税理士が開業するために必要な準備とは?開業までの流れや注意点も解説

創業手帳

税理士として独立するなら開業までの流れを把握しよう


税理士の資格を取得後、独立・開業を考えるケースも少なくありません。
開業することによって組織ならではのルールに縛られることがなくなり、自分のスキルを発揮しやすくなる方もいるためです。
開業を考えているのであれば、どのような流れで進めていくべきなのかを把握しておかなければいけません。

そこで今回は、税理士として独立・開業を目指す方向けに、開業までのステップや準備の流れ、注意点について解説していきます。
これから税理士として開業したいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。

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税理士が開業するまでの5つのステップ


税理士が開業するためには、いくつかのステップを踏まなければいけません。ここでは、開業までのステップを5つに分けて解説していきます。
これから税理士を目指し、将来的に開業を目指したいと思っている方はぜひチェックしておいてください。

税理士になるための試験に合格すればすぐに一人前として働けるわけではなく、実務経験を積む必要もあります。
つまり、試験に合格して税理士を名乗れるようになることがゴールではありません。
具体的にどのようなステップで開業を目指すのか解説していきます。

①税理士試験に合格する

税理士になるためには、試験に合格しなければいけません。資格を取得しなければ、税理士と名乗ることができないためです。

税理士試験の合格は難易度が高いので、約3,000時間もの勉強が必要とされています。
試験科目は、会計学に属する科目(簿記論・財務諸表論)の2つ、税法に属する科目(所得税法・法人税法・相続税法・消費税法または酒税法、国税徴収法、住民税または事業税、固定資産税)のうち受験者が選ぶ3つとなっています。
所得税法もしくは法人税法のどちらかは選択しなければいけないという決まりです。
1度に5科目合格できなかったとしても、科目合格制なので翌年以降もチャレンジできます。

②実務経験を積む

税理士事務所を開業するためには、ただ税理士試験に合格するだけではなく、2年以上の実務経験が必要です。税理士法人や税理士事務所で勤務するケースが一般的です。
そのような職場であれば、試験に合格している方はもちろん、試験勉強中の方も実務経験を積めます。

また、2年間の実務経験を積んだ証明として勤務先から在籍証明書を出してもらう必要もあります。
複数の勤務先で累計2年間の実務経験を積んだ場合は、在籍証明書を勤務先分取得しなければいけません。
経理の経験も実務経験に含まれるため、見落としのないように気をつけてください。

③税理士登録申請を行う

次に、税理士登録申請を行います。税理士登録申請をするには、日本税理士連合会によって定められている準備物があります。
具体的に必要な書類などは以下のとおりです。

税理士登録申請に必要な書類

税理士として活動するために税理士会に提出しなければいけない書類は、以下のようになっています。
申告書類は複数枚あるため、日本税理士会連合会のホームページや申請対象の税理士会が発信する情報をしっかりとチェックしておいてください。

  • 税理士登録申請書
  • 登録免許税領収証書(6万円)
  • 登録手数料(5万円)
  • 写真
  • 本籍が記載されている世帯全員の住民票の写し(マイナンバーが記載されていないもの)
  • 身分身元証明書(本籍地の市区町村が発行したもの)
  • 資格を証する書類(原本との照合確認を実施)
  • 履歴書(第3号様式)
  • 誓約書(第4号様式)
  • 直近2年分の確定申告書のコピー(所得の内訳書等を含む)もしくは住民税の(非)課税(所得)証明書(所得の種類が確認できるもの)
  • はがき(日本税理士会連合会所定のもの)

面接も実施される

税理士登録申請では、申請書類を提出するだけではなく、面接も実施されます。面接調査を行うのは、税理士会の支部です。
すでに税理士登録の要件を満たした方が受けられる面接なので、動機やこれまでの業務経験、理想とする税理士像などに関する質疑応答が行われます。

開業登録をする場合は、面接調査のほかに実地調査も行われ、開業予定地が事務所の環境として問題にないかチェックされます。
面接調査と実地調査はいずれも申請書類の事実確認という意味合いが強いので、その結果を過度に心配する必要はありません。

④開業のための資金を貯める

税理士として開業するためには、それなりにまとまった資金を用意しなければいけません。
自宅開業なのか、事務所を借りるのか、によっても必要な開業資金が異なるので、それぞれの予算に合わせてどちらが適しているのか考えてみてください。

