自動車アフターマーケットで快適な顧客体験を創り出す、Seibii CEO 佐川悠氏にインタビュー

創業手帳

車の整備・修理出張サービス「Seibii」は、料金が分かりやすく安心!指定の場所に整備士が来てくれる

スマホ・ネットから簡単に相談・依頼できる、車の整備・修理・パーツ取付サービスを展開する株式会社Seibiiは、2019年5月のサービス開始から、2021年4月には累計1万台の作業実施台数を達成しました。顧客にとって快適なサービスを開発するとともに、自動車整備士の待遇改善に取り組む、株式会社Seibii(セイビー)の代表取締役CEOの佐川悠氏に、創業手帳代表大久保が話をうかがいました。

佐川 悠(さがわ ゆう)
株式会社Seibii(セイビー)代表取締役CEO
大学卒業後、三井物産に就職。約10年間、地下資源・地上資源(自動車解体、スクラップ、小型家電)、自動車リビルト部品製造事業、アフリカ市場開拓に携わる。在職中から独学でプログラミングを学び、2019年1月にSeibiiを創業。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計150万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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商社マンから起業家へ

社会人10年目に念願の起業

大久保:今日はよろしくお願いします。早速ですが、佐川さんの前職は三井物産だそうですね。

佐川:ええ。2009年に三井物産に新卒入社しました。仕事は楽しく、働きがいがありましたし、居心地も良い会社でした。入社4~5年目には、自分が担当している事業領域については社内で一番詳しくなり、仕事に余裕も生まれてきました。

そんなとき思い出したのは、学生時代に抱いていた起業への思いでした。学生時代に六本木ヒルズのカフェでアルバイトをしていましたが、それは六本木ヒルズの起業家たちに憧れていて、その時代の空気を感じたかったからなんです。

そして、勤めながらいくつかサービスを立ち上げました。もちろん副業禁止なので売上はゼロでしたが。

大久保:佐川さんが六本木ヒルズでアルバイトしていた頃、私も六本木ヒルズで働いていたので、すれ違っていたかもしれません(笑)。

佐川:えっ、そうなんですか!

自動車アフターマーケットには、人生をかける価値がある

大久保:入社4~5年目に、いくつかサービスを立ち上げてみたんですね。

佐川:ええ。特別休暇に商談をしたりしていましたが、フルコミットできないので、なかなかユーザーを獲得できませんでした。

大久保:もどかしさがありそうですね。

佐川:そうですね。もうリスクをとってフルコミットするタイミングだと思い、10年のキャリアが生かせる領域は何かと冷静に考えました。30歳を超えていたので、人生のすべてをかけてもよいと思えるくらい意義のある領域にしたいと思いました。

三井物産では、南アフリカに駐在して一般消費者向けの新規事業立ち上げをミッションとしたり、自動車の交換部品の製造事業立ち上げを経験しました。整備業や自動車解体業などの自動車アフターマーケットの領域は、自分ができる領域だと確信しました。入社10年目に、ようやく会社から飛び出したというのが起業の経緯です。

大久保:自動車アフターマーケットは、長い歴史のある業界ですよね。

佐川:ええ。当時DXという言葉はありませんでしたが、今で言うDX文脈でも相当やりようがあると感じました。自動車アフターマーケットは過去の積み上げられた長い歴史のある産業ですが、電気自動車も含めてモビリティ本体が大きく変わるという意味で、ドラスティックに変わる産業です。変化は新規参入者にとってチャンスです。自分がやる意味があるなと思いました。

また、自動車アフターマーケットは、ユーザー視点で見ても、顧客体験として改善する余地がたくさんありました。この業界を調べていくうちに、日常的に車に乗っている、栃木に住む親が、車の整備周りでよく不満を言っていたのを思い出しましたね。

大久保:車検の費用が分かりにくいとか。

佐川:ええ。とはいえ、払わざるを得なかったりしますので。

「Seibii」の強み

大久保:今、社員数はどのくらいですか?

佐川共同創業者と整備士のパートナー1名の3人で始めて、社員は今12名です。派遣する整備士さんは200名以上います。

大久保:お客さんからすると、Seibiiのブランドで整備士さんが来てくれるので、安心だということですね。依頼も増えてきましたか?

