ドムドムフードサービス 藤﨑忍|39歳で初就職。業績低迷のハンバーガーチェーンを黒字回復させた社長が語る「業績UPのコツ」

飲食開業手帳

日本初のハンバーガーチェーンが歩む、他業種との協業の未来とは?

1970年に日本初のハンバーガーチェーンとして、東京都町田に誕生したドムドムハンバーガー。2017年にレンブラントホールディングスがM&Aを行った後も低迷していた業績を回復させたのは、ある施策がきっかけでした。

今回は、39歳で初めてSHIBUYA109内のセレクトショップに就職し、44歳で開業した居酒屋を半年で要予約の人気店にすることに成功。ドムドムフードサービスに入社後、入社9カ月で代表取締役社長に就任し、業績を回復させた藤﨑さんに、創業手帳代表の大久保がインタビュー。様々な業種に共通する、業績拡大のコツを伺いました。

藤﨑 忍(ふじさき しのぶ)
株式会社ドムドムフードサービス代表取締役社長

青山学院女子短期大学卒業後、21歳で結婚。主婦として子育てなどに奔走していたが、39歳の時に株式会社ブティックヤマトヤ「MANA」の店長に。人生初の就職であったが、若いスタッフとともに働き、新しい価値観を見出す。2009年には夫が脳梗塞を患い介護生活に入るも、5年間勤め、年商を倍に躍進させる。
退職後は居酒屋アルバイトを経て、2011年から東京・新橋に家庭料理の店「そらき」を開店し、翌年には2軒目「SoRa-ki:T」を出店。
2017年に再生事業を行う株式会社レンブラントインベストメントに入社し、株式会社ドムドムフードサービスへ出向。ドムドムハンバーガーの新商品開発担当、新店店長、東日本地区スーパーバイザーを務める。2018年8月に株式会社ドムドムフードサービス代表取締役社長に就任。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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39歳でSHIBUYA109に初就職。5年で年商を2倍に


大久保:短大卒業後にご結婚され、39歳で就職されるまで、政治家の妻として当時墨田区議会議員だったご主人を支えていらっしゃったのですよね。

藤﨑:はい。夫だけでなく、父も議員をしておりましたので、2人の仕事を手伝っていました。しかし、夫が都議会議員選挙で落選し、心筋梗塞にもなり、当時中学生だった息子を育てていくためには働かざる負えないということで、ブティックヤマトヤに入社しSHIBUYA109内のセレクトショップ「MANA」で店長として働くことになりました。

大久保:若者向けのお店ですが、入社してみていかがでしたか?

藤﨑:楽しかったですよ。それまで仕事をしたことがなかったので、すべてが新しくて。全くカルチャーが違う若い方たちと接することも楽しかったですし、学ぶことも多かったです。売上という形で「商売」を目の当たりにし、努力次第で自分が選んだ服の売れ行きが好転していくのは、とても面白いなと思いました。

大久保:39歳の新入社員といった感じだったんですね。

藤﨑:そうですね。張り切っていました。お店に立ち、スタッフやお客様から若い方の感覚を学びながら、一つひとつ目の前にあるものを見て・感じて・実行することを積み重ねた結果、売場面積10坪の店舗の年商を5年かけて2倍にすることができました。もちろん初めから「5年後に年商を2倍にしよう」とスタートしたわけではなかったですが、SHIBUYA109自体が学びの宝庫だったので、高い売上を誇る人気店や雑誌を見てトレンドを学び、「足ふきマットを買いましょう」とか「段ボールを隠しましょう」とか、お店にいてお客様と接することで感じた小さなことを、一つひとつ積み重ねていきました。

大久保:特に売上UPに効果的だったことは何ですか?

