起業したら知っておきたい仮想通貨の知識とビジネスで利用するメリット
仮想通貨の知識を身につけてビジネスに活かそう
2010年頃から今に至るまで大きな発展を遂げてきた仮想通貨業界ですが、仮想通貨にどのような印象を持っているでしょうか。
ビジネスとして仮想通貨決済をすると発表した企業のニュースも飛び交う中、仮想通貨の正しい知識を持っておくことは重要です。
今回は仮想通貨の基本知識をはじめ、起業後に検討したい法人としての仮想通貨の扱い方を紹介します。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
仮想通貨とは何か
仮想通貨とは、銀行や国に関係なく、電子データのみでやり取りされる通貨のことです。
電子データと聞くと改ざん・不正利用のイメージを持つ人もいるかもしれませんが、仕組み自体は安全性が高いものとなっています。
現在では、「ビットコイン」をはじめとした多種多様な仮想通貨が流通し、投資・投機目的で仮想通貨を所有する人も増えてきました。
一方、仮想通貨を積極的に取り入れている国や、反対に仮想通貨を規制・禁止している国もあり、仮想通貨業界の動向が注目されています。
仮想通貨の主な特徴
仮想通貨には様々な種類がありますが、今回は「ビットコイン」を例に仮想通貨の持つ特徴を確認していきます。
仮想通貨はSuicaなどの電子マネーとは根本的に異なり、文字通り「通貨」としての特徴を持っています。
しかし、特定の国や組織に属さない通貨であるため、通常の法定通貨とは違った特徴もあります。
ここでは、ビットコインなどの仮想通貨の特徴を詳しく見ていきます。
価値を保証する管理者が存在しない
仮想通貨には価値を保証する管理者が存在しません。これは国が発行し、価値を保証する法定通貨との大きな違いです。
国や銀行を介さない仮想通貨は、誰がどのように価値を保証しているのでしょうか。
仮想通貨は個人間での通貨の取引履歴を多数の参加者で記録して改ざんを防止する「ブロックチェーン」という仕組みを利用しています。
そこに特定の管理者は存在せず、複数の参加者が取引履歴を共有しているため、仮想通貨のサービス提供者ですら、データの改ざんや消去はできません。
また、仕組み上、ブロックチェーンはシステムダウンでデータが破損するリスクも低いため、取引履歴を安定させて記録し続けることも可能です。
仮想通貨は価値を担保する管理者に頼らず、仕組みの力で通貨としての価値を保っています。
発行上限が存在するものが多い
法定通貨は、利用する国の経済状況に対応するために発行枚数の変更ができます。
一方、仮想通貨には管理者が存在しないため、基本的に発行枚数を変更できません。
多くの仮想通貨には発行上限枚数が定められていて、仮想通貨の希少性や価値が維持される仕組みになっています。
法定通貨に換金できる
仮想通貨は日本円やドルなどの法定通貨に換金ができます。
例えば、いわゆる電子マネーの場合、一度入金した電子マネーは換金できません。
しかし、仮想通貨は法定通貨同士の売買と同じく、その時点での価格で法定通貨を買うことができます。
後述しますが、法定通貨が異なる国の企業と仮想通貨で決済し、決済した仮想通貨を自国の通貨に換金する手法は、現在では珍しいものではないようです。
仮想通貨のメリットとデメリット
仮想通貨の基本的な特徴を掴めたところで、次は仮想通貨のメリットとデメリットについて説明します。
仮想通貨は通貨としての特徴を持つ反面、価値の裏付けとなる組織がないため、堅牢に作られた仕組みにその安定性を依存しています。
メリット・デメリットを把握し、適切な運用を心がけましょう。
仕組みは安全だがセキュリティリスクはゼロではない
仮想通貨は情報だけで成り立つ通貨である性質上、様々な手段でセキュリティの強化を行っています。
仮想通貨は前述のブロックチェーン技術に加え、公開鍵暗号方式、ハッシュなどのセキュリティ技術を取り入れており、取引データの改ざんやなりすましが極めて困難な仕組みになっています。
ただし、あくまで安全といわれるのは仮想通貨の仕組みの部分であり、仮想通貨を利用する人間の不注意によるリスクまでは、まったくないとはいえません。
