キャリア構築は「自分発のストーリー」と他者を巻き込む「ネットワーキング」のスキル次第

創業手帳

元マッキンゼーの「改革と戦略の案内人」が語る!新しい時代におけるキャリア構築のカギ

元マッキンゼーの「改革と戦略の案内人」が語る!新しい時代におけるキャリア構築のカギ

経営~行政改革の指南役として絶大な支持を得ている、元マッキンゼーのパートナーである上山信一氏。自身、運輸省から世界随一のコンサルファーム、そして、現在の「改革と戦略の案内人」へとキャリアを大きく転換、発展してこられました。その知見をふまえ、創業手帳が無料開催したオンラインセミナーで、「令和の新しい生き方」としてキャリアとスキルについてのアドバイスをいただきました。好評だった、その内容を紹介いたします。

後編では、この話に引き続き、令和を生きる上で役立つサービスや取り組みについて、セミナー参加者が100秒ピッチ形式で発表した模様をお伝えします。

上山信一

上山 信一(うえやま しんいち)
慶應義塾大学 SFC 総合政策学部教授
「改革と戦略の案内人」として、企業、政府、NPOの経営改革、地域開発、行政改革を手がける。マッキンゼー(パートナー)、米ジョージタウン大学研究教授等を経て、現職。ビジネスモデル学会理事。企業の非常勤取締役・監査役・戦略顧問のほか、各種公職(大阪府市特別顧問等)を兼務。また橋下徹氏、小池百合子氏の改革ブレーンを務めた。著書に『みるみる組織が変わる改革力』等。DMMオンラインサロン『街の未来、日本の未来』主宰。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください。

キャリア構築で一番大事なことは、自分なりのポジションを築き、人々に「気づいてもらう」こと

キャリア構築で一番大事なことは、自分なりのポジションを築き、人々に「気づいてもらう」こと
日本社会は構造改革の時代といわれ、日本的雇用や金融システムの変革が叫ばれて先行きが見えにくくなっていましたが、令和の時代に入り、その見えにくさが増しているといえます。このような乱世には、生涯を同じ仕事に捧げる「一生銀行」「一生為替ディーラー」といったスタイルよりは、さまざまなことを手がけていく生き方が増えていくでしょう。

ストーリー性のあるキャリアが成長につながる

そうした時代には、キャリアをどのように考えていくべきでしょうか。まず大事なのは、自分なりのストーリーを描くことです。一つのやり方として、最先端のマーケティングの世界で上を目指すとしましょう。そのために今、どうすればよいかを逆算して考えるのです。ではまず、勢いのあるベンチャー企業に入ってネットビジネスの勉強をしようとか、メディア研究をしようなど、目標に向けてストレッチさせるために身近なことから始めます。すると、次の展開がストーリー性を持って見えてくるものです。

その際、今あるものを捨ててしまわずに、その隣やちょっと先を見据えてみましょう。かつ、自分がワクワクするところに身を置くことが大事です。先の見えにくい時代だからこそ、目標指向性を突き詰めるよりは「辛くてもがんばれる」環境に身を置くべき。

周囲が見出すあなたのスキルとは

あなたならではの文脈で、憧れのベンチャー経営者の近くで働くとか、鉄道好きだから鉄道会社で、といった選び方でよいのです。そうした「自分なりのストーリー」を作っておけば、辛くても自信をもって仕事ができ、より秀でることが可能であり、やがて周りがあなたをそのポジションで見てくれるようになります。

つまり、意識して自分自身のポジションを自ら打ち出していくわけです。その意味では、令和におけるキャリアアップに必要なスキル、能力は、自分自身を説明する能力であり、発見されるための能力といえます。スキルというと、これができると押し出すイメージがありますが、ここでいう能力とは、むしろ周囲に「この人はこれができる」と気づいてもらう力のこと。ですから、スキルというワードはふさわしくないかもしれません。

尖ったスキルを伸ばし、自分ブランドを確立してネットワーキングに活かす

尖ったスキルを伸ばし、自分ブランドを確立してネットワーキングに活かす
そのような「発見されるための能力」が必要なのはなぜでしょうか。それは、物事が複雑化、高度化している時代には、誰もが自分のスキルだけでは仕事ができないから。「ネットワーキング」が欠かせない時代となっているからです。

求められるスキルはネットワーキング力

会社においては社内のネットワークを使って実質的には仕事しているものですし、パートナー企業や納入業者などにおいても、Aさん、Bさんといった個人に頼りながら仕事をしているでしょう。そうしたチームワークで物事が進められる中で「今度もあの人に頼もう」と声がかかるような役割やキャラクターの分かりやすさ、つまりブランディングと、付き合う際の快適さというもの。これらの、いわゆる「ネットワーキング力」が求められるスキルなのです。