藤﨑:まずはお店が綺麗になったことですね。スタッフと良い関係性を築くことで、スタッフが常にニコニコしていたことも良かったと思います。商品構成を変えたり、坪効率や時間帯別の売上をチェックしたことも大きいですが、やはり一番は仕入れですね。セレクトショップなので、買い付けたものを陳列し、売れたらそれをまたすぐに発注するということを繰り返すのですが、その際、色バランスも注視していました。SHIBUYA109はお客様の数が多いので、反応が見やすいんですよね。例えば、白、黒、赤の3色展開の服を店頭にディスプレイしておき、各色の販売数が白が5本、黒が3本、赤が1本だった場合、この比率に基づいて発注をかけるようにしていました。そういう商品の回転数に応じて「生もの的な改善」ができたのはセレクトショップだからこそだと思います。

大久保:仕入れの改善が売上に直結していったのですね。

藤﨑:そうですね。先代オーナーの時は、問屋からまとめて送られてくる商品を陳列するだけだったので、私も入社当初は同様の方法を取っていたのですが、それを止めて、自分で問屋街に行って選定する形にしたことが良かったと思います。

大久保:なるほど。仕入れの仕方を変えたことが売上アップに繋がったのですね。さらに、「とりあえず1,000店舗目指すぞ」「上場するぞ」と、先に目標を定め、そこから逆算して行動を起こしていく経営者も多いと思いますが、そうではなく目の前のことを一つひとつ着実に行っていくことで自然と売上が伸びていったのですよね。

藤﨑:はい。今もそのやり方を続けています。お客様やスタッフとの関係性を一番に考えると、必然的にそういうやり方になると思うんですよね。「店舗数を何百店舗に増やす」など、目標を据えること自体は良いのですが、それはあくまで会社側の都合なので、弊社が第一に掲げる目標にはなり得ないんです。会社の都合で商売を動かすのではなく、お客様が何を求めているのか、顧客満足度に沿った目標を掲げ、お客様やスタッフがハッピーになること、喜ぶことを形にしていくことを大切にしています。

大久保:何を最も大切にするのか、その優先順位を間違ってしまうと業績もなかなかよくならないですから、お客様が喜ぶことを着実に行っていくのが重要なのですね。

藤﨑:はい。だからこそ、一つひとつ目の前にあることを大切にしています。

ココ重要!
  • 「店舗数を増やす」「上場を目指す」など会社側の都合を起点に動くのではなく、「お客様やスタッフが喜ぶこと」を最も重視し、対応していくことで、会社の業績は自然と伸びていく。

家族の生活を守るために起業を決意


大久保:ブティックヤマトヤを退社後、居酒屋そらきを開業されたのですよね。

藤﨑:はい。ブティックヤマトヤでは店長から専務取締役になり、私が後を継ぐ形で5年間やってきたのですが、経営者の経営方針が変わったことから退社しました。それと同時期に夫が脳梗塞になり、要介護4、身体障害者手帳1級と介護を要する状態になってしまったんです。当時、私は44歳で、仮にアパレルメーカーに転職したとしても、それで夫と私立に通う息子を守るだけのサラリーが得られるとは思えなかったので、家族を守るために起業しました

大久保:介護と起業の両立は大変でしたね。

藤﨑:結局7年間家で介護をしていたのですが、両立は大変でした。でも、夢中になれるものをもう一つ持っていて、良かったと思っています。介護生活は心身共に大変だからこそ、他に夢中になれるものを持っておくことで、肉体的には大変でも精神的には楽になれました

大久保:起業するにあたって、異業種に挑戦された理由を教えてください。

藤﨑:セレクトショップがすごく面白かったので、当初はSHIBUYA109で起業したいと思っていました。「また専務と一緒に働きたい」と言ってくれる仲間もいましたし、絶対面白いことができるだろうと思っていたのですが、SHIBUYA109に出店を希望する会社はとても多くて、取り急ぎの収入もなくなってしまったので、「とにかく繋ぎの仕事をしなきゃ」と思い、新橋の居酒屋でアルバイトを始めました。そこで働いているうちに、お客様から「自分でやったらいいんじゃない?」と言われ、そこで「居酒屋を経営するという手もあるんだ!だったら、このままSHIBUYA109の出店場所が空くのを待つより、先に居酒屋で起業しよう」と思ったんです。

大久保:アルバイトの経験がきっかけとなり、新橋で居酒屋を開業されたのですね。

藤﨑:はい。アルバイトした期間は4カ月でしたが、飲食店における売上とコストについて把握することができたので、良い経験になりました。SHIBUYA109で働いてみて、商売をやるなら人が多く集まるところの方が安定性があると実感したので、「サラリーマンの聖地」とよばれ、ビジネスパーソンが多く集まる新橋で開業することにしました。

大久保:開業資金は、どのように調達されたのですか?

