グランドグリーン 丹羽 優喜|未来の種苗開発!「ゲノム編集」で安全な品種改良を実現

創業手帳人気インタビュー

激増する人口と激変する地球環境へ対応するために!「遺伝子組み換え」ではなく「ゲノム編集」という選択を


グランドグリーンが取り組む「ゲノム編集」は、自然界で起きている遺伝子の変化を促す安心安全な品種改良です。

消費者にも生産者にもメリットが多いゲノム編集の技術を使い、激変する環境に対応する「未来の植物」の開発に、大学発ベンチャーとして挑戦しているのがグランドグリーンの丹羽さんです。

ゲノム編集の技術や大学発ベンチャーの可能性について、創業手帳代表の大久保が聞きました。

丹羽 優喜(にわ まさき)
グランドグリーン株式会社 創業者・代表取締役
1985年生まれ、岐阜県出身。京都大学農学部卒業。京都大学生命科学研究科にて博士号取得、博士(生命科学)。2015年より名古屋大学の研究プロジェクトに参画、2017年にメンバーとともにグランドグリーン株式会社を共同創業。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

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名古屋大学発ベンチャー企業として「ゲノム編集」に挑戦

大久保:起業までの流れを教えてください。

丹羽:グランドグリーンは名古屋大学発のスタートアップ企業です。
私は元々京都大学の研究者で、名古屋大学の准教授で共同創業者の野田口が発見した技術を元に2017年4月にグランドグリーン株式会社を起業しました。

グランドグリーンは農業の「アグリバイオ」の分野で事業をしています。
新しい作物品種を作る際の従来技法の問題点は、5年〜10年と長い期間がかかることや品種改良において自然界に存在するものしか使えず多様性が限定的になることでした。
その問題点に対してグランドグリーンは、ゲノム編集技術で既存の作物品種の問題点にピンポイントでアプローチし、短期間での品種改良を目指しています。

農業の現場でも「ゲノム編集」が活躍できる仕組みを構築

丹羽:ゲノム編集の技術が出てきた時に、大学の研究室の中だけでなく、実際に農業の現場で活用できるようにする必要があると思いました。しかし、実際の農業に生かせる技術という観点での研究は大学では評価されづらいので、ゲノム編集という最先端の技術を、種苗会社の現場で広く活用できる状況ではありませんでした。

そこで、大学での研究と実際の農業や種苗会社とを繋ぐ存在が必要だと思い、グランドグリーンを立ち上げました。
野田口は私が京都大学に在学していた頃の先輩なのですが、野田口がゲノム編集の事業を立ち上げようと思っているという話を聞き、京都大学を退職し、野田口がいる名古屋に移り住みました。
研究開発を含め起業に向けた1年間の準備期間を経て、グランドグリーンを起業しました。

安定した大学研究職を辞めてベンチャー企業を設立

大久保:丹羽さんは京都大学の教員というより研究者をされていたのですか?

丹羽:京都大学では基本的に教員が研究をするので、講義もしつつ研究をする立場でした。

大久保:大学勤務を辞めて起業することで不安定になるリスクは感じたり、周囲から反対されたりしましたか?起業を決意した時の心境をお聞かせください。

丹羽:私自身は起業へのリスクは感じていませんでした。何故なら、大学の研究者になることもかなりリスキーな選択だったからです。
博士号を取得した人の中で大学の先生になれるのはわずか4%前後という話もあります。

私は農業高校に通っていた頃から、農業分野の研究を世の中に還元するために研究者を目指していたので、やりたいことを実現するためにリスクを感じるタイプではありません。
今回の起業に関しても私がやりたいことを実現できると思ったので、大学を辞めることにもためらいはありませんでした。

しかし、大学を辞めて起業すると研究者仲間や先輩、お世話になった先生に伝えた時にはかなり驚かれましたし、起業して本当に良いのかとかなり心配されました。
私は今子どもが3人いるのですが、大学を辞めると妻に伝えた時は2人目の子を妊娠していたタイミングだったということもあり、妻は驚いていました。
大学での安定がなくなることを心配していたようですが、話をした翌朝には好きにしたらいいんじゃないのと言ってくれました。

博士号を取得しても研究職に就けるのはわずか4%前後

大久保:理解のある奥様ですね。確かに博士号を取得しても4%くらいしか研究職に就けないというのは起業並みにリスキーですね。

丹羽:任期のある研究員であるポスドクには比較的簡単になれるのですが、任期のない雇用は4%ほどしかないと言われています。なので、最近は博士号を取る学生も少なくなってきています。

大久保:丹羽さんは研究職を選ぶ時点でリスキーな選択をされてたのですね。最近は大学発のベンチャー企業も増えてきていますよね?

