売上予測の計算方法やツールは?精度を高めてビジネスに活用しよう

創業手帳

利益最大化を目指すなら売上予測の計算方法を理解しよう


企業が成長し続けるためには、安定した利益を出すことが不可欠です。利益を最大化するためには、円滑に予算配分や在庫管理、人員配置を判断しなければいけません。
企業を効率的に経営するためには、売上予測を指針にしてください。売上予測があることで、どこを目指せばいいのか、どういった戦略が有効なのかも明確になります。

ここでは、売上予測の計算方法やポイントを紹介します。

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売上予測とは?活用されるケースについて


会社を設立することよりも、安定して利益を生み出し続けることのほうが困難です。企業が利益を生み出し続けるために活用してほしいのが、売上予測です。

売上予測とは、過去の実績や自社の成長率、市場動向といったデータをもとにして将来の売上げを予測することです。
売上目標と混同されることもありますが、売上予測は客観的なデータをもとにして算出する客観的数値で、売上目標は予測ともとにして戦略による効果や成果への期待を見込んで設定されます。
適切な売上目標を設定して、従業員のモチベーションを維持するためにも、売上予測は重要な役割です。

ここでは、売上予測がどのような場面で活用されているかを説明します。

生産量や在庫の管理

売上予測が直接関係するのが、生産量や在庫の管理です。
商品を製造して販売するメーカーでは、売上予測をベースにして商品の生産量や生産計画の策定が実施されます。

もしも売上予測が、実際の売れ行きから大きく乖離(かいり)してしまうと、欠品してビジネスチャンスを失ったり、逆に作りすぎて過剰在庫によってコストが増大する恐れがあります。
効率的に業務を遂行して利益を最大化するためにも売上予測が必要不可欠です。

販売やプロモーションコストの策定

商品やサービスを販売するには、商品を知ってもらったり購入してもらったりするためのプロモーションが必要です。
プロモーションにかける広告宣伝費も、売上予測をもとに策定します。

売上げの見込みが少ない商品であれば、広告宣伝費も大きくはかけられません。
一方、大きな売上げが期待できる商品であれば、広告宣伝費を増やしてさらなる利益増を目指せます。
商品やサービスのプロモーション費用を決めるために、売上予測が重要な役割を果たしてい。

採用や配置といった人事

売上予測は、人材配置や新規採用者数といった人事にも影響を与えます。
多くの売上げが期待できるのであれば、その部門に多くの人を配置して、新規採用人数も増やします。
一方、売上予測が少ない時には、他の部門に人を配置したり採用者数を減らしたりて人件費削減を行うことになるでしょう。

資金繰りの計画

資金繰りの計画やキャッシュフローも売上予測から考えます。
これから数カ月、もしくは1年後に入金となるお金を予測して、買掛金や借入金の返済を計画します。

売上げが順調に伸びて売上予測よりも伸びていれば問題はありません。
ところが、売上げが予測したほど伸びない場合には、資金の流れが少なくなり資金不足になってしまいます。
売上予測が正確でないと、会社の資金繰りが破綻してしまうこともあるのです。

売上予測の立て方・計算方法


ここからは売上予測をどうやって立てればいいのかを説明します。
売上予測を立てるには、売上げの履歴から算出する方法と営業フローから計算する方法、テスト市場分析を活用する方法があります。
それぞれの内容を知って自社に適した方法を選択してください。

過去の実績から算出する

売上予測を立てる方法の中でもわかりやすいのが売上履歴を使う方法です。前年同月比、つまり1年前の売上げがわかればある程度売上げを予測できます。
過去の実績から算出する場合の計算式は以下のものです。

去年のデータ(1年前の売上利益)✕成長率(年間平均成長率)

もちろん成長率が一定であるとは限らないため、誤差が生じることはあります。
更新がある契約や解約の予想。季節的な要因などを加味すれば正確性を増すことが可能です。

営業フローからの計算する

営業フローは、潜在顧客が見込み客となり、顧客まで絞り込まれるように進みます。
営業フェーズごとの進捗率を把握したり、効果的にセールスしたりするためにも営業フローが重要です。

