LLCとは?株式会社との違いやメリット・デメリットを解説!
会社設立の選択肢が広がる?LLCの特徴を知ろう
会社設立時に選べるのが、「株式会社」などの会社形態です。
現在は株式会社のほかに「合名会社」や「合資会社」、そして「合同会社」の選択ができます。
「LLC」とも呼ばれる合同会社は日本では比較的新しい会社形態であるため、聞き慣れない人もいるでしょう。
そこで今回は、LLCとはどんなものなのか、その性質や特徴、メリットとデメリットについて詳しく解説していきます。
創業を検討している人は参考にしてみてください。
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最近よく聞くLLCとは?
世界的に有名な企業であるAmazonとAppleは、どちらの日本法人も合同会社という会社形態を取っています。
合同会社と聞いてピンとこなくても、「LLC」という言葉は耳にしたことがある人は多いかもしれません。
実は、合同会社とLLCは同じものです。まずは、LLCとはどのようなものなのか解説していきます。
LLCとは会社形態のひとつ
「Limited Liability Company」の略であるLLCは、アメリカで広く普及している会社形態のひとつです。
直訳すると「有限責任会社」となるLLCですが、日本にも似たような会社形態が存在します。
それを「合同会社」といい、2006年に施行された会社法により制定されました。
この合同会社はLLCをモデルにしているため、「日本版LLC」や「LLC(合同会社)」、「LLC」といった呼び方をされています。
LLCと株式会社の違い
2006年に制定されたLLCは、会社形態としてはまだまだ新しいものです。
そこでまずは、LLCの特徴について、日本で広く普及している「株式会社」と違う点をみていきます。
有限責任社員のみで構成されている
LLCは、合名会社や合資会社と同じ持分会社に分類されます。
持分会社である合名会社は出資者全員が無限責任、合資会社は無限責任と有限責任のどちらも存在するのに対し、LLCは出資者全員が有限責任という違いがあります。
この点においてはLLCと株式会社は同じです。
しかし、出資者が全員社員であるという点は株式会社と大きく異なります。
株式を発行し、広く出資者を募ることができる株式会社とは違い、持分会社であるLLCは原則として出資者全員が出資した金額の範囲内で責任を負い、業務執行権を有する社員です。
そのため、社員一人ひとりが一票ずつの議決権を持っており、自由な内部自治が可能となります。
また、全員が会社を代表する社員と位置付けられており、株式会社にあるような「代表取締役」や「取締役」といった役職は存在しません。
その代わり、代表取締役と同等の立場となる「代表社員」が存在し、これは定款で定めることとなっています。
利益の分配を自由に行える
株式会社との違いは利益の配分方法にもあります。
株式会社では購入した株式に応じて配当や利益配分が決まっているのに対し、LLCでは定款に定めることで出資比率に関係なく、自由な利益の配分が可能です。
LLCは出資者全員が社員であることから、例えば、出資比率が低くても会社への貢献度が高かった社員に対し、評価する意味で高配当を行う、といった運用もできます。
ただし、利益の配当はあくまでも会社が得た利益の範囲内となるので注意が必要です。
手軽に設立できる
会社設立時に公証役場から定款を認証してもらう必要があるなど、株式会社を立ち上げようとすると設立費用は20万円以上かかるとされています。
一方、LLCであれば登録免許税の6万円のみで済みます。
株式会社同様定款の作成は必要ですが、認証の必要はなく、そのための費用や時間もかかりません。
社員一人でも設立可能なのは株式会社も同じですが、LLCでは法人も社員になることが可能です。
LLCに向いている業種とは?
