VC(ベンチャーキャピタル)での出資・エクイティの資金調達とは?実体験の感想とVCの種類やメリット・デメリットも解説!

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VC(ベンチャーキャピタル)とはベンチャー企業に投資を行うファンド


創業したばかりの企業は資金力がなく、担保も十分に有していないことから、融資を受けたくても受けられない可能性があります。
そのような時に心強い味方となってくれるのが、VC(ベンチャーキャピタル)です。

VCはメリットばかりではなくデメリットやリスクに感じる部分もあります。
今回は、VCの特徴や仕組み、種類をご紹介しつつ、出資を受けるメリット・デメリットや、実際に出資を受ける際の流れを解説します。
実際、自分自身がVCから出資を受けた、また出資した経験も交えて解説しますね。

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そもそもVCとは?


VCとは、上場していないベンチャー企業(新興企業)に対して投資を行う組織です。創業してから間もない企業は、資金不足に陥ってしまうケースもあります。
革新的なアイディアは浮かんでいるのに、資金が不足しているため他の企業に先を越されてしまう可能性があるかもしれません。

VCはこのような将来的に大きな成長を見込めるベンチャー企業の株式を一部取得し、値上がり益を狙います。
企業側からすれば株式を売却したことで資金不足が解消され、事業を進めることが可能です。
VCによっては事業を成功させるために人材紹介や経営ノウハウをアドバイスしてくれるところもあり、ベンチャー企業にとっては様々なメリットを得られます。
特に変化が激しい市場では、スピードが勝負になるため、普通に事業をしてオーガニックに成長を目指すのではなく資本投下で一気に事業を拡大するような時に用いられます。
ただ「株での資金調達は後戻りが難しい」という格言があります。メリットが大きいVC(ベンチャーキャピタル)での出資・エクイティの資金調達ですが、実体験の感想と実際のメリット・デメリットを解説していきます。

VCの仕組み


VCはどのようにしてベンチャー企業へ投資を実施しているのでしょうか?VCが行う投資の仕組みについてご紹介します。

1.機関投資家や金融機関などから資金調達を行う

VCは自社の資金のみを活用して投資を行っているわけではありません。例えば機関投資家や金融機関、事業会社などから出資をしてもらうことで、企業への投資を実現しています。これはLPといいお金だけ出している事業者のことです。

そのため、企業への投資を実際に行うのはVCが設立した投資ファンドです。投資を行うかどうかの判断や経営支援などはVCが役割を担っています。
LPに対してGPと言います。実務を担うのがGPですが、起業家からするとLP・GPは一体で、LPは表に出てこないものなので、まとめてVCという認識で通常は問題ありません。
投資ファンドは設立後、金融機関や事業会社、機関投資家、個人投資家などの有限責任組合員から出資を募り、資金調達を行います。
またファンドなので一定期間で投資を精算する仕組みになっています。そのためファンド期限の終了までにエグジット(M&AやIPOで株式を換金する)必要があります。
VCと話す際に、VCの裏側にLPという金主が実はあり、期限内にエグジットをLPから求められている、という構図を理解しておくとVCのビジネスが理解しやすいと思います。
こうした組織だった投資をしているため一定のルールが良くも悪くもしっかりしているのが個人投資・エンジェル投資との違いです。
個人のエンジェル投資の場合は、お金のある社長などが自分の感覚でドンと即断即決でお金を出すイメージで実際、筆者もVC・エンジェル両方の投資の経験がありますが随分違うと感じた事があります。第三者割当増資での出資での資金調達という意味ではほぼ同じですが、VCとエンジェルはどちらが良いというより違うステージの性格が違うものと考えると良いと思います。

2.未上場のベンチャー企業に投資・回収する

投資ファンドへ出資が行われたら、投資ファンドは投資先となるベンチャー企業を発見していきます。
未上場のベンチャー企業に投資をする理由は、先に株式を取得しておくことで上場時の値上がりしたタイミングで売却し、大きな値上がり益を得るためです。
また、他の企業へ買収された際に株式を売却することで生じる譲渡益も狙います。

