税理士が回答!2024年確定申告の基本と対策を学ぼう

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納税する税の種類は?後払いはできる?来年に向けておすすめの3つの対策とは?

確定申告は1年に1度の作業です。昨年の作業を思い出したり、変更点を調べたりなど、慣れておらず時間がかかる方も多いと思います。

今回は、FinTax税理士法人の代表社員を務める税理士の遠藤さんに、確定申告の基本や来年に向けての対策まで、多くの方が悩む点や注意すべきポイントなどをお聞きしました。

遠藤 聡史(えんどう さとし)
FinTax税理士法人 代表社員
早稲田大学法学部卒
楽天株式会社の楽天銀行部門へ入社の後、税理士業界へ。EY税理士法人GCR部勤務を経てFinTax Groupを創業。スタートアップ企業支援を中心として起業家育成に注力。
得意分野 : 創業融資、IT業、歯科医業、飲食業

創業手帳では、確定申告において多くの人がつまづいてしまうポイントをわかりやすく解説した「確定申告ガイド」をリリース。所得税においての確定申告のほか、消費税においての確定申告についてもふれています。無料でお読みいただけますので、是非ご活用ください。



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確定申告は正しく納税するために必要な手続き

ーそもそも確定申告とは?なぜしないといけないのか教えてください。

遠藤:確定申告は、皆さんが納める税金を計算するために、1年間の収入に対する税金を国へ報告するものです。

会社へお勤めの方は、毎年会社が行う年末調整で税金を算出したうえで、毎月の給料から引かれている税金との差額を還付(もしくは納付)されます。そうすることで1年の収入に対する税金を会社を通じて支払います。そのため確定申告が不要になります。

しかしながら、会社員の給与以外に所得がある方や一定の所得控除(住宅ローン控除、医療費控除など)を受ける方は確定申告を行わなければなりません。

また、会社員の給与しか無い方でも、年収が2,000万円以上ある方は、確定申告が必要となりますので、注意が必要ですね。

事業を行っている方は、確定申告を行うことで1年間の売上と経費を申告し、その差額となる利益を事業所得として国へ報告しそれに対する税金を納めることになります。

ー事業をしている個人事業主の場合、必ず確定申告をしなくてはいけないのでしょうか?

個人事業主は必ず確定申告しなくてはならないのかという疑問を持たれる方や、しなくていいと聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。

結論から言うと、売上から経費を差し引いた「事業所得」金額が、年間48万円以下の場合、所得税の確定申告をする必要はありません。これは基礎控除額が48万円であるため、事業所得が48万円以下の場合には、控除後の所得金額が0円となるためです。

しかし、翌年以降に損失を繰越すためには確定申告が必要となるため、個人事業をされる方は基本的には確定申告されるのをおすすめします。

確定申告を通じて納める4つの税金

ー色々な税金の種類があると思いますが、何税を納めないといけないのでしょうか?

遠藤:フリーランスなど個人事業をスタートすると主に4つの税金を納めることになります。

まずは、所得税です。確定申告で1年間の収入と経費を申告して差額である利益(事業所得)に対して所得に応じた税率で税金が課せられます。所得が大きい程税金が高くなる「累進課税制度」が採用されており、5%からスタートして最大で45%にまでなります。

次に住民税で、所得税の際の所得計算に近い方法で所得を算出し、それに対しておおよそ10%の税率がかかることになります。勘違いされる方も多いですが、住民税については、東京でも地方でもほとんど変わらず10%で一律に課税されます。

所得税の確定申告をすることで住んでいる市区町村に情報が共有され、6月頃に市区町村から住民税決定通知書が届くことになっています。会社員の場合には、給与から毎月天引きされることになり、個人事業主の場合には、6月、8月、10月、1月の4回に分けて納付します。

3つ目は事業税で、法律で定められている70の業種に当てはまり、一定の所得がある場合にかかるものです。業種に応じて3%~5%が所得に対してかかってきます。所得税の確定申告を行っていれば、特に別途申告する必要はなく、市区町村から納付書が送られてきます。納付は年2回で、8月末日と11月末日が納付期限になっています。

最後は消費税です。最近話題のインボイス制度が始まる前は、前々年度の課税対象の売上が年間1,000万円以下の事業者であれば、申告と納付を気にする必要はなかった税金です。

しかしながら、インボイス制度によって今回の確定申告から消費税申告をスタートする事業者の皆様も多いと思います。消費税の原則的な計算は、売上に係る預かった消費税額から経費に掛かる支払った消費税を差し引いて計算し、預かった額の方が多ければ納税します。一方で、支払った消費税額が多い場合には、還付申告となります

納税のタイミングや方法は?確定申告の期間について

ーいつまでに納めないといけないのでしょうか?分割や延納、後払いはできますか?