藤﨑:東京信用保証協会の保証付き資金を地元の信用金庫から貸していただきました。1,200万円借入したのですが、事業計画書を作り金融機関を説得するという経験は、2店舗目を出す時にも役立ちました。

大久保:事業計画書を作ると頭の中が整理され、新たに見えてくるものがありますよね。

藤﨑:そう思います。融資を受けるということは、人を説得してお金を借りるということなので、自分の思いだけではなく「相手が何を質問するか」を想像し、先行して対策を講じる必要があります。そのお陰で想像力を培うことができましたし、「返さなきゃいけない」という責任感が、仕事を始めた時の力になりました

大久保:開業されるにあたって、最も苦労されたことは何ですか?

藤﨑:内装工事の際に不手際があって、やり直しを依頼するのが大変でしたね。いざ現場を見に行ったら色が違うとか、ペイントの塗り方が雑で、カウンターも斜めになっていたりとか。現場に頻繁に顔を出し、その都度チェックしなければいけなかったなと反省しました。

大久保:スケジュールが遅れたり、思っていたのと違ったりと、内装で失敗する人は結構多いですから、これから起業する方は注意が必要ですね。

藤﨑:そう思います。

半年で要予約店に成長。2店舗目を開業へ

大久保:経営が軌道に乗ったのはいつ頃ですか?

藤﨑:初めはお客様が少なかったのですが、半年を経過した辺りからは予約をしていただかないといけない状態になり、事業計画書に掲げた売上目標もクリアすることができました。

大久保:繁盛店になったのですね。

藤﨑:そうですね。オープンから1年経った頃には、満席でお客様をお断りすることが多くなり、「このままで大丈夫かな」と不安になっている時に、たまたま隣のお店が空いたので、オープンから1年半後に2店舗目を開業しました。

大久保:目標にしていた売上もクリアし、さらには2店舗目を開業されるなど、起業を選択されて成功でしたね。

藤﨑:すごく良かったと思います。

大久保:先ほどセレクトショップでの売上を伸ばすコツを伺いましたが、飲食店を繁盛させるポイントは何でしょうか。

藤﨑:基本は同じだと思います。やはり根底にあるのは「心を尽くすこと」です。当時、雑誌の取材などで「このお店の売りは何ですか?」と聞かれることもあったのですが、売りを作ることよりも、ただ、すべてに対して心を尽くすことに専念していました。例えば、グラス一つとっても「ビールはこのグラスで飲んだ方が美味しいだろうな」思ったら、そのグラスを使いましたし、接客もすべてのお客様が同じ気持ちで来店されるわけではなく、お友達を作りたい方もいれば、気分が良くない方もいて、いろんな方が一人ひとり違う心持ちでカウンターに座われるので、その方々に合った対応を心掛けていました。そういった、一つひとつのことに心を尽くすことが、お客様を獲得することに繋がったと思います。

お客様から突然の引き抜きオファー


大久保:どのような経緯でドムドムフードサービスに入られたのですか?

藤﨑:夫が亡くなって2年ほど経った頃、たまたまドムドムフードサービスの親会社であるレンブラントホールディングスの専務が、私が経営する居酒屋にお客様として来店されていて、私の味が気に入ったらしく「商品開発を手伝ってくれないか?」と言われたんです。最初は顧問契約をいう形で居酒屋と兼業していたのですが、「本腰を入れないか?」と言っていただき、約4カ月経った2017年11月にレンブラント・インベストメントに入社し、ドムドムフードサービスへ出向しました。

大久保:ヘッドハンティングを受けた際は、どのようなお気持ちでしたか?

藤﨑:嬉しかったですね。当時私は50歳でしたし、居酒屋のおばさんを誘うというのは結構勇気がいることだと思うので、誘っていただけたことが単純に嬉しかったです

大久保:居酒屋そらきは、どなたかに引き継がれたのですか?