ベンチャー企業の上場(IPO)や他企業への買収(M&A)によって回収した利益は、投資ファンドに出資した金融機関や投資家たちに配分します。
成功報酬としてVCも利益を受け取る仕組みです。
なお日本では毎年100社前後上場しています。

上場すると自由に市場で株式を売却でき、また未上場の時よりも多くの株主が株式を買う分、会社の価値(時価総額)も未上場の時よりも大きくなる傾向があります。
そのため、スケールを目指し外部資金を調達するタイプのスタートアップの場合は、このIPO・上場が一つの大きな目標になります。
ただし上場などのエグジットは財務上の「目標」であって、「目的」(事業のミッション・なぜ事業をしているの)ではないのは言わずもがなですね。
上場自体が目的にならないようにしましょう。
しかし上場で、信用や資金、また上場に伴って組織整備がされる、また代表者が融資の個人保証が外れる、組織を結束させる、ストックオプションなどを活用してモチベーションを高めるなどの効果も見逃せません。VC投資と、エグジット=上場・M&Aはセットなので、こうした上場の目的を理解しておきましょう。

3.投資先の経営支援を行う

ベンチャー企業の上場や買収によって出資分を回収できれば良いのですが、実際にはうまくいかずに回収できないことがあるかもしれません。
そこで、VCは回収できないリスクを回避するために経営支援も実施しています。

どのような経営支援を行うかはVCによっても異なります。例えば、経営に対するアドバイス・指導を行うこともあれば、人材を派遣して経営に参加することもあるかもしれません。
外部からコンサルティングという形で経営をサポートする場合もあります。

VCの種類


VCにも運営母体によって様々な種類があり、それぞれで異なる特徴を持っています。続いては、VCの種類ごとにどのような特徴があるのか解説します。

事業会社系VC(CVC)

事業会社系VCは、事業会社が運営を手掛けており、主に自社の事業や領域が近しい企業、シナジーが期待できる企業に対して投資活動を行います。
出資は単独で行うこともあれば、複数の事業会社が共同で出資を行う場合もあります。
一般的には、VCは未上場企業に投資を行ってIPOやM&Aによって投資資金を回収し、出資した企業や投資家へ分配を行い、成功報酬を受け取ることが目的です。
あくまでも投資資金を回収することが目的であり、経営支援などもこの目的をクリアするために行われます。

一方、事業会社系VCは投資資金の回収ではなく、自社に関連するベンチャー企業に投資することで、将来的にシナジー効果を得ることが目的となります。
ベンチャー側からすれば資金調達ができることに加え、運営母体の事業会社と関係性を構築できる点もメリットのひとつです。
もっとも起業家の本音でいうと「色」が付きすぎるのを敬遠するというケースもあります。
例えば大企業で大きなグループが3つある場合に、1つのグループの出資が大きくなりすぎると他と付き合いにくい、というケースもあります。
個人的に実際に事業会社系の出資を受けた感覚でいうと、事業会社の投資も色々あって、お題目としては、シナジーがありますが、実際はリターン重視の会社、出資を通じて情報を得たい会社、本当にシナジーを目的としている会社、M&Aをしたい会社など会社によって目的のウェイトは違うというのが現場の感覚です。

政府系VC

政府系VCとは、政府や公共団体によって運営されているVCです。
インフラ関連や福祉関連などの事業や、世界規模で活躍が見込まれる企業に対して出資されることが多い傾向にあります。
ファンド規模が大きく社会的なインパクトがあるものに投資をしていくという特徴があります。

政府系VCはベンチャー企業の育成を重視しており、上場に対するプレッシャーは通常のVCよりやや低く目と言えます
ただし大きなビジョンや社会性が求められるとも言えます。

金融機関系VC

金融機関系VCは、主に銀行・証券会社・保険会社などが運営母体となったVCです。
金融機関が運営していることから資金調達力があり、出資するベンチャー企業の数やその投資金額も大きい傾向にあります。
事業会社系VCや政府系VCとは異なり、投資によって利益を得ることが目的です。
そのため、収益性があると判断されればどのジャンルであっても投資対象になり得るのが特徴です。