丹羽今は大学発のベンチャー企業は様々な機関からの支援が受けやすくなっています。20〜30年前に大学発ベンチャーのブームがあったと思いますが、その時はあまりうまくいく企業がなく、ブームも下火になりました。
しかし、グランドグリーンが起業する少し前に改めて支援が手厚くなってきたので、良いタイミングで起業できたと思っています。

大学の研究室と世の中の架け橋となる

大久保:大学の助教という立場を捨てて起業されたとのことですが、大学教員システムでは一度退職すると元の役職には戻れないのですか?

丹羽:研究者としての積み重ねが重要視されるので、仮に私がグランドグリーンを辞めても、先端研究を追求する立場で大学の研究機関に戻ることは難しいと思います。
しかし、企業研究者から大学の研究者に転身する例もありますし、そういう例が増えるのは良いと思います。大学の人事を決めている教授たちに認めていただく必要がありますが。

大久保:グランドグリーンにおいて野田口さんはどのような立ち位置ですか?

丹羽:創業時に技術が向かうべき方向を共に決め、その旗のもとにメンバーが集まりました。現在は取締役として科学面でのアドバイザーという立ち位置です。

グランドグリーンが独自開発した「デリバリー技術」とは?

大久保:グランドグリーンの強みを教えていただけますか?

丹羽:グランドグリーンの強みは、最先端の品種を含めて、どの品種でもゲノム編集ができるように開発した「デリバリー技術」です。ゲノム編集の最大の特徴は、植物の遺伝子の狙った場所のみをピンポイントで改良できることです。

作物の品種改良には「病気に強くなる」「美味しくなる」「収量が増える」などのメリットがあるのですが、今まではブラックボックスのようになぜ品種改良が起きるのかがわかりませんでした。

ゲノム編集の技術が発見されるまでは、「美味しい品種」と「病気に強い品種」を掛け合わせて、「美味しくて病気に強い品種」を何年もかけて作ろうとしてきました。
しかし今は、「ゲノム編集」と「ゲノムの配列の解読」の技術が進化しているので、美味しいが病気には弱い品種に対し、ピンポイントで病気に強くすることが可能になりました。

元々の品種の美味しさを変えずに、病気に強くすることができるのです。

これが1年程度の短期間で達成できるというのがゲノム編集の一番の強みであり凄いところです。

「品種改良のサポート」と「オリジナル品種開発」の2事業を展開

大久保:グランドグリーンには具体的にどのような事業がありますか?

丹羽:グランドグリーンには大きく分けて2つの事業があります。

1つ目の事業は、ゲノム編集技術を自社でできていない種苗会社と新しい品種を共同開発する事業です。つまり、パートナーとなる種苗会社が作りたい品種の開発をグランドグリーンがサポートする事業です。

2つ目の事業は、グランドグリーン独自の品種を開発する事業です。
現在、ターゲットにしている市場は「穀物」です。穀物の日本市場はあまり大きくないですが、世界的に見ると穀物の市場は非常に大きいです。
最近は、新たなタンパク源として「植物肉」が注目されているので、より優れた大豆の品種開発に取り組んでいます。
穀物以外では「トマト」にも注目しています。甘いトマトや酸っぱいトマトなど、トマトはバリエーションが出しやすいので、味や機能性で選んでもらえるようなトマトを開発したいと取り組んでいます。

「ゲノム編集」を実用化する問題点とは?