開業資金は、自宅開業だと100~150万円程度、事務所を借りる場合だと200~300万円程度必要になります。
名刺やチラシ、ロゴデザインなどを外注すると、さらに10~20万円ほど必要になるケースもあります。
どのような業態にするかで必要資金は大幅に変わるため、開業計画はしっかりと立てなければいけません。

⑤開業に向けて準備を進める

開業資金の準備なども済んだら、開業に向けて具体的な準備を進めていきます。開業の時期をはっきりさせたり、開業する場所を最終決定したりするフェーズです。
すぐに営業をはじめるには、PCや会計ソフトなどの備品購入、電話代行サービスなどの契約、ホームページの作成なども行わなければいけません。
開業する税理士事務所のコンセプトやターゲット層、料金なども業績に影響を与える重要ポイントです。そのため、明確に決めておく必要があります。
さらに自己分析も行い、強みを活かしたブレのない税理士事務所の開業を実現することが大切です。

税理士の開業に向けた具体的な準備の流れ


税理士が開業する際にすべき準備はまだまだあります。続いては、税理士の開業に向けた具体的な準備の流れはどのようになっているのか解説していきます。

開業するための立地や物件を選定

開業は自宅でする場合もありますが、事務所を構えるケースも少なくありません。自宅開業でも、事務所を構える場合でも、立地条件は重要です。

物件選びの方法

税理士事務所を開業する場所は、あなた自身が提供するサービスに合う場所を選びましょう。
例えば、飲食店に特化するなら飲食店がたくさんある駅前などは見込み客が集まりやすいです。

顧客対応の方法によっても、ベストな立地は変わってきます。
来所型なら交通の便が良い場所、訪問型なら立地にはそこまでこだわる必要はないですが、交通費や移動時間を加味して選ぶ必要が出てきます。
オンライン型の場合は、自分の好きなエリアで開業して問題ありません。

費用を抑えたいなら在宅やレンタルオフィスがおすすめ

税理士事務所の開業にはお金がかかります。少しでもコストを抑えた開業を実現したいのであれば、在宅やレンタルオフィスでの開業がおすすめです。

在宅であれば別途事務所用の賃料がかからないので、必要な備品だけ用意すれば開業できます。
レンタルオフィスは、ビジネスに特化していてビジネスマンも多く利用しているので、プロとしての信頼性を高めることができます。
また、ビジネス街にあるので環境や設備が整っているのも魅力です。

物件にかかる費用を節約し、ほかの部分にお金をかけるといった考え方もありだといえます。

※資金が足りない場合は融資などを検討

開業にはまとまった資金が必要なので、足りなくなってしまうこともあります。そのような時は、融資などを検討してください。

税理士が独立・開業する際は、日本政策金融公庫や自治体の制度融資、民間金融機関を利用するケースが多いです。
日本政策金融公庫には、開業前後の実績がほとんどない事業者に対する融資も積極的に実施する新創業融資制度があります。
自治体の制度融資は、都道府県や市区町村が定める独自の支援制度で信用保証料や金利を補助し、新規創業者の資金繰りを支援します。
そして民間金融機関の場合は、信用保証協会による「信用保証付き融資」によって借入れを行うケースが多いです。

開業に必要な設備やアイテムの準備

税理士事務所を開業するためには、設備や各種アイテムの準備も必要不可欠です。具体的に準備すべきなのは以下のような設備・アイテムになります。

机や椅子といったオフィス設備

机や椅子などのオフィス設備は、業務を行う上で必要不可欠です。さらに、オンラインで業務を行う場合を除いて応接セットも必要になります。
一般的な事務所を開業する際に準備しなければいけない備品は、税理士事務所でも必要です。

インターネットやPCのようなITインフラ

インターネットやPCのようなITインフラも開業に向けて準備すべき設備です。
税理士はクライアントワークで、機密情報もたくさん取り扱います。そのため、PCのセキュリティ対策も重要です。
顧客の信頼を失ってしまうと税理士としての立場も危うくなってしまいます。
そのため、開業する際にはインターネットやPCなどのITインフラにも力を入れて準備することが大切です。

会計ソフト

税理士が会計処理や専門的な税務をするためには、会計ソフトも必要です。
会計ソフトには、最初に買い切るパッケージ型や月額で支払うクラウド型などがあるので、どれが自分にあっているか見極めてください。
勤務していた税理士事務所で使っていて慣れているもの、専門性や案件に合わせられるものなどの条件に合うソフトを選べれば、業務もスムーズに進めやすくなります。