また、ベンチャー企業への投資といってもある程度事業規模が大きくなった企業に出資するケースが多くみられます。
金融機関系VCから出資を得るためには、まず地道に事業を拡大させていく必要があります。

独立系VC

独立系VCとは、運営母体がなく独自の資本をもとに運営しているVCです。運営母体がないことで、事業のジャンルを問わない投資を行うことが可能です。
また、金融機関系と同様に、独立系も純粋に利益を求める投資を実施しています。
看板キャピタリストがいて特色のある運営を行っているVCも多くあります。
比較的何らかのテーマ・特色を打ち出す傾向が強いように思います。

独立系VCの中にはハンズオンを積極的に取り入れているところもあります。
ハンズオンとは、企業の経営に深く関与していくことを呼び、社外取締役などを派遣して経営に参加することです。
ハンズオンによって経営の意思決定にも関わるようになり、価値の向上をサポートする、というのが目的です。

ある有名キャピタリストと話をした際は「VCはハンズオンとよく言われていて、うちもオフィシャルにはそううたっているけど、伸びる起業家はハンズオンなんか頼らないよね。受け身で頼るんではなくて、投資家でも誰でも使えるものは全て使い倒すような起業家の方が頼もしい。例えば誰それさんを紹介してくれとか、何をしてくれとか図々しいぐらいに勝手なことをいってくる起業家がいる。受け身じゃなくて、こうしたいから具体的に協力してくれ、というくらいの人のほうが起業家に向いていると思いますね」と語ってくれたことがあります。
個人的にはハンズオンは起業家が本当にそれを求めているかや、キャピタリストとの相性もあるので、プラスアルファでもしあればラッキーと考えた方が良いともいますが、VCは人脈や経験を豊富に持っているので上手く使いこなすメリットが大きいです。

大学系VC

大学系VCは、公立大学・私立大学が直接出資を手掛けるVCです。
広義的に基礎研究の成果や人的資源の活用によるイノベーション、産業創出などが含まれる点は大きな特徴です。

大学系VCの場合、技術はあるものの研究成果が出るまでに運営資金が不足し、滞っている事業などに対しても投資を行っています。
事業実績が少なかったとしても、大学で研究されている技術の実用化や成長を目指すベンチャー企業に対してサポートをしてくれます。
直近では政府が大学系のVCに多額の資金供給を継続的にすることを発表しており、今後、成長していく分野であることは間違いありません。

VCから出資を受けるメリット


ベンチャー企業がVCから出資を受けることは、一般的な融資の利用と比較してどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここからは、VCから出資を受けた場合のメリットをご紹介します。

融資と違い担保や返済の概念がない(でもエグジットは必要。また買い取り条項が入っていることも)

VCから出資を受ける一番のメリットともいえるのが、無担保や返済の概念がないという点です。
銀行などから融資を受ける場合、実績がまだあまりないベンチャー企業の場合だと、銀行側が資金を回収できるように担保を用意しなくてはいけないケースがほとんどです。

しかし、VCからの出資であれば無担保かつ返済の義務も生じません。株式を売却したことで生じるキャピタルゲインによって、大きな収益が見込めるためです。しかし、出資で資金を得たとしても上場やM&Aでエグジットしてリターンを返す必要が出てきます。

また契約書の中に期限内にエグジットできない場合、株式を買い戻すようにという条項が書かれているケースもあるので契約書を注意して読みましょう。
融資返済ではないが、投資側に有利な買い戻し条項がついていると融資と大差ないという契約であることもあります。
J-KISSなど業界標準の契約書の雛形を使うのもトラブルを避ける一つの手段です。