売上げを予測するためには、商品やサービスに興味を持った潜在顧客から問い合わせをする見込み顧客数、そこから購入に至る顧客数を算出していきます。
業態によって違いがあり、一例としては「ウェブからの問い合わせ⇒接客⇒見積もり・提案⇒受注」といったプロセスです。
ウェブセッションからの見込み客と、見込み客から顧客になる可能性を考慮し、予測受注金額を割り出します。

この考え方は、売上目標からの逆算にも使われています。今季の目標売上に対して必要な契約数と見込み客数、行動べースの目標が設定可能です。
実際に計算するには、見込み率に取引数をかけて合計売上予測を行います。見込み率は営業の実績から算出してください。

テスト市場分析からの計算する

上記の2つの計算方法は、今までに販売した実績がある場合の計算方法です。
市場に投下していない商品の場合には実績がないため、売上予測を立てるのは難しくなってしまいます。

そこで利用されるのがテスト市場分析です。
テスト市場分析は、特定のターゲットであるグループに試験的に商品を提供して得られたデータから売上予測を立てる方法となります。

わかりやすいのは、新商品のテストです。
ある商品を特定地域に絞って販売したり、利用者数を絞ってテスト商品を使ってもらったりするテストが行われています。
テストで得られたユーザーのリアクションを売上予測に反映できます。

そして、このテストの目的は売上予測だけではありません。
新商品やサービスに対する反応を受けて改善点を見つけたり、ブラッシュアップしてリリースしたりするために使われています。

ただし、テストで良い結果が出ても、他のグループや本来のターゲットでうまくいくとは限りません。
加えて試験運用やテスト商品の販売にもコストがかかる点にも留意してください。

売上予測の計算に必要なデータ


売上予測の算出は、必要なデータを揃えることからスタートします。どのような方法で売上予測を行うとしても、正確なデータが必要です。

データとして客観的に分析することによって、正しい売上予測と適切な経営判断が可能になります。
売上予測を客観的に行うのは難しく、つい楽観的に考えたり、期待を込めて都合良く見積もってしまいがちです。

以下は、売上予測をするために揃えておきたいデータです。

  • 潜在顧客が自社の商品やサービスに興味を持つためにかかる期間
  • リードタイム
  • コンバージョン率
  • 契約期間
  • 更新率
  • 解約率
  • 月別の売上げ
  • 商品ごとの売上げ

上記のデータに加えて市場の動きや、イベントや季節といった外的な要因も考慮します。外的な要因は、商品への需要を予測するためにも重要です。
主観が入らないように正確なデータを集めてください。

売上予測の計算の精度を高めるためのポイント・ツールとは?


精度が高い売上予測ができるかどうかによって、企業の経営や人事、現場まで影響を受けます。
売上予測を計算する時に精度を高めるためのポイントをまとめました。

情報共有を活発にする

売上精度を高めるためには、売上予測の情報を社内や部署内で共有してください。
担当者や経営陣といった特定の個人ではなく、社内全体で共有する仕組み作りが必要です。

情報をリアルタイムに共有するには、日々の売上データや進捗率といった営業のデータを、社内と現場のすべてから把握できるようなシステムも役立ちます。
データを共有して連携することによって、新しい事業計画の発案や別部門の方法を取り込むといった業務活性化にも貢献します。

情報や認識が共有されていないと、売上予測に使うデータも違う算出方法や基準で計算されてしまうかもしれません。
データの信憑性を高めるためにも、情報共有を活発化して基準を統一化しておいてください。

従業員のコスト意識を高める

売上予測の精度を高めるためには、現場でのコスト意識も重要です。
自身が携わっている仕事や業務が、売上げにつながっていることを意識して、不要な支出や安易な値引きは避けるようにします。

コストには人件費などの金銭的コストと業務にかかる時間的なコストがあり、どちらも意識しないと業務が非効率になってしまいます。
従業員のコスト意識が低さが原因で、予測よりも無駄な出費が増えてしまうかもしれません
従業員各自がコスト意識を高めてコスト発生を少なくすれば、利益が増えるとともに新事業への投資や従業員の還元にもつながります。
新しい利益を生み出すためにも、コスト意識を持つ必要があります。

