”すべての事業者”が対象!2024年1月1日からスタート「電子帳簿保存法」への対応ポイントや注意点とは

創業手帳

電子取引データ保存が始まる前に仕組みを把握しよう

2024年1月1日から「電子帳簿保存法」新ルールのスタートに合わせて、「電子取引データ保存」が始まります。これは、法人・個人にかかわらず全事業者が必ず取り組まなければならず、もちろんフリーランスや個人事業主も全て対象となります。

近年ではAmazonなどネット上での買い物が当たり前になっていますが、このようなネットで購入した際の請求書や領収書の取り扱いについても変更になるため、注意が必要です。

今回は『60分でわかる!電帳法&経理DX 超入門』の著者である税理士の土屋さんに、「電子取引データ保存」をする上でのポイントや注意点などについてお聞きしました。

土屋 裕昭(つちや ひろあき)
土屋会計事務所 代表/税理士
早稲田大学政治経済学部卒業後、一般企業勤務を経て、簿記知識ゼロから3年間で税理士試験合格。中小企業のサポートを得意としており、商人気質をもった税理士(実家は新宿でお好み焼き店を営んでいた)として経営者からの信頼も厚い。著書に『60分でわかる! 電帳法&経理DX 超入門』『60分でわかる!インボイス&消費税 超入門』(技術評論社)、『小さな会社は「決算だけ」税理士に頼みなさい!』(ダイヤモンド社)など多数。

電子帳簿保存法への対応は大企業のみでなく、個人事業主にも関係がある改正です。ただ実際にどのような対応をしたらよいか、イマイチわからない方多いようです。そのようなまだ電帳法改正にイメージがわかない人は、是非この「電子帳簿保存法改正 対応ステップシート」をご活用ください!対応が必要な事を網羅しつつ、最低限、いつまでにどの程度対応しておいたら問題ないのかをわかりやすく解説!無料でご活用いただけます。


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全事業者が対象!DXの流れを汲む電子取引データ保存

ー2022年に「電子帳簿保存法」について電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引の3つの区分すべてを対象にした改正が行われました。このような法改正が行われた背景などを教えてください。

土屋:日本社会では、長らく紙の書類をベースに行政手続きや業務を行う「紙文化」が続いていました。これに対して、欧米では書類のやり取りがデジタル化されているケースが多く、日本はデジタル後進国というレッテルを貼られることもありました。

皆さんの記憶にも新しいコロナ禍を契機に、テレワークという新しい働き方も広がり、業務効率化・生産性向上の観点からもDX(デジタルトランスフォーメーション)を促進するため法改正が行われたとされています。

ただ、ここで言う業務効率化というのは、我々納税者だけに限った話ではなく、税務署側の効率化も含まれています。

例えば、税務調査の際、帳簿書類にはAmazonとしか記載がなく、その紙証憑を探すのに調査官が苦労していた(納税者は時間稼ぎできた笑)というケースも、今後は保存データを検索して提示という流れになります。

ー法人・個人にかからわず全事業者が対象になると思いますが、任意要件と必須要件があると伺っています。具体的にはどのような部分について対応が必要でしょうか?

土屋:はい。電子帳簿保存法は、①電子取引データ保存、②電子帳簿等保存、③スキャナ保存の3つのルールに区分されます。この中の①電子取引データ保存が全事業者が対応必須のルールとなります。

簡単に言うと、今まではメールに添付されていたPDFやECサイトからダウンロードしたデータを紙で印刷し、証憑として保管している会社も多いと思います。これが来年からはNG、データで送られてきた証憑類はすべてデータでの保管が必須になります。もちろん紙で送られてきた書類は今まで通り紙で保存してもOKです。

なお、②電子帳簿等保存と③スキャナ保存は、対応は任意です。いわば努力目標です。

Amazonなどネット上での買い物に必要な対応は?インボイスとの違いもチェック

ー電子帳簿保存法の改正に対応していくためには、まず社内においてどのような準備をしておくべきでしょうか?

土屋:まず、自社で取り扱っている書類や帳簿について、現状で「」で作成・授受しているのか、「電子データ」で作成・授受しているのかを把握、洗い出しするところからスタートになるかと思います。

その上で、対応必須の①電子取引データ保存はマストですが、努力目標の②電子帳簿等保存、③スキャナ保存もどこまで電子化可能かを検討するという流れになるかと思います。

ー10/1から「インボイス制度」も始まりました。インボイス制度と電子帳簿保存法について、書類の保存方法に違いがありますか?

土屋:まず、インボイス制度は消費税に関するルールですが、電子帳簿保存法は法人税や所得税に関するルールになります。

会社の取引にはすべて消費税が課税されているわけではありません。例えば、保険料には消費税は課税されませんから、保険料の領収書についてインボイス制度ではそもそも保存方法という論点はありません。

また、消費税が課税される消耗品を購入した場合、その領収書がPDF等の電子データで受け取っていれば保存方法について論点が生じます。インボイス制度では、紙で印刷して保存、電子データで保存のどちらもOKです。一方、電子帳簿保存法では、紙の保存はNGで電子データによる保存しか認められません。

ー1/1以降、Amazonや楽天で買ったものについて、請求書や領収書はどのような保管が必要になりますか?また、PDFなどメール添付でもらった請求書や領収書などはどのような保管が必要でしょうか?