経営アドバイスを受けられるかもしれない

VCは投資した資金を回収できるように、経営に関与することもあります。
ベンチャー企業の中には将来性が見込めるものの経営に苦しむ企業もあるかもしれません。

このような企業に経営のアドバイスやサポートを行うことで、ベンチャー企業側とVC側の双方にとって利益を生み出せるようにする、、とうたっているVCもあります。実際はそこまでハンズオンでサポートしてくれるVCは少ないのが実情です。ただ、投資家が有形無形のサポートをしてくれるケースも実際にあります。会社の価値が上がれば投資が成功する、という構造もありますし、個人的な思い入れで支援するというのも珍しい話ではありません。

ネットワークが広がり、成長しやすくなる

ベンチャー企業にとって人脈を広げ、大手企業とコネクションを持つことは企業の成長にもつながります。
VCから出資を受けることで、その運営母体となる大手企業との関係性を作れるケースもあります。
CVCや事業会社からの投資の場合は、特にそうした性格が強くなります。

また、VCによってはベンチャー企業の経営者を集めて勉強会や交流会を開き、ネットワークを広げる機会を作っているところもあります。
場合によっては事業の提携先を紹介してくれるなど、企業のさらなる発展も期待できます。

VCから出資を受けるデメリット


VCからの出資を受けることで様々なメリットがありますが、一方でデメリットに感じてしまう部分もあります。
どのような部分にデメリットを感じてしまうのかご紹介します。

持ち株比率が下がってしまう

VCは投資した資金を回収するために、株式を取得して上場・買収後のキャピタルゲインを狙います。
そのため、ベンチャー企業は株式の発行・増資を行うことでVCから資金調達を受けられるようになります。

しかし、株式を発行することで持ち株比率が下がってしまうのは大きなデメリットです。
経営者の持ち株比率が低下してしまうと経営面でコントロールができなくなってしまい、最終的に経営者自身の意見が通らなくなってしまいます。

一度持ち株比率が下がってしまうと、再び比率を上げるために株式を買い戻すことが難しい場合がほとんどです。
目先の資金ばかりに捉われず、先の経営も見据えた上で株式を発行する必要があります。

経営に関して干渉を受ける可能性がある

VCから出資を受けた際に、経営に関するアドバイスも受けられることをご紹介しましたが、場合によってはデメリットになる場合もあります。
例えば、VCが資金を回収するために、利益重視の経営方針に転換するといったケースです。
VCからの介入が増えてくると、創業当初に思い描いていた方向性とは異なる経営に至ってしまう可能性があります。
思い通りの経営ができなくなってしまうことは経営者にとってデメリットになり得るかもしれません。

VCから出資を受ける際の流れ


VCから出資を受けるためには、様々な準備も必要です。ここではVCから出資を受けるまでの流れをご紹介します。

提出する資料を作成する

まずはVCに提出するための資料を揃えます。提出する資料はVCによっても若干異なりますが、審査に用いられる主な資料は以下のとおりです。
多くの場合、担当者との面談、NDAの締結を行い、書類のやり取りを行っていきます。最終的に投資委員会を置いているVCが多く投資委員会を通過すると晴れて出資ということになります。

  • 事業計画書
  • 資金繰り表
  • 決算書
  • 事業経歴書
  • 定款
  • 株主名簿、株主総会の議事録
  • 登記簿謄本
  • 組織図
  • 会社案内、商品やサービスのカタログ

特に重視されているのは事業計画書とそれを説明する「人」です。VCは事業計画書や他の資料も参考にしながら、将来性の有無を判断していきます。
特にエグジットの計画が見られます。融資の場合は返済の確実性ですが、出資の場合エグジット、上場やM&Aでの株式売却ハイリターンを得るのがゴールになりますので、いかにアップサイドが大きいのかという計画やビジョンが求められます。生業的な事業の場合は出資より融資やクラファンになり、出資の場合は多額の投資をして大きく成長させるということが前提になります。
例えば理念に沿って、あえて拡大しすぎずに品質が担保できる範囲に留めたいという意向が経営者にあったとしても、それだと大きくならないと判断した場合は株主の意向に沿って拡大路線に行かざる得ないというケースもあります。ただし融資による拡大と違うのが、出資のほうが返済の必要が基本的には必要のない大きく賭けるためのリスクマネーだということです。そのため規模、特に会社の価値である時価総額を拡大していくようなビジネスモデルや経営姿勢とVCは相性が良い傾向になります。