客観的なデータだけを根拠にする

売上予測のためのデータは、客観的なデータだけに限定します。
売上金額や取引先の顧客単価、商材ごとの単価といった過去データを用いて、将来への期待を込めたデータは使いません。

期待がこもったデータは、従業員のモチベーションを高めたり目標として設定するためには有効です。
しかし、売上予測は売上目標とは切り分けなければいけません。主観を排除して実現可能性が高い情報となるようにしてください。

外部要因を把握する

売上データの基本は、過去の成果から自社の成長率を推測して将来の利益を予想するものです。
しかし、コントロールできない外部要因も考慮しなければいけません。

以下のものが外部要因として挙げられます。

・インフレ率
特定の期間にどれだけ物価が上昇するかをあらわす指標。

・競合
市場での競争が激化した場合、シェアがどうなるかを考えなければならない。

・市場変化
人々の行動や生活様式、考え方の変化によって市場も変化することがある。

・業界の変化
AIのように新しい製品、技術が市場に登場することで、他の商品が陳腐化したり、新たに評価されたりする。

・法の改正
法律が改正されて商品やサービスの販売に影響することがある。

・季節変動
夏はレジャーアイテム、冬は室内用品が売れやすいように人間の行動は季節によって変化する。

売上予測を立てる時には、これらの外的な要因が考慮されているかどうかもチェックしてください。

ツールを活用する

売上予測で使うデータは膨大な量になることもあります。多くの数字を扱う場合には、ツールを活用することも検討してください。
売上予測に使えるツールを以下で紹介します。

Excel

仕事で使う機会が多いExcelは、売上予測でも役立ちます。

例えば、予測シート機能やトレンド関数は、売上予測に使われる機能です。列の組み合わせから将来の数値を予測して表示します。
表を選択肢て予測シートボタンをクリックするだけなので使い方も難しくありません。

また、トレンド関数は過去のデータから未来を予測する関数です。
複数種類のデータを扱える関数なので、来客数やウェブセッションから売上げを予測したい時にも役立ちます。

Excelであれば、すでに職場で使っている人も多いため、すぐに取り組めて別の導入コストをかけなくても良い点が魅力です。
しかし、関数やグラフといったExcelの知識が必要な上、データが多すぎるとパソコンへの負荷が大きくなるデメリットもあります。

AIや分析ツール

売上予測は、専用の分析ツールやAIも多数リリースされています。
専門知識がなくても利用でき、売上げを構成する要素や成功要因の割り出しにも使われています
地域情報や統計データから出店予測をしてくれるツールもあり、自社のビジネスに適したツールを利用可能です。

また、AIの機械学習も売上予測に使われています。
膨大なデータを活用した需要予測から適切な発注量を予測したり、データを蓄積して複雑なパターンの予測方式を並列で使用したりと高い精度の予測が可能になります。

SFA

SFAとは、「Sales Force Automation」、セールス・フォース・オートメーションの略称で営業支援システムのことをいいます。
顧客情報や案件の進捗、日報や商談のほか、担当者の活動記録を一元管理できるシステムで、売上予測にも活用できるツールです。

商品・サービス別や担当者別、月別といった形でデータを抽出して売上予測を作成できます
営業支援システムをまだ導入していない、従業員の生産性を向上させたい企業にとっても、SFAが強い味方になるでしょう。

まとめ・売上予測を他のデータと組み合わせると効果的

客観的なデータに基づいた売上予測は、従業員が働きやすい環境を目指すため、利益を最大化するために重要であるとともに、金融機関や株主といった利害関係者とのやり取りにも不可欠です。
売上予測ができない、今後の見通しが立たない状態では、企業として立ち行かなくなってしまいます。

高い精度の売上予測を立てるためにも、透明性が高いデータを集めるとともに予測を立てる方法もブラッシュアップしてください。
必要に応じてITツールも利用するようにおすすめします。

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(編集:創業手帳編集部)

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