スポーツテックとは?市場動向や将来性、企業・政府の取組みまで解説

創業手帳

スポーツ業界に変革をもたらす技術


近年、テクノロジーの進化とともに、スポーツの世界にも革新の波が押し寄せています。
そのひとつが、アスリートのパフォーマンス向上や観戦体験の高度化、データに基づく戦略分析など、スポーツとテクノロジーが融合した「スポーツテック」です。

今回は、スポーツテックの基本的な概念から市場動向と将来性をはじめ、企業や政府による具体的な取組みについて詳しく解説します。
スポーツとテクノロジーの未来を読み解くヒントをぜひ手に入れてください。

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スポーツテックとは?


スポーツテックとは、「スポーツ」と「テクノロジー」を組み合わせた造語で、スポーツの分野に導入された最新技術やその概念を指す言葉です。
AIやデータ分析、ロボット工学などの技術が発展し、あらゆる分野で活用されていますが、スポーツ業界においても同様で、様々な場面で最新の技術が活用されています。

スポーツテックが注目を集め始めたのは2019年頃に開催されたスポーツの国際大会です。
それ以降はテック系の大手企業からスタートアップのベンチャー企業まで、幅広い企業がスポーツ業界に向けて様々なソリューションを提供するようになりました。

スポーツテックが注目を浴びている背景


スポーツテックが注目を浴びるようになった理由には、以下の背景が関係しています。それぞれの背景について解説します。

技術の高度化

ITやAIなどの最新テクノロジーは年々発展しており、あらゆる分野・業種で活用されています。
スポーツ業界でも同様に、最新テクノロジーの導入によって、従来難しかったことも行えるようになりました。
例えば、試合の情報を5G通信によって素早く伝えたり、高品質な映像を届けたりできるようになっています。

また、試合中に際どいラインの判定が必要になるケースもありますが、映像の高画質化によってボールがどこに落ちたのかが明確になり、公平な判定ができるようになりました。
こうした技術の高度化はスポーツの観戦者だけでなく、選手やチームにとってメリットになる部分も多いことから、スポーツテックが注目を浴びています。

再現性の高さ

スポーツテックが注目を浴びている理由として、再現性の高さが挙げられます。再現性とは、同じ条件と手順で同じ結果を再現できることを指します。
最新のテクノロジーによって再現性が向上した結果、試合中の一瞬の映像を切り抜いて分析を行えるようになりました。近年は、AI技術を活用した動画解析も取り入れられています。

ほかにも、VR技術を用いて試合中の動きを正確に再現し、本番と同じ感覚で練習ができるシステムの開発なども行われています。
このように、最新技術を用いることで再現性が高まったことから、スポーツ業界で注目を浴びるようになったといえるでしょう。

新たな観戦スタイルの普及

従来は、スポーツ観戦は試合会場か自宅でテレビ中継を見ることがほとんどでした。
しかし、現在はスマートフォンの普及によって新しい観戦スタイルが確立しています。
スマートフォンであれば場所や時間を問わず試合を視聴でき、選手やチームに関する情報もインターネットで入手できるようになりました。

こうした新たな観戦スタイルが確立されたことで、これまでスポーツ観戦できなかった人や、あまりスポーツに詳しくない人も気軽に楽しめるようになっています。
応援するユーザーが増えるほど収益にもつながりやすいため、スポーツテックが注目を浴びています。

急成長するスポーツテック市場と将来性


スポーツテックの市場規模は年々拡大傾向にあります。
野村総合研究所が2021年に発表した国内市場における動向分析・市場規模の予測を見ると、2021年の時点で510億円だった市場が、2027年には1,134億円と2021年より倍以上の市場に拡大すると予測されています。
市場が急成長を遂げる一端を担っているのは、動画配信サービスの普及です。5Gの商用サービスが開始され、スポーツ関連の動画配信サービスも活性化しています。
特に、リアルタイムで繰り広げられる試合映像はストリーミング配信との相性が良く、ユーザーからのニーズも高いです。