土屋:まず、ファイル形式についての定めはありませんので、PDFやスクリーンショットによる保管も可とされています。

大事なのは、改ざん防止の措置(国税庁が公表している事務処理規定を作成し、備え付けるでも可)を講じた上で、原則的に日付、金額、取引先で検索できる状況にしておくことです。具体的には、ファイル名を工夫(例えば、日付_相手先名_金額)する、エクセルで索引簿を作成するという対応が考えられます。

ークレジットカードや交通系ICカードなどの明細書も「電子取引データ保存」の対象になりますか?

土屋:はい。紙で発行されずPDFでダウンロードする形式であれば、電子取引データ保存の対象になります。

電子データの保存・処理は会計ソフトの活用がおすすめ

ーその他として、意外と忘れがちだけど、これも「電子取引データ保存」の対象になりますというモノがありますか?

土屋:紙でのやり取りがされていれば、電子取引データ保存の対象外ですが、データだけでやり取りがされていればすべてが対象になります。

例えば、見積書をPDF等によりメールの添付だけでやり取りしていた場合、電子取引データ保存の対象になりますので、注意が必要です。

ー「電子取引データ保存」や「インボイス」などの対策として『会計ソフト』の導入を検討する場合もあると思いますが、たくさんの種類がある『会計ソフト』の選び方のポイントがあれば教えてください。

土屋:会計ソフトにはインストール型とクラウド型の2つのタイプがあります。インストール型の方が歴史はありますが、今後は、電子帳簿保存法やインボイス制度と親和性が高いクラウド型が優位になると思われます。

ただし、クラウド型の会計ソフトでも、選択するプランによっては電子帳簿保存法すべてに対応可能なわけではありません。

自社でどこまで電子帳簿保存法に対応するかに応じて、対応可能な会計ソフト及びプランを検討することが大事です。

ー「電子取引データ保存」によって、確定申告などで変更になる部分がありますか?

土屋:確定申告の数字や記載方法自体の変更はありません。あくまでもその前段階での領収書等の資料の保存方法が変わるという話です。

DXをポジティブに捉えて電子帳簿保存法に備えよう

ー今回の「電子取引データ保存」について、対応しなかった場合何か罰則やペナルティなどありますか?

土屋:電子帳簿保存法は、法人税や所得税の帳簿書類の保存方法のルールになります。その中の必須項目である電子取引データ保存に対応していない場合、帳簿書類が適正に保存されていないという扱いになりますので、経費として認められない、最悪の場合、青色申告の取消も考えられます。

ー創業手帳の読者(個人事業主や起業家など)に向けてのメッセージをお願いします。

土屋:インボイス制度に続き、直接の収益に繋がらないルール改正で前向きな気持ちにならない方も多いと思います。スタートは最低限でも構いませんが、いずれデジタル化・システム化は必須になるのですから、この際、データを蓄積して経営判断に活かすなど、ポジティブな活用法を模索してはいかがでしょうか。

『60分でわかる! 電帳法&経理DX 超入門』 土屋 裕昭 (著), 大沢 大作 (著) 技術評論社

今さら聞けない電帳法の概要と、インボイス対応も含む経理のデジタル化がわかる!

本書は小規模事業者・個人事業者にも適用される電帳法のねらいから、「電子帳簿等」、「スキャナ」、「電子取引データ」3つの保存について実務レベルでの解説、電帳法対応に伴う経理のDX化(電子契約など)に関する情報までを1冊で提供します。

マネーフォワードなど導入実績の高い会計経理ソフトに基く解説で、具体的に何を準備すればよいかがわかる、ITリテラシーに自信のない経理担当者にも読み解ける1冊です。

(こんな方におすすめ)
・電子帳簿の保存についてこの期に及んで知らないとは言えない経理マン
・電子取引やタイムスタンプなど、経理のデジタル化&ペーパレス化を目論む小規模零細企業の経営者と経理担当者、請求書を授受する部署の事務担当者、取引先のルールに従って請求書を発行する必要のある個人事業者やフリーランス

電子帳簿保存法への対応は大企業のみでなく、個人事業主にも関係がある改正です。ただ実際にどのような対応をしたらよいか、イマイチわからない方多いようです。そのようなまだ電帳法改正にイメージがわかない人は、是非この「電子帳簿保存法改正 対応ステップシート」をご活用ください!対応が必要な事を網羅しつつ、最低限、いつまでにどの程度対応しておいたら問題ないのかをわかりやすく解説!無料でご活用いただけます。


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(取材協力: 土屋会計事務所 代表/税理士 土屋 裕昭
(編集: 創業手帳編集部)

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