佐川:ええ。だいたい月間1,000件弱です。自動車は国内で8,000万台以上走っていますから、市場は大きいです。エンジンオイル交換、スタッドレスタイヤ交換、ドライブレコーダー取付、エンジン故障出張診断などを、整備士がご自宅やオフィスに伺って行います。車検については、これから展開していきたいと思っています。

大久保:Seibiiが発揮できる強みとは何でしょうか?

佐川:1つは、既存の業界が苦手としているマーケティングです。もう1つは既存のビジネスと一番差別化できるソフトウェアです。ソフトウェアの開発のためにエンジニアの採用に注力しています。未来の社会に必要とされるのは良質なソフトウェアなので、今後もリソースを割いていくつもりです。

また、自動車の整備は部品が必要になってくるので、部品を調べて調達し、供給するオペレーションチームが自社にあります。ノウハウが必要でモノも動きますし、単なるネット系の会社とは違い、真のノウハウがあるのが強みです。

ウェブ・アプリ改善でスケールアップをねらう

大久保:今後Seibiiが成長していくために、何に注力していく予定ですか?

佐川:今の100倍の規模感にしていきたいので、現場のサービスレベルの改善は当然ながら、ウェブやアプリの改善に注力していきます。ユーザーから見て、「Seibiiに頼むのが、一番ラクだよね!」と言ってもらえることを目指しています。具体的にはソフトウェアプロダクトを、愚直に良くしていくことに目下取り組んでいます。

その次の段階で、事業をスケールアップしていくために、媒体はCMになるか分かりませんが、認知に踏み込みます。僕たちは、もっと大きく市場を捉えて、価値を世の中に生み出していきたいと思っています。

モビリティ産業の将来

大久保:将来的に、個人が車を持たなくなるのではという予測もありますが、いかがでしょうか?

佐川:そうですね。超小型モビリティ、例えばキックボード、電動バイクなどが、今後どんどん増えていくと思います。

大久保:2年前にドイツやイスラエルに行きましたが、キックボードで走るのは珍しいことではなく、当たり前のように人々が使っていました。

日本ではこれからだと思いますが、自動車のマーケットが縮小しても、他の乗り物が出てくるので、御社からすると伸びしろのほうが大きいと考えますか?

佐川:そうですね。その変化がまさに大きなチャンスだと思っています。超小型モビリティにベンチャーが参入していくと思いますが、リソースに限りがあって、作って売るところまでに注力すると思います。メンテナンスの領域は、ぽっかり穴が開くので、チャンスだと思います。

Seibii CEO 佐川氏が語る、立ち上げ期

起業前に立てた仮説・計画は無に帰した

大久保:起業は立ち上げるとき、大変なことが99%、いいことが1%という感じだと思いますが(笑)、起業前にやっておくといいことはありますか?

佐川:そうですね…、僕の場合、起業する前に立てた仮説・計画は、ほぼ無に帰しました(笑)。

大久保:無に帰したということですが、計画は無駄になったとしても作ったほうがいいとお考えですか?

佐川:ええ。仮説がないと、どこに向かって走っていいのか定まらないので、立てるべきですね。でも仮説通りにはいかないので、一定のところで走り出したほうが、学びは当然多いですね。

2018年の8月ぐらいから調査を始めましたが、準備していたものは全部ゼロになりました。2019年の1月に創業で、2~4月は結構絶望していました。また就活しなければならないのかもと思ったぐらいです(笑)。ただ、実際始めたら助けてくれる人もいるし、現場に出ないと分からないことは多いです。

「外注に頼ればいい」は、安易な発想

佐川サラリーマン時代から、いくつかサービスを立ち上げていましたが、そのときの失敗が後で役に立ちました。

当時インターネットサービスをしたかったのですが、初歩のプログラミングも知らなくて、外注すればいいと思っていたんです。

ありがちな失敗だと思いますが、人づてでお願いしたのはいいけれど、思ったとおりの成果物に全然ならず、結局お金を払って終わりになってしまいました。安易に外注に頼るのはダメだと思い、すぐにプログラミングの勉強を始めました。この原体験は大きくて、サラリーマン時代に経験しておいてよかったと思います。ソフトウェアは自分自身で作らなくてはいけないということに気づいたのには、価値がありましたね。

大久保:よく理解してもらわないと、外注は難しいですね。

佐川:ええ。サービスを世に出してからが勝負で、いかにスピーディーに改善していくかが大事です。そのままで使えるものはありませんから。

大久保:不思議なもので、直すところはいくらでも出てきますよね。

佐川:出てきます(笑)。起業の前に、それを知っていたのが良かったと思います。

大久保:最初はアプリの完成度も低いし、アクセスも少ない、リソースもないという中で、大変ですよね。

佐川:そうですね、貯金も減っていきますし(笑)。

絶望が希望に代わった瞬間

大久保:起業前の半年、起業後の1年は誰でも大変ですよね。順調になってきたなと感じたのは起業2年目ぐらいですか?