遠藤:所得税は、3月15日までに確定申告と納付が必要です。確定申告書の提出後に納付書が送られてくることはございませんので、期限内に自ら忘れずに納付することが必要です。

最近は納付方法も増えてきているのでご自身のやりやすい方法で納付が可能です。金融機関窓口での納付や銀行口座からの振替納税に加えて、e-taxによる電子納税、クレジットカード納付、QRコードでのコンビニ納付、スマホアプリ納付など様々です。詳しくは国税庁のwebサイトに方法が載っています。

所得税については延納制度があります。納期限まで(振替納税の場合は振替日)に納付すべき税額の2分の1以上を納付すれば、残りの税額の納付を5月31日まで延長することができます。延納期間中は年0.9%の割合で利子税がかかります。

ー被災地などの確定申告は、特別延長になるといった対応があるのでしょうか。

遠藤:大きな災害が発生した際には、国税庁から地域を指定して国税に関する申告・納付の期限延長が発令されます。

今年の元旦に発生した能登半島地震においても、石川県及び富山県に納税地のある方について、国税に関する申告・納付等の期限延長を行いました。延長期限は、本日時点でまだ示されておらず、状況が落ち着いたタイミングで示されるものと思われます。

また、指定地域(石川県及び富山県)以外でも、能登半島地震によって被災され、申告・納付をすることが出来ない場合には、所轄税務署に対して申請することで延長を受けることが出来ると国税庁が示していますので、被災された方はお早めに税務署にご相談ください。

それに加えて、災害により被害を受けた場合には、「雑損控除」という一定の金額の所得控除もしくは「災害減免法による所得税の軽減免除」を受けることができます。被災された方は、事態が落ち着いた後にこれらの税金の優遇措置を忘れずに適用し確定申告を行いましょう。

確定申告は会計ソフトやe-Taxの活用がおすすめ!

ー会計ソフトは導入したほうがいいですか?会計ソフトを選ぶ時のポイントなどがあれば教えてください。

遠藤:個人事業主として青色申告をされる場合には、複式簿記による帳簿の作成が必要になりますので、会計ソフトの利用をおすすめします。

会計ソフトを選ぶ際は、使い勝手を一番に考えて選ぶのをおすすめします。会計ソフトによっては、簿記の知識が無いと使いづらかったり、逆に経理経験がある方には、使いづらいと感じる会計ソフトもあります。

クラウド会計の主要な3社「弥生」「マネーフォワード」「freee」に関して言うと、弥生は複式簿記をベースにした仕訳登録が中心となるため、簿記経験がある方にとっては一番使いやすいソフトになっています。

freeeは、金融機関との自動連携やcsvのデータインポートが充実しており、自動化をしたい方や簿記経験のない初心者に使いやすいソフトになっております。

マネーフォワードは、複式簿記をベースにしながらも自動連携が充実しておりバランスの取れたソフトになっております。

多くの会計ソフトは、無料お試し期間があるため、複数の会計ソフトを並走して利用し、どの会計ソフトが使いやすいか確かめてみるのが良いと思います。

ーe-Taxで確定申告するメリットはありますか?e-Taxをスマホのみでできるかも教えてください。

遠藤:e-Taxで確定申告を行うと、青色申告の控除額が55万円から65万円に広がります。控除額が10万円も増えることが大きなメリットですので、e-Taxでの確定申告をおすすめします。

e-Taxでの確定申告は、スマートフォンのみでもマイナンバーカードがあれば可能です。途中で入力を中断してしまうとデータの保存などが出来なくなってしまうので、必要書類を手元に用意して最後まで一度に行うのがおすすめです。

2024年から確定申告はどう変わった?

ー昨年と比較して、2024年の確定申告から大きく変更になった部分がありますか?

遠藤:細かいものも含めると多々ありますが、影響する方が多そうなものを3つお話させていただきます。

1つ目は、納税地の異動・変更の手続きが原則不要になりました。今までは、所得税・消費税の納税地の異動や変更があった場合、届出が必要でしたが、令和5年1月1日以降不要となりました。今後変更がある場合は、確定申告の際に異動後・変更後の納税地を所得税や消費税の申告書に記載することで、国税庁が把握可能となります。

2つ目は、マイナポータル連携の範囲が拡大した点です。マイナポータル連携とは、所得税の確定申告の手続で、マイナンバーカードに紐づいた情報を自動で一括で取得できる機能です。これによって確定申告書の作成が簡単になります。

今回の確定申告から、すでに連携されていた医療費、ふるさと納税、生命保険、国民年金などに加えて、給与所得の源泉徴収票、国民年金基金掛け金、iDeCo、小規模企業共済掛金が連携の対象に加わりました。