藤﨑:はい。元々、居酒屋そらきはセレクトショップで一緒に働いていたメンバーと一緒に始めたのですが、私がオーナー、彼女がママをやる形で今もお店は続いています。当時は、私が社長を務めていたのですが、経理を担当してくださっていた方に社長になってもらい、私はドムドムフードサービスに入りました。

大久保:ドムドムフードサービスに出向後、まずどのような仕事を担当されたのですか?

藤﨑:商品開発を担当しつつ、入社翌月の2017年12月~翌年3月頃まで店長として店舗に勤務した後、スーパーバイザーとして16店舗を統括する立場になりました。

大久保:元々ドムドムハンバーガーは、ダイエーの子会社であるオレンジフードコートが運営していて、全盛期の1990年代には全国に約400店舗展開していましたが、その後業績が低迷。2017年3月にレンブラントホールディングスがドムドムハンバーガー事業をM&Aし、実際の事業を担う子会社として同年4月にドムドムフードサービスを設立されたとのことなので、M&Aから1年経たずの入社ですよね。状況はいかがでしたか?

藤﨑:M&Aをするにあたって、元々ドムドムハンバーガーで働かれていた方も会社を移って来てはいたのですが、運営がスムーズではない部分もありましたね。親会社であるレンブラントホールディングスはホテル・レジャー事業等はやっていますが、外食チェーンを展開してノウハウを蓄積していたわけではないので、例えば、クレンリネスのお掃除表がきちんと整備されていないなど、飲食店における運営が上手く回ってなかった部分もありました。なので、データや数値、実行日時などを簡単に誰でも分かるよう見える化していきました。

大久保:そういった改善点は、現場を見ていてアイデアが浮かんでくるのですか?

藤﨑:そうですね。店舗を見ていると、自然と気が付くので。自分が店を運営するなら「これはデータにした方が楽だな」とか、「この数字は、こういう風に見た方がいいんじゃないか」というのは、セレクトショップや居酒屋での経営経験が活きていると思います。

例えば、セレクトショップで働くまでは「坪効率」という言葉自体知らなかったですから。仮に、AのラックとBのラックにそれぞれ服がかかっていて、明らかにAのラックの方がいっぱい売れてBの方が売れないのであれば、Aのラックの商品を増やした方が良いじゃないですか。坪効率でいえば、断然Aの方が良いわけですから。そういったことは、元々誰かに習ったわけではなく、実際に目の当たりにして対策を講じていくうちに、「坪効率を見ましょう」「洋服のラック単位の売上を見ましょう」ということを必然的に感じるようになりました。他にも、「この時間帯は売上が多いから、休憩はこういう風に回した方がいい」とか、そういったこともすべて現場にいたからこそ感じられる部分だと思います。

大久保:マーケティングの先生やコンサルタントは小難しく言うけれども、とにかく現場で見て・感じたことを実践していくことで、自然とそういった対処法が身に付くわけですね。

藤﨑:そうです。頭で考えるのではなく、目で見て、心で感じたことを実践していくやり方の方が良いと思います

ココ重要!
  • マーケティングや経営の知識は、机上で学ぶより実践で身に着けた方が柔軟な技術が身に付く。

入社9カ月で、社長に就任

様々なコラボグッズを展開

大久保:社長に就任された経緯を教えていただけますか?

藤﨑:ちょうどスーパーバイザーになって2カ月ほど経った頃、2018年3月期決算の数値を知ったのですが、「私の居酒屋だったら、もう閉店確実だわ」というような数値に驚いてしまって。「このままでは絶対に業績を回復させることはできない」と感じました。それと同時に、自分の意見をしっかり通せる立場にならなければ改善は難しいだろうと思ったので、「役員にしてください」と直談判したんです

大久保:反応はどうでしたか?