ブランディングについては、分かりやすいことが大事です。たとえば、営業畑で○年、メディア業界で△年というのは分かりやすい。良くないのは、交渉力に長けているとか、リーダーシップがありますといった表現で、曖昧な感じで捉えられてしまいます。それよりは、マニアックなくらいが印象に残るので、教科書会社にいましたとか、鉄道オタクですといったブランディングが大事なのです。

広く浅いスキル、何でもやりますはむしろマイナスイメージ

ダメな例をもう一つ挙げておくと、ゼネラリスト的なアピールがあります。会社も世間も分かっていて、数学は苦手だけど財務もやります、というのは望まれません。本人が得意なことと周りの人脈でできることをやって欲しいのです。ですから、何でもできる、何でもやりますというアピールではなく、どういう感じで仕事ができるのかというイメージをむしろ出すべきでしょう。言い換えれば、ゼネラリスト的に分かる程度の財務やマーケティングのスキルでは、今の複雑化・高度化した時代には通用しないということ。キャリアイメージで言えば、20代では不得意なことを必死で頑張るのではなく、尖った部分のスキルをひたすら伸ばしておくべきです。そうして30代で、特定分野において50代や60代の重鎮が相談の電話をかけてくるくらいに、スペシャリストとして際立っているような、分かりやすい育ち方をすることが、令和の時代には大事なのです。

皆が思う、新しい時代のスキルは「社外の人間関係」「アイデア・柔軟性」

ここで、今回のセミナー開催にあたって、参加者に尋ねたアンケートを見てみましょう。「新しい時代に必要なスキルとは何か」という問いです。
皆が思う、新しい時代のスキルは「社外の人間関係」「アイデア・柔軟性」
回答で多かったのは「社外の人間関係」と「アイデア・柔軟性」で、共に7割以上の方が挙げていますが、同感です。「社外の人間関係」については、自分ではできないことが多すぎるから当然ですし、「アイデア・柔軟性」については、自身のアンテナを磨いておくために必要だと考えます。

アイデアと柔軟性をスキルとして磨き続けること

引き出しを多く持っておいて、一見関係なさそうな話でもうまくつなげることが大事。たとえば、コンサルティングを行う場合でも、テレビ局のコスト改善にあたり、製薬会社で行った手法が適用できるなどとひらめくか。その種の頭の柔らかさ、異質なものを組み合わせる力というのが大事です。

この「アイデア・柔軟性」を鍛え、保つためには、意識して多様な領域で活動し、考えておく必要があるでしょう。私自身は、いま主に手がける自治体改革のみに甘んじていればアイデアが枯渇すると思い、ハイテク領域のアドバイザーも引き続き行っています。米国と中国にそれぞれ年2回は視察に行くのも、アンテナ磨きの一環といえます。

学ぶべきはアントレプレナーシップ

「MBA」については必要とした人が2割弱と少ないようですが、それでよいと思います。いまだグローバルスタンダードであり、外資系金融機関など、保有が前提となる業界もありますが、一般にはそう重宝されるものでもないでしょう。なぜなら、日本企業においても社内の仕事の体系化が進んでおり、MBA仕込みのケーススタディをさほど学ばなくてもよい状況ができています。また、最近はSaaSなどでパッケージ化され、効率化や改善が容易にもなっています。ですから学ぶ対象としても、MBAよりアントレプレナーシップにシフトが進んでいるように思います。

キャリアは自分だけでなく、夫婦やファミリー単位で設計する

キャリアは自分だけでなく、夫婦やファミリー単位で設計する
また、キャリアを考える時に、自分自身のステップアップだけを考えがちですが、「夫婦や家族全体でのリスクヘッジ」という視点も、ぜひ持っていてもらいたいと思います。分かりやすい例は、妻が子育て中は夫が稼ぎ、夫がリストラされたら妻が稼ぐ、というものです。

異なる文化のキャリア志向を意識してみる

アメリカ人は比較的早婚で、学生結婚も多いのですが、これは2人とも仕事のプレッシャーが少ない時期に子育てを終えておくためなのです。20代で子育てを終えたら、妻も仕事に復帰してキャリアをつくっていく。夫は早めに稼いで、金銭面で家族をサポートする。夫が疲れたとき、転職するときは妻がカバーして、そのうち子どもが巣立って学費負担もなくなるという合理的な考えかたです。また、中国人は子どもが3人いれば、それぞれ留学先をカナダ、ニュージーランド……と分散させます。そのように、家族全体で幸せになる仕組みを考えることが大事です。1人ではとれないリスクも2人ならとれる。そういうことを前提に、キャリアを考えて欲しいですね。

