法人の意味とは?種類や個人事業主との違いについて解説
法人の種類は様々!法人の定義や個人事業主の違いを知って事業形態を選ぶ。
フリーランスとして自分の事業を展開する際、起業にあたって「法人」化すべきか「個人事業主」を選ぶべきかで迷う人は多いです。
また、個人事業主として展開してきた事業を法人化するタイミングで迷っている方もいるかもしれません。
今回は、法人の定義や種類、個人事業主との違いについて詳しくご紹介します。
法人と個人事業主とで起業するそれぞれのメリットを比較しながら確認し、事業形態を選ぶ際の参考にしてください。
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この記事の目次
起業のために知っておきたい法人の定義
法人と個人事業主との違いを理解する前に、法人とは何かについて定義を確認していきます。
起業するならば把握しておきたい、公法人と私法人についても詳しく解説します。
法人の意味
法人とは「法律によって人と同じ権利や義務を認められた組織」と定義されます。
人が法律の下で売買や所有、契約や裁判などを行って義務を負っているのと同じように、法人は団体名義で人と同じ権利や義務が認められる存在となります。
公法人と私営人の違いとは?
法人は、大きく分けると公法人と私法人の2種類があります。さらに、私法人は営利法人と非営利法人の2つに分けられます。
公法人と私法人の違いから確認しましょう。
公法人は、公の業務を担う法人です。公法人に該当するのは、地方公共団体・独立行政法人・特殊法人・公庫の4つ。
私法人は、国家や公共団体の権力を受けない法人です。
大きく分けると、経済的利益の獲得を目的とする営利法人と、経済的利益の獲得を目的としない非営利法人の2つです。
営利法人には、株式会社・合同会社・各士業に関わる法人(弁護士法人や司法書士法人など)の3種類があり、営利活動を行います。
株式会社は、経営者が出資者に株式を発行して資金調達をし、資本金を用いてビジネスを展開する営利法人です。合同会社は経営者と出資者が同じである会社となります。
非営利法人に該当するのは、NPO法人・一般社団法人・社会福祉法人・信用金庫・商工会の5つです。
いずれも営利活動が目的ではなく、公益目的、あるいは一定の目的で活動を行う法人です。
公法人の主な種類と特徴
公の業務を担う法人である公法人について、主な種類と特徴を解説します。
地方公共団体
地域の統括活動を行う法人が地方公共団体です。地方自治体、あるいは地方政府とも呼ばれます。都道府県、市町村ごとに地方公共団体が存在しています。
独立行政法人
独立行政法人とは、国が主体となって行う必要がなく、公益性が高い活動を行う法人のことです。
各府省の政策実施のために設置された部門の中で、特定の事務を分離し、担当する機関に法人格を与えた存在となります。
国民生活センターや造幣局、国立がん研究センターなどが該当します。
特殊法人
国が事業を行うより、企業的経営で事業展開すべきと判断された活動を、特別な法律によって独立の法人として行うのが、特殊法人です。
国が監督を行いながらも、経営の自主性が認められています。NHKや日本年金機構などが該当します。
公庫
公共目的で中小企業や農業従事者などに融資を行う、政府の金融機関です。
民業圧迫に配慮して、業務の一部見直しが行われて民営化が推進されたため、現在は公法人としての公庫はほぼ残っていません。
現存する公庫は、沖縄振興開発金融公庫のみです。
私法人(営利法人)の主な種類と特徴
国家や公共団体の権力を受けない私法人の中で、経済的利益の獲得を目的とする営利法人について詳しく確認します。
株式会社
株主から資金を集め、経営を委託された人が経営者として会社の価値を高めて、経済的利益を追求するのが株式会社です。
定款の認証を受け、登記手続きを行って設立します。設立費用は25万円ほどと言われています。
実際に事業を行う人が経営者、会社を所有している人は出資者(株主)であり、経営者と所有者が分離している点が特徴と言えるでしょう。