3つ目は、インボイス制度関連で、青色申告決算書(青色申告)、収支内訳書(白色申告)の中に「売上(収入)金額の明細」欄と「仕入金額の明細」欄が加わり、取引先のインボイス登録番号を記載する欄が追加されました。

ミスや不明点があったら?確定申告の困りごとへの対処法

ー確定申告で、申告漏れや間違いがあった場合の対処法はありますか?申告忘れによるペナルティのリスクについても教えてください。

遠藤:一度申告した確定申告の内容が誤っていた場合、改めて申告書等を作成し提出することが必要です。

確定申告の申告期限までに再申告した場合には、ペナルティはかかりません。

申告期限後に間違いが発覚した場合には、修正申告を行うことになります。その場合には、過少申告加算税及び延滞税が課されますので、早めに提出しましょう。

また、確定申告確定申告を忘れていた場合も、無申告加算税や延滞税というペナルティが課されます。

ー税理士に確定申告を依頼した場合の費用を教えてください。また、依頼した際に自分で行う作業はありますか?

遠藤:ご自身で確定申告を行うのが面倒だという方は税理士に依頼したくなると思います。税理士に確定申告を依頼した場合、依頼業務範囲や売上高によって左右しますが、概ね10万円から20万円になります。

確定申告を依頼する場合、領収書や請求書、控除証明書類といった書類の管理・整理が必要です。確定申告期限が近くなってくると対応できない税理士事務所も多くありますので、お早めに着手するようにしましょう。

ー「確定申告を自分で途中までやったけど分からない」というときに相談できるところはありますか?

遠藤:税務署には確定申告電話相談センターがありますので、困ったらまず電話してみましょう。税理士会の支部ごとに確定申告の無料相談会も実施しておりますので、お近くの税理士会に相談されるのもよろしいかと思います。

どうしても埒が明かない場合には、税理士に有料で依頼されると良いと思います。

確定申告を楽にするためにやっておきたい3つのこと

ー来年以降、確定申告時期をスムーズに乗り切るために、日々やっておきたいことを教えてください。

遠藤:確定申告を行う時期になってバタバタしてしまうのはあるあるかと思いますが、来年に向けて3つの対策をしておくことをおすすめします。

①事業用の銀行口座、クレジットカードを明確に分けておく
プライベート用と事業用の銀行口座やクレジットカードが一緒の場合、支払った費用がプライベートのものなのか、事業のものなのか、いちいち把握しなければならず、大変になってしまいます。プライベート用と事業用に、銀行口座やクレジットカードを分けておけば、支払った費用が事業用だと明確にわかるので、いちいち把握するのに時間をかけなくて済むようになります。

②請求書を整理する
事業で利用した経費の請求書は、月ごとなどでしっかりと保管・整理しておきましょう。電子帳簿保存法に則るため、整理する際、データで受領した請求書はデータのままで保管しておきましょう。

③会計ソフトを利用する場合には、毎月記帳する
会計ソフトはクレジットカードや銀行口座と自動連携してくれるので非常に便利ですが、少なくとも毎月記帳するようにしましょう。取引が少ない時は良いのですが、取引が増えていくと、どの経費がどの勘定科目に当てはまるのか、どんな取引をしたのか把握できなくなってしまうためです。

自身の事業の収支状況を把握するためにも毎月タイムリーに帳簿を作成しましょう。

節税のポイントまでチェックして確定申告に備えよう

ーできるだけ「節税をしたい」と考えた時に見直したいポイントやおすすめの方法などがあれば教えてください。

遠藤:まずは、青色申告特別控除65万円を使うことが一番になります。白色申告をしている方やe-Taxでの申告が出来てない方は、これを第一に取りに行きましょう。

2つ目は、ふるさと納税です。ふるさと納税は実質負担額2,000円で好きな地方自治体に寄付金という形で寄付する代わりに、地域の名産品や特産物などをもらえる制度です。特にお米やお肉などの食料品を返礼品として受け取れば、日々の出費も抑えられるのでおすすめです。

最後に、小規模企業共済等掛金控除です。昨今よく聞くiDecoの拠出金額がこの所得控除として使えるものです。老後の資産設計として有能なiDecoですが、毎年拠出する金額がその年の所得控除となるため、将来のことを考えつつ、今時点の節税もできるので、とてもお得です。

また、小規模事業の経営者が、廃業や退職時の生活資金などのために積み立てる「小規模企業共済制度」もこの所得控除の対象になります。月々の掛金は1,000~70,000円まで500円単位で自由に設定が可能で、加入後も増額・減額できるので、柔軟に利用が可能です。




この記事をお読みいただき、自分は確定申告の必要がありそうだと思った方は是非「確定申告ガイド」もあわせてご利用ください。無料でお読みいただけます。

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(取材協力: FinTax税理士法人 代表社員 遠藤聡史
(編集: 創業手帳編集部)

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