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リーガルチェックの意味やポイント、費用の目安は?

リーガルチェックとは?
リーガルチェックとは、企業活動などにおいて、主に法律的な観点から問題がないかチェックを行うことを意味します。企業にとって重要なリスクマネジメントの1つと言える業務です。
広い意味では、起業時や新規事業立案時に、ビジネスモデルの適法性をチェックすることもリーガルチェックにあたります。

ただし、実務上でリーガルチェックという用語がよく使われるのは、大半が法律文書のチェックに関わる場面です。具体的には、各種契約書や覚書をはじめとして、サービスの利用規約(約款)やホームページに掲載するプライバシーポリシーなどもリーガルチェックの対象となります。
今回は、契約書を中心として、これらの文書のリーガルチェックについて解説します。

リーガルチェックの4つのポイント
リーガルチェックを行う際には、様々な視点での緻密な確認が必要となりますが、そのポイントを大まかに以下の4つにまとめました。これらは特に1〜4の順番で行う必要があるわけではありません。状況に応じて、効率的と思われる方法でチェックすると良いでしょう。

1. 形式的なチェック
2. 違法な内容や公序良俗に反する内容が含まれていないか
3. 自社にとってリスクの高い内容、不利益な内容が含まれていないか
4. ビジネス的な観点から想定できるトラブルをカバーできているか

1. 形式的なチェック
最も基本的な確認です。
数字や文言に誤字脱字がないかを確認するのは言うまでもないことですが、これまで法務や契約に携わった経験がないビジネスパーソンは、意外とおろそかにしているケースが見られますので注意が必要です。重要な書面ですので、ケアレスミスが大きなリスクに繋がる可能性もあります。
また、文書の雛形がきちんと契約などの目的に沿っているのかを確認することも必要です。例えば製品の販売において他社と提携したい場合、事業モデルによって代理店契約書、販売店契約書、業務委託契約書のどれが最適かは異なってきます。一般的な事業内容であれば、既存のフォーマットを基にすることも選択肢の1つですが、新しいビジネスモデルのスタートアップなどの場合は、弁護士などの専門家に相談するのが確実です。

2.違法な内容や公序良俗に反する内容が含まれていないか
文字通り”legal”、つまり法律的な確認にあたる部分で、リーガルチェックの中核とも言えるチェックポイントです。
契約において、よく民法上の原則として「契約自由の原則」があると言われます。その原則の中には「内容の自由」も含まれているのですが、例外として、違法な内容は強行規定(強行法規)によって無効となるとされています。例えば、雇用契約書の中の労働時間に関する取り決めが労働基準法に反していれば、その部分は強行規定によって効力が認められません。
労働基準法以外にも、物権法、下請法(下請代金支払遅延等防止法)、独占禁止法など強行規定が含まれる法律は様々です。全ての法律が強行法規にあたるわけではありませんが、ある程度の法的な知識がないと区別は難しいでしょう。
また、民法90条で定められている通り、公序良俗に反する契約は無効となります。

そして最近では、コンプライアンスの観点からのチェックもますます重要になっています。必ずしも違法とは言えなくても、モラルに反する契約をしようとすれば、ビジネスでの信用を失います。また、社会規範から逸脱するような利用規約を掲げているサービスは、ユーザーの信頼を得ることが難しいでしょう。
スタートアップやベンチャー企業では、コンプライアンス遵守の体制づくりまで手が回らない場合も多いですが、企業の社会的責任に注目が集まる時代だからこそ、起業家自身がしっかりとした行動規範を定める必要があると言えます。

3. 自社にとってリスクの高い内容、不利益な内容が含まれていないか
これは2と比べると、よりビジネス的な視点でのチェックです。たとえ契約書などの条項がすべて適法だったとしても、自社に大損害を与えかねない内容が含まれていては、リスク管理の点で十分とは言えません。
例えば、損害賠償責任について不当に不利になるような条件となっていないか、不可抗力に関する定めが妥当かなど、自社が必要以上のリスクを負っていないか細かくチェックすることが大事です。
また、契約の有効期間や自動更新に関わる条項も大切です。自動更新されるように定めておくと、事務処理の手間が省けるように思われがちですが、すべての取引で最適な手段とは限りません。契約の目的や内容に応じて検討すべきでしょう。

4. ビジネス的な観点から想定できるトラブルをカバーできているか
3と似ている部分がありますが、より事業の実情をふまえたチェックです。3では自社にとっての不当なリスクがないかを確認しましたが、この4は想定できるリスクをカバーしきれているかという視点になります。
例を挙げると、商品の輸出入に関する取引では、輸送トラブルによる遅延や損害の発生が想定できます。システム開発の現場では、納期の遅れも少なくない上、その遅れの責任が発注側と受注側のどちらにあるのかトラブルになる場合もあります。Webサービスの利用規約であれば、悪意ある利用者やサイバー攻撃などのリスクにも備える必要があるかもしれません。
このように事業内容ごとに異なるリスクに対し、可能な限りカバーできる条項を文書に盛り込んで、十分な対策を取ることが必要です。法律的な知識だけでなく、事業分野に関する知識や経験が不可欠になるチェックポイントなので、専門家に依頼する際は、その点も考慮するとよいでしょう。

リーガルチェックは誰がするのか?依頼先は?
企業規模が大きい場合は、原則として法務部がリーガルチェックを担当し、イレギュラーな対応のみ顧問弁護士などに依頼する仕組みが一般的です。
創業したばかりで、まだ法務部を設置していなかったり、経験豊富な法務担当者がいなかったりするスタートアップなどでは、専門家の協力を仰ぐのが安心です。具体的には、弁護士、行政書士、司法書士などの法律家に依頼しながら、起業家自身や社内スタッフでも確認を行う形です。専門家については、就業規則などの作成であれば社労士、ライセンス契約などの知的財産に関わる内容であれば、弁理士も候補に挙がります。
これらの士業のうち誰に依頼するのが最適かは、依頼の内容次第です。弁護士は他の士業と違い、法律相談の内容に資格上の制限がありません。ビジネスモデルも含めた適法性や、紛争の可能性など広く相談したい場合は、一般的には弁護士が適しているでしょう。あくまで書面の作成やチェックのみを依頼したい場合は、行政書士に依頼する方がコストを抑えやすくなります。
また、依頼にあたっては、資格の違いだけでなく専門分野も重要です。事業の中核に大きく関わる契約などであれば、法律面での実績だけでなく、その事業分野での実績がある専門家に依頼するのが望ましいでしょう。また、海外との取引においては、相手国の法律や実情に精通している専門家であることも重要です。

リーガルチェックの費用は?
弁護士事務所の場合、リーガルチェックの最低料金を3万円〜10万円程度で定めているケースが多いです。ただし、一から書面を作成する場合や、非定型の契約書のチェック、外国語の書類チェックなどは料金が上がります。行政書士の場合、弁護士への依頼料よりも全体的に価格が下がる傾向にあります。
また、弁護士と顧問契約を結んでいる場合は、顧問料の範囲内で対応してくれたり、1回限りのスポット依頼よりも低額で対応してくれたりする可能性があります。
そして最近では、AIを利用したリーガルチェックのサービスも続々と増えています。弁護士が監修したサービスが多く、大手企業の導入実績も謳われています。料金はサービスごとに異なりますが、月額で10〜15万円程度の基本料金が設定されているサービスや、使用頻度の少ない企業向けに数万円程度の段階的な料金制を設けているサービスなどがあります。

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