キャピタリストからの本音でいうと「この事業や計画で本当に産業構造が変わるのか?」という問いがあります。
つまり社会や産業が変わるほどのインパクトが有る事業に投資したいということです。
無理に拡大路線に走る必要はないですが、もし、資金が原因で小さくやらざる得ない、という状況があるのであれば資金調達は一つの正解だと思います。
ただし、無理に拡大しないほうがよいケースもあります。VCの投資を入れて拡大を目指すかどうかは、経営の大きな判断ポイントの一つです。

あとはこういうと身も蓋もないですが、VC投資・スタートアップの現場からすると事業計画は途中でピボットでかなり変わってしまうことも多くあります。
本当にその通りになる完璧な事業計画等存在しない、というのが現実です。
それでも事業計画があるかないかで全く違いますし、計画がなければ投資のしようがありません。
既にある既存事業の場合、過去3年の延長で予測する、というやり方でも良いですが不確定要素が多いスタートアップでは経営者が描くビジョンや計画が大事になります。
計画に基づいて高速サイクルでPDCAを回して早く正解にたどり着くためのベースになるのが事業計画書です。

また、結局、事業計画書はピボットで変わってしまっても投資する社長の人間性や能力、熱意はあまり変わりません。
結局のところ優れた起業家とチームの場合、ピボットしても正解にたどり着く可能性が高いので、実は投資家は事業計画そのものもそうですが、それを説明している人を見ている、という面があります。

この他、意外なものでいうと金額が大きかったり理解が難しい事業の場合、関係者へのインタビューが行われるケースがあります。
関係者へのインタビューは、例えば取引先のユーザーに話を聞く、既存の株主に話を聞いてみるなどです。
これにより投資の判断の裏付けとを取ろうとするわけです。
なお、少額であったりフォロワー投資の場合には省略することが多いので、必ずインタビューが行われるわけではありません。
出資で調達をしている会社でもVCからの関係者のインタビューを経験していないというタイプの会社もあります。
また非公式に「この人ってどう?」と業界内の情報収集をVCがしているケースもあります(それぐらいの人脈が無いとVCとしては仕事にならない面があります)。
記事でお伝えしたいのは、自身のプレゼンや資料だけでなく業界内やユーザーの評判や信頼も大事だということです。
自分自身も投資が決まった後、自分自身を知る人に実は投資家が「この人どう?」という裏取りをしており、好意的な反応だったので判断材料の一つにしたと言われたことがあります。
日頃の信頼も大事ということですね。

出資を決める審査が行われる

資料を提出したらVC側による審査が行われます。
審査は資料をチェックするだけでなく、実際にベンチャー企業の経営者からヒアリングを実施したり、デューデリジェンスを行ったりします。

デューデリジェンスとは、投資先の企業にどれほどの価値があるか、リスクはあるかを特定するための調査です。
事業内容だけでなく、税務・財務・法務・人事・ITなど様々な視点から調査を進めていきます。

最終的な合意を得る(投資委員会)

VCの審査が通ったら、次に投資の最終意思決定の会議(多くのVCでは投資委員会。ただし投資委員会を組織上置いていないVCもある)で投資家からの合意を得ることになります。
ここで合意を得られれば出資という流れです。

投資委員会・審査会による審査完了までは早くとも2カ月かかるとされています。
審査が完了すると改めて株価の設定金額(バリエーション)や株式の割合(シェア)、出資額、出資時期など条件が調整され、投資契約が結ばれます。
特に株式の評価額であるバリエーションは重要なポイントです。
バリエーションが高すぎても今後の調達が続かない可能性もあり、VC側はやや保守的、起業家側はやや高めに設定したい傾向があります。
一般的には、株価が高すぎるオーバーバリエーションにすると、次のラウンドができないケースがあったり場合があるのでラウンドごとに株価が上がっていくのが理想です。