金額は、会計ソフトが5~10万円程度、税務ソフトは10~15万円程度が相場です。近年主流になっているクラウド型は、月額数千円の負担で利用できるものが多くみられます。

税理士会に登録

税理士会への登録もしなければいけません。日本税理士会連合会は全国に15カ所あり、それぞれの税理士会に支部会が設置されています。
税理士登録する際は、開業する場所の税理士会だけではなく、支部会にも所属しなければいけない点に注意が必要です。

初めて開業する税理士は税理士会への登録費用が合計11万円かかります。さらに、支部会への入会金が3~5万円かかるので、あらかじめ用意しておかなければいけません。
入会金とは別に、税理士会と支部会に年会費として毎年10~15万円の支払いが発生することも忘れないようにしてください。
独立・開業前から所属税理士や社員税理士として登録済みの場合、開業に合わせて開業税理士に区分変更します。
そのようなケースだと、5,000円の手数料を負担するだけで変更できます。

集客方法を選定・準備

開業するなら、集客方法も考えなければいけません。人脈だけで仕事を一定数確保し続けるのは簡単ではないので、自分で集客する方法も考えておく必要があります。
税理士としての実力があったとしても、あなた自身の強みを言語化したり、必要な人に存在を周知するための宣伝方法を把握したりできていないと、仕事の確保は難しくなります。

2001年の税理士法改正によって広告や税理士報酬の制限は撤廃されました。そのため現在は、自由な営業活動を行えるようになっています。

採用媒体の手配

仕事が軌道に乗って業務量が増えていけば、ひとりでは抱えきれなくなる可能性も考えられます。そうなったら、人材を確保しなければいけません。
採用活動を行う際に求人サービスを利用するとなれば採用予算も必要になります。
人材採用サービスの選択肢には以下のようなものが挙げられます。

  • ハローワーク
  • 変更登録申請に関する届出書 1通
  • 民間の総合型求人サイト
  • 会計や税務に特化した求人サイト

会計や税務に特化した求人サイト
候補者の質は、どのサービスが優れているとは言い切れません。そのため、応募者の人柄や揚力をしっかりと見極め、良いパートナーになれる人材を探す必要があります。
良い人材を採用できれば、業務の質が向上し、顧客満足度が高まるといったメリットを得られます。

税理士が開業する時の注意点


開業を考えているなら、税理士が開業する時の注意点も把握しておいてください。最後に、どのような注意点があるのかみていきます。

安定した収入の確保が難しい場合もある

税理士として開業しても、安定した収入を確保できない可能性もゼロではありません。
顧客の獲得がしっかりとできれば問題ありませんが、思ったように顧客を集めたり、仕事を受注したりできない場合もあります。

所属税理士ならベースとなる給与収入が保障されていますが、開業税理士は個人事業主なので十分な売上げを確保できないと私生活にもネガティブな影響を及ぼしかねません。
閑散期になると依頼も減って収入が減ってしまうといったパターンもあります。そのような状況を見据え、資金計画を念入りに立てておくのがおすすめです。
その際、毎月のキャッシュフローにも目を向ける必要があります。

税理士以外の業務も担当しなければいけない

所属税理士なら税理士としての業務だけ行えば良いといったケースが大半です。
しかし開業税理士は、税理士以外の業務も担当しなければいけないので、「思っていた仕事と違う」とギャップに心が折れてしまいそうになる方もいないとは言い切れません。
税理士以外の業務には、集客のための営業活動やバックオフィス業務などが挙げられます。

特に営業は、集客に大きな影響を与える重要な業務です。収入を左右する要素でもあるので、手を抜くことはできません。
営業に関するスキルも独立・開業前に身に付けておくのが望ましいです。

まとめ・税理士として開業するなら準備を怠らずに進めよう

税理士の資格を取得したら、いずれは開業したいと考える方も多いです。
開業することで自由度は高まりますが、その前の準備や開業後の集客など大変なこともたくさんあります。
開業に向けてハードルをクリアするためには、準備を怠らずに進めることが何よりも重要です。

創業手帳(冊子版)では、税理士の開業に関する情報も掲載しています。税理士として独立・開業を考えている方もぜひ参考にしてみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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