夫婦がお互いの背景やキャリアを認め合う

家族ということでは、自分や配偶者に家業がある方は、それをうまく活用するとよいと思います。旅館や材木卸といった、いわゆる古い業態のビジネスであっても、法人があり、従業員がいて、ブランドがあるのは大きなメリットでしょう。新鮮な目で見直して、ネットビジネスやテクノロジーを掛け合わせて育てていく道もあります。日本交通がよい例で、タクシー会社という古い業態を引き継ぎつつ、アプリ開発をして業界を率いるような存在になっています。そのように、生業や家業がある方は、それを活用することもぜひ考えてみましょう。また、配偶者が起業したらそれを手伝って、夫婦でビジネスを成長させていくというのもよいでしょう。男性なら、妻が創業したビジネスを手伝うということを、家族の幸せという視点で、ぜひ考えてみてください。

起業する前に、企業の内側から「組織」の強みや歪みを学んでおく

起業する前に、企業の内側から「組織」の強みや歪みを学んでおく
次に、起業するタイミングを考えてみます。最近は、学生や20代からの起業意欲が高まっていますが、プログラミングなど得意な領域や手に職があれば、どんどん起業するとよいでしょう。

企業に入社してみることもキャリア形成になる

スペシャリティがない場合には、一度大企業に入社して、組織の成り立ちを見ておくことを勧めます。何年もいる必要はなく、なぜこの会社はこれだけ大きくなったのか、大きくなると何がどう動かなくなるのか、反面教師的な示唆も得られるはずです。もちろん、大企業にこだわる必要はなく、ベンチャー企業でもよいでしょう。

大企業で働くメリット

イメージしやすい大企業病は、意思決定の遅さでしょう。一方で、会社として投資するパワーがあり、ブランドや信用力があることは大きなメリットです。名刺を出せば、相手が話を真面目に聞いてくれますので、その間に自身のブランディングを高めておくとよいでしょう。つまり、特段のスペシャリティやスキルがない場合は、まず大企業に身を置いて、2~3年そこで自身のブランド力を高める。そうした社会勉強を留学のつもりで行うことを勧めたいですね。

キャリアを築く上での、ベンチャー企業で働くメリット

また、大企業だけでなく、伸び盛りのベンチャー企業などもよいと思います。会社の急成長が、自身の能力もストレッチさせてくれるはずです。自分が手がけたことが形になれば、やりがいや手応えもあるでしょう。そうしたジェットコースター的な成長を体感して身についた基礎体力は、キャリア形成に大いに役立ちます。

世の中の変化を見通し、その中で原点を確立する

世の中の変化を見通し、その中で原点を確立する
最後に、令和の生き方として大事なのは「世界観をもつ」ことです。世界観には2種類あって、これから世の中がどうなるのかを見通す力と、周りが変わっても自身の原点を見失わない、一種の開き直りです。

キャリア構築は世界に目を向けることから

まず、これからの世の中について、日本人にとって重要なのは、米国の支配下にあるのんびりとした日本というものが終わるという事実に向き合うこと。そして、中国とどう付き合うかということです。これは一見、外交マターのようですが、ビジネスに直結する話です。これまでの日本の成長産業や成功者は、米国から何かを輸入してきたのです。いわば、米国で成功したビジネスモデルを日本に移植するというゲームでした。

一転して、今後は中国やアジアが伸びる時代です。米国とこれから激しく対立する中国市場を見ていかねばならず、その中でどう米国に叩かれずに中国でのオポチュニティを取っていくか。半導体産業はまさにそのジレンマにあり、これは今後どの産業にも関わってくることといえます。日本市場に入ってくる中国発のものをどの程度取り入れるか。また、海外市場を目指すと、米国と中国それぞれの標準仕様が必要になるでしょう。双方への目配りが大事です。

自身の原点から生まれる好循環とスキル

そして、自身の原点について、私自身は「改革と戦略の案内人」を標榜しています。それはどのような時代にも組織というものはあって、その改革によって社会課題が解決し、働く人がハッピーになるという好循環を生み出せるからです。その原点があるからこそ、インターネットによるパラダイムシフトが起きても、コロナ禍や米中関係で世情が不安定になっても、改革課題を解くプロだと開き直れるわけです。そのように自身のフラグが立っていると、自ずと情報が集まるようになり、ネットワークができて、また次の世界が見えてくるのです。

ただし、世の中の変化は超速ですから、原点にしがみついていては良くありません。何か「だけ」をやっているのは危険な時代で、大事なのは個々のスキルよりも、質のいいネットワークをどれだけ作れるか。それが最大の重要なスキルかもしれません。

創業手帳では、常に新しい情報を発信するために、小さなスキルアップが目的のセミナーから、著名人による大規模セミナーまで幅広く開催しています。

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(編集:創業手帳編集部)

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