共同経営者必見!事業開始前に「創業者株主間契約書」を作るべき理由
共同経営をする際に作っておきたい創業者株主間契約書について解説します
(2019/07/04更新)
共同経営者が事業から去る。
ビジネスの世界に「絶対」はありません。志が同じビジネスパートナーと手を組んで事業を立ち上げたとしても、経営状況や人間関係などのさまざまな要因で解消してしまうケースも往々にしてあります。シビアな話ではありますが、事業を始める計画を立てる段階で、「万が一共同経営を解消することになった時のための備え」についてしっかり詰めておくことも、とても大事なことです。
今回は、共同経営を解消する際に最も起こりがちな問題の一つである「株式の所持に関わるトラブル」について、未然に防ぐために必要な「創業者株主間契約書」作成の意義と、ポイントを解説します。これから共同経営を行う予定がある起業家は、ぜひ参考にしてみてください。
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この記事の目次
創業者株主間契約書を結ぶ意義
創業者株主間契約書は、創業者間で取り交わす、株式の保有や譲渡などの処遇について定めた契約書のことです。
近年では、友人同士やビジネスパートナー同士で起業するケースが増えており、株式について、ひとり大株主と他の創業者という関係性よりも、創業メンバーそれぞれが均等な形で株式を保有する形を取る場合が多いです。結果として共同経営者と物別れに終わってしまった際に、株式のトラブルが発生することが多いのです。特に持ち株の処遇では、双方の意見がぶつかり、多くの時間とエネルギーを割くことになることも珍しくありません。
そんないざという時に力を持つのが、創業者株主間契約書です。共同経営者が事業を離れた場合の持ち株の処遇について明確に取り決めることができます。作成しておけば、仮に共同経営者が会社を離れることになっても、株式に関する不要なトラブルを避けることができ、良好な友人関係や将来的なパートナー関係を継続することにも繋がるでしょう。
会社を立ち上げた段階で、共同経営を解消する時のことは誰でも考えたくないことと思いますが、会社や事業を軌道に乗せて順調に育てるためにも、あらかじめ創業者株主間契約書を結んでおくことが大事なのです。
実際に起こりうるトラブルの事例
株式の処遇で実際に起こりうるトラブルとして代表的なのが、「退職した役員が保有している株式を買い取りたいが、買取価格で合意できない」ことです。共同創業者が途中で退職した場合、株式を保有し続けてもらうよりも、他の創業者や関係者が買い取りたいケースの方が多いとされています。しかし、退職する役員と事業主双方の希望価格に開きがあり、折り合いがつかなければ、買取りが潤滑に進みません。創業者株主間契約書で、事前に買取価格や買取方法を定めていれば、株式の譲渡で見解の相違が発生するリスクを下げることができます。
また、「退職した役員が引き続き株式を保有していた場合、全株主の同意が必要な決議で合意が取れない」というケースもあります。特に大きなビジネスチャンスや方向転換に関わる合意をスムーズに取ることができなければ、経営が大きく傾いてしまうリスクすら出てくるでしょう。いざという時に柔軟な動きができるようにするためにも、退職後の株式保有に関する取り決めを、創業者株主間契約書でしっかり定めておく必要があります。
創業者株主間契約書に盛り込むべきポイント
創業者株主間契約書の内容は、事業ごとにカスタマイズして定めることができます。中でも多くの事業で共通する、作成する際に盛り込んでおきたいポイントを紹介します。
まず第一に、社長以外の共同創業者や株主が退職や離脱した際に、創業社長やそれに準ずる人物が株式を買い取ることを明記することです。あらかじめ株式を買い取る人間を明記することで、急な共同経営解消でもトラブルを起こさずに移管しやすいでしょう。
また、共同経営者が退職するタイミングで、株式をどの価格で買い取るか、を定める必要もあります。例えば、退職する共同経営者が株主を取得した際の価格と同額、直近の取引時価、第三者の鑑定による価格などが考えられます。それぞれ一長一短があるため、調整が難しい要件でもあります。
直近の取引時価で考えることにすると、株式の引き取り手である社長や他の創業者が資金を用意できなくなる可能性があります。資金が用意できなければ買い取ることができずに、さらに大きなトラブルに繋がる可能性も。簿価(購入した際の価格)の場合は価格を明確にしやすいというメリットがありますが、時価よりも安価で売却するため税務面でのリスクを考える必要も出てきます。
このように、それぞれの買取方法は一長一短です。経営者間でしっかり話し会い、双方納得の行く理想的な創業者株主間契約書を作る必要があります。
他にも様々な要件について定めることができますが、創業者株主間契約書を作る上で欠かせない視点が、「社長が退職や離脱するケースも考えておくこと」です。起業の前後で、創業した会社の社長が退職を考えることは少ないです。特に、創業者株主間契約書を作成しようとしている人が社長本人であれば、「自分が事業を去る場合」の想定など思い浮かばないかもしれません。しかし、冒頭で述べたとおり、ビジネスに絶対はありません。創業者株主間契約書を作成する際は、社長も含めた創業者全員が保有する株式に関して、一定の取り決めをすることが重要です。
必要に応じて、専門家に相談しよう
前項でも述べましたが、創業者株主間契約書の作成は、事業の内容などによって適切な形が異なります。インターネットなどで、創業者株主間契約書の雛形を提供している場所もありますが、そのまま流用すると自身の事業にそぐわない点が出てきた、という事が起きる可能性があります。当事者間で作成した内容に少しでも不安がある場合は、弁護士など専門家に相談すると良いでしょう。
創業時から「うまくいかなかった時」のことを考える意味
いざという時のために創業者株主間契約書を作成しておく重要性を伝えました。創業期の段階から「うまく行かなかった時のことを決める」ことには心理的なハードルがあるかもしれません。しかし、裏を返せば「終わり」の基準をしっかりと決めておくことは、トラブルを予期して乗り越える指標にもなりえるのです。
また、共同創業者と腹を割って取り決めをしておくことで、トラブルの回避のみならず、事業への心構えをよりしっかり固めることにも繋がるでしょう。
(編集:創業手帳編集部)