仮想通貨を売買する取引所へのハッキングや、個人で管理しているアカウント情報の漏洩、不正アクセスなど、一般的なセキュリティリスクは仮想通貨にも存在します。
通貨価値の暴落と高騰があり得る
仮想通貨の価値は、短時間で激しく上下するため、安価だと思って購入した仮想通貨が短時間でさらに暴落するリスクもあります。
しかし、この価値の差を利用することで利益も得られる点がメリットともいえるでしょう。
安価なうちに仮想通貨を購入し、価値が上がったところで法定通貨に換金するために、株式や資産などと同じく投資対象として仮想通貨を持つ人もいます。
誰でも24時間リアルタイムで参加できる
仮想通貨は24時間365日、いつでもどこでも取引きが可能です。
一般的なビジネスパーソンが投資をする場合、勤務する仕事時間と東京証券取引所の営業時間が重なってしまいますが、仮想通貨であれば夜間・早朝でも取引きができます。
ただ、夜間・早朝にも取引きが行われているため、夜に寝ている間に仮想通貨が暴落し、換金するタイミングを逃してしまうケースもあり、この点はデメリットといえるでしょう。
仮想通貨をビジネスに利用する
前述の通り仮想通貨で決済する会社も出てきていますが、通貨としての信頼性が低い仮想通貨をビジネス利用するメリットはどこにあるのでしょうか。
仮想通貨は決済時に発生する一部のコストやリスクを軽減できる特徴を持っています。
以下に、仮想通貨をビジネスで利用するメリットを詳しく見ていきます。
ビジネス利用における仮想通貨のメリット
リアルタイムで取引きができることから、仮想通貨は決済スピードの速い点がメリットですが、メリットはそれだけではありません。
ここからはビジネスで法定通貨ではなく、あえて仮想通貨を利用するメリットを見ていきます。
両替・送金手数料が不要
銀行を利用して送金を行う場合に、ネックになるのは銀行に支払う手数料です。送金回数が増えれば増えるほど手数料の負担が増えることは明白です。
また、異なる通貨での取引きにおいて、相手の国の通貨を自国の通貨に両替するためにも手数料がかかります。
仮想通貨は取引所にもよりますが、購入・送金手数料が低い、あるいは、無料になるケースも存在します。
仮想通貨は銀行を介さず送金が可能で、手数料のコストを最小限に抑えることが可能です。
法定通貨の為替相場の影響を回避できる
もうひとつ重要なことが、スピーディーな決済を行うことで為替相場の影響を回避できる点です。
通貨同士の交換比率を決める為替相場はリアルタイムで変動しています。
1ドルで売買契約を交わした日の相場が仮に1ドル125円だったとしても、決済日に1ドル120円になってしまうこともあるかもしれません。
上記を考慮すると、法定通貨の異なる国と行う商談の際、契約日と銀行の決済日がずれてしまう状況では安心して金額を決められません。
仮想通貨であれば即時決済が可能であり、決済日の遅れによる為替相場のリスクを抑えられます。
ビジネス利用時の注意点
ここまでビジネス利用時のメリットを紹介してきましたが、仮想通貨は国などの後ろ盾がない点で信頼性の低い通貨でもあります。
ビジネスを安定的に進める上で、仮想通貨の扱いには下記のような注意が必要です。
決済後には法定通貨に換金しておく
仮想通貨は決済速度が速い反面、価値が乱高下しやすい不安定な通貨です。
仮想通貨を取引きに使い、そのまま放置しておくと前述の高騰・暴落のリスクを抱えることになります。
決済に使った仮想通貨は、自国で使えるようすぐ法定通貨に換金しておくことが重要です。
仮想通貨が違法になる場合もある
仮想通貨は特定の国では違法になる、あるいは、取引きに制限がかけられているケースがあります。
実際、2022年5月には中部アフリカ銀行規制当局が暗号資産禁止令を通知している他、ニューヨーク州議会はビットコインのシステム維持に必要なマイニングという作業を禁止しています。
そして、まだ市場として発展途上である仮想通貨は、いつ関連する法律が変わるかもわかりません。
常に最新の情報を追いかけ、ルールを守りながら適切に利用する必要があります。
仮想通貨の取引きを法人として行うには
個人取引きと法人取引きを区別する都合上、仮想通貨をビジネスで利用するためには法人として口座を作ることが必要です。