また、スポーツ庁は「スポーツ・テクノロジーの活用推進」として、DX推進等支援事業やスポーツDX人材調査事業、バーチャルスポーツ・メタバース活用事業などを展開しています。
中でもメタバースの活用は、また新しい観戦スタイルの確立やファンコミュニティの構築などにつながることから、今後もスポーツテック市場は発展していくと考えられます。

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スポーツテックの主な領域と技術


スポーツテックは主に4つの領域に分けられ、各領域で最新のテクノロジーが活用されています。ここで、スポーツテックの主な領域とそれぞれの技術を解説します。

スポーツを「観る」

スポーツ観戦の領域では、観戦環境を整える技術を中心に導入されています。

  • スマートフォンやPCからリアルタイムで試合の映像が観られるストリーミング配信
  • スタジアムやアリーナで試合を観戦しながら実況や解説なども聞ける音声配信サービス
  • 実際のプレーの状況がリアルタイムで更新されるテキスト速報サービスなど

また、感染症などに配慮して安全に観戦できる座席配置を割り出すシステムなども、観る環境を整えるための技術といえます。
快適にスポーツ観戦できる環境が整うことで、これまで興味があまりなかったスポーツの情報も手軽に入手できるようになり、ユーザーからの関心も集まりやすくなっています。

選手を「支える」

選手を支える領域では、強いチーム・選手を育成するために最新のテクノロジーが活用されています。
プレー中の動作を細かく解析して再現性を高める技術や、各選手の弱点に合わせてトレーニングメニューを考えるサービスをはじめ、大量のデータを分析してチームの傾向や戦術をアドバイスするシステムなどが一例です。

さらに、ケガの予防や毎日の健康管理、リハビリテーションでも様々な技術が活用されています。
リハビリ分野では、選手のケガの状態に合わせて計画を立て、その進行状況を詳細に記録するシステムが導入されています。
現在どのような状態にあるのか、これまでどのようなプロセスでリハビリをしてきたかがすぐにわかります。

スポーツを「する」

スポーツの領域では、直接スポーツをすることを助けてくれるものから、動機づけになるものまで、幅広い分野で技術が活用されています。
また、ここでいうスポーツはプロの世界だけでなく、一般の人が気軽にスポーツに取り組める技術も含まれています。
走行距離や消費カロリー、タイムなどを計測・記録してくれるジョギングアプリや、各ポーズの詳しいビデオ付きで初心者もわかりやすいヨガアプリなどが一例です。

近年はVRやメタバースなどの技術と組み合わせ、運動をより楽しいものにするサービスなども生まれています。
メタバースと連動し、自宅にいながら近くのユーザーとレースを楽しめるフィットネスバイクも登場しています。

新たな競技を「創る」

新たな競技を創る領域では、最新のテクノロジーを活用することでこれまでになかった競技を生み出しています。
例えば、eスポーツは最新の技術によって誕生したスポーツです。
これまでゲームはただの遊びでしかありませんでしたが、技術の高度化と普及にともないeスポーツが誕生し、プロスポーツ化にも成功しました。
eスポーツは世界的に注目を浴びており、大規模な世界大会では総額1億ドルの賞金額が用意されています。

スポーツテック領域で活躍する国内企業の事例


日本国内では多くの企業がスポーツテックの領域でサービスを展開しています。ここからは、スポーツテック領域で活躍する企業を8社紹介します。

株式会社スポーツネーション

2020年に設立された株式会社スポーツネーションは、地域プラットフォームの「スポつく」を運営していました。
スポつくは、地域に根差したスポーツチームのオーナー権を購入し、チームや選手を応援できるプラットフォームです。
応援する側はチームに対してより愛着を持てるようになり、チーム側も熱心なサポーターの獲得やチームの収入源確保などにつながります。

現在は、新たに地域のスポーツを盛り上げるためのプラットフォーム「neo」の運営に着手しています。

株式会社ORPHE

株式会社ORPHEは、「足元から世界を変える」をミッションに掲げ、センサーやコンピュータを内蔵した「スマートフットウェア」の開発に取り組む企業です。
「RUNWALK ORPHE」は、歩行パターンを検知・分析して心身の状態を見える化できるスマートシューズです。
ほかにも、ランナーの目標達成を支援する「ASICS ORPHE RUN」といったアプリや、動作分析が行える「ORPHE ANALYTICS」などのソリューション開発も手がけています。

