物件を選ぶことになります。また、収容人数が多い飲食店では、防火管理者の資格が必要になる場合もあるため注意が必要です。
その点、お客様が1人で訪れる飲食店は、小さい間取りでお客様の人数も少なくなるため、オーナー1人だけでも営業できるメリットがあります。
特定メニューを販売する専門店
特定のメニューだけを提供する飲食店は、調理の手間が少ないため、小さい飲食店に向いています。
コーヒーだけを提供するテイクアウト専門のコーヒースタンドや、サンドイッチやカレーなど特定のメニューを提供する専門店などが挙げられます。
1つのメニューに絞ることで、仕入れる材料の種類が少なくて済みます。また、事前に仕込みを済ませておけば調理時間が短くなり、オーナー1人で営業する場合に、回転率を高めることが可能です。
ただし、特定のメニューに絞ると、失敗した場合に売り上げが伸びにくくなるリスクもあります。
フードデリバリー・ゴーストレストランも選択肢に入る
ゴーストレストランとは、お客様が店内で飲食することは想定せず、フードデリバリーやテイクアウト専門とする飲食店のことです。
これらの飲食店は、調理スペースのみで開業できます。
近年ではフードデリバリー業界の発展により、小資金で飲食店を開業できるチャンスが広がりました。ゴーストレストラン専門の物件も登場しており、同業種間での意見交換が可能なメリットもあります。
ただし、デリバリープラットフォームに支払う手数料は35~40%程度と高めです。
また、テイクアウト用容器の値段の高騰や、ユーザーは配達料を支払うことになるため、料理の質が求められる点にも注意が必要です。
賃料を大幅に節約できる自宅カフェ
自宅カフェは、自宅の一部をカフェとしてリフォームし開業する方法です。自己所有の物件を使用するため、飲食店の賃料が発生しないメリットがあります。
開業コストが低いと、利益が少なくても営業していけます。「週末カフェ」や「ランチのみ」など短時間の営業も可能です。
ただし、住宅街にある自宅では、お客様がお店を見つけにくくなります。
SNSを利用した集客も可能なので、「隠れ家カフェ」としての魅力を生かす戦略も検討しましょう。
キッチンカーで開業する
車で移動可能なキッチンカーは、好きな場所で営業できるメリットがあります。営業日も自由に選べるため、イベント時に集中して売り上げを伸ばすことが可能です。
キッチンカーの出店場所は、イベント会場・公園・ショッピングモールの駐車場などです。
また、オフィス街や観光地の駅前でも営業することができます。ただし、初期段階では良い場所が見つからないかもしれません。
移動すると固定客を獲得しにくいため、SNSで出店場所を積極的にアピールする必要があるでしょう。
小さい飲食店開業のポイント
小さい飲食店は、注文の処理から調理、会計まで自分だけでもまかなえます。しかし、小さいことのデメリットも知っておいてください。
小さい飲食店を開業するポイントをまとめました。
病気やケガの時のことを考えておく
小さい飲食店を経営している場合、問題になるのが病気やケガになった時です。ひとりで経営している場合は、病気やケガが落ち着くまで店舗を営業できません。
営業日数、営業時間が短くなれば売上も下がり、休んだ分だけ損失になってしまいます。病気やケガで営業できないリスクに備えてください。
仕入れコストをカットできる工夫をする
小さい飲食店でフランチャイズでもない場合、仕入れ費用が大型のお店と比較して割高になりがちです。小さい飲食店は、席数が少なく必要な食材も少なめです。
大量に購入して仕入れ費用を下げられないため、価格競争に弱かったり、利益を上げにくかったりすることがあります。
ほかのお店にはない付加価値を提供したり、仕入れ費用以外の部分でコストカットしたり不利をカバーする施策も考えてください。
コンセプトは具体的に設計する
事業計画を入念に立てていても、コンセプトがはっきりしないお店は少なくありません。コンセプトはお店のメニューや内装、集客施策などすべての根幹になる部分です。
コンセプトが定まっていないとイメージがぶれて、客層も経営も安定しません。
コンセプトは5w1hを使って、何を誰にどこでいつどのように提供するか具体的に設定するようにしてください。
集客のための戦略を練る
飲食店を開業するだけでは人はなかなか集まりません。開店する前から広告やSNSを活用して宣伝をスタートします。
グルメサイトに登録してお店を知ってもらうほか、リピーターを育てるためにポイントカードを作る方法もあります。
資金調達前に物件選びを行う
事業計画を立てる上で、どのような物件で開業するかは重要なポイントです。
家賃や想定される客層、客単価がわからない状態では事業計画が立てられず、資金調達も難しいかもしれません。
物件を探す時には、複数の不動産屋に条件を伝えてください。資金に不安がある場合でもまずは物件を仮押さえしてから、資金調達を行います。
小さい飲食店の開業で失敗しない為には
小さい飲食店が失敗するケースとして多いのは、業務効率化ができずに売り上げを伸ばすことができない場合です。無駄な作業を省くため、外部ツールを上手く活用しましょう。
業務効率化は必須事項
特にオーナー1人で営業する小さい飲食店では、業務効率化が重要です。1人で全ての業務に対応するとなると、オーダー受付、調理、会計までをこなさなければなりません。
飲食店の経営では、他にも食材の発注や管理、勤務管理表の作成などの事務処理もあります。
業務効率化の工夫としては、セルフオーダーシステムの活用があります。これにより、お客様自身に注文と会計を行ってもらうことが可能です。
DXの導入や推進
DXとは、デジタルトランスフォーメーションのことです。デジタル技術を用い、業務効率化を図る目的で活用されています。
上記で紹介したセルフオーダーシステムも、DXの一つです。人がやらなくてもできる業務をデジタル技術で自動化することで、1人オーナーでも作業効率が良くなります。
DXの導入は、人件費を削減する目的だけでなく、人的なミスを減らす意味でも重要です。また、顧客情報を活用して集客を高める手段としても利用できます。
まとめ・小さな飲食店から開業に挑戦してみよう
小さい飲食店は比較的少ない資金でも開業できるため、多くの人が興味を負っています。ただし、小さいからといって成功するのは簡単ではありません。
規模が小さいからこそ、他店との差別化やコストカットに苦労することがあります。
自分がどういった飲食店を開業したいのか、長く続けるためにどうすればいいのか慎重に考えて開業するようにしてください。
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(編集:創業手帳編集部)
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