藤﨑:最初は「まだ結果も出してないのに、何を言っているんですか?」といった反応でした。でも、改善点をまとめた資料をメールで送ったり、電話をして夢を語ったり、とにかく言い続けました。今思えば、資料の内容は全然大したことなくて、恥ずかしくなるような内容だったんですけど、情熱を買ってもらえたんだと思います。

大久保:何かしらの思いがあっても、組織の中で実際に声を上げる人は貴重ですからね。

藤﨑:やはりそこは私が自由な立場だったから、そういう図々しいことが言えたんだと思います。会社員勤めの中で言葉を発するのって、なかなか難しいですから。その点、私は当時50歳で子どもも社会人でしたし、別途お店も持っているから言いたいことが言えたのかもしれません。それまでにいろんなことを経験してきたからこそ、「一つの場所で凝り固まらなくていい」という思いがあったのも大きいですね。

大久保:「もっとこうしたら会社はもっと良くなるんじゃないか」と思いながらも言えない方が多いと思いますが、自分達の組織ですから、言葉にしてチャレンジすることが大事ですね。

藤﨑:そう思っています。熱意を言葉にし続けたことが、社長就任に繋がりましたから。

コラボで活路を見出し、新規顧客を獲得

写真左:「ゆかりチキンバーガー」、写真右:「丸ごと!!カニバーガー」

大久保:社長就任後は、まず何から着手されたのでしょうか。

藤﨑:まずは、居酒屋のおばさんが入社9カ月で突然社長に就任したわけですから、きっと働くスタッフは不安だろうと思ったんです。その不安を払拭するために、各店舗を回りながら現場の声を直接聞き、信頼関係を構築することに尽力しました。

また、現在のハンバーガー業界は、売上シェアの85%以上をマクドナルド、モスバーガー、ケンタッキー フライドチキンの大手3社が占めているといわれています。その中で、圧倒的に店舗数が少ないドムドムハンバーガーは、限られたお客様に守っていただきながら何十年も続いてきたハンバーガーチェーンなんです。ということは、店舗内で何か新しい試みを行ったとしても、限られたお客様の反応しか得られないじゃないですか。だったら、ドムドムハンバーガーを知らない方たちと出会い、コミュニケーションを取っていくことが絶対に必要だと思い、イベントに出店したり、アパレルブランドと協業してコラボグッズを展開するなど、お声掛けいただいたものは基本的に全部挑戦するようにしています。そうやって新たな顧客層と接点を持てたことが、結果として業績回復に繋がりました

大久保:BEAMSなどのアパレルブランドやLOFTとコラボグッズを展開されるなど、様々な試みを実施されてきた中で、特に転機となったものはありますか?

藤﨑:機転になったのは、2018年に幕張メッセで行われた人気声優・田村ゆかりさんのイベント「ゆかりっく Fes ’18 in Japan」にキッチンカーで出店したことですね。お声掛けいただいた当初、弊社はキッチンカーを所有していなかったので、初期費用の観点等から反対意見も多かったんですが、どうしてもやりたかったんですよね。というのは、1日あたり動員数約8,000人のイベントが2日間に渡って行われるわけですから。「こんなに大勢の方と出会えるチャンスを逃したくない」という理由が一つです。

そして、もう一つが「SNSの可能性」を学びたかったんです。声優のファンの方々は、SNSの活用がとてもお上手で拡散させる力を非常に持っていらっしゃるんですよね。実際、イベントに出店した際も、田村ゆかりさんをイメージした「ゆかりチキンバーガーセット」(しば漬けとゆかりふりかけで作ったピンクタルタルソースを使用した「特製チキン南蛮バーガー」と「スイートポテトパイ」のセット)を販売したのですが、購入してくださったお客様がSNSに写真を投稿してくださり、それが瞬く間に拡散され、初日だけで目標としていた2倍もの個数を販売することができました。大きなチャレンジではありましたが、SNSの可能性を実感することができましたし、積極的にイベント出店や他業種とのコラボを行っていくきっかけとなる出来事となりました

大久保:SNSに強い世代のお客様を掴むことができれば、お客様自身が宣伝・拡散してくれますからね。

藤﨑:本当にありがたいです。

大久保:以前、カラッと揚げたソフトシェルクラブを1匹丸ごと挟んだ「丸ごと!!カニバーガー」が期間限定発売された際、私も食べたのですが、本当に見た目のインパクトがすごくて、写真を撮ってシェアしたくなる気持ちが分かりました。味もとても美味しかったですし。