まだ新しい会社形態であるLLCは、株式会社に比べると知名度が低いです。
そのため、法人を相手にするよりも一般消費者向けの商品やサービスを提供するカフェやサロン、IT関連といった業種が向いていると言えます。
アメリカでは内部自治の柔軟さと出資する社員の有限責任というLLCの特長を活かして、共同研究や映画製作の場面でよく利用されています。
LLCのメリット・デメリット
LLCについてその性質や特徴が理解できたところで、次はメリットとデメリットをみていきます。
LLCのメリット
自由な内部自治や利益の配分が可能なLLCですが、ほかにもLLCならではのメリットが存在します。
まずはLLCのメリットを紹介します。
取締役の設置が必要ない
株式会社と違いLLCは取締役の設置義務がありません。
また、出資者は全員社員なので経営に関する意思決定がスムーズです。取締役の設置が義務付けられている株式会社と違い、LLCでは取締役の選任義務がありません。
出資者全員が会社を代表する社員であり、全員が株式会社における「株主」と「役員」の両方を兼ねています。
社員からの合意が得られればそれは会社全体の意思決定となるため、スムーズな経営が可能です。
決算公告の義務がない
株式会社は経営者と出資を行う株主は別の存在であるため、株主に対して決算書などを通じて会社の状況を報告する義務があります。
株主総会を開催し、株主から承認を得た後、税務署へ申告します。
一方、出資者全員が社員であるLCCでは、会社債権者からの計算書類の開示請求権は提起されているものの、決算公告は必要ありません。
株主総会を開催する必要がない
前述の通り、株式会社では税務署へ決算申告を行う前に株主総会を開催しなくてはなりません。
他にも経営方針など、会社経営にかかわる重要事項を決める際は臨時の株主総会を開き、承認を得る必要があります。
また、株主総会を開催する際は議事録の作成とその保管が義務付けられており、これを怠ると過料が科せられるおそれがあります。
LLCでは株主総会を開催する必要がなく、議事録作成といった義務も存在しません。
代表社員の任期がない
株式会社では代表取締役や取締役など、役員の選出が義務付けられており、その任期は原則2年間と定められています。
任期満了時には変更や留任の手続きを行わなくてはならず、重任登記も必要です。
LLCではそもそも取締役の選出義務がなく、代表取締役にあたる「代表社員」を定款で定めるだけで済みます。
また、株式会社と違い、代表社員には任期がないため煩わしい手続きや登記にかかるコストを抑えられます。
LLCのデメリット
一見メリットの多いLLCですが、デメリットも存在します。もし今後検討しているのであれば、あらかじめ確認しておいてください。
認知度や信用度が低い
有名大手企業が導入していることもあり、注目度が高い会社形態であるLCCですが、株式会社に比べれば認知度は低いです。
株式会社であれば決算公告が官報や新聞に掲載されるため、ある程度の経営状況を知ることができますが、LCCには決算公告義務がないため、外部から経営実態がつかみにくいといった側面があります。
どうしても閉鎖的になりがちなLLCの会社形態は、個人としては面白いと感じられても、企業として取引相手とするにはリスクが高いと判断されるかもしれません。
そのため、代表社員という馴染みのない肩書も相まって、信用度の低さが課題となります。
認知度や信用度の低さは、取引相手としてだけでなく就職先としても敬遠されてしまうため、有望な人材の確保が難しいこともデメリットといえるでしょう。
社員同士が対立するリスクがある
LLCでは出資比率に関係なく、社員一人ひとりに一票ずつの議決権があり、代表社員の継承・事業継承・出資者の権利譲渡に関しては社員全員の合意が必要です。
経営に関しては社員の過半数の合意を必要としており、社員同士で意見が対立した場合は会社の経営や業務運営に影響を及ぼすリスクが伴います。
社員全員が会社の意思決定に参加するという、「人」に重きを置いた仕組みは、出資者に対して平等であるものの、出資比率の大きい社員がいる場合は不満を持つ要因ともなります。
また、利益の分配が自由であるLLCでは、分配をめぐるトラブルも起こりかねず、社員の人数が多い場合は注意が必要です。
資金調達が難しい
株式会社では、株式の売買により広く資金を集めることが可能です。
上場して知名度を上げることができれば、より多くの資金が集まるでしょう。
しかし、LLCには株式という概念が存在しないため、そういった資金調達の仕方はできません。
国や自治体からの助成金や金融機関からの融資、社員からの増資などが主な調達方法となりますが、難しいのが現状です。
大きく事業展開したい、外部の投資家から広く投資を募りたいといった場合は注意してください。
LLCの設立方法は?