合同会社
出資者と経営者が同一の会社が合同会社です。設立にあたっての手間が株式会社と比較すると簡単で、公証人の認証が不要なので4~5日程度で設立可能。
設立費用は10万円ほどです。
合名会社・合資会社
合名会社は出資者全員が「無限責任」を負う会社で、もし会社が破産すれば個人が全財産で会社の借金を支払います。
合資会社には、無限責任社員と有限責任社員があり、有限責任社員は自分の出資額の分までの責任だけを負います。
合名会社や合資会社の無限責任は大変厳しいため、設立には相当の覚悟が必要と言えるでしょう。
設立に際しては有限責任社員・無限責任社員を明記した定款作成が必要で、損益の分配割合についても決めておかなければなりません。
士業関係の法人
士という呼称が付く職業の弁護士や公認会計士、行政書士、税理士などが営利目的の活動を行うための法人です。弁護士法人や司法書士法人などがあります。
私法人(非営利法人)の主な種類と特徴
国家や公共団体の権力を受けない私法人の中で、経済的利益の獲得を目的としない非営利法人についても詳細を確認しましょう。
社団法人
共通の目的をもつ人が集まった非営利目的の団体が社団法人で、必ずしも公益目的の活動を行うわけではありません。
日本医師会など、事業内容に公益性があると認められると、税制上の優遇措置が受けられる公益社団法人となります。
一般社団法人では、日本音楽著作権協会(JASRAC)などが有名です。
財団法人
一定の目的で拠出された財産の運用を目的とした団体が、財団法人です。財団法人に該当するのは、奨学金や研究開発費の運用をする団体などとなります。
社会福祉法人
社会福祉事業などに携わる法人が社会福祉法人です。児童養護施設・保育所・特別養護老人ホーム・訪問介護などの事業が該当します。
収益事業として、公共的な施設内での売店経営や、貸しビル・貸し駐車場などの事業も認められます。
NPO法人
NPO法人は「Non-Profit Organization」の略で、特定非営利活動法人とも呼ばれます。
市民ボランティアによる社会貢献活動や慈善活動など、行政や企業とは別に公益につながる社会活動を行う法人です。
資本金0円から設立でき、登録免許税などもかからないなどの特徴があります。
法人税も原則として非課税で、営利法人と比較するとNPO法人は優遇されているものの、設立には様々な条件が設けられています。国境なき医師団日本などがNPO法人です。
起業するなら法人と個人事業主のどっち?
法人についての基本的な知識を得た上で、起業するなら法人と個人事業主のどちらが適しているかを考えてみましょう。
個人事業主と法人との主な違い
個人事業主として開業する場合、方法は税務署に個人事業の「開業・廃業等届出書」を提出するだけで完了します。
対して、法人として開業する場合は、公証役場で認証を受けた定款・登記申請書・就任承諾書・払込証明書などを法務局に提出する必要があります。
開業するために必要な資金も大きく違い、個人事業主の場合は基本的に0円でも開業が可能です。
しかし、法人の場合は開業資金として6~30万円が必要となります。
また、開業後の税金についても大きく異なっています。
個人事業主の場合は自分で確定申告が可能で、所得税を青色申告または白色申告で行い、課税額は1年間の収入から経費を差し引いた金額です。
一方、法人の場合は法人税を納めなければならず、決算書作成も税理士に依頼することになるでしょう。
法人で起業するメリット
開業手続きや開業資金、税金的な処理の面からハードルの高い法人での起業には様々なメリットもあります。
個人事業主と比較し、法人ではどのような利点が得られるかご紹介します。
社会的な信用力が高くなる
法人化すると商号や住所、目的代表者や資本金などが登記されるため、社会的な信用力は高くなります。
大手企業ほど個人事業主への発注は避ける傾向もあるので、同じ仕事をするなら社会的信用が高い法人のほうが有利と言えます。
節税的に大きなメリットがある