藤﨑:ありがとうございます。「丸ごと!!カニバーガー」はオペレーションの工数が多く、税別900円と他の商品よりも値段が高いことから、当初は社内でも反対意見があったのですが、結果として評判を呼び大ヒット商品になりました。弊社では、他のファストフード店にはないような、見た目のインパクトが強い商品も多く販売してきましたが、どの商品も美味しいことが最低限の約束です。見た目にも特化した商品は、美味しいことが前提条件だと思うんです。仮に美味しくなければSNSでバッシングされてしまいますから、弊社は味にもこだわって商品開発を行っています。

コロナ禍で黒字化を実現

大久保:こうしたイベントへの出店やコラボ企画等を通し、長らく低迷していた業績が回復してきたのはいつ頃ですか?

藤﨑:結果的に業績が上がってきたのは、コロナ禍に入ってからでした。実は、社長就任後1年半は、営業部長とスーパーバイザーも兼務していたんです。そのお陰でドムドムハンバーガーの魅力や強みを理解することができました。今後の方向性を決めるイベント出店などを行ったことを機に社長業に専念し、いざイベント出店等に力を入れていこうというタイミングでちょうどコロナ禍になってしまったんですが、コロナウイルスが流行し始めた翌年度となる2021年3月期には初めて黒字に転じ、翌2022年3月期決算も黒字になりました長い間赤字が続いてきたことで苦労してきたスタッフも多かったので、自然と従業員の士気も上がりましたね。「社員になりたい」と言ってくれる若いアルバイトスタッフも何人か出てきて、その中には既に社員として活躍している人もいます。そういう意味でも、従業員全体のモチベーションが上がってきたなと感じています。

大久保:働いている方々が「ずっとここで働きたい」と思ってくださるのは非常に良いことですよね。また、エンターテインメントや外食が自粛傾向にあったタイミングで業績を伸ばすためには苦労も多かったと思います。

藤﨑:そうですね。ただ、非常に有り難いことにメディアの方が取材してくださることが多くなりまして、「ドムドムハンバーガーをより多くの方に知っていただくきっかけになれば」と思い、基本的にお声掛けいただいたものはすべてお引き受けしているのですが、コロナ禍においては副次的効果がありました。先ほど申し上げた通り、私は「お客様やスタッフがハッピーになること、喜ぶこと」を一番大切にしているのですが、コロナ禍で全国の店舗を回ることができなくなり、現場で働くスタッフとどうやってコミュニケーションを取ろうかと思い悩んでいた時に、メディアを通じて私がアウトプットしたことをスタッフがインプットしてくれるようになったんです。しかもインタビューなら、店舗では直接話さないような経営理念などについても話していますし、社内文書では読む気が起こらない内容も、外部の媒体を通し、読み物として完成されたものであれば読みたくなりますから、すごく有り難いなと思っています。

大久保:それでは最後に、これから起業される方に向けてメッセージをお願いします。

藤﨑「こだわらないこと」が大切だと思っています。実際、私は政治家の妻からSHIBUYA109のセレクトショップの店長に転身し、その次は居酒屋を開業し、今はハンバーガーチェーンの社長をしています。「自分はこれしかできない」と思い込んでしまうと起業する勇気が湧いてきませんし、起業後も「うちの会社はこれしかできない」と思っていると、業績拡大のチャンスを逃してしまうと思うんです。だから、自分自身を殻に閉じ込めず、まずはチャレンジしてみて、ダメだったらまたやり直すという気持ちでいることが大切なんじゃないかと思います。

また、女性の方は特にライフイベントで様々な困難が訪れると思いますが、その時は1度立ち止まり、自分の心に素直になってみることをおすすめします。「自分でこうすると決めたんだから、途中で止めることはできない」と頑なにならず、1度休憩してみると、その間に他に良いものが見つかるかもしれませんから。自分の境界を少しファジーにして、こだわることなく何事も挑戦していった方が上手くいくんじゃないかなと、これまでの経験から感じています。

ココ重要!
  • 自分で自分の限界を定めたり、常識や自分自身の考えに固執したりすることなく挑戦し続けることで、自身や会社の可能性を広げることができる。
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(取材協力: 株式会社ドムドムフードサービス代表取締役社長 藤﨑忍
(編集: 創業手帳編集部)

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