株式会社に比べると費用や時間もかからずに設立可能なLLCですが、実際にLLCを設立する場合、どのような手順で進めていけばいいのでしょう。
LLCの設立方法を解説していきます。
定款を作成する
設立手続きを行う前にまずは、会社名(商号)・事業目的・本店所在地・資本金・社員構成・事業年度といった、基本的な設立項目を決めておきます。
その上で、会社の根本規則を記した定款を作成します。
株式会社であれば公証役場に赴き、定款の認証が必要ですが、LLCではその必要はありません。
登記書類を揃える
次に、登記に必要となる書類を揃えます。
定款・印鑑届書・払込証明書・本店所在地決定書・代表社員就任承諾書・合同会社設立登記申請書など作成し、揃えていきます。
法務局へ申請
次に、登記に必要となる書類を揃えます。
定款・印鑑届書・払込証明書・本店所在地決定書・代表社員就任承諾書・合同会社設立登記申請書など作成し、揃えていきます。
税務署へ届け出
設立後2ヵ月以内に本店所在地を管轄する税務署へ、税務や社会保険に関する以下の4つについて届け出を行います。
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- 法人設立届出書
- 青色申告の承認申請書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 源泉所得税の納金の特例の承認に関する申請書
地方自治体へ届け出
本店所在地のある地方自治体へは地方税の手続きが必要です。
こちらも設立後2ヵ月以内と期限があり、届け出の際は定款のコピーと登記事項証明書が必要となるので忘れずに準備しておいてください。
年金事務所へ届け出
法人には社会保険への加入義務があり、LLCも同様です。
登記から5日以内に、健康保険・介護保険・厚生年金保険の3つについて、年金事務所へ届け出を行わなくてはなりません。
LLC設立の注意点とは?
株式会社に比べ手間も費用も抑えて設立できるLLCですが、注意したい点がいくつかあります。
最後に、LLC設立時の注意点を紹介しましょう。
事業目的は決めておく
LLCを設立するには定款の作成が必要です。
定款には会社名や本店所在地などのほかに事業目的も記載しなくてはなりません。
LLCがいくら自由度の高い会社形態といえども、定款に記載されていない事業を行うことはできず、新規事業に取り組む場合は定款への追加記載が必要です。
追加記載は可能であるものの手間がかかるため、どんな事業を行うのか、あらかじめしっかりと決めておく必要があります。
また、定款に記載する事業内容は一貫性を求められるようなことはないので、将来展開される可能性のある事業についても記載しておくと手間が省けます。
出資者の人選は慎重に行う
LLCは自由度の高い内部自治や利益の分配が、魅力の会社形態です。
しかしそれは同時に会社運営をめぐって意見が対立したり、利益の分配方法でトラブルになったりするリスクを抱えています。
経営方針などの重要事項の決定には出資者である社員全員の合意が必要になることもあるため、社員となる出資者の人選は慎重に行うことをおすすめします。
株式会社へ組織変更も可能
会社としての信用度や、増資、事業拡大など、様々な理由からLLCでは不都合が出てくる場合もあるかもしれません。
社員全員の合意が得られれば、手続きを行うことで株式会社へ組織変更できます。
そのため、まずはLLCで会社を始めておき、ゆくゆくは株式会社へ移行する、というプランも可能です。
ただし、手続きが完了するまで2ヵ月近くの時間がかかることを頭に入れておく必要があるでしょう。
まとめ
LLCは2006年に制定された比較的新しい会社形態です。
日本で馴染みのある株式会社とは相違点が多いですが、創業を目指す人にとってはメリットも多くあります。
自身の目指す事業がLLCという会社形態に適しているのであれば、一度検討してみましょう。
(編集:創業手帳編集部)