佐川:幸い早い時期にきました。起業したての1月はやる気マックス期、2~4月は絶望期で、2019年の5月は令和に元号が変わり10連休でしたが、完全にオフィスにこもりきりで、ひたすらコードを書いていました。連休中に今のサービスの原型ができました。ソフトウェアとしての完成度は低かったのですが、ニーズには一定刺さっているなという手ごたえがありました。

大久保:それは大きいですね。

佐川:ええ。割とすぐにこれでいけるなと思えたので、絶望は希望に変わっていきました。資金調達をしたのもその頃で、6月には3,000万円の資金調達をして、そこからは順調にトラクションが伸びていきました。

もちろんまだまだですが、事業が立ち上がらないのでは?という不安がなくなり、いかに事業を大きくできるかという戦いに変わりました。

自動車アフターマーケットで、社会的インパクトを生み出したい

大久保:Seibiiの今後の事業の方向性を教えてください。

佐川:はい。まずは今やっている事業に集中しますが、事業が社会に与える影響を当然大きくしていきたいので、車検も含めてサービスの幅を拡充していきたいと思います。しっかり事業をマネタイズしていき、グローバルに展開したいという思いもあります。

また、インターネットを介して、Seibiiにはユーザー情報、ユーザーに紐づく車両情報、車両情報に紐づく車検証のデータなど、重要なデータが集まります。この一連のデータに、自動車メーカー、中古車販売会社、自動車保険会社などは、当然アクセスしたいはずです。さらに整備士は、現車を触れられるというユニークなポジショニングです。

大久保:そこからクロスセルできるものがあるわけですね。

佐川:そうです。もちろんユーザーにとって価値があることが前提ですが。

大久保:なるほど。将来的にはグローバルもというお話でしたが、やりがいがありそうですね。海外では、ガラスがないとか、日本の車検では絶対通らない状態の車が走っていたりしますものね(笑)。ニーズがありそうですよね。

佐川:そうですね。アジア、中東、アフリカは、大きなチャンスがあると思います。

本を読むよりSlackを見ている

大久保:佐川さんは35歳ということですが、30代は経験も若さもある、いい年代ですよね。本を読むとか、カンファレンスにいくとか、何か個人的にスキルを上げるためにしていることはありますか?

佐川:そうしたいのですが、時間がないのが正直なところですね。ほぼ100%仕事にあてていて、まだその余裕がありません。本を読むより、Slackを見てしまいます(笑)。

頼りになるメンバーが集まっているので、会社全体を見回して、一番成長のボトルネックのところに自分のリソースを集中できています。

Seibiiの成功のカギは?

大久保:これがいいと勝てるという成功のカギは何でしょうか?

佐川:まだ成功と呼ぶには程遠いですが、やはり何といってもユーザー体験です。ウェブ上に限らず、対面においても、ユーザー体験に尽きると思っています。そこで重要になるのは整備士さんなので、面接はかなりきっちりとやっています。

整備士さんは独立したいと思う方が多いので、変に束縛しすぎず、ギブアンドテイクの関係性が築きやすい、良い関係になるように努めています。整備士さんとの関係性はとても大事にしています。

起業家へのメッセージ

大久保:最後に、起業したての起業家へ、メッセージをお願いします。

佐川ゼロイチの時期は現場に出るのが一番です。ユーザーの声を聴くことに徹して、ユーザーの声をもとに、スピーディーに改善することが必要です。ただ、思っていることと、言ってくださることが違ったりもしますし、声を寄せてくださる方にも偏りがあることを理解しながら、改善することが重要です。

いずれにせよ、現場に行かないとどうしようもありません。先ほどもお話ししたように、どうせ予め考えていたことは、外れてしまいますから(笑)。

大久保:早く外したほうがいいですか?(笑)

佐川:そうですね、早く外して、早く直すほうがいいです(笑)。これは間違いないと思います。

大久保:今日はお話を伺えて楽しかったです。ありがとうございました。

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(取材協力: 株式会社Seibii 代表取締役CEO 佐川 悠
(編集: 創業手帳編集部)

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