丹羽:ゲノム編集をするには、酵素を植物の細胞に入れて、植物の細胞の遺伝子を変えないといけません。
この過程では通常遺伝子組み換え技術などを使うのですが、大学の研究では「変化の起こしやすい」研究用途の品種が選ばれることが多く、実際の農業では栽培されていないような品種が研究で使われているのです。

ゲノム編集の実用化に向けた問題点として、今育てられている新しい品種をゲノム編集していかないと本当の価値は生み出せませんが、新しい品種に酵素を入れる扱いやすい技術は当時まだありませんでした。
そこでグランドグリーン独自の技術として、どんな品種でもゲノム編集ができる「デリバリー技術」を開発しました。

「ゲノム編集」と「遺伝子組み換え」には決定的な違いがある

大久保:遺伝子組み換えとゲノム編集の違いを教えてください。

丹羽遺伝子組み換えとは、生物の細胞から有用な遺伝子を取り出し、他の植物の細胞に組み込み、新しい性質を持つ植物を開発することです。

例えば、植物の細胞にある細菌の遺伝子を入れると除草剤をかけても作物が枯れなくなります。つまり、農地に除草剤をかけても雑草だけが枯れて、作物は枯れないということが起こります。それが今一番売れている遺伝子組み換えの作物です。
遺伝子組み換えにより起こっている変化は、自然界ではあまり起こらないことをしているので、念の為に安全性を確認してから栽培・流通させましょう、ということになっています。

一方ゲノム編集では、ゲノムの狙った場所を傷つけます。この傷は実は自然界でも日々ランダムに起こっています。その傷を修復する過程で変化が起こり、新たな品種が生まれたり、進化が起こっているのです。
ゲノム編集では、このような自然に起こる変化を利用して、例えば作物の病気に関わっている特定の場所を狙い、効率的に病気に強くする仕組みです。自然界で起きている遺伝子の変化を促しているのがゲノム編集ですので、ゲノム編集で作られた品種は従来の改良で生み出される品種と変わらないことになります。
これが「遺伝子組み換え」と「ゲノム編集」の違いです。

ゲノム編集は「安心安全な技術」だという認知を広めたい

大久保:ゲノム編集は遺伝子組み換えよりも安全性が高いと思いますが、消費者は偏見を持っている人もいるのではないですか?

丹羽:まだまだ偏見はあると思います。消費者の方々にもゲノム編集と遺伝子組み換えの明確な違いを繰り返し説明する必要があると思っています。
ゲノム編集は自然界で起きている遺伝子の変化を促しているだけだと、実際に消費者の方々に説明した際には、安心したと理解していただけています。
しかし、農業に関わる最新技術に嫌悪感を抱いている方々も一部いますので、まずはゲノム編集を理解していただける方々から浸透させられるように努めようと思っています。

大久保:日本においてゲノム編集の技術を持っていることの重要性はあるのでしょうか?

丹羽農業において農産物の品質に最も影響を与えるのは「種」です。
海外でも次々と優れた種が開発されていますが、海外で育てた際には優れた結果が出ていても、日本での栽培に適しているかはわかりません。

日本に適したより良い種を開発するためには、日本国内に優れたゲノム編集の技術があることが重要になるのです。

大学発ベンチャーならではの「起業」の難しさ

大久保:起業して大変だったことと、それをどう乗り越えたかを教えてください。

丹羽:グランドグリーンは大学での研究から始まっていますが、大学の研究所で良い成果を出せる技術と、ビジネスとして成り立つかどうかは別問題です。
グランドグリーンの場合は、技術開発と資金調達、組織をバランス良く成長させられたので、ここまで来れました。

様々な偶然やタイミングが重なって奇跡的に今があるとも感じています。

大久保:今後、どのように事業を伸ばしていこうと考えていますか?

丹羽次のステップとしては、ゲノム編集を活用することでより良い作物が作れると、世の中に訴えつつ技術を浸透させたいと考えています。
現在、日本で届出されているゲノム編集された食べ物は、グランドグリーンの物ではないのですが、「GABAが多いトマト」「肉厚の真鯛」「成長が早いトラフグ」の3種類です。

グランドグリーンでも再来年くらいまでには、ゲノム編集をした自社商品を発売することで、ゲノム編集の技術の素晴らしさと可能性をより多くの方々に知っていただきたいと思います。

大久保:最後に読者の方々へメッセージをお願いします。

丹羽:グランドグリーンは、ゲノム編集で作った安全で美味しい農産物を販売したいと開発を進めているので、怖がらずにぜひ食べていただきたいです。
起業については、失敗のことばかり考えても上手くいかないので、私は楽観的な気持ちを大切にしています。

何かトラブルが起こっても、常に前向きでい続けることで、助けてくれる方々がきっと現れます。どんなに大変でもいつかは成果に繋がると、自分に言い聞かせながらがんばりましょう。

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