シューマツワーカー 松村 幸弥|副業人材と企業をマッチングするプラットフォーム「シューマツワーカー」で働く選択肢を増やす
多くの企業で副業解禁!副業やテレワークが当たり前になった現代における「新しい働き方」とは
IT業界は人手不足が続いていますが、IT業界の働き手を「副業人材」という新しい働き方での確保を進めているのがシューマツワーカーの松村さんです。
多くの企業で副業が推進されるようになり、今後、副業を始める人材も増えてくると言われています。
そこで、副業人材が業務を請け負う際の注意点や、企業が副業人材を活用するメリットについて、松村さんに創業手帳の大久保が聞きました。
株式会社シューマツワーカー CEO
2012年に横浜国立大学卒業後、株式会社ボルテージに新卒入社。ソーシャルゲームのプロデューサー/ディレクターとして勤務。2016年に株式会社シューマツワーカーを設立し、代表取締役CEOに就任。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
ボルテージを経てシューマツワーカーを起業
大久保:起業までの背景を教えてください。
松村:私は学生時代から起業を志していたわけではありませんが、大学生活はとても充実しており、その経験が私を起業家へ導くことになりました。
就職活動をしながら漠然と今後のキャリアを考えた際に、東京のITベンチャーに行きたいと思い、株式会社ボルテージというソフトウェア会社に入社しました。そこで私は、ソーシャルゲームディレクターとして従事していました。
私がボルテージに入社した2012年頃のソーシャルゲーム業界は大変盛り上がっており、ボルテージの業績もかなり伸びている時代で、忙しい日々を過ごしていました。
働くこと自体は好きだったので、楽しく仕事ができていたのですが、入社して最初の1年を振り返った時に、怒涛のように忙しい日々で、1年間がとても短く感じたのです。
大久保:起業に踏み切ったのは何かきっかけがありましたか?
松村:社会人3年目の時に、自分と同い年のスタートアップ起業家との出会いがきっかけでした。
彼からスタートアップや、ベンチャーキャピタルなど、知らないことを教えてもらい、自分も社会にインパクトを与えられるような事業を作りたいと考えるようになりました。
「大学生時代の充実した日々」と「ボルテージ時代の怒涛のような日々」を比較して、日本の働き方を変えられるような事業を作りたいという思い、いくつものアイディアを考え「シューマツワーカー」にたどり着き、2016年9月に創業しました。
シューマツワーカーの原点は代表自身の「副業したかった」という原体験
大久保:シューマツワーカーを選んだ理由は何ですか?
松村:私自身が副業をしたかったという「原体験」から始まります。
私が社会人をしていた当時、まだ副業が一般的ではない時代だったため、探しても見つかりませんでした。
ですが、起業のアイディアを探していくうちに、副業のニーズは意外と多く、さらに一部のスタートアップ企業では副業人材を活用しているところもあることを知りました。
今後もIT人材は不足していくと言われていたため、こちらから各企業に副業人材を啓蒙して行くことで、副業という新しい働き方を日本に創出しつつ、需要と供給を結び付けられるのではと考えました。
大久保:そこから起業までにどのような準備をしましたか?
松村:2年ほど社会人を続けながら準備していたものの、最終的には後先考えず独立しました。
最初は自己資本だったため、1年ほど受託開発をしながら、シューマツワーカーを育て、単月黒字化することを目標に進めていきました。
そして、事業拡大を狙ってベンチャーキャピタルにアプローチもしましたが、見向きもされませんでしたね。
やはり、前職の経験を生かした事業領域ではなかったというのと、副業のマーケットが注目されておらず、もう少し様子を見たい、という返答がほとんどでした。
そこから、独自で売上を立てられるようになって初めて、資金調達が可能になりました。
大久保:資金調達をしたタイミングはよかったと思いますか?
松村:よかったと思いますね。ですが資金調達のタイミングは、気をつけた方が良いと思っています。
当初のシューマツワーカーのプラットフォームは簡易的なシステムだったため、アナログに私自身が回してました。
そのおかげで、企業側と副業人材側の両方から、常に情報のキャッチアップができていて、早く確実な意思決定をすることができました。
この1年間、己の手触りで拡大させてきた経験は、一定の蓋然性にもなる上、自分自身の自信にもつながったため、その後失敗の確率を下げた要因にできたと考えております。
副業人材と活用する企業の双方を集めるためにした工夫とは
大久保:その後、どのように拡大させたのでしょうか?
