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2022年1月5日Milk.株式会社 中矢大輝|宇宙カメラでガン診断を行うAIシステムの事業展開が注目の企業
宇宙カメラでガン診断を行うAIシステムの事業展開で注目なのが、中矢大輝さんが2019年に創業したMilk.株式会社です。
今、AIを活用した事業開発が活発になってきています。
IDC(IT専門調査会社 IDC Japan 株式会社)によれば、2020年の国内AIシステム市場は、市場規模(エンドユーザー支出額ベース)が1,579億8,400万円、前年比成長率は47.9%になり、2021~2025年の年平均成長率は24.5%と予測されています。
このように急速に進展する各AI活用分野の中でも、今、『病理AI』の活用と普及に注目が集まっています。
『病理』とは直接患者さんと接して診察をすることではなく、組織診断、細胞診、病理解剖といった検査を行うことです。
例えば、医師が診察して見つけた患者さんの腫瘍が良性なのか悪性なのかを調べるのが病理医の役割で、これによって病気の早期発見や的確な治療方針が決定します。
この病理件数は年々増加傾向にあり、年間で約500万件にも上ります(厚生労働省)。
背景には抗がん剤の開発や新たな治療方法が発見されるようになったという明るい話題があります。つまり新薬や治療法の効き目がどうなのかを検査で確認する機会が増えているのです。
にもかかわらず、病理医の数は2021年11月時点で約2700名と非常に少なく、深刻な人手不足が叫ばれています。
また、目視による診断の為、個人の器量や経験によるところが大きく、時間もかかり、人の目では認知しきれないこともありました。
それらを解決してくれる次世代病理AIシステムの開発と研究をしているのがMilk.株式会社です。
Milk.株式会社の宇宙カメラによるガン診断AIシステム事業の特徴は、
宇宙開発技術レベルのハイパースペクトル画像の色彩分解能を用いて、がん細胞の特徴量を抽出するという点です。
これにより、「診断時間の短縮」「診断精度の向上」「客観性」が実現できます。
Milk.株式会社の中矢大輝さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。
・このプロダクトの特徴は何ですか?
人工衛星に搭載されている「ハイパースペクトルカメラ」をガン細胞の検知に応用した世界ではじめてのAIです。
このAIは国際特許を取得しています。
このカメラでガン細胞を撮影することで、これまでよりもはるかに高精度の分類が可能になり、さらに早期発見も期待できます。
現在、7種のガンで90%を超える識別精度が得られています。そのほか、ガン種やガンのグレードの識別も高精度に行えることがわかっています。
製品としての導入は2023年夏を予定しています。
・どういう方にこのサービスを使ってほしいですか?
初期のサービスとして、ガン検診への応用を目指しています。
細胞診といって、医師の先生が患者さんから取り出した細胞を顕微鏡で観察し、診断する初期検査がございます。
この検査の精度を同じ顕微鏡で撮影するだけで即座に高精度なAIの識別結果が得られます。
患者さんは数千円程度のオプション費用を支払うことによりこのサービスを利用できるようにしたいと考えています。
・このサービスの解決する社会課題はなんですか?
ガン検診における見落とし防止、精度向上、診断時間の短縮です。
・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?
人脈、資金、信用の不足が最も苦しい部分でした。当初は私を含め創業メンバーは無給どころか、持ち出しで活動しておりました。
人脈がないので、無料で参加できるセミナーやイベントへの参加はもちろん、テレアポによる訪問を繰り返しておりました。
また、メンバー全員が若く信用がないため仕事を頂けないことも多々ありました。そのため、HPや名刺、パンフレット等をきちんと整え、
信用のある方々との事業提携や外部顧問として参画いただくことにより、信用力をのばしてまいりました。
今では、ピッチイベント等による受賞歴や売上も少しづつ上がってきているためお話をさせて頂ける方々も増えてきております。
・どういう会社、サービスに今後していきたいですか?
やはり、会社に関わってくださったすべての方がより幸福になる会社にしたいと思っています。
私たちの会社の理念は「純白な愛のこころで世界に奉仕する」というものです。
近江商人の三方よしに代表されるように、ビジネスの王道はみんなが得をすることで、会社も人も成長していくことだと思います。
そのためにも従業員は、各人の自己実現や志に対しひたむきにまっすぐ努力できる環境を与えること。お客様には、商品やサービスにより喜んでいただくこと。
関係する会社や株主の方には、売上や信用力の向上により成果でお返しすることが重要だと考えております。
そうした会社にするためにも、まずは企業の基礎にあたる営業力と開発力をのばしていこうと思います。
・今の課題はなんですか?
キャッシュフローの安定化と先行投資用の資金調達です。
ハイパースペクトルカメラを生かした大規模なアプリ開発案件の受注を進めたいと考えております。
また、ガン診断に応用するにあたって医療機器承認などのハードルを越えていくためにも億単位の資金調達を進めていく予定です。
・読者にメッセージをお願いします。
創業期は顧客の顔も見えないですし、売上の根拠も示すことができない会社が多いのではないかと思います。
だからこそ創業メンバーがどれだけ明るく、建設的で、発展的な未来ビジョンを描けるかが大事だと思います。
私の場合ですが、細く長く継続していくつもりで活動していると意外なタイミングで意外なところからチャンスや協力者が現れてきました。
企業は、社会に雇用を生み出し、人々に夢や希望を与える存在ですので、ぜひ皆様と一緒に大きく成長していけたらと思います。
会社名 | Milk.株式会社 |
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代表者名 | 中矢大輝 |
創業年 | 2019年 |
従業員数 | 10名(非正規雇用含む) |
資本金 | 55,639,418円 |
事業内容 | ハイパースペクトルカメラという人工衛星に搭載のカメラを、ガン診断に応用。 人間が見分けられないような細胞の色合いを区別することで、7種のガンにおいて90%以上の精度が得られた。 北里大学医学部や防衛医科大学校と約7年の共同研究を行い、国際特許を取得。 2023年6月のローンチを目指し、資金調達を進めている。 |
サービス名 | 宇宙カメラでガン診断を行うAIシステム『ANSWER』 |
所在地 | 東京都港区六本木4-9-2 |
代表者プロフィール | 高校卒業後、カリフォルニア州のカレッジへ進学。天文物理学専攻。 6年半前から北里大学や防衛医科大学校などの病院と共同研究開始。 アメリカ、オーストラリア、ポーランド、マレーシアなどで学術発表を行う。 30件以上の学術成果。特許2件取得。 |
カテゴリ | 有望企業 |
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関連タグ | ANSWER Milk. がん治療 ハイパースペクトルカメラ 中矢大輝 病理AI |
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