テック系スタートアップの祭典 「Tech Sirius 2019」レポート

創業手帳

Tech Sirius 2019の様子をお伝えします

(2019/02/14更新)

2月14日にテック系のスタートアップのビジネスプランコンテスト「Tech Sirius 2019」が開催されました。
有望なテクノロジーを持つスタートアップに投資・支援を行うテックアクセルベンチャーズが主催となり、起業家の発掘・育成、大企業とのマッチングを目的に基調講演や事業プレゼンが行われ、今年の最優秀賞の表彰式が行われました。

日本で「大企業×ベンチャー」のイノベーションを進めるために必要なこと

イベント前半は、株式会社INCJベンチャー・グロース投資グループ長の土田誠行氏、富士通株式会社 ベンチャー協業推進部 部長の徳永奈緒美氏、Fenox Venture Capitalのアニス・ウッザマンCEOによる基調講演が行われました。

土田氏は、「INCJによるオープンイノベーションの取り組み」と題して、大企業の「中間層が受け身で否定的なケースが多い」、ベンチャー側の「量産化に対する抵抗感が強い」といったベンチャー・大企業双方のイノベーションが進まないボトルネックの例を示し、問題の解決のため技術内覧会などを行って双方の現場を知る機会を提供したり、素材・科学分野特化型VC、大企業発新規事業化支援といった取り組みを進めていることを紹介しました。

徳永奈緒美氏

徳永氏は、「富士通のオープンイノベーションの取り組み~「ごっこ」に終わらず成果を生む秘訣は?~」として講演。富士通は2015年にシナジー効果を生むためのオープンイノベーション施策「富士通アクセルレータープログラム」を立ち上げ、協業を検討した100件中、50件と協業するという高い実績をあげています。
徳永氏は、同社のイノベーションが進まなかった過去の課題から、アクセルレータープログラムでは「明確なゴール設定」、「期限を決め集中検討」、「参加部門の幹部がコミットする」といった指標を定めたことで軌道に乗ったという事例を紹介。日本におけるベンチャーエコシステムの中では大企業が果たす役割が大きく、特に大企業の経営者が本気でオープンイノベーションに取り組み、続ける意識を持つ必要があると伝えました。

アニス・ウッザマンCEO

アニス氏は、「世界最先端技術に対するシリコンバレーの取り組み~時代の変化とAI・ハードウェアの進化~」というテーマで、まず最先端のAI技術を支える技術開発競争において日本が大きな遅れを取っているという事実を伝えました。海外では現在世界最速のチップをスタートアップが開発していたり、IBMが100年以上に渡って世界の最先端に立っているのは、スタートアップとのイノベーションを積極的に行って技術を吸収してきたからであるという例を挙げ、日本でもスタートアップとの協業による技術革新への投資が求められると結びました。

ファイナリストによる最終選考プレゼン

続いて、ファイナリストに選ばれたスタートアップによる最終選考プレゼンが行われました。ノミネートされた企業は以下の通りです。

・立命館大学情報理工学部 音情報処理研究室
日本の騒音問題を解決することをミッションに、音の範囲・距離を制御して、特定の空間でのみ音が聞こえる特殊なスピーカーを開発している立命館大学発のベンチャー。

・TechMagic株式会社
AI調理ロボット開発を通じて業務を自動化し、飲食業界の人手不足解消を目指す。

TechMagic代表の白木裕士氏

・株式会社EAGLYS
安全なデータ分析・AI構築を実現する秘密計算システムを開発。

・aiwell株式会社
AIを使って人・家畜のタンパク質をデジタル画像化し、大量の検体処理、データの相互比較などを実現。

・MI-6株式会社
情報技術と材料科学を融合し、新素材や代替材料を探索を短縮する技術「マテリアルズ・インフォマティクス(Materials Informatics)」を開発。

・テスラシート株式会社
電磁波によって、バッテリーを使わず電気を供給できる「テスラシート」を開発。

・GAiTE(九州大学起業部)
「3歩歩けば誰かわかる」歩容による次世代の生体認証システムを開発。

九大現役学生が歩容の生体認証をプレゼンしました

・BionicM株式会社
世界初のバッテリーが切れても使える「ハイブリッド義足」で、駆動制御によって自然な歩行をサポートする義足の普及を目指す。

・エーテンラボ株式会社
ダイエットや生活習慣の改善を習慣化する三日坊主防止アプリ「みんチャレ」をリリース。

・株式会社エルブズ
過疎地高齢化問題に対して、地方創生のための「御用聞きAI」サービスを開発。「見守らない見守り」をコンセプトに、AIを通じたゆるやかなコミュニケーションを提供する。

・株式会社イノフィス
空気で動く装着型のロボット「マッスルスーツ」を開発し、介護領域を中心に肉体労働の負担軽減に取り組む。

マッスルスーツの使い方を実演するイノフィスの古川尚史代表。

・株式会社DeepX
「人工知能であらゆる機会を自動化する」をミッションに、ディープラーニングを駆使して工事現場での重機の操作や、食品工場での食料自動盛り付けなど、あらゆる業種での自動化を進める。

いよいよ審査結果の発表!

企業賞

企業賞に選ばれたのは以下の3社です!

・EY賞 MI-6株式会社

・SMBC日興証券賞 株式会社Deep X

・FUJITSU ACCELERATOR賞 aiwell株式会社

最優秀賞

栄えある最優秀賞はEAGLYS株式会社が受賞しました!おめでとうございます!

代表の今林広樹氏にコメントを貰いました。
「我々の高速秘密計算プラットフォームは新しい技術なので、受け入れられるのはまだ時間がかかると思いますが、これは10年20年後には当たり前の技術になっていると確信しています。今回の受賞を期に、この領域で世界一を目指していきたいです」

最先端のテクノロジー開発に取り組む日本企業の盛り上がりを感じられるイベントでした。

(編集:創業手帳編集部)

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