松村:お金をかけずに認知を獲得するために、様々なPR施策を実施しました。
副業でPRコンサルに入ってもらい、Webマーケティングや採用よりも「PR」に注力していたことが、上手くいった要因の一つだと考えております。
というのも、当時メディアが取り扱いたいテーマの1位群に「副業」がありました。
そこに上手く絡ませることができ、メディアに取り上げられ、広くシェアされることに成功しました。
副業人材のマッチングプラットフォームは、企業と人材の双方を集めていかなければいけないのですが、PRを工夫したことで、副業したい人材は、ほぼコストを掛けずに集めることができております。
おかげで、ここまで事業成長できたと考えております。
大久保:事業を拡大する際に、大変だったことを教えてください。
松村:これまで5年半ほどやってきて、過去に戻れるなら何をするか、という観点で話をすると、「優秀な社内人事担当」と「営業組織を作ったことがある人材」を組織が20〜30人くらいの時点で採用しておけば良かった、と思っております。
直接売上に寄与するわけではありませんが、人事制度・カルチャー作りは時間がかかるため、課題が顕在化する前に取り組む必要があります。
大久保:社内向けの人事制度で上手くいった取り組みを教えてください。
松村:率直にフィードバックを言い合える文化作りと、上長と部下の1on1の実施を標準化することです。これは、良質な組織成長の基本だと思っております。
大久保:あるポイントで楽になった、というタイミングなどありましたか?
松村:ずっと大変でしたが、これはハマった、というときはありました。
それは創業して3年ほどのタイミングで、価格戦略を改訂したことです。
プロダクト・オペレーション・組織、それぞれにおいてPDCAを回していくと思いますが、価格戦略においても、メインのPDCA軸の一つに置くことが、大事だと考えております。
それまでは、全てのクライアントに対して同じ価格で提供しておりましたが、会社規模だけではなく、東京か地方か、というエリアによっても、サービス価値の感じ方が変わってくるため、ベンチャー企業向けの価格と、ワンランク上の価格の2つに分けました。
今後は副業だけでなく様々な「新しい働き方」を普及させたい
大久保:今後の展望を伺わせてください。
松村:現在、IT業界の「副業」に注力しておりますが、副業という働き方に限定せず、「新しい働き方」という方向で事業展開をして行きます。
フリーランスや、週3,4日だけ働く正社員など、今後はさらに働き方が多角化されていくと思うので、適した企業とのマッチング領域の開発を行っていきたいと考えております。
大久保;具体的にはどのような施策を考えられていますか?
松村:まずは新しい働き方をする方々の「働く環境を整える」必要があると思っています。
業務委託契約の後方支援のオペレーションを整えたり、インボイス制度も始まるので、副業やフリーランス側も管理が複雑化していくことが考えられます。
そこをサポートするサービスを、新規事業として立ち上げております。
その先には、新しい働き方による、新しいライフスタイルが生まれると思います。
ワーケーションに特化した旅行代理店、多拠点生活に特化した不動産会社、フリーランス・副業向けの金融商材など、様々なチャンスに合わせて、事業展開をしていきます。
そうすることで、働く選択肢が少ないと言われる日本社会に対して、多くの方々に希望を持っていただける「新しい働き方」を普及していけると考えております。
大久保:シューマツワーカーは他のクラウドソーシングサービスとは異なり、業務内容や働き方が限定されていることが、業界的にもポジションが取れた要因でもあるのでしょうか?