また株式の創業者シェアをどれくらい確保することにこだわるかということもあります。
最初からシェアにこだわらないタイプの経営者もいます。
保有比率が2/3以上を持っているとほぼ経営者が重要な事項を社長が決めることができます。最終的には議決権の50%を確保していれば会社の方針は基本的に決めることができるので将来のラウンドも含めて50%を維持できるかがシェア・経営の独自性にこだわるタイプの起業家には重要なポイントです。
ちなみに50%以上のシェアを持つ株主が現れると、株主総会で創業者・代表取締役と言えども解任できるので注意が必要です。
社長より過半数株主のほうが強いということは覚えておきましょう。
ただし、創業社長に会社を任せて成長させてもらったほうが当然投資家にとっては良いので、解任するようなケースはよほど社長自身に問題があったり放漫経営をしているようなケースになります。ただし株主による社長解任は現実に多くはないですが、稀にあることなので、資本主義の基本的な仕組みなので覚えておきましょう。

出資の実際の流れですが、第三者割当増資という手続きをとり新たに発行した株式をVCが買うというケースが多いです。
第三者割当増資の際は、登記と株主名簿の変更、既存株主への通知などの実務が発生します。

第三者割当増資以外の変則的なパターンとして、創業者や他の株主から株を買う相対取引で株式を買うケースもなくはないですが、基本的には資金調達の場合は第三者割当増資が基本です。また、出資を受けると自己資本が増強されるため、銀行評価が上がり融資してもらえる可能性も出てきます。株式の放出比率を減らすために、出資半分、残りは出資によって増強された自己資本を裏付けとして半分は銀行からの融資で賄うという出資と融資のハイブリッドでの資金調達というケースも結構あります。株式の創業者シェアを保ちたい起業家は、出資と融資のハイブリッドも考えてみると良いと思います。

また、投資の現場では良いかどうかは別としして「信頼がある人・会社が投資をしている・応援している」というのが案外大きなファクターのケースがあります。
そんな訳はない、と思う方もいるかも知れないですが、現場では案外そんなことで最後の意思決定が決まってしまうことがあります。自分自身もそうした経験があります。
他がOKだからという面もありますし、他も支援するので単純に成功の確率が高まるということもあります。
そのため信用がある投資家を一つ入れるというのは他の投資家や資金を呼び込む上で重要な役割を果たします。
「実績のある誰かが投資をしている」という事実を結構重要な判断材料にしているというのはあまり語られない投資家の本音かつ現場で割りと出くわすことなので一応頭に入れておきましょう。
一社投資が決まると連鎖的に投資が決まるというのも、現場ではよくある光景です。

まとめ

今回はVCの特徴や種類、出資を受けるメリット・デメリット、出資を受けるまでの流れについてご紹介しました。
例えばVC・CVCから大型調達をしている会社も、初期は公庫や保証協会などの公的融資を使っているケースが多いです。
ただこうした地味な資金調達はニュースになりにくいので、最初からVC投資を前提に考えてしまうケースがあるので注意が必要です。
特に事業会社・CVC系はステージが上がった時にやるケースが多いのが現実です。
個人的には融資、出資両方を実際に関わった経験から言うと、一般的には、公庫・保証協会などの融資と、売上でのマネタイズ、個人のエンジェル出資ではじめ、途中から信用がついてきてVC、事業会社・CVC投資などで大きな資金がが入ってくるイメージです。
また、投資家はボランティアやサンタクロースではなく「資本のプロ」です。
出資は投資家にとってのエグジットが必要という当たり前のことも頭に入れておきましょう。
その前提を理解して使いこなすとVCは最強の味方になるかもしれません。
メリット・デメリットを理解した上で、出資を受けるか検討してください。

創業手帳(冊子版)」では、VCに限らず創業前後で役立つ資金調達の方法なども詳しくご紹介しています。資金調達にお悩みの方も、ぜひお役立てください。
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(編集:創業手帳編集部)

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