株式会社Sportip

株式会社Sportipは、創業者が筑波大学在学中に立ち上げたスポーツテックベンチャーです。
「Sportip Pro」は、カメラで撮影したモーションキャプターの映像をもとに、AIが姿勢や動作を分析してくれるアプリです。
姿勢の状態から可動域の測定まで行うことができ、さらに一人ひとりに最適なトレーニングメニューの作成まで行ってくれます。
プロチームをはじめ、フィットネスクラブや整体・整骨院、病院などでも活用されています。

株式会社SPLYZA

スポーツや教育の分野で頑張る人を応援するスポーツテックベンチャーの株式会社SPLYZAでは、様々なアプリ・ツールの開発を手がけています。
例えば、「SPLYZA Teams」は、選手が自ら課題を発見し、解決するまでを支援する映像分析ツールです。
サッカーや野球、バスケットボールなど、30競技以上・約900チームで導入されています。

ほかにも、カメラ1台を使ってAIによる3D動作解析などが行える「SPLYZA MOTION」があります。
スポーツの分野だけに留まらず、教育現場やヘルスケア分野などでも活用されているアプリです。

PAPAMO株式会社

PAPAMO株式会社は、子ども向けのオンラインスポーツ事業「へやスポ」を開発した企業です。
子どもに体の使い方から脳と感覚の連携などを指導することで、苦手の原因をなくしていきます。
パーソナルレッスンによって子どものペースに合わせた指導を行うことができ、実際にやってみて合わなければ、柔軟にプログラムを組み直すことも可能です。

RUN.EDGE株式会社

RUN.EDGE株式会社は、もともと富士通でエンジニアとして勤めていた人が立ち上げたスポーツテックの会社です。
RUN.EDGEが開発した「FL-UX」というツールを利用すれば、試合の映像をリアルタイムで分析できるようにしたプレー直後のフィードバックや戦術の確認などを行えます。
ほかにも、レース映像と一緒にデータや音声を楽しめる「SFgo」、卓球のプロのプレーを1級検索できる「世界卓球スーパープレイ大図鑑」といったアプリの開発も手がけています。

株式会社Link Sports

株式会社 Link Sportsは、チーム活動推進アプリ「TeamHub」の開発・運営や、スポーツメディア「AZrena」を運営する会社です。
TeamHubはスポーツを楽しむ人同士でつながるアプリで、チームのスケジュール管理からスコアの共有、チーム内でのコミュニケーションまで行えます。
また、チームで活動すればポイントが貯まり、貯まったポイントはゼビオグループの店舗で活用できるため、スポーツに必要な備品を揃えるのに便利です。

HALF TIME株式会社

HALF TIME株式会社は、ビジネスパーソン向けのスポーツメディア「HALF TIMEマガジン」を運営し、記事・動画コンテンツの制作など、企業のPR・ブランディング課題の解決に取り組んでいます。
また、スポーツ業界の求人を累計1,000件以上も取り扱う求人メディアや、スポーツ業界に熟知したコンサルタントが求人紹介を行うサービスなども提供しています。

スポーツテックに対する政府の取組み


スポーツテックに対する取組みは企業だけに留まりません。
第3期スポーツ基本計画の「今後5年間に総合的かつ計画的に取り組む施策」として、政府はスポーツ業界にもDXの導入を推進しています。
デジタル技術を活用して誰もが平等にスポーツを実施できる環境づくりや、新たなビジネスモデルの創出が目的です。

また、スポーツ庁では「スポーツオープンイノベーションプラットフォーム(SOIP)」の構築を目指し、スポーツオープンイノベーション推進事業を展開しています。
スポーツ分野と他産業を融合させることで、さらなるスポーツ市場の拡大を目指しています。

まとめ・スポーツテックの市場は今後も拡大が予想される!

スポーツテックは、AIやIoTなどの技術を活用してスポーツの可能性を広げる注目の分野です。
市場は今後も成長が期待されており、企業や政府も積極的に取組みを進めています。スポーツの未来を形作るキーワードとして、今後ますます重要性になるかもしれません。

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(編集:創業手帳編集部)

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