松村:おっしゃる通りです。
副業という働き方を日本に浸透させていくために、キーとなるのは企業側になります。
業務を副業人材にいかに切り出していけるか、オペレーションに踏み込めるか、という点が重要になってきます。
そのため、企業側に副業でのオペレーション事例を1つでも作ることができれば、そこから他の業務にも広がって行くので、まず最初の事例を作ることが大事です。
また、エンジニア・デザイナー・マーケッターなど、業務が切り出しやすかったり、アウトプットが明確だったりする「IT人材」は副業に向いている職種です。
さらに、企業側としてもニーズが顕在化していたため、そこで成功させられれば、他の職種での副業も後押しできると思い、まずはIT業界に限定して狙いました。
企業が副業人材を活用する「3つのメリット」
大久保:企業が副業人材を使うメリットを、改めて教えてください。
松村:まず1つ目として、現状副業したい側が増えて、依頼を待っている状態にあるため、優秀な人材を早く確保するための良い手段となっております。
2つ目として、副業人材から正社員へ採用できる可能性があるという点です。
正社員で組織を形成していきたい企業は多いですが、新しい人材が企業文化に合うか、ポジションに適しているか、などをあらかじめ見極めることができます。
3つ目として、正社員だと雇用し続けないといけないところ、必要な時に必要な分だけ確保できるという点がポイントとなります。
よくあるケースとして、デザイナーやWebマーケッターなどは足りてないが、週5も必要ない、そういう時に副業で補うというケースがよくあります。
正社員としての雇用以外にも選択肢を持っておけると、組織戦略上円滑に進められると思います。
- ココ重要!企業が副業人材を活用する「3つのメリット」
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- 1:正社員を採用するよりも優秀な人材を早く確保できる
- 2:副業人材から正社員へ雇用できる可能性がある
- 3:必要な時に必要な分だけの人材を確保できる
大久保:人件費を抑えるというより、人材を揃える際の失敗をできる限り回避することができるところもポイントになるのでしょうか?
松村:おっしゃる通りです。特にミドルレイヤー・ハイレイヤーほど採用は難しくなってきます。
会社に合う合わないもあるため、その期間を副業として持たせることで、不可逆性が担保できると考えております。
大久保:副業人材の活用のコツを教えてください。
松村:副業人材に切り出す業務として何が向いているか、という点からお話すると、
「緊急度は高くないが、重要度が高い業務」が一番ハマりやすいと思っております。
例えば、ユーザー向けの開発業務は売上に直結するので、早急に対応すると思いますが、社内システムの開発業務は後回しにされることが多いと思います。このような業務を副業人材に進めてもらう事例が増えています。
副業人材が業務を請け負う際に注意すべき「3つのポイント」
大久保:反対に、副業人材が気をつけるべき注意点を教えてください。
松村:1つ目は、顧客から依頼を受ける側として、業務をこなすだけではなく、信用を構築していかなければならないため、プロとして「情報の取り扱い」に関しては、特に気をつけておくべき点になります。
2つ目は、契約内容をしっかり把握することです。
企業側から提示された契約書を見てみると、自分にとって不利な内容が書かれていることもあるかもしれません。
そのため、副業人材として、ある程度契約書を読めるようにならなければいけません。
3つ目は、納税です。
税務の法律に則って、副業する側は確定申告を、報酬を支払う側は源泉徴収の差し引きを必ず行わなければなりません。正しく経費計上することで、節税することもできます。
これから人生100年時代と言われているため、副業もキャリアの1つになってくると考えられます。そのため、税務・法務の知識は必須条件ですし、起業する方々にとっても、最低限必要になってきます。
- ココ重要!副業人材が業務を請け負う際に注意すべき3つのポイント
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- 1:取引先の情報の取り扱いに注意する
- 2:締結する前に契約書の内容を理解する
- 3:納税についての情報を収集する
「起業への腕試し」としても副業人材が増えている
大久保:副業から起業する方へのメッセージをお願いします。
松村:シューマツワーカーで副業をして、自信がついて起業する方は多くいます。
おすすめするポイントとして、2つあります。
1つ目は、副業を通じて自分の市場価値の手応えを得ることができるという点です。
起業するタイミングがわからない方や、上手くやっていけるか不安に思われる方も多いですが、そういう方こそ、会社員をやりながら副業してみて、自分の実力を図る手段として活用してください。
2つ目は、副業で本業以外の収入を作ることで、最低限の売上がある状態で起業ができるということです。
実際に、副業で事前に売り上げを作れた方は、会社員からの給料を下げることなく、起業することができた方もいますね。
大久保:副業人材を活用しようとしている企業に向けてのメッセージもいただけますでしょうか。
松村:良質なベンチャー企業・スタートアップは今後も増えてくるため、IT人材の正社員採用は、今後さらに難しくなってくると思います。
だからこそ、副業人材を活用した組織戦略にしていくことで、人材確保の競合優位性を築くことができるため、ぜひチャレンジしてください。
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