仮想通貨取引きの際に、法人口座を利用することで発生するメリットもあります。
以下は仮想通貨の取引きに法人口座を利用するメリットや、法人口座が解説できる取引所を紹介します。
法人口座を利用するメリット
法人口座とは、名義人が会社になっている銀行口座のことです。
一般的には、法人設立の時点である程度の信用を得ているため、クレジットカードが作りやすい、預金保険制度で決済用預金が全額保護されるなどのメリットがあります。
上記のメリット以外に、法人口座を利用することで結果的に節税になる可能性がありますので、しっかり把握し、利用していきましょう。
売却益への税率が低くなる場合がある
仮想通貨の取引きを個人口座で行うと、取引きで得た所得は「雑所得」として扱われ、住民税と合わせて最大55%の税率がかかります。
会社の規模や都道府県に応じた幅はありますが、法人口座では個人口座での取引きに比べて低い税率で仮想通貨を取り引きできます。
損益通算、赤字繰越ができる
仮想通貨取引きで損失が出た場合、個人口座での取引きでは翌年以降に損失を繰り越せません。しかし、法人口座で取引きをしていれば損失を10年間繰り越せます。
損失を翌年以降に繰り越すと、将来大きな利益を出した時に損失と利益を相殺し、課税対象の所得を減らすことによる節税が可能です。
法人口座を利用するためのコスト
法人口座を利用するためには、個人口座では発生しない法人設立に関係するいくつかのコストがかかります。
これらのコストを考え、法人口座の作成で逆に損失を出さないようにしましょう。
法人設立費用がかかる
法人口座を利用するためには、法人設立の手続きがまず必要ですが、手続きのために約20万円を用意する必要があります。
内訳としては、実費で定款の収入印紙代などが主で、そのほかに登録免許税や実印作成代金なども必要です。
手続きを専門家に依頼した場合はさらに依頼料がかかるため、法人設立には相応に初期費用がかかる点には注意してください。
法人住民税について
地域のインフラを利用して事業を行っている以上、法人としての住民税も支払わなくてはなりません。
「法人住民税」は条件次第で免除される個人住民税とは異なり、たとえ赤字であろうと年間約7万円を支払う必要があります。
法人口座が開設できる取引所
注意したいことは、すべての取引所が法人口座を利用して仮想通貨を取引きができるとは限らない点です。
以下には、代表的な取引所と、法人口座に対応しているかをまとめました。
取引所名 | 法人口座 |
---|---|
bitbank | ◯ |
bitFlyer | ◯ |
BITPoint | ◯ |
BTCBOX | ◯ |
Coincheck | ◯ |
DeCurret | ◯ |
FXcoin | ◯ |
GMOコイン | ◯ |
Huobi Japan | ◯ |
Liquid by Quoine | ◯ |
TAOTAO | ◯ |
Zaif | ◯ |
SBIVC Trade | ◯ |
DMMビットコイン | ✕ |
BITMAX | ✕ |
上記の通り多くの取引所が対応していますが、「LINE BITMAX」など法人口座を利用した取引きに対応していない取引所があることも事実です。
取引所への登録で二度手間にならないように、最新情報を把握した上で取引所を選んでください。
取引所ごとにサービス内容に差がある
また、取引所それぞれで提供している個別の特徴も考慮すべき要素です。
スマートフォンのアプリやパソコンでの取引所の操作方法から、仮想通貨取引き時の手数料の有無だけでなく、取り扱う仮想通貨の種類や付帯するサービスも取引所に応じて異なります。
取引所は自分の資産を扱う場所です。事前にどの取引所が自分に適しているかをしっかり検討した上で、仮想通貨の取引きを始めてください。
まとめ
仮想通貨は利用方法、その規制のあり方までまだまだ発展途上の分野です。
しかし今のうちから仮想通貨の運用に慣れておくことで、仮想通貨がより普及したときに他社よりも一手早く対応策を打てるかもしれません。
今のうちから仮想通貨を必要に応じて利用し、自分のビジネスを成長させる助けにしていきましょう。
(編集:創業手帳編集部)