法人税は原則として税率が一定です。個人事業主の場合は累進課税が適用されるため、所得が増えれば税率も上がってしまいます。
そのため、売上が大きい場合は、法人税が有利であるだけでなく、経費にできる費用も増え、節税効果が得られるでしょう。
また、会社から役員報酬として給与をもらう形にすれば、給与所得控除が使えるため課税対象所得を小さくすることも可能。
さらに、赤字の繰越が3年の個人事業主に対し、法人は10年です。
繁忙期を避けて決算日を設定できる
個人事業主は事業年度が1~12月です。対して法人では決算日を自由に設定できます。
そのため、繁忙期と決算事務が重ならないようにでき、業務の平準化が可能となります。
事業継承がしやすく事業の継続性が高い
個人事業主が死亡した場合、個人名義の預金口座は一時凍結となるため事業に支障が出ることもあるかもしれません。
対して、法人化されているケースでは、会社の預金口座の凍結や会社の資産が相続対象になることもないため、事業継承がスムーズに行えます。
個人資産を差し押さえられる心配がない
個人事業主の場合は、借入金などは事業主が個人で返済します。
対して、法人の場合は出資の範囲内での責任となり、会社が破産した場合なども個人が返済義務を負うことにならないため、個人資産を差し押さえられる心配もありません。
人材を確保しやすい
働く側には、雇用の安定性を考えれば個人事業主よりは法人を選ぶ確率が高くなります。
事業の成功のために人材が必要な場合、法人のほうが人材を確保しやすいかもしれません。
個人事業主で起業するメリット
ここまで法人での起業メリットを確認しました。続いて、個人事業主で起業するメリットを法人と比較しながら確認しましょう。
設立のコストがなく開業手続きが簡単で起業しやすい
法人で開業するためには、会社設立のために時間的にも金銭的にもコストがかかります。開業の手続きも、定款の作成や認証など手間がかかるかもしれません。
対して、個人事業主の開業は、税務署に「個人事業の開業廃業等届出書」を提出するだけで完了です。
書類に記入して提出するだけで、手続きそのものは10分程度で済みます。設立コストもないため、簡単に企業できる点は個人事業主の大きなメリットと言えます。
社会保険の加入が必要ない
法人の場合、社会保険の加入義務があるため開業にあたり社会保険の加入手続きが必要となり、事務手続きと社会保険料の負担が発生します。
対して、個人事業主の場合は社会保険の加入が不要です。これまでの健康保険や国民年金を、そのまま利用できる点がメリットと言えるでしょう。
決算処理の負担が法人よりも軽い
法人の決算処理は、財務諸表の作成や様々な税金の処理など厳密なルールがあります。
対して、個人事業主の場合は、確定申告をするので比較的簡単で決算処理の負担も軽い点がメリットです。
赤字の課税がなく3年間繰り越しが可能
法人の場合、赤字の繰越はできるものの法人住民税の支払い義務があります。個人事業主の場合は、赤字の場合は課税がなく、赤字は3年間繰り越せます。
経費が思った以上に多かった場合にも活用可能です。
青色申告特別控除で節税できる
法人にはない青色申告特別控除も、個人事業主のメリットのひとつです。
青色申告特別控除を利用すれば、所得から10万円または65万円の控除が受けられます。住民税や国民健康保険料も安くなる相乗効果も得られます。
まとめ
起業する際に法人で開業するか、個人事業主で開業するかは、知名度や事務所の規模、従業員数の違いなどで判断するわけではありません。
選ぶポイントは、法人と個人事業主とで違う設立手続きや税金、社会的信用力です。
これから起業するなら、まずは、法人の種類や意味を把握把握しておくことが大切です。
法人化に必要なコストや法人税なども学び把握し、起業の目的に合わせて個人事業主か法人か、最適な事業形態を選択してください。
個人事業主から法人化するタイミングについて迷った場合は、専門家に相談すると安心です。
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